みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、キオクシアが手を組むべき半導体メモリ会社について、キオクシアの立場から考察していきます。
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キオクシアとウエスタンデジタルのフラッシュメモリ部門が合併協議を加速しているとの記事が、2023/5/15に出てきます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4a626da68edbb77dad6ab3c8b8358ab1f92d9acc
キオクシアとウエスタンデジタルが合併する話は、2023/1くらいから出ています。その後、具体的な報道がありませんでしたが、最近新たに報道が出ています。
2023/1の時点で、キオクシアとウエスタンデジタルが合併したらどうなるのかについて解説した記事があるので、興味がある方は読んでみてください。

この記事では、キオクシアが合併するとすれば、どの会社と合併するのが一番いいのかについて考察していきます。
キオクシアとウエスタンデジタルの関係性
まず、現段階でのキオクシアとウエスタンデジタルの関係性について解説します。要点はこの2点です。
【キオクシアとウエスタンデジタルの関係性】
・共同でNANDフラッシュメモリの設備投資を行っている
・キオクシアがウエハを製造し、ウエスタンデジタルと折半
キオクシアとウエスタンデジタルは、共同でNANDフラッシュメモリの開発を行っています。
NANDフラッシュメモリを作るためには、非常に多額の設備投資が必要です。
キオクシアとウエスタンデジタルは、巨額の設備投資を2社で折半することで、自社の負担を小さくしながら、フラッシュメモリを作っています。
実は、キオクシアとウエスタンデジタルが共同で行っているのは、NANDフラッシュメモリのチップを作るところまでです。
NANDフラッシュメモリは、チップを作ったあと後工程と呼ばれる工程を経て製品になります。
後工程は、キオクシアとウエスタンデジタルは別々に行っており、別会社として製品を売っています。
家電量販店に行くと、SDカード(中身はフラッシュメモリです)が売っています。ウエスタンデジタルはSanDiskブランドで、キオクシアはKioxiaブランドでそれぞれ売っています。
このように、中身のチップは共同で製造しながら販売は別々に行っている、ちょっと不思議な関係性です。
もちろん、設備投資を共同で行っているので、製造したチップの取り分は半々です。
NANDフラッシュメモリのシェア
次に、NANDフラッシュメモリのメーカー別のシェアを見ていきます。
2022年10-12月期のシェアはこのようになっています。
(Trend forceのデータから筆者作成)

シェアを整理するとこのようになります。
【NANDフラッシュメモリのシェア】
1位:Samsung(韓国)
2位:Kioxia(日本)
3位:SK Hynix(韓国)
4位:Western Digital(アメリカ)
5位:Micron(アメリカ)
Samsungが圧倒的なシェアを誇っています。キオクシアは、NANDフラッシュメモリのシェアで世界2位となっています。
キオクシアとの合併が報道されているWestern Digitalは4位となっています。
キオクシアが合併を考えた時に、候補となるのはSamsung以外の3社です。Samsungは、既にシェア1位でキオクシアとSamsungが合併するとフラッシュメモリのシェアが50%を超えてしまうので、今回は候補から除きます。
3通りのケース
キオクシアが合併する可能性がある3社について、それぞれ合併したらどうなるのかについて考えてみます。
考えるのは、こちらの3社です。
【キオクシアと合併する可能性がある3社】
・Western Digital
・SK Hynix
・Micron
各社の決算については、こちらの記事で解説しています。興味がある方は読んでみてください。



Western Digital
まず、報道で名前が挙がっているWestern Digitalがキオクシアと合併した場合を考えてみます。
2022年10-12月期のNANDフラッシュメモリのシェアで、キオクシアとWestern DIgitalを単純に足すとこのようになります。

キオクシアをWestern Digitalのシェアを足すと35.2%となり、Samsungを上回ってNANDフラッシュメモリのシェア1位となります。
キオクシアの立場からすると、Western Digitalと合併するメリットは、単純にNANDフラッシュメモリのシェアを広げることができることです。
この形になると、NANDフラッシュメモリ業界の会社は2強(SamsungとKioxia+Western Digital)+2(SK HynixとMicron)となります。
SK Hynix
次に可能性があるのは、SK Hynixです。
SK Hynixとキオクシアのシェアを足すとこうなります。

キオクシアがSK Hynixと合併すると、Samsungをわずかに上回りNANDフラッシュメモリ業界のシェア1位となります。
この場合、Western Digitalとキオクシアが合併した時と同じように2強(SamsungとKioxia+SK Hynix)+2(Western DigitalとMicron)となります。
Western Digitalとキオクシアが合併した場合と違うのは、SK HynixはDRAMを作っていることです。
SK HynixはDRAMの技術を持ちながら、NANDフラッシュメモリのシェアを拡大することができます。
DRAMとフラッシュメモリの違いは、こちらの記事で解説しています。

1つ問題になってくるのが、キオクシアとWestern Digitalの関係性です。
キオクシアの製造設備は、Western Digitalとの共同投資になっているので、持分をどうするかが問題になると考えられます。
Micron
3つ目に、Micronと合併したケースを考えます。
キオクシアとMicronが合併した場合のフラッシュメモリのシェアはこのようになります。

