Samsungが25年ぶりにメモリ減産を決めた理由を考察

みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体メモリ最大手のSamsungが25年ぶりにメモリの減産を決めた理由について考察していきます。

Samsungがメモリ減産を決めた理由を2つの観点から見ていきます。

1. メモリ市場が回復しないと起こることを予測
2.Samsungの2023年1-3月期の決算に着目

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【プロフィール】
名前:東急三崎口
経歴:学生の頃から半導体の研究を始め、半導体メーカーで約3年勤務。ロジック半導体・メモリ半導体が専門
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Samsungが、2023年1-3月期で半導体部門が大赤字を出したのは衝撃的でした。
半導体メモリ市場が厳しいと言われていましたが、2022年10-12月期まではギリギリ黒字を保っていたからです。

目次

Samsungが減産を決めた理由

結論から言うと、Samsungが25年間やらなかったメモリの減産を決めた理由はおそらくこの2つだと思われます。

・メモリ市場が回復しないとKioxiaが競争から脱落するが、Samsungにメリットが無いこと
・Samsung社内で半導体メモリ部門だけが大赤字であり、社内の圧力の影響で減産せざるを得ない状況になった

半導体メモリ業界の構造と、Samsungの決算をよく見てみないと何を言っているのかわからないと思うので、それぞれについて解説していきます。

そもそも今まで減産をしてこなかった理由

そもそも、Samsungはなぜ今までメモリの減産をしなかったのでしょうか。
25年ぶりに減産したと言われているので、頑なに減産を拒んでいたことがわかります。

25年を振り返ってみると、半導体メモリ業界はITバブル崩壊やリーマンショックを経験しています。
ITバブル崩壊やリーマンショックは、景気がとても悪かった時期で半導体業界の限らず様々な業界に影響が出ています。

そんな時期であっても半導体メモリの減産をしなかったわけです。
なのに、2023年になって減産を決めたわけですから、非常にインパクトのある決断です。

Samsungが半導体メモリの減産をしてこなかった理由は大きく分けて2つあります。

・半導体工場は24時間稼働が基本
・半導体は急に増産できない

それぞれについて簡単に見ていきます。

半導体工場は24時間稼働が基本

半導体のデバイスを作っている工場は基本的に24時間稼働しています。これは、Samsungに限った話でありません。

理由は大きく2つあります。

・半導体はクリーンルームの中で製造していて、一度止めると再開するのがとても手間
・半導体を作る装置がとても高価で装置を稼働し続けないと元が取れない

半導体のデバイスは、クリーンルームと呼ばれる部屋の中で作られています。
クリーンルームは、名前の通り空気がきれいな部屋です。半導体を作る時には、ゴミが載ってしまうとそれだけで不良品になってしまうので、ゴミを極限まで取り除いた部屋の中で作らないといけません。

空気中には目に見えない埃やゴミがたくさんあります。クリーンルームでは、これらをフィルターを使って取り除いているです。

部屋の上からゴミを取り除いた空気を流しています。空気の流れを止めてしまうと、床に落ちたゴミが舞い上がってしまうので、簡単に止めることはできません。

また、半導体を作る装置がとても高価なのも理由の1つです。
1台当たり1000万円~1億円するような装置が半導体工場の中には並んでいます。

そんな高価な装置をたくさん並べると、装置を買うのにかかった費用を回収するためにはできるだけたくさんの製品を作らないといけません。
もちろん、24時間稼働するとその分人件費がかかりますが、装置の費用の方が断然高いので工場は24時間稼働しています。

半導体は急に増産できない

2つ目の理由は、半導体は急に増産できないことです。

半導体のデバイスを作る工程は数百~数千工程になります。1つ1つの工程を順番に処理していかないと、製品にならないんです。

そうすると、増産しようとしても工場にある装置のキャパシティは決まっていて、24時間稼働しているので生産量を急に増やすことは難しいです。

減産していたのをやめて、生産量を増やそうとしても1からスタートなので最終的に製品が出来上がるまで数か月かかってしまいます。そうすると、増産したくても製品が増えるまでに数か月タイムラグが生じます。

数か月後に需要がどうなっているかを予測するのは難しいので、売れたかもしれないチャンスを逃してしまうかもしれません。

このような理由で、半導体メモリを作るうえでは減産することはデメリットが多いのでSamsungはこれまで減産をしてこなかったわけです。

メモリ市場が回復しないと起こること

これまで半導体メモリの減産をしてこなかったSamsungが減産を決めたのかについて、メモリ市場が回復しないと起こることを予測して考察していきます。

2023年前半現在、半導体メモリ市場は需要が減少しており、在庫が増えて値段が下がっている状況です。

半導体メモリ市場の需要が回復せずに、このままの状況が1年程度続くとどうなるかについて予測していきます。まとめるとこのようになると考えられます。

・各社赤字が続いて、会社の持っている資金力勝負になる
・資金が尽きて競争から脱落した会社が他社に吸収合併される
・SamsungはメモリのNo1プレーヤーであり、脱落した会社を吸収できる可能性は低い
・競争から脱落する会社が出ても、Samsungのシェアは増えない

