半導体デバイスメーカーのエンジニアの仕事内容解説~実際にどんな仕事をやっているのか~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

今回は、半導体デバイスメーカーのエンジニアの仕事内容を解説していきます。

半導体関連の仕事をやっていた(あくまでも過去形です)ので、半導体についてある程度理解はあります。これまでは、半導体について書いても需要が無いだろうと思って記事を書いていませんでした。

しかし、先日書いた記事「キオクシアとウエスタンデジタルが合併したらフラッシュメモリ業界はどうなるのか」が想定よりも読まれていたので、半導体について書いても読んでくださる方がいらっしゃるかもしれないと思ったので、今回の記事を書くことにしました。リクエストがあれば、半導体関連であれば解説記事を書いていきたいと思っているので、コメントかお問い合わせ欄から連絡いただけると嬉しいです。

半導体業界に興味がある方や転職してみたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

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目次

研究開発部門の仕事

今回解説するのは、半導体デバイスメーカーの研究開発部門の仕事内容です。量産部門になると、もっと細分化された仕事内容になっていくので、今回は研究開発部門に絞って解説します。(量産部門の細分化された仕事は、細かすぎて詳しい人でなければわからないです。)

ちなみに、今回解説する半導体デバイスメーカーと言っているのは、半導体の「デバイス」を作っている会社のことです。半導体に関連する仕事は多岐に渡るので、半導体に関連する製品を作っている会社でも実際にデバイスを作っていない会社はたくさんあります。

半導体のデバイスを作っている会社としては、海外ですがSamsungやTSMCなどが挙げられます。最終的なデバイス(例えば、CPUやフラッシュメモリなどです)を作っている会社のことを言っています。

研究開発部門は、会社の中で研究部門と開発部門に分かれていることもあります。純粋な基礎研究をする研究所での仕事であれば、大学の研究室のような基礎研究をしていることがあります。ただ、研究所で研究をしている人の割合は、会社の中ではかなり少ないです。(5%もいないんじゃないかと思います。)

では、開発部門の仕事はどんなことをやっているのでしょうか。開発部門は、基本的に量産したい製品を実際に作り上げるための試作を行って、量産にもっていくための基礎検討を

では、開発部門の仕事はどんなことをやっているのでしょうか。開発部門は基本的に将来的に量産したい製品を実際に作り上げるための試作を行って、量産にもっていくための基礎検討を行っています。

基礎検討といっても、開発部門は実際にモノを作る必要があります。半導体デバイスを作るための装置などを使って、実際のデバイスを試作して特性を評価していく必要があります。そうすると、必然的に全部の工程を1人で見ることは不可能になります。半導体デバイスを作る工程は専門化が進んでいて、装置も専用のものを使う必要があります。

というわけで、開発部門といえども基本的に分業して仕事を進めていきます。分業するときに、大きく3つの役割があります。3つの役割とは、「デバイス・プロセス・インテグ」です。

半導体デバイスメーカーで働いたことのある方以外は、何を言っているのかわからないと思うので、それぞれ解説していきます。

デバイス・プロセス・インテグ

デバイス・プロセス・インテグと3つの役割について解説していきます。

デバイス

デバイスとは、デバイスエンジニアの略です。半導体デバイスは、最終的に製品として作るためには、電子回路として満たすべき性能を満たしている必要があります。電子回路は様々な部品から構成されます。回路全体で性能を満たすように個別の部品の性能がどのくらい必要なのかを実際の電気的な特性に落とし込んで、必要な性能を満たすような部品を作っていく役割をデバイスエンジニアは持っています。

半導体デバイスは、様々な行程を経て最終的な製品が作られるわけですが、最終的には電気的な性能がどうなっているかが重要になります。電気的な性能は、見た目では判断できず、実際に電気を流して測定しないとわかりません。この、目に見えない電気的な性能を上げていくために、どんな改善をしていけばいいのかを考える仕事をやっています。

