みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
今回は、Micronの2023年度第一四半期の決算から見た半導体メモリ業界の調子について書いていきます。
Micronという会社名をご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカの会社で半導体メモリを作っている会社です。Micronが日本のメーカーを吸収した経緯で、アメリカの会社なのに日本に工場があるんです。そんなMicronの決算から見た、半導体メモリ業界について見ていきます。
Micronは、半導体メモリの中でもDRAMとフラッシュメモリを作っている会社です。詳しくは事業内容の項目で解説しますが、DRAMとフラッシュメモリの違いについてはこちらの記事で解説しています。半導体に詳しくない方でもわかるように書いているので、是非読んでみてください。
半導体業界に興味がある方や、転職してみたい方はこちらの記事も読んでみてください。

まずは、Micronの最新の決算を見ていきます。
2023年度1Q決算
Micronの2023年度1Qの決算について見ていきます。Micronは、9月始まりで8月終わりの決算を採用しているので、今回紹介する2023年度1Q決算は2022年の9月から11月の決算内容になります。
Micronの決算はこちらのページで見ることができます。アメリカの会社なので、全部英語で書かれています。
https://investors.micron.com/quarterly-results
売上高・営業利益・当期純利益について見るとこのようになっていました。

売上高は40億ドル、営業利益は6500万ドルの赤字、当期純利益は3900万ドルの赤字となっています。
1ドル140円として日本円に換算すると、売上高は5719億円、営業利益は91億円の赤字、当期純利益は54.6億円の赤字となります。
1四半期で5000億円クラスの売上なので、年換算すると2兆円程度の売上になります。それだけでも、かなり大きな会社であることがわかります。
Micronの事業内容
次に、Micronの事業内容について見ていきます。Micronは半導体メモリの中でDRAMとNANDフラッシュメモリを作っている会社です。DRAMは、電源を切ったら情報が消えてしまうメモリなんですが、容量当たりの単価が比較的高いです。フラッシュメモリは、電源を切っても情報が消えないメモリで、SSDやスマホのストレージに使われています。
キオクシアとウエスタンデジタルの決算について以前の記事で紹介しました。
キオクシアとウエスタンデジタルは、Micronと同じように半導体メモリを作っているメーカーですが、NANDフラッシュメモリしか作っていないです。一方、MicronはDRAMとNANDフラッシュメモリの両方を作っています。DRAMとNANDフラッシュメモリの両方を作っているということは、一方しか作っていないメーカーと比べて、片方のメモリの価格変動の影響を受けても業績が落ちにくいというメリットがあります。
例えば、NANDフラッシュメモリの価格が暴落したとしても、DRAMの価格が安定していればDRAMの利益でNANDフラッシュメモリの損失を補填することができます。かつ、DRAMは作っているメーカーが3社しかないので寡占市場なのでフラッシュメモリと比べて価格が落ちにくいと言われていました。
DRAMはフラッシュメモリと比べて価格が落ちにくいと「言われていました」と書いたのは、業績のトレンドを見るとDRAMの価格がかなり落ちていることが見えているからです。このことについては、直近の業績トレンドで詳しく説明します。
財務状況
Micronは、上場企業なので貸借対照表と損益計算書が公開されているので見ていきます。
貸借対照表と損益計算書については、ざっくりした読み方はこちらの記事で解説しているので、財務諸表について読んでみてください。
貸借対照表について見ていくと、会社の手元の現金を表す「現金及び現金同等物」は95.74億ドルでした。1ドル140円として考えると、1兆円近く手元現金を持っていることになります。かなり潤沢な手元資金を持っているように見えます。
流動資産が229億ドル、非流動資産が449億ドルで、製造業なので非流動資産が多いのは当然ですが、かなり手元現金を持って経営をしていることがわかります。
次に損益計算書を見てみます。粗利が40.85億ドル、売上原価が31.92億ドルで、粗利が8.93億ドルとなっています。研究開発費8.49億ドル、販管費が2.51億ドルとなっていて、かなり研究開発費が投入されていることがわかります。結果的に営業利益は赤字となっています。
直近の業績トレンド
直近の業績トレンドについて見ていきます。直近4四半期の業績を見ています。
まずは、全体の売上高のトレンドを見ていきます。MicronはDRAMとフラッシュメモリの両方を作っているので、2つの合算の売上高になっています。

