【企業解説】東京エレクトロンについて解説~一体何を作っている会社なのか~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体関連の会社では有名な東京エレクトロンについて解説していきます。

株式投資をしている方であれば、一度は聞いたことがある「東京エレクトロン」という会社ですが、実際に何をやっている会社なのかはよくわからないなんて方も多いはず。

そこで、この記事では半導体に詳しくない方でも、東京エレクトロンがどんな会社なのかわかるように解説します。

目次

決算情報(2023年3月期)

まずは、東京エレクトロンの決算を見ていきます。2023年3月期のデータから引用しています。

売上高は、年間2兆円を超える非常に大きな会社です。

また、粗利が1兆円近いことからも、非常に利益率が高い会社であることがわかります。

年間の営業利益が6000億円近いわけで、販管費を払っても6000億円の利益を出すことができる、非常に稼げる会社です。

財務体質も見ていきましょう。

製造業のはずなのに、固定資産より流動資産の方が多く、かつ借金が少ないことがわかります。

自己資本比率は、68.7%(2023/3/31現在)となっていて、非常に借金が少ない経営をしていることがよくわかります。

そもそも、稼げている会社であり、財務体質を見ても借金が非常に少ないので、稼げる体質を持っている会社だと言えます。

何をやっている会社なのか

さて、簡単に東京エレクトロンの決算情報を見たところ、稼いでいる会社であることはわかりましたが、問題なのは何をして稼いでいるのか?ということです。

簡単に言うと、東京エレクトロンは半導体を作るための装置(半導体製造装置と言います)を作っている会社です。

半導体を作るための装置と言われて、装置の形が思い浮かぶ方は半導体業界の方だと思います。

ここで、半導体と言っているのは、半導体デバイスのことです。例えば、パソコン向けのCPUやスマホに入っているフラッシュメモリなんかが半導体デバイスです。

半導体デバイスを作る工場は、基本的にクリーンルームと呼ばれる「ごみを極限まで減らした部屋」になっています。ごみを極限まで減らした部屋の中に、半導体デバイスを作る専用の装置がたくさん並んでいます。

半導体工場のクリーンルームなんて見たことが無い方が多いと思うのでイメージを載せると、こんな感じです。

キオクシアHPより引用

(https://www.kioxia.com/ja-jp/about/news/2022/20221026-1.html)

写真の中に大きな装置が写っていますが、この1つ1つが半導体デバイスを作るための専用の装置です。

半導体デバイスを作るためには、専用の装置を非常にたくさん使います。種類もさまざまなんですが、東京エレクトロンは専用の装置を作る専門メーカーなわけです。

そうすると、必然的に東京エレクトロンが装置を売るのは、半導体デバイスを作るために専用の装置が必要な半導体デバイスメーカーになるわけです。

半導体製造装置にも色々ある

東京エレクトロンが作っているのは、半導体を作るための専用の装置であることは解説しました。

半導体を作るための専用の装置と言っても、たくさん種類があります。

装置自体について理解するには、半導体デバイスの作り方を知っている必要があります。

こちらの記事で、半導体デバイスの作り方をざっくり解説しているので興味がある方は読んでみてください。

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【半導体デバイスの工程】
・洗浄
・イオン注入
・熱処理
・成膜
・フォトリソグラフィー
・エッチング
・CMP

それぞれの工程に対して、専用の装置があるわけです。

東京エレクトロンが強い装置

半導体デバイスの工程は、非常にたくさんあるので全てを理解するのは、半導体業界に携わっていないと難しいです。

その中でも、東京エレクトロンが強い装置として知られている工程が、4つあります。

コーター・デベロッパー
ドライエッチング装置
成膜装置
洗浄装置

コーター・デベロッパー

コーター・デベロッパーは、半導体で肝となるフォトリソグラフィー工程に関わってきます。

フォトリソグラフィーは、簡単に言うと、感光性の有機材料に光を当てて、光が当たった部分を取り除くための工程です。

コーター・デベロッパーというのは、感光性の有機材料を塗る時や、光が当たった部分を取り除く時に使われます。

感光性の有機材料を塗るためだけに専用の装置があるのかと思われるかもしれませんが、有機材料の膜厚や表面の平坦性などがシビアなので、非常に重要な工程なんですよ。

ちなみに、コーター・デベロッパーの装置で、東京エレクトロンの世界シェアは89%だと言われています。(東京エレクトロンの決算発表資料から引用しました。)

