半導体で作られている身近なデバイスを解説~初心者向け半導体講座第2回~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体で作られているデバイスについて、身近なものから普段目にしないものまで、簡単に解説します。

初心者向け半導体講座の第1回はこちらからご覧ください。

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目次

半導体デバイスと言ってもいろいろな種類がある

半導体と一言で言っても、様々なものを指します。みなさんは、半導体と言われて何を思い浮かべるでしょうか。

今回は、半導体と言ったときに、半導体から作られる半導体デバイスのことを考えます。

世間では、半導体不足と言われていた時期がありましたが、半導体で作られたデバイスが足りていなかったわけです。しかし、半導体デバイスと言っても大まかにいくつか括りがあります。

大まかにですが、分類すると5種類くらいあります。

【半導体デバイスの大まかな分類】
・ロジック
・メモリ
・パワー
・アナログ
・イメージセンサ

ロジック

半導体デバイスの中でロジックと呼ばれる領域は、スマホやパソコンのCPUに使われる演算装置です。

スマホやパソコンを使っているときに、色々な操作を行うと思います。(例えば、SNSを見るとかメールを打つとか、ネットを見るとか) この時に、ロジック半導体で作られたCPUが処理を行うことで、私たちはスマホやパソコンを使うことができています。

ロジック半導体の特徴は、一品一様であり価格がそれなりに高いことです。

例えば、iPhoneに入っているCPUを取り出して、パソコンに取り付けようとしてもなかなかうまくいきません。
iPhone向けのCPUは、iPhone専用にカスタムされているわけです。

このように、専用の回路を専用のチップとして作るので、値段が高くなりがちです。

また、ロジック半導体の中でも最先端のチップは、最先端の技術が使われているので非常に高価です。(何気なく使っているiPhoneのCPUなんかでも、10年前の先端パソコンよりも性能の良いCPUが使われていることもあります。)

メモリ

半導体デバイスの中で、メモリはデータを記憶するために使われます。

半導体で作られるメモリとしては、代表的なものとしてDRAMとフラッシュメモリがあります。(厳密に言うと、SRAMもメモリの一種ですが、ややこしいのでここではDRAMとフラッシュメモリだけとします。)

DRAMは、パソコンを買うときに容量が書かれている「メモリ」のことを指しています。フラッシュメモリは、USBフラッシュメモリやSDカード、SSDなどに使われています。

DRAMとフラッシュメモリの一番大きな違いは、DRAMは電源を切るとデータが消えてしまいますが、フラッシュメモリは電源を切ってもデータが消えないところです。

「電源を切るとデータが消えてしまうのに、DRAMを使うメリットはあるのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、DRAMはフラッシュメモリより動作が速いので、CPUからデータを受けとって、しばらく貯めておくような用途で使われます。しばらく貯めておく用途なので、電源がついている時だけデータを記憶できればいいんです。

一方、フラッシュメモリは電源を切ってもデータが消えないので、データを長期間記録しておく用途に使われます。昔は、ハードディスク・CD・DVD・フロッピーディスク(フロッピーなんて今時使ったことが無い方もいらっしゃると思いますが)などが使われていた、記憶媒体として使われます。

パワー

パワー半導体と言われて、ピンとくる方は半導体業界の方ではないかと思います。

パワー半導体は何のための半導体デバイスなのかというと、電力制御用に使われる半導体素子のことです。

電力制御用と言われても、普段私たちが使う機会はありません。大きな電力を扱うために使われます。例えば、発電所・変電所のような電力関係の施設で使われています。身近なところで言うと、電車の制御にも使われています。電車は、架線から電力を受け取って、モーターを回すことで動きます。モーターを制御するために、パワー半導体が使われているんです。

大きな電力を使う場所は、私たちの身近には無いのでパワー半導体に触れる機会はあまりないと思います。

広い意味で言えば、家庭用のコンセントから電力を受けて直流で使う家電には、パワー半導体のようなものが入っています。家庭用のコンセントは、交流100V(200Vの場合もありますが)の電気がきています。一方、パソコンなどの家電は直流で動作します。だいたい、ACアタプタがついていると思います。ACアタプタの中では、交流から直流に電気を変換しています。ある意味では、交流から直流に電力を変換しているのでACアタプタもパワー半導体の一種と言えます。

アナログ

アナログ半導体は、アナログデータを扱う時に使われる半導体デバイスです。

アナログデータは、01だけでは表現できないデータ全般のことを言います。

例えば、温度などのデジタル化されていないデータを扱う時に、アナログ半導体が使われます。音楽で音量を大きくするアンプなんかにも、アナログ半導体が使われています。

イメージセンサ

最後に、少し異質ですがイメージセンサがあります。

イメージセンサは、広い意味ではアナログ半導体の一種なんですが、イメージセンサで1くくりにしてもいいくらいメジャーになっているので、単独で取り上げました。

イメージセンサは、名前の通り画像を撮るための半導体デバイスです。

昔は、CCDというものが主流でしたが、現在ではCMOSイメージセンサが主流となっています。

スマホについているカメラは、ほとんどCMOSイメージセンサで作られていると言っても、過言ではないでしょう。

スマホに限らず、自動車なんかにもカメラがたくさんついていますが、カメラの中の画像を取得する部分は、ほとんどCMOSイメージセンサが使われています。

スマホに入っている半導体デバイス

ここまで、半導体デバイスを大まかに分けた時に分類される5種類について、簡単に解説しました。

みなさんが持っているであろう、スマートフォンの中にどれくらい半導体デバイスが使われているか考えていきます。

iPhoneの分解写真を見て見ると、ロジック・メモリ・アナログ・イメージセンサが使われていることがわかります。

細かく言うと、Apple社が作ったiPhone向けロジック半導体チップ・DRAM・フラッシュメモリ・データ通信用のアナログ半導体・カメラ用のイメージセンサです。

このように、スマートフォンは半導体チップが詰まった先端技術の塊のようなものです。

半導体の動作原理なんて知らない人がほとんど

スマートフォンが、半導体チップが詰まった、先端技術の塊のようなものだと書きましたが、果たして半導体の動作原理を知っていて使っている人はどのくらいいるでしょうか。

おそらく、半導体デバイスについて知らないでスマホを使っている人が90%近くだと思います。(残り10%は、半導体業界に関わりのある方だと信じたいですが、多分10%はいないでしょうね。)