Micronと合併した場合、ギリギリSamsungのシェアを超えずNANDフラッシュメモリのシェアは2位になります。
この場合でも、NANDフラッシュメモリのシェアは2強(SamsungとKioxia+Micron)+2(SK HynixとWestern Digital)となります。
Micronは、SK Hynixと同じようにDRAMの技術を持っています。
問題になるのは、SK Hynixと合併した場合と同様で、Western Digitalとキオクシアの関係性です。
シナジー効果が高いもの
キオクシアが合併する可能性がある3社について、それぞれの会社と合併した場合のシェアと課題を見てきました。
まとめるとこのようになります。

Western Digitalは、DRAM技術を持っていないのが弱点です。フラッシュメモリのシェアとWestern Digitalとの関係性はばっちりです。
一方、SK HynixとMicronは似通っています。SK HynixとMicronは、どちらもDRAM技術を持っています。
また、合併した場合Micronだとシェア2位ですが、それでもSamsungに匹敵するシェアを獲得することができます。
しかし、SK HynixもMicronも、Western Digitalとの関係をどうするかについて、課題は残ります。
理想的なことを考えると、DRAM技術を使える会社と合併するのが、キオクシアの製造能力を生かす観点では望ましいです。
現実的な可能性
シナジー効果が高くなる理想的な場合を考えましたが、実際に合併する可能性が一番高いのはWestern Digitalです。
その理由は明らかで、現在キオクシアとWestern Digitalが共同で投資を行っているからです。
キオクシアとWestern Digitalが連携を解除する場合、キオクシア側はWestern Digital側が所有する資産の買取等を求められる可能性が高いです。
キオクシアと合併した会社は、キオクシアを合併する費用を出したうえで、Western Digitalの資産を買い取る費用を出すのは、かなり難しいでしょう。
つまり、実際問題キオクシアが合併できるとするとWestern Digitalが一番可能性が高いわけです。
WDと合併してもシナジー効果は薄い
キオクシアとWestern DIgitalが合併したとすると、NANDフラッシュメモリのシェアでSamsungを超えて、世界1位になります。(単純計算した場合です。)
シェアが大きくなるのは1つのメリットですが、逆に言うとメリットはシェア拡大くらいしかありません。
DRAM技術を手に入れられるわけでもありませんし、Western Digitalとキオクシアは他社と比べて最先端品の開発が遅れています。
フラッシュメモリの先端開発の競争については、こちらの記事で解説しています。

キオクシアの立場からすると、合併前と比較してシェアを増やして他社と勝負していかないといけない状況になります。
MicronのNANDフラッシュ事業の立ち位置
キオクシアの立場から、合併する可能性のある3社を見てきました。
最後に、少し視点を変えてMicronの立場からキオクシアの合併を見てみます。
実は、MicronはキオクシアとWestern Digitalが合併すると、圧倒的にシェアが小さい会社になってしまいます。
現状のシェアでも、SK HynixやWestern Digitalより小さいので、SK HynixやWestern Digitalがキオクシアと合併した場合、Micronの1弱に追い込まれる可能性もあります。
また、Western Digitalはキオクシアとの合併前の時点でも、キオクシアと共同で投資を行っており、Micronのフラッシュメモリのシェアは相対的に小さいです。
つまり、Micronはキオクシアがどこかの会社と合併するのを黙ってみていると、Micronが不利になります。
Micronは、キオクシアと他社が合併するのを黙ってみているのは、望ましくない状況なので、逆転の発想でキオクシアとの合併を目指す可能性も0ではないと考えられます。
個人的には、MicronはDRAM技術を持っていて、技術的なシナジー効果が高いので、キオクシアとMicronが合併すると、日米の2社ですし、キオクシアにとってもMicronにとってもメリットが大きい合併になるのではないかと考えています。
まとめ
この記事では、、キオクシアが手を組むべき半導体メモリ会社について解説しました。
まとめはこのようになります。
【キオクシアとウエスタンデジタルの関係性】
・共同でNANDフラッシュメモリの設備投資を行っている
・キオクシアがウエハを製造し、ウエスタンデジタルと折半
【NANDフラッシュメモリのシェア】
1位:Samsung(韓国)
2位:Kioxia(日本)
3位:SK Hynix(韓国)
4位:Western Digital(アメリカ)
5位:Micron(アメリカ)
キオクシアと合併してシナジー効果が高いのは、DRAM技術を持っている会社
現実的に合併に一番近いのはWestern Digital
キオクシアが合併する会社がどこになるのかは、非常に興味深いです。
半導体業界に興味がある方や、半導体業界で仕事をしてみたい方はこちらの記事も読んでみてください。

この記事を読まれている方は、半導体や半導体業界に興味がある方と、実際に半導体業界で仕事をされている方が多いと思います。半導体業界から転職を考えておられる方は、こちらの記事がおすすめです。

この記事はここまでです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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