世界シェア90%近いことからもわかるように、コーター・デベロッパーは東京エレクトロンが非常に強みとしている分野です。

ドライエッチング装置

ドライエッチング装置は、工程の中で言うとエッチングの工程で使われる装置です。

エッチングと言っても、色々種類があるんですが、薬液を使うのではなく、ガスを使ってエッチングするのでドライエッチングと言います。

ドライエッチングは、半導体デバイスを作るうえで様々な工程で使われます。細かい内容は書きませんが、NANDフラッシュメモリを作っているメーカーにとっては、ドライエッチングの重要性が非常に高くなっています。

東京エレクトロンのドライエッチング装置の世界シェアは、25%となっています。(東京エレクトロンの決算発表資料から引用。)コーター・デベロッパーには劣りますが、それでも世界シェアが25%あるわけですから、非常に強いです。

成膜装置

成膜装置は、名前の通り半導体ウエハに膜を付ける装置です。

一言で、「膜」と言いましたが、半導体デバイスを作るためには、非常に多様な膜を使います。また、ただ膜が付けばいいわけではなく、膜厚制御がnmオーダー(※nmは1mmの10万分の1です。非常に小さい長さであることがおわかりいただけると思います。)になるので、精密な制御が必要です。

膜の種類もたくさんあるんですが、トータルで成膜というくくりで見ると、世界シェア34%となっています。

1社で世界シェアの3割程度を持っているというのは、やはり競争力があるんでしょう。

洗浄装置

洗浄装置は、名前の通り半導体デバイスを作る時に、ウエハを洗うときの装置です。

薬液などを使って、洗浄することが多いです。

洗浄装置としては、29%程度のシェアを持っているので、やはり強いと言えるでしょう。

半導体デバイスメーカーと何が違うのか

東京エレクトロンが作っている装置の中で、特に強い4つの装置を見てきました。

それでは、半導体デバイスメーカーと、東京エレクトロンをはじめとした半導体製造装置メーカーはどう違うんでしょうか。

半導体製造装置メーカーの特徴

半導体を作るための専用装置を作るメーカーである、半導体製造装置メーカーの特徴は3つあります。

【半導体製造装置メーカーの特徴】
・1つ1つの装置の単価が高い
・半導体デバイスメーカー相手に商売している
・売ったあともメンテナンスがある

3つ特徴を挙げました。

1番の特徴は、1つ1つの装置の単価が高いことです。半導体デバイスを作るための専用装置なので、数百万円で買うことはできません。1台で数億円する装置もよくあります。(東京エレクトロンは作っていませんが、半導体業界で一番高い装置は1台100億円するものもあります。)

2つ目の特徴は、装置を売る相手が半導体デバイスメーカーであることです。半導体デバイスを作るため専用の装置なので、必然的に半導体デバイスを作っている半導体デバイスメーカーに対して装置を売ることになります。そうすると、BtoBの企業になります。BtoBの会社であるため、一般への知名度は低いですが非常に稼げる会社なわけです。

3つ目の特徴は、売った後もメンテナンスがあることです。1台当たりの単価が高いのと、半導体を作るために装置を動かすので、装置のメンテナンスが必要になります。つまり、装置を売ればそのあとのメンテナンスも含めて利益を上げることができるようになっているわけです。

デバイスメーカーとの違い

半導体デバイスメーカーと半導体製造装置メーカーの一番の違いは、売っているものが最終製品に残るかどうかです。

半導体デバイスメーカーは、お客さんに渡る最終製品の部品や最終製品自体を作っています。(CPUやフラッシュメモリなどのチップを作っているのがデバイスメーカーです。最終製品を分解すれば、デバイスメーカーが作ったものは目で見ることができます。)