プロセス

プロセスとは、プロセスエンジニアの略です。半導体デバイスを作るうえでは、様々な行程を経て最終的な製品が作られていきます。製品を作るうえで、1つ1つの工程で必ず何かしらの「装置」を使います。半導体デバイスを製品として作る場合、手作業で処理を行うことは普通やらないので、1つ1つの工程で行いたい処理を行える装置を使います。

そして、個別の装置はただ工場に入れれば使えるようになるわけではないんです。それぞれの装置ごとに、装置の立ち上げや、実際に処理する行程によって、調整が必要になります。また、一度立ち上げたとしても、ずっと動き続けてくれるわけではなく、時々メンテナンスしてやる必要もあります。

また、同じ装置であったとしても、今までやっていたこととは別の処理をやりたくなった場合は、新しい処理に合わせて条件を調整してやる必要があります。

このように、装置1つ1つに関してやることが多々あり、装置のメンテナンスや条件を出す仕事を主にやるのが、プロセスエンジニアの役割です。

インテグ

インテグはインテグレーションの略です。別に積分をやっているわけではないですよ。

インテグの仕事は、先ほど紹介したデバイスとプロセスをつなぐ役割をしています。というのは、デバイスエンジニアは、実際に作りたい電気的な性能を実現するために改善する方向性を考えます。ただ、半導体デバイスを作るために処理される工程は、改善する行程を特定してその工程について、所望の形状や電気的な特性を引き出す必要があります。

半導体デバイスで処理される工程の数は本当に多いので、各工程で処理するプロセスのどこを調整すればいいのか詳しいことは、プロセスエンジニアでないとわかりません。そこで、デバイスエンジニアが改善したい行程を特定して、所望の形状や性能を出せるようにプロセスエンジニアと調整を行うのがインテグの役割です。

仕事内容

ここまで、デバイス・プロセス・インテグの役割について紹介しました。ざっくりした内容なので、イマイチ実感としてわからないかもしれませんが、電気的な特性について考えるのがデバイスエンジニアで、装置に携わるのがプロセスエンジニアで、デバイスエンジニアとプロセスエンジニアをつなぐのはインテグレーションだと思っていただければ問題ありません。

それぞれの仕事は、電気的な特性だったり、装置の調整だったり分かれていますが、仕事の進め方の大枠は変わりません。基本的な流れはこのような形になります。

実験案を考える→試作する→評価・分析する→結果をレビュー→次の実験案を考える

最初の実験案を考える段階では、何らかの解決したい課題に対して、その課題を解決する方法を考えます。

課題を解決する方法を考えたら、次は実際に課題が解決できるであろう方法を使って、デバイスを試作します。半導体デバイスは、実際に作るのに多数の工程を経るので試作を開始してから、デバイスが出来上がるまでそれなりの期間がかかります。

実際に試作したデバイスが出来上がったら、解決したかった課題が解決できているかを確認するために、評価や分析を行います。評価の方法としては、電気特性を測ったり、断面を観察したり、必要であれば元素分析を行うこともあります。

評価・分析が終わったら、その結果をまとめてレビューします。半導体デバイスを試作するのは、1人ではできませんし、1つの試作を行うにしてもいろいろな人が関わっているので、関係者に内容をレビューする必要があります。

実験の結果によっては、当初解決したかった課題が解決できているかもしれませんし、解決できなかったかもしれません。また、当初想定していなかったような問題が出てきているかもしれません。結果がどうなるかは、実際に試作してみないとわからないですが、その結果に応じて次の策を練る必要があります。

実際に試作したデバイスを評価した結果をもとにして、さらに改善を行うために次の実験案を練ります。このようにして、「実験案を考える→試作する→評価する→結果をレビュー→次の案を考える」というサイクルを回していって、所望のデバイスを作れるように開発を進めていきます。

どんな人が向いているのか

半導体デバイスメーカーの仕事内容について、大まかですが解説しました。開発を続けていくということは、課題を解決するためのサイクルを回し続けていくことになります。正直なことを言うと、この仕事は向き不向きがはっきり出ます。なので、どんな人が向いているのかを紹介します。

