半導体デバイスを作るのが難しい理由を解説~初心者向け半導体講座第4回~

本ページは広告・プロモーションを含みます

みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体デバイスを作るのが難しい理由について解説していきます。

みなさんが普段使っているスマートフォンの中には、多くの半導体デバイスが使われています。半導体について詳しい方でも、自分の手で半導体デバイスを作れる方はほとんどいないでしょう。

実際、半導体デバイスを実際に作るのは非常に難しく、参入障壁が高い業界でもあります。
しかし、具体的に何が難しいのかをわかりやすく説明するのは、結構難しいです。そこで、この記事では半導体デバイスを作るときの流れと、実際に作るためには何が必要なのかを説明しながら、半導体デバイスを作るのが難しい理由を解説していきます。

目次

半導体デバイスを作るときに必要なこと

半導体デバイスを作るためには、最低限5つのことを満たさないといけません。

・チップに要求される性能を規定
・性能を満たすように回路を設計
・回路設計を満たすように個別の素子の性能を設計
・設計された性能を満たす素子を作るプロセス立ち上げ
・立ち上げたプロセスでチップを量産

チップに要求される性能を規定

最初に必要なのは、作ろうとしている半導体デバイスのチップに要求される性能を規定することです。

最終的に作りたいものの性能を最初に規定してやらないと、その次の回路設計ができないわけです。

自社で作って自社で売る製品であれば自社の中で性能の要求が決まりますし、お客さんからチップを受注する場合にはお客さんがチップを使う用途によって性能の要求が決まってきます。

汎用品であればある程度決まった規格がある場合もありますが、どっちにしろ自社がチップを作るうえでチップに求められる性能は規定してやる必要があります。

性能を満たすように回路を設計

チップに求められる性能が規定できたら、次は規定された性能を実現するための回路を設計します。

ロジック半導体であれ、メモリ半導体であれ、パワー半導体であれ、使われる電圧などは違えど、回路として使うことができなければいけません。

実際にデバイスを作っていくのは半導体基板の上ですが、半導体基板上にそれぞれの素子をどんな配置をするのかは、回路設計の段階で決まります。

あとから出てきますが、現代では回路設計専業の会社もあります。回路設計専業の会社は、自社では半導体デバイス自体を作ることはできないので、自社の設計した回路に合わせて他社に外注して実際のデバイスを作ることになります。

回路設計を満たすように個別の素子の性能を設計

回路を設計する段階で、個別の素子に必要な性能が決まります。

回路を構成している個別の部品には、トランジスタ・ダイオード・抵抗・コンデンサなどがあります。

電子回路を自分で作る場合には、個別のトランジスタや抵抗を自分の手でつなげて作っていくことになります。しかし、半導体デバイスの場合は、個別のトランジスタなどの部品を半導体の基板上に一度に作ってしまいます。
一度にすべての部品を基板上に作りこんでしまうことで、1つのチップの中にいろいろな素子を詰め込んでしまうことができます。

1つのチップの中に埋め込まれた個別の素子が、どんな性能を満たさないといけないかが決まります。

そして、それぞれの素子が規定された性能を満たせるように研究・開発が行われるわけです。
(さらっと書いていますが、素子を規定された性能を満たせるようにする研究・開発が難しいんです。)

設計された性能を満たす素子を作るプロセス立ち上げ

個別の素子が性能を満たせるように、それぞれの素子を作りこんでいくプロセスを立ち上げる必要があります。

半導体デバイスは、最初はまっさらな半導体基板から作ります。1工程ずつプロセスを積み上げていくことで、1つ1つの素子を作りこんでいきます。

半導体プロセスを作るためのプロセスには、さまざまな種類がありますが簡単に説明します。

重要な工程は、洗浄・成膜・リソグラフィー・エッチング・洗浄・検査の5つです。

半導体デバイスを作る工程では、とにかく基板をたくさん洗浄します。洗浄したあと、成膜したい膜をつけます。膜の種類もたくさんあって、必要な膜を選びます。そして、リソグラフィーで膜を削る部分と削らない部分を作ります。リソグラフィーで作った、膜を削りたい部分をエッチング処理で削って、洗浄します。最後に、削った部分の寸法が合っているかを検査するまでが一通りの流れになります。

