SK Hynixの業績から見る半導体メモリ業界の調子~DRAMもフラッシュも厳しい~

本ページは広告・プロモーションを含みます

みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

今回は、SK Hynixの2022年4Qの決算について書いていきます。SK Hynixは1月始まり12月終わりの決算を採用しているため、2022年10月から12月の四半期の決算になります。

SK Hynixという会社をご存じない方がいらっしゃるかもしれませんが、韓国の会社です。半導体メモリであるDRAMとNANDフラッシュメモリを作っている会社です。DRAMとNANDフラッシュメモリの違いについては、こちらの記事で解説しています。

あわせて読みたい
フラッシュメモリとDRAMの違いは電源を切って情報が飛ぶか飛ばないかの差 みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 今回は、半導体メモリの中でも用途が違うフラッシュメモリとDRAMの違いについて解説していきます。 この...

半導体業界に興味がある方や、転職してみたい方はこちらの記事も是非読んでみてください。

あわせて読みたい
半導体業界への転職におすすめの転職サイト3選 みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、半導体業界に興味がある方向けに、半導体業界への転職に強い転職サイト3選を紹介します。 ...
目次

2022年4Q決算

まずは、SH Hynixの最新の決算である2022年4Qの決算を見ていきます。

SK Hynixは韓国の会社ですが、決算は英語で書いてあります。決算自体はこちらのページからみることができます。

https://www.skhynix.com/ir/UI-FR-IR01/

売上高・営業利益・当期純利益について見るとこのようになっていました。

韓国の会社なので、10億ウォン単位で書いてあります。ウォン/ドルのレートは、2023/2/20時点では1ドル1294ウォンでした。ウォン/ドルのレートは、それなりに変動していますが、ドルを基準に円/ウォンレートを考えると、およそ1ウォン=0.1円くらいです。為替レートは日々変動しているので、どの時点のレートで換算するかによって日本円やドルの換算額は変わってきますが、およそで考えると1ウォン=0.1円くらいのイメージで考えていきます。

1四半期で売上高が7.6兆ウォンなので、日本円換算すると7600億円くらいの売上高に相当します。営業利益は、1.7兆ウォンの赤字なので日本円換算だと1700億円くらいの赤字で、当期純利益を見ると3.5兆ウォンの赤字なので日本円換算で3500億円くらいの赤字となります。

3か月で3500億円の赤字と言われると、かなり大きい赤字に思えてしまいませんか。1年続くと1.4兆円クラスの赤字額になるので、相当企業に体力が無いと持ちこたえられない額の印象です。もちろん、2022年4Qに売上高が急減して赤字になっているので、市況が回復して通常レベルの売上高に戻れば業績は回復するはずではあります。

SK Hynixの事業内容

SK Hynixの事業内容としては、半導体メモリであるDRAMとNANDフラッシュメモリを作っています。以前の記事で紹介したMicronとほとんど同じ業態です。Micronの決算について解説した記事はこちらです。

あわせて読みたい
Micronの業績から見る半導体メモリ業界の調子~DRAMは寡占市場だが価格が下落?~ みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 今回は、Micronの2023年度第一四半期の決算から見た半導体メモリ業界の調子について書いていきます。 Mic...

SK Hynixは作っている製品もMicronとほとんど同じなので、Micronと同じような製品を作っていると思っていただければ問題ないです。Micronはアメリカの会社ですが、SK Hynixは韓国の会社なので決算の単位が米ドルなのかウォンなのかの違いはありますが、基本的な構造は一緒です。

財務状況

SK Hynixは上場しているので、損益計算書と貸借対照表が公表されています。

損益計算書については、売上高・営業利益・当期純利益を見ているので今回はスキップします。(研究開発費や販管費の内訳は書いていますが、それほど大きく変わりはしません。)

貸借対照表について見ていきます。

会社の手元現金を示す「現金および現金同等物」は、6.4兆ウォンで6400億円程度です。流動資産が28兆ウォン、非流動資産が75兆ウォンでトータルの資産が100兆ウォンくらいです。日本円換算で10兆円くらいなので、かなり大きな会社であることがわかります。