それぞれについて、なぜそうなるのかについてみていきます。

競合他社との資金力勝負

2022年後半から、半導体メモリの市場が急速に減速しており、すべての半導体メモリメーカーが赤字になっています。

半導体メモリを作っている会社は、5社あります。

・Samsung(韓国)
・SK Hynix(韓国)
・Micron(アメリカ)
・Western Digital(アメリカ)
・Kioxia(日本)

このうち、Western DigitalとKioxiaはNANDフラッシュメモリしか作っていません。他の3社はDRAMとNANDフラッシュメモリの両方を作っています。

DRAMとNANDフラッシュメモリの違いは、こちらの記事で解説しています。

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半導体メモリメーカーが赤字ということは、会社が儲けられていないわけです。
赤字=即倒産というわけではありませんが、赤字が続くと会社からお金が出続けていきます。
これまで稼いだお金を会社の中に貯めてあるか、外部から資金を調達できていれば経営を続けることができます。

しかし、赤字がずっと続くと最終的には会社の資金が無くなって倒産してしまいます。
つまり、各社が赤字だということは会社の持っている資金力勝負になっているわけです。

それでは、半導体メモリの市況が回復せずに各社が赤字の状況がずっと続くとどうなるのでしょうか。

脱落した会社が吸収合併される

半導体メモリメーカーが赤字を続ける状況になると、一番先に競争から脱落するのは資金力が一番弱い会社です。

上場している会社であれば、四半期(3か月)に1回決算発表をやっています。決算発表の時に、会社の財務状況を公表しています。(上場しているということは、不特定多数の人が会社の株式を買うことができるので、会社の財務状況を多くの人が知ることができるようにしないといけません。決算や会社の財務状況を公表しないといけないことは、法律で決まっています。)

会社が公表している財務書類を見れば、その会社がどのくらい儲けているのかや、どんな資産を持っているのかを読むことができます。

簡単に例えてみます。貯金を1億円持っているAさんと1000万円持っているBさんがいたとします。
毎月100万円づつお金が出ていく状況にあったとして、先にお金が尽きるのはAさんとBさんのどちらでしょうか。

答えは簡単で、Bさん方が先にお金が尽きてしまいますよね。毎月100万円だと10か月経つと手元の1000万円を使い切ってしまいます。一方、1億円持っているAさんは10か月経っても9000万円残っています。

個人の貯金で考えると簡単な話ですが、会社でも似たようなことが言えます。会社に資金力があるのは、個人で言うと貯金をたくさん持っているかどうかに例えられます。(厳密な議論のためではなく、わかりやすさを優先したたとえです。)

つまり、たくさんお金を持っている会社の方が赤字が続いた時に耐えるうえでは有利なわけです。
そして、単純に考えるとメモリ市場が回復せず各社が赤字の状況が続けば続くほど、資金力が弱い会社の資金は流出していくわけです。

最終的には、一番資金力が弱い会社の資金が無くなって倒産してしまいます。
倒産しなかったとしても他社に事業を譲渡したり、経営権は別の会社に移ったりします。

実は、半導体メモリ業界では赤字が続く時期が続いて、資金力が弱い会社が倒産することが実際に起こっています。(これを、チキンレースと呼ぶことがあります。)

2012年までは、DRAMを作っていたエルピーダメモリという会社がありました。(日本でDRAMを作っていた唯一の会社でした。)
DRAMは当時非常に市況が厳しく、資金力の競争にさらされていました。円高の影響等もあり、2012年にエルピーダメモリは倒産してしまいます。

そして、エルピーダメモリを同じくDRAMを作っているMicronが吸収しました。倒産したエルピーダメモリを吸収したので、MicronはDRAMのシェアを上げることに成功しています。

過去のDRAM業界の歴史については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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半導体メモリ業界はエルピーダメモリの例のように、資金力や競争力の低い会社が淘汰されて今に至っています。