2022年度3Qから売上高が急降下しているのがわかります。半年で売上高が半減しているのを見るとかなり急激な落ち方です。
Micronは、DRAMとフラッシュメモリの両方を作っているので、それぞれの売上高が公表されているのでそれぞれの売上高を見てみます。

DRAMとフラッシュメモリの売上高比を見ると、だいたいDRAMとフラッシュメモリの売上高の割合は、DRAM:フラッシュメモリ=3:1くらいになっています。DRAM売上高の落ち方が激しいので、フラッシュメモリの落ち方が小さく見えますが、DRAMもフラッシュメモリも半年で売上高が半減しています。
このグラフを書いた時に、DRAMの売上高の落ち方が急激なのが驚きでした。フラッシュメモリの売上高の落ちは、キオクシアとウエスタンデジタルの決算を見たときに、だいたい予想できていました。しかし、DRAMは3社しか作っていない寡占市場であるにもかかわらず、半年で売上高が半減しているんです。
DRAMは寡占市場なので売り上げが安定していて、フラッシュメモリの価格変動が激しくてもある程度赤字を補填することができると思っていたんですが、2023年度1Qの売上を見るとむしろDRAMではフラッシュメモリの赤字を補填できるような状況では無さそうなことがわかります。
次に、粗利・営業利益・当期純利益について見ていきます。

粗利・営業利益・純利益はほとんど連動していることがわかります。売上高に連動していて売上高が減る傾きと、利益の減り方の傾きがほとんど同じになっています。急激な売上高の減りに対応して、営業利益が減ってしまい2023年度1Qでは赤字になっています。
本当は、DRAM事業とフラッシュメモリ事業の利益率を出したかったんですが、データが開示されていなかったので出せませんでした。データが開示されていないので推測になりますが、2023年度1QではDRAMとフラッシュメモリも両方赤字になっているのではないかと考えられます。
DRAMの売上高の減少の仕方が急激で、フラッシュメモリの売上も同時に下がったため、両方の事業ともに赤字となってしまい、結果的にトータルの決算も赤字になっているんだと考えられます。
キオクシアとウエスタンデジタルの決算でも見えましたが、フラッシュメモリの売上の減少は、どの会社でも大きく影響を受けていることがわかります。Micronに関してはDRAMも作っていますが、半導体メモリ全体が売上減少の影響を受けていて、各社の業績が低下しています。
半導体メモリ業界は、DRAMとフラッシュメモリの市場が回復しないと各社の業績は厳しいものになると考えられます。
半導体メモリ業界における立ち位置
ここまでMicronの直近の業績トレンドについて見てきました。Micronの半導体メモリ業界における立ち位置について、考えていきます。半導体メモリ業界で、フラッシュメモリを作っているメーカーは5社、DRAMを作っているメーカーは3社あります。
DRAMメーカーとしては、Micronは3社のうち3番目のシェアとなっています。フラッシュメモリは5社のうち5番目のシェアとなっています。DRAMとフラッシュメモリを両方作っているメーカーではありますが、どちらの分野でもシェアが低いのが気になります。DRAMを作っているメーカーは全てフラッシュメモリをつくっているので、DRAMだけを作っているメーカーはありません。
フラッシュメモリだけを作っているメーカーよりは、DRAMとフラッシュメモリを作っている方が業績としては安定していると思いますが、どちらのメモリでも高いシェアを持っているわけではないです。Micronの方向性としては、DRAMかフラッシュメモリでシェアを伸ばしていくことが必要だと思われます。
まとめ
今回の記事では、Micronの2023年度第一四半期の決算から見た半導体メモリ業界の調子について書きました。2023年度1Qでは、DRAMとフラッシュメモリの両方の売上が急激に減少していて、半導体メモリは全体として急激に売上高が落ちていることがはっきりわかるというのが結論です。
おわりに
長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。
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