負債を見るとトータルで40兆ウォンくらいなので、それほど負債が多いわけではなさそうです。

直近の業績トレンド

次に、SK Hynixの直近4四半期分の業績トレンドについて見ていきます。

まずは、売上高です。直近四半期の売上高をグラフにしました。

Micron・ウエスタンデジタル・キオクシアの業績を見てきましたが、どの会社も直前2四半期の売上高の減少度合がすさまじいです。会社によって減り幅は少し違いますが、売上高の減少が直線を描いています。

SK Hynixは、DRAMとNANDフラッシュメモリの両方を作っているので、それぞれの売上高を見てみましょう。SK Hynixは、DRAMとNANDフラッシュのそれぞれの売り上げを直接出しているわけではありません。しかし、全体の売上高と、DRAM・NANDフラッシュメモリの売上割合を出しているので、計算することでそれぞれの売上高を算出することができます。このグラフは、SK Hynixの決算資料から私が計算して作っています。

SK Hynixは、DRAMとフラッシュメモリの売上比率はDRAM:フラッシュメモリ=2:1くらいになっています。Micronの時は、DRAMとフラッシュメモリの売上比率は3:1くらいでした。DRAMの方が単価が高いので売上高が高くなるのは当然と言えば当然ですが、Micronと比較するとSK HynixはDRAMへの依存度が低いことがわかります。

DRAMとNANDフラッシュメモリの両方の売上が、2022年2Qから直線的に下がっていることがわかります。売上の減り方は、どちらも急激ですが、減り幅で言うとDRAMの方が急であることがわかります。

DRAMとフラッシュメモリを作っていれば、一方の市場価格が落ちたとしても、もう一方の市場が安定していれば全体として利益を出すことができますが、2022年2Qから4Qにかけては両方の売上が急減しているので、厳しいですね。

最後に、粗利・営業利益・当期純利益のトレンドを見てきます。粗利・営業利益・当期純利益をグラフにしたのがこちらです。

粗利に関しては、売上高に連動して2022年2Qから急降下しています。粗利に連動して、営業利益が減少して2022年4Qは赤字になっています。基本的に売上高の減少に連動して、粗利・営業利益・純利益が減少して、赤字になっていることがよくわかります。

SK Hynixの決算は、Micronとよく似ていてフラッシュメモリとDRAMの両方を作っていますが、両方の売上高の減少が急激なため、直近の四半期で赤字に転落していることがわかります。

DRAMを作っていないウエスタンデジタルとキオクシアは少しトレンドが違いますが、それでもフラッシュメモリの市場で売上が急減した影響は大きいようです。

次の四半期で市況が回復するかは不透明ですが、このままDRAMとフラッシュメモリの市況が回復しないと、本格的に半導体メモリ業界のチキンレースが始まるかもしれません。チキンレースと言っているのは、市場価格が低迷している時には、一番長く生き残ることができるのは会社の内部留保が多い会社になるので、体力がない会社から競争についていけずに離脱するということです。

つまり、半導体メモリ業界の中で1社どこかのメーカーが淘汰されるまでチキンレースを続くのはワーストケースです。チキンレースが始まった場合どうなることが予想されるかはシェアを含めて別の記事で書きますが、一般的には一番企業の体力が無い会社が淘汰されます。淘汰されるというのは、資金がショートして倒産するなり、他社に身売りするなり、同業他社に吸収されたりするパターンが考えられます。

現に、DRAM業界ではかつては日本の会社でエルピーダメモリがありましたが、DRAMの市況が低迷した時期に資金ショートを起こして倒産しています。エルピーダメモリが倒産したあと、DRAMの工場はMicronが買収してMicronのDRAMのシェアが上がっています。

エルピーダメモリの悲劇が再来しないことを祈っていますが、半導体メモリ業界の市場の回復が見込めない状況だと、体力のない会社の淘汰が起こってもおかしくないとは感じます。

まとめ

今回の記事では、SK Hynixの2022年4Qの決算について書きました。2022年4Qでは、DRAMとフラッシュメモリの両方の売上が急激に減少していて、半導体メモリは全体として急激に売上高が落ちていることがはっきりわかるというのが結論です。Micronも同じような決算なので、会社にかかわらず半導体メモリの市場全体の売上が落ちています。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。

半導体業界に興味がある方や、転職してみたい方はこちらの記事もぜひ読んでみてください。

あわせて読みたい
半導体業界への転職におすすめの転職サイト3選 みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、半導体業界に興味がある方向けに、半導体業界への転職に強い転職サイト3選を紹介します。 ...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次