一番資金力が弱いのはKioxia

それでは、半導体メモリメーカーの中で現状一番資金力が弱い会社はどこでしょうか。

結論を言うと、日本のKioxiaの資金力が一番弱く、会社の資金力のチキンレースをした時に一番最初に脱落すると考えられます。

Kioxia以外の会社は上場しているので、最新の決算書類を見ることができます。しかし、Kioxiaは上場していないので最新の決算書類は公表されていません。

ただ、Kioxiaは一度IPO(新規株式公開)をやろうとした時があって、その時にIPO目論見書というものを公表しています。
この時のIPO目論見書では、2020/3/31時点の財務諸表が載っています。

3年近く前の財務諸表ですが、そこからの利益を通算してもほとんど儲かっていないように見えるので、財務状況が劇的に良くなっていることは考えづらいです。

KioxiaのIPO目論見書については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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ここで詳しくは書きませんが、半導体メモリメーカーであるSamsung・SK Hynix・Micron・Western Digitalの決算についてはそれぞれ詳しく解説しているので興味がある方は読んでみてください。

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Kioxiaが脱落したらどうなるのか

Kioxiaが半導体メモリメーカーのチキンレースに耐えられず、競争から脱落したらどうなるのかについて考えていきます。

Kioxiaが作っているのは、NANDフラッシュメモリだけです。
NANDフラッシュメモリしか作っていないんですが、少しからくりがあります。

Kioxia単独のNANDフラッシュメモリの市場シェアは15~20%程度です。実は、Western DigitalとKioxiaはNANDフラッシュメモリを作る製造設備に共同で投資をしています。つまり、2社で共同生産していることになります。

NANDフラッシュメモリのチップ自体は同じ設備で作っているんですが、最終的な製品として売る時にはライバルメーカーという少し変わった関係性です。

この関係性を考えて、Western DigitalのNANDフラッシュメモリのシェアとKioxiaのシェアを足すと、30~35%程度になります。30~35%のシェアは、NANDフラッシュメモリのNo1メーカーであるSamsungのシェアに匹敵します。

KioxiaとWestern Digitalが共同で作っているチップのシェア自体は、それなりの量があるわけです。

仮に、Kioxiaの資金力が足りず経営を続けることが困難になった場合、Western Digitalと共同で投資している製造設備がどうなるか?という問題が発生します。

Western DigitalがKioxiaと合併した場合、製造装置をどうするかという問題は無くなりますが、経営が困難な状況に追い込まれた会社と合併してWestern Digital側にメリットがあるのかわかりません。

一方、Western Digital以外の会社がKioxiaを吸収しようとすると、Western Digitalが投資した装置の費用はどうなるのか?という問題が出てきます。

どちらにしても一筋縄にはいかない可能性が高いです。
実際、東芝からKioxiaが分離された時に、Western Digitalは東芝に対して訴訟を起こしています。

結果的に和解したようで、今でのKioxiaと協業を続けているようですが、Kioxiaの経営が傾いた時には訴訟も含めたひと悶着はあると予想しています。

チキンレースをしてもSamsungに得は無い

半導体メモリメーカーの中でチキンレースをした時に、一番最初に脱落するのはKioxiaだと考えられます。
仮に、Kioxiaがチキンレースから脱落したとすると、Samsungにはメリットが無いことが見えてきます。

まず、シェアの問題です。単純にKioxiaの持っているNANDフラッシュメモリのシェアとSamsungのシェアを足すと、50%近くを1社で占めてしまうことになります。

いくらなんでも、NANDフラッシュメモリのシェアを1社で50%近く持つことは、独占禁止法の観点から認められないのではないかと思います。

そうすると、Samsung以外の会社に吸収or合併されることになるわけです。
この場合、Samsungの立場から見たときに、メリットが全く見えてきません。

つまりは、現段階でも技術開発競争をしているSK Hynix・Micron・Western Digitalのどこかの会社にKioxiaのシェアがもっていかれる形になるわけです。NANDフラッシュメモリのシェアとしては、3つの会社のどこに吸収合併されたとしても、Kioxiaを吸収した会社がシェア2位に近づきます。

Samsungの立場からすれば、資金力的には余裕があっても、Kioxiaの経営が厳しくなることは、同業他社に塩を送るのも同然な状況に見えます。

これらの理由で、メモリ市場が回復しないとSamsungの立場からしてもメリットが無いという判断で減産に至ったのではないかと考察しています。

2023年1-3月期の決算に着目

次に、Samsungの決算についてみていきます。

Samsungの2023年1-3月期の半導体部門の決算については、こちらの記事で解説しているので詳しく知りたい方は参考にしてください。

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半導体部門だけが大赤字

まずは、Samsung全体の決算についてみていきます。Samsungは、DX・DS・SDC・Harmanと4つのセグメントがあります。それぞれのセグメントの営業利益を図にするとこのようになります。