しかし、半導体製造装置メーカーが作ったのは、あくまでも半導体デバイスを作るための装置なので、最終製品に形が残らないんです。(スマホを分解したら、半導体デバイスのチップは目で見えますが、デバイスを作るために使われた薬液や装置は見えないわけです。)

競合他社はどこなのか

東京エレクトロンの特徴を解説してきました。東京エレクトロンはシェアが強い装置がいくつもありますが、競合他社は存在します。いくつか、競合他社を紹介します。

AMAT

AMATというのは、略称で正式には「Applied Materials」という社名です。アメリカの会社で、半導体に関する装置をほとんど作ることができる唯一の会社だと言われています。

東京エレクトロンと主に競合するのは、ドライエッチング装置と成膜装置でしょう。

AMATも非常に強い会社です。

Lam Reaserch

Lam Reasearchは、1980年に創業された比較的新しい会社です。こちらもアメリカの会社です。

東京エレクトロンと競合するのは、主にドライエッチング装置です。

SCREEN

SCREENは、日本の会社で京都に本社を置いています。

東京エレクトロンと競合するのは、洗浄装置です。

SCREENは、洗浄装置に特に強い会社で、高いシェアを持っています。

半導体業界が成長すれば収益が伸びる構造

東京エレクトロンをはじめとした、半導体製造装置メーカーは、半導体デバイスメーカーと違って、半導体産業が成長すれば収益が伸びる構造になっています。

その理由は、自社の装置を色々な半導体デバイスメーカーに売ることができるからです。

例えば、半導体デバイスメーカーの中でも、半導体メモリ専業メーカーであれば半導体メモリの市況が悪くなって売り上げが落ちれば、業績は悪化してしまいます。

一方、半導体製造装置メーカーは、メモリが不況であっても、他の半導体(ロジック・パワー・アナログなどがあります)を含めて半導体業界が成長していれば、装置を売ることはできます。

もちろん、半導体メモリ業界は非常に規模が大きいので、メモリ業界が不況だと設備投資が減少し影響は受けるでしょうが、一本足ではないので、比較的影響を受けにくいです。

半導体業界自体は、今後も成長していくことが見込まれるので、半導体業界の成長とともに業績を伸ばせる東京エレクトロンは今後の成長性も十分あるでしょう。

まとめ

この記事では、半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンについて解説しました。

名前は聞いたことがあったけれども、何をやっているのかよく知らなかった方は、東京エレクトロンを理解することができたのではないでしょうか。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • お疲れ様です。

    東京エレクトロン(東エレ)は半導体産業には欠かせない存在ですが、半導体産業の低迷で苦しい時期もあり、派遣社員を採用するまでになりました。それと共に優秀なエンジニアの方が沢山辞めてしまいました。それでも世界に認められ、世界で採用される存在となる技術力は素晴らしいと思います。国内の需要だけでは半導体メーカーは存続出来ないと思います。他、大手ではキャノン、ニコン、スクリーン、セバックス、トプコン、芝エレ、ディスコ、アルバック、住友、ニッシン、日立ハイテクなど覚えられない程あり、材料、ケミカル、ガス、インフラ等のメーカーや協力会社も数えればもの凄いです。
    この負の連鎖の30年間、優秀なメーカーも息絶えたりして、現存でも業界の苦労は計り知れない事でしょう。以前のように優秀な日本の半導体を安く提供し、世界が日本製を採用し、高シェアを獲得したらまた覇権国に理不尽な規制を掛けられたり、政治家、政府も言いなりとなり繰り返す事でしょう。技術力を発揮しても意図反して軍事活用もあります。また政治がクリーンで信用、信頼の出来る世の中でないと日本は発揮出来ず、負の連鎖、衰退は続くと思います。覇権国の顔色外交や利権の私物化をどう対策するのか?ここをルール化、システム化、ハイテク化しないとね。

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