フラッシュメモリメーカーの技術開発競争を解説

みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、フラッシュメモリメーカーの技術開発競争について解説していきます。

半導体業界に興味があったり、転職したい方はこちらの記事も読んでみてください。

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目次

大手フラッシュメモリメーカー

大手フラッシュメモリメーカーは5社あります。5社のうち2社は、共同でフラッシュメモリを作っているので実質的には4つのグループに分かれます。4つのグループはこちらのとおりです。

・Samsung(韓国)
・SK Hynix(韓国)
・Micron(アメリカ)
・Kioxia(日本)/Western Degital(アメリカ)

この4つのグループのうち、Kioxia/Westedn Degital以外の3社は、半導体メモリであるDRAMも作っています。
DRAMとフラッシュメモリは、半導体メモリと呼ばれる記憶媒体ですが、用途に違いがあります。DRAMとフラッシュメモリの違いについては、こちらの記事で解説しています。

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細かいことを言うと、フラッシュメモリを作っているメーカーは紹介した5社以外に、YMTCと呼ばれる中国のメーカーがあります。ただ、2023年時点では市場シェアが小さいので今回の解説では省略します。

大手フラッシュメモリメーカーの決算については、こちらの記事で解説しているので興味がある方は読んでみてください。

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3次元フラッシュメモリの構造

2023年現在、フラッシュメモリメーカーが開発しているのは、3次元フラッシュメモリです。
「3次元」フラッシュメモリという名前からして、2次元だった時代もありました。

2次元の平面にメモリセルを作っていましたが、開発が進んでセルの大きさを限界まで小さくして、性能向上の限界に達してしまったわけです。

そこで、3次元的にセルを積み上げていって、性能向上を目指すようになりました。3次元フラッシュメモリの大まかな構造はこのようになっています。

画像は、kioxiaのホームページ(https://www.kioxia.com/ja-jp/rd/technology/bics-flash.html)から引用しています。

どんどん層を積み上げていくことで性能向上を図っています。
各社が、積み上げる層の数をどこまで増やせるかを競っています。(厳密には、積み上げる層の高さだけではなく、平面的にどのくらいセルを小さくできるかも効いてきますが、大きくは層の数を競っていると考えてください。)

開発競争の状況

大手フラッシュメモリメーカーの開発状況を図で表しています。層数が高ければ高いほど、開発が進んでいると考えてください。

縦軸に層数を取っているので、線が左上にあればあるほど開発が進んでいると思ってください。

3次元フラッシュメモリの開発競争を大きく見ると、2つの時期に分かれていることがわかります。

赤く囲った時期(①とします)が、SamsungやKioxia/WDが開発で先端を走っていた時代。青く囲った時期(②とします)が、SK HynixやMicronが開発の先端を走っている時期です。

①の時期と②の時期には明確に違いがあるので、違いについて解説します。

①SamsungやKioxia/WDが先端を走っている時期

①の時期は、2015年から2018年くらいまでの時期です。SamsungやKioxia/WDが他社に先駆けて、開発を行っていることがわかります。この理由ははっきりしています。3次元フラッシュメモリは、コンセプトを東芝(現在のKioxia)が発表していて、製品化はSamsungが世界で最初に成功しています。

つまり、2018年くらいまでの時期はフラッシュメモリメーカーで先に開発を行っていた、SamsungやKioxia/WDが開発の先端を走っていたわけです。

②SK HynixやMicronが先端を走っている時期

②の時期は、2020年ころから2023年現在も続いている、SK HynixやMicronが開発の先端を走っている時期です。

SK HynixやMicronは、SamsungやKioxia/WDと比べると、フラッシュメモリには後から参入した後発メーカーです。(後発といっても20年近い歴史はあります。)
後発メーカーだったので、①の時期ではSamsungやKioxia/WDと比べて開発に遅れを取っていました。

しかし、2020年頃からSK HynixやMicronが開発の先端を走るようになりました。
この理由は、SK HynixやMicronが3次元フラッシュメモリの開発を開始してから、ある程度時間が経って各社にノウハウが蓄積されるようになったからだと考えられます。

3次元フラッシュメモリは、積み上げる層数が増えると加工の難易度が上がりますが、基本的にはどれだけ層を積み上げられるかというのが技術のポイントになります。

2020年以降の開発競争を拡大するとこのようになります。

黒い丸で囲んだ時点で、各社が新しい世代を開発しています。
面白いことに、2回とも新しい世代の開発に成功したことを発表した順が、Micron→SKHynix→Samsung→Kioxia/WDとなっています。

図をみてもわかるように、MicronとSK Hynixは他社より早く新世代の開発を行うことを意識していることがわかります。この2社の発表のタイミングはかなり近く、お互いを意識して開発を行っているように見えます。

Kioxia/WDの一人負け

②の時期で、SK HynixとMicronが開発競争の先端を走るようになってからはっきりしていることあります。
それは、Kioxia/WDが開発競争で一番後ろを走るようになったことです。

もともと、フラッシュメモリ自体はKioxiaの前身である東芝が発明して製造を始めた製品です。
フラッシュメモリが生まれてから30年近く経って、3次元フラッシュメモリの開発競争の最後尾を走るようになってしまったわけです。

しかも、Kioxia/WDの開発品は発表のタイミングが他社より遅く、層数が低くなっています。もちろん、層数以外にもメモリセルの平面的な密度を上げることも必要なので、層数が高ければ高いほどいいわけではありません。

とはいえ、2022年度に各社が発表した新世代の発表タイミングを見ると、Kioxia/WDの開発が遅れているのははっきりとわかります。一番最初に発表したMicronが2022/7/26なのに対して、Kioxia/WDは2023/3/31でした。
MicronとKioxiaを比べると、8か月遅れていることになります。

8か月あれば、先行して発表した会社はさらに先を走っていることになるので、普通に競争していては勝てません。
他社よりも早く新世代の開発を行う工夫をしない限り、開発競争の遅れを取り戻すことは難しいです。

フラッシュメモリの市況は厳しい

3次元フラッシュメモリの開発は、4つのグループで競争が行われていて非常に厳しい世界です。
これに加えて、2023年現在ではフラッシュメモリの市況がとても厳しくなっています。

2023年度2QのMicronの決算を見ると、3か月で20億ドルの赤字となっています。詳しくはこちらの記事で解説しています。

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フラッシュメモリとDRAMの市場価格が暴落していて、フラッシュメモリメーカーは各社厳しい状況に置かれています。そんな中で、他社との開発競争に勝ち残っていかないといけないので、会社がどれだけ持ちこたえられるかが問われています。

まとめ

この記事では、フラッシュメモリメーカーの技術開発競争について解説しました。
各社の技術開発競争は熾烈で、2023年現在だとSK HynixとMicronが開発の先頭を走っていて、Kioxia/WDが遅れを取っています。また、フラッシュメモリの市況が厳しい中で、各社がどれだけ持ちこたえられるかが問われています。

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