DS部門が大赤字を出していることがわかります。合計としては、ギリギリ黒字になっていますが、DS部門の赤字を他の部門の黒字で相殺している形です。大赤字を出しているDS部門が、半導体部門です。

SamsungがDS部門としてひとくくりにしている半導体は、システムLSI・ファウンドリ・メモリと3つあります。
とはいえ、これだけ半導体部門が赤字になっている元凶はメモリです。

もう少し、半導体部門の赤字額が大きければ危うく会社全体の利益も赤字になりかねない状況に立たされています。
それだけ半導体メモリの赤字が巨額であることを示しています。

他部門から見たメモリ部門の見え方

半導体部門以外にも様々な製品を作っているSamsungの社内の視点で、半導体メモリ部門の大赤字がどう見えるかを考えてみます。

他の部門が黒字にもかかわらず、半導体部門の大赤字で全社で見るとギリギリ黒字という決算は、他の部門からの不満が出てきてもおかしくない状況です。

かつて日本の電機メーカーが半導体部門を持っていた頃、半導体部門の巨額赤字で全社の決算が赤字になることがありました。結果的に、日本の電機メーカーは半導体部門を分社化していきました。

NEC・日立・三菱電機などがその例です。東芝は、DRAMからは撤退しましたがNANDフラッシュメモリの製造は続けていました。しかし、不正会計と原発部門の巨額赤字の影響で債務超過に陥り、最終的にメモリ部門はKioxiaとして売却しています。

Samsungが半導体部門を切り離すことはないでしょうが、社内の風当たりが強いことは想像に難くないでしょう。

社内の圧力で減産せざるを得ない状況に

2023年1-3月期の決算で、半導体部門が大幅赤字になった影響でメモリの減産をしないわけにはいかなくなってしまったというのが正直なところなのではないかと私は推測しています。

2022年後半から、半導体メモリの市況は悪化していたのは各社の決算を見ると明らかです。

しかし、Samsungはメモリ以外にもシステムLSIとファウンドリを含めていますが、半導体部門(セグメントのくくりとしてはDS部門に相当します)は2022年10-12月期までギリギリですが黒字を保っていました。

他社が軒並み赤字になる中、Samsungは健闘しているように見えたくらいです。

しかし、2023年1-3月期にSamsungもメモリ事業が大幅赤字になってしまいました。そして、長期的には半導体メモリの市況は回復すると思われますが、直近で見た時にいつ回復するのかが具体的に見通せない以上、これ以上赤字を増やせない状況になっていると考えられます。その結果が、25年ぶりに減産する判断につながっているのでしょう。

今後の展望

ここまで、Samsungが25年ぶりに半導体メモリの減産に踏み切った原因を考察してきました。

今後の展望としては、2つのポイントがあります。

【今後の大きな2つのポイント】
・Kioxiaがメモリ市況の悪化を乗り切れるか
・半導体メモリの市況が回復するタイミング

1つ目は、Kioxiaがメモリ市況の悪化を乗り切れるかどうかです。
先ほども解説したように、半導体メモリメーカーの中で一番資金力が弱いと考えられる会社がKioxiaです。

メモリの市況の悪化の影響を一番受けるのがKioxiaだと考えられ、最悪の場合経営が立ち行かなくなる可能性があります。Kioxiaがメモリ市況の悪化を乗り切って、市況が回復するまで持ちこたえられれば、Samsungとしては他社にシェアを取られるリスクは低くなります。

2つ目に、半導体メモリの市況が回復するタイミングがどのくらい早いかです。

メモリの市況が回復するタイミングが早ければ早いほど、現時点で大幅赤字になっているメモリメーカーの経営が改善するタイミングが早くなります。
そして、Samsungも減産をやめて増産するタイミングが早くなります。

半導体メモリ業界としては、何としても早く市況が回復するのが一番いいシナリオです。

しかし、現実的にどの段階で市況が回復するのかは見通せていないので、現状はなんとか耐えるフェーズでしょう。
メモリの市況悪化が1年以上続くことになると、最悪の場合チキンレースに耐えられなくなった会社の吸収・合併が現実味を帯びてきます。

まとめ

この記事では、Samsungが25年ぶりにメモリ減産に踏み切った理由を考察してきました。

ポイントはこの2つです。

・メモリ市場が回復しないとKioxiaが競争から脱落するが、Samsungにメリットが無いこと
・Samsung社内で半導体メモリ部門だけが大赤字であり、社内の圧力の影響で減産せざるを得ない状況になった

「Kioxiaがどこまで持ちこたえられるか」と、「半導体メモリの市況回復のタイミング」が今後のキーになります。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

半導体業界に興味がある方や、半導体業界に転職してみたい方は、こちらの記事がおすすめです。

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