別に、半導体の動作原理なんて知らなくても、スマホやパソコンは使えるので全く問題ありません。

ただ、自動車と比較すると半導体チップの特異性が少し見えてきます。

自動車に乗っている人は、それなりの数いらっしゃって、自動車が走る原理を知っている人はある程度いるはずです。

しかし、半導体デバイスを使っている人で、半導体の動作原理を知っている人はほとんどいないでしょう。

この差は何なのかと考えると、半導体はデバイス自体が人の目に触れなくなっていて、中身がどうなっているのかわからない状態になっていることが原因だと考えられます。

正直、半導体業界で働いている人でも、ロジック半導体の専門化がメモリやパワー半導体を理解できるかというと、できない可能性の方が高いです。(ロジック・メモリ・パワーは、半導体デバイスと言っても、求められる性能や作り方が全然違うので、別の分野のことになるとよくわからないということは、よくある話です。)

というわけで、専門家として半導体産業で働いている人でも、他分野はよくわからないわけですから、半導体に関わっていない人が半導体について理解しようとしても、わからないのが実際のところだと思います。

書店に行けば、半導体の入門書や専門書は並んでいますが、入門書を読むだけでも苦労しますし、専門書は内容を解読するのも大変でしょう。

そんな方向けに、少しでも理解するための前提条件を少なくして、半導体について知ってもらおうというコンセプトでこの記事を書いているわけです。

メジャーな会社が何を作っているか紹介

さいごに、半導体デバイスを作っている会社が、何を作っているのかを紹介します。

半導体不足が報道されるようになってから、TSMCの名前を聞く機会は増えたと思いますが、実際に何を作っているのかわからない方向けに、メジャーな会社が何を作っているのかをおおまかに紹介します。

TSMC

TSMCは、台湾の会社でロジック半導体を作っています。

ロジック半導体の研究開発では、世界最先端の技術を持っています。

専門的なことを言うと、TSMCはファウンドリという形を取っています。簡単に言うと、半導体チップの回路だけを設計する会社から、依頼を受けて半導体チップを作るところだけを担当しています。

Samsung

Samsungは、韓国の会社でロジック半導体とメモリ半導体を作っています。

ロジック半導体では、TSMCに次ぐ立ち位置で、メモリでは世界一の規模を誇っています。

Samsungは、TSMCと違いIDMという立ち位置を取っています。IDMは、自社で回路設計して自社で半導体チップを製造する形態です。

ファブレス・ファウンドリ・IDMという3形態があるので、詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでみてください。

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Intel

Intelは、アメリカの会社でロジック半導体を作っています。

かつては、世界でNo1のロジック半導体の会社でしたが、近年ではTSMCに追い越されてしまいました。

Intelは、IDMの形態を取っています。(一部ファウンドリを始めたようですが、規模はTSMCには遠く及びません。)

パソコンのCPUが有名で、Intelのチップが載ったパソコンを使われている方も多いと思います。

キオクシア

キオクシアは、日本の会社でメモリ半導体を作っています。

メモリ半導体の中でも、NANDフラッシュメモリだけを作っている、NANDフラッシュメモリ専業メーカーです。

かつては、東芝の半導体メモリ事業部でしたが、東芝の不正会計や原発の現存の結果、分社化された経緯があります。

東芝

東芝は、日本の会社でパワー半導体を作っています。(東芝全体で見ると、色々な部門がありますが半導体という観点からすると、作っているのはパワー半導体のみです。)

大昔は、ロジック・メモリ・パワーのそれぞれを作っていましたが、事業の撤退やキオクシアの分社化などを経て、今ではパワー半導体のみとなっています。

キオクシアを売却しなければ、半導体として見ればもっと規模の大きい会社であったことは間違いないです。

ソニー

ソニーは、日本の会社でイメージセンサを作っています。(ソニーも全社で見ると、色々な部門がありますが半導体部門が作っているのはイメージセンサだけです。)

ソニーの半導体部門も、かつてはPS2やPS3向けにロジック半導体を作っていた時期もありますが、現在ではイメージセンサ専業となっているはずです。

ルネサスエレクトロニクス

ルネサスエレクトロニクスは、日本の会社でロジック半導体とパワー半導体を作っています。

ルネサスエレクトロニクスは、もともとロジック半導体を作っていた三菱電機・日立製作所・NECのロジック半導体部門が統合されてできた会社です。(細かい変遷はありますが、ここでは省略します。詳しく知りたい方は、wikiを読んでください。経緯がいっぱい書いてあります。)

ロジック半導体と言っても、TSMC・Intel・Samsungのような最先端品は作っていません。2010年くらいまで先端品の開発もしていましたが、先端開発からは撤退し自社で作れるものよりも先端の製品は、TSMCに生産委託を行っています。

メインは、車載向けのロジック半導体です。

まとめ

この記事では、半導体で作られているデバイスについて、身近なものから普段目にしないものまで、簡単に解説しました。

名前だけ聞いたことがある会社が、何を作っているかわかるだけでも、半導体業界の構造が少し見えてきます。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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