半導体デバイスメーカーでの仕事をやるのに向いている人としては、第一に「課題を解決するための解決策を考える」のが苦にならない人です。新しいことに挑戦し続けていかないといけないので、新しいアイデアを考えたり、今までの結果をもとにして導き出せる結論は何なのかを考えるのが苦手な人は向いていないです。

次に大事なのが、「多くの人とコミュニケーションを取ることが苦手ではないこと」です。企業の研究開発の仕事を言うと、ある程度1人で進めていけるような印象があるかもしれませんが、半導体デバイスメーカーでの開発の仕事は全く当てはまりません。

1つのデバイスを試作するうえで、協力してもらわないといけない人の数が多いので、多くの人とうまくコミュニケーションが取れないと仕事がうまく進められない可能性が高いです。

最後に必要なのが、「目に見えない現象をモデル化して理解したうえで、改善には何が必要なのかをイメージできる力」です。半導体デバイスメーカーでの仕事では、実際に見えないものを扱うことが多いです。例えば、電気特性の測定では、電気的に測定した結果をグラフにすることはできますが、実際に電気が流れているところを見ることはできません。

また、装置を使って処理を行うときも、処理が行われるときに化学的にどんな反応が起こっているのかを、目で見ることはできません。目標の形状を作りたい時でも、最終的な断面形状を見ることはできますが、途中でどんな反応が起こっているのかを見ることはできません。

このように、実際に起こっていることを目で見ることができない場合がほとんどなので、目で見えないことに対して何が起こっているのかを自分で考えてモデル化し、改善していく方法を考えることができないと、仕事が苦行になります。(本当苦行になるんですよ。見えないところで何が起こっているかを考えるのが嫌なら、絶対に向かない仕事です。)

半導体デバイスメーカーでの仕事に向いている人の特性について3つ紹介しました。まとめると、「新しいことに取り組むことが好き」で、「コミュニケーション能力が高く」、「目に見えない世界を考えるのが苦にならない」人です。こういう特性を考えると、理工系の学生の方が適性が高いことが多いかもしれません。

国内の大手半導体デバイスメーカー

半導体デバイスメーカーの仕事内容と、向いている人について解説してきました。半導体デバイスメーカーに興味を持たれた方のため、国内の大手半導体デバイスメーカーにどんなところがあるのか紹介します。

社名と主な製品を書いています。

  • キオクシア(フラッシュメモリ)
  • ソニー(CMOSイメージセンサ)
  • ルネサスエレクトロニクス(車載用IC)
  • ローム(汎用IC)

他にも半導体デバイスメーカーはありますが、国内大手で言うとこの4社がメインになると思います。

海外の大手半導体デバイスメーカー

実は、半導体デバイスメーカーで、先端のLSI(パソコンやスマホに入っている計算用の半導体デバイスです)を作っている会社は、全て海外の会社なんです。海外の大手半導体デバイスメーカーをいくつか紹介します。社名、国、主な製品の順で書いています。

  • Samsung(韓国) 先端LSI、DRAM、フラッシュメモリ
  • Intel(アメリカ) 先端LSI
  • TSMC(台湾) 先端LSI
  • SK Hynix(韓国) DRAM、フラッシュメモリ
  • Micron(アメリカ) DRAM、フラッシュメモリ

売上高の上位だとこの5社が入ってきます。

アメリカ・韓国・台湾が強いです。日本のメーカーは残念ながらTop10には入っていません。(日本の最上位は、キオクシアです。)

海外では、先端LSIを作っている会社は人気なので、半導体デバイスメーカーで給料を上げたい場合は、海外の会社を探してみる方が、伸びしろはあるかもしれません。

まとめ

今回の記事では、半導体デバイスメーカーのエンジニアの仕事内容について解説しました。実験案を考えて、試作を行い、結果をレビューし、新しい実験案を考えていくのが、主な仕事の流れです。

向いている人の特徴は「新しいことに取り組むことが好き」で、「コミュニケーション能力が高く」、「目に見えない世界を考えるのが苦にならない」ことです。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。半導体関連の記事を関連記事で紹介しています。興味があれば読んでいただけると嬉しいです。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。

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