検査してOKであれば基板を洗浄して、次の工程に進むことになります。

半導体デバイスを作る時に必要な工程は、1000を軽く超えているはずです。それだけ、たくさんの工程をつなぎ合わせていかないと半導体デバイスを作り上げることはできないんです。

立ち上げたプロセスでチップを量産

規定された性能を満たせる素子が作れるようなプロセスが出来上がったら、製品として量産する段階になります。

この時に重要なのが、歩留まりと使える装置を増やすことです。

歩留まりは、簡単に言うと完成した半導体デバイスが、何%製品になるか?という指標です。
半導体デバイスを作る工程は、1つ1つ工程を積み重ねていく必要がありますが、1つの工程で不具合があったりミスがあったりすると、不良品になってしまいます。また、素子の上にゴミが落ちていても不良品になってしまいます。

このように、不良品になるリスクが高いので、作ったチップが100%製品として使えるわけではありません。そこで、何%のチップが使えるのかをパーセントで表したのが、歩留まりです。もちろん、歩留まりは100%が一番良いですし、下がるとそれだけ製品にできるチップが減ってしまいます。

使える装置を増やすことは、少しマニアックな話です。半導体デバイスを作るためには、半導体デバイスを作るための専用装置(半導体製造装置)を使っています。1台の装置で全て製品が作れればいいんですが、装置自体が1日で作れるデバイスの数は加工の処理時間で決まってしまいます。

1台の装置あたりで処理できるチップ数の上限を超える場合、別の装置を使ってやらないと生産量が増やせなくなります。
そこで、同じ装置の2台目を使うことを考えるわけです。装置が2台になれば理論上作れるチップ数が2倍になります。

2台目の装置で、1台目の装置と全く同じ条件で処理できればいいんですが、必ずしも同じ処理ができるとは限らないのが半導体製造装置の難しいところです。

同じ型の装置だったとしても、nmレベルの加工をすると寸法がずれてきたりすることがあります。このズレを、補正してやる必要があります。1台・2台くらいであればいいんですが、数十台の装置を並行して使わないといけないこともあるわけで、そうするとズレの補正だけでも大変な労力になります。

このように、半導体デバイスを作るためにはステップがあるわけです。(これでも非常に簡略化しているので、実際は想像以上の大変さがあります。)

半導体デバイスを作るのに必要な条件

半導体デバイスを作るときに必要なことに関しては解説しました。

次は、半導体デバイスを実際にモノとして作るときに必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)について考えていきます。

土地・建物

まず、半導体デバイスを作るためには、工場が必要です。工場を建てるためには、土地と建物が必須です。

また、半導体デバイスは、非常にゴミが少ないクリーンルームという部屋の中で作らないといけません。(クリーンルームで作らないと、先ほど紹介した歩留まりが激減します。)

半導体工場を外側から見ると、大きな白い箱のような建物が建っています。大規模な半導体工場だと、白い大きな箱がたくさん並んでいます。

半導体工場を建てるには広い土地が必要ですし、クリーンルームを立てないといけないので、工場建設の費用がかなりかかります。広い土地が必要なので、半導体工場は田舎に建てられることが多いです。(田舎に工場が建てられるのは、半導体工場に限らないかもしれませんが。)

半導体工場の特徴として、大量の水を使うことがあります。水といっても海水や水道水ではだめで、極限まで純度を高めた水(超純水と言います)を使います。なので、水が豊富だったとしても海沿いには半導体工場は無いです。だいたい、水が確保できる丘の上あたりにあることが多いのではないかと思います。

半導体製造装置

土地と工場を建てたとしても、スタートラインに過ぎません。

半導体工場で半導体デバイスを作るためには、半導体製造装置を工場の中に並べる必要があります。

半導体製造装置は、半導体デバイスを作るための専用の装置なので、非常に値段が高いです。

1台数億円することもよくある話ですし、ラピダスが導入すると言われているEUV露光装置は1台で100億円すると言われています。(1台で100億円と言われても想像できない値段ですが、TSMCやSamsungは何台も導入しています。)

そして、半導体製造装置は、半導体デバイスを作るためのプロセスにも密接にかかわっています。
プロセスを作りこむためには、各プロセスで使う装置が必要になります。

このように、自社が作る半導体デバイスに合わせた装置を工場内に揃えないといけないので、半導体製造装置をそろえるだけでも非常にお金と手間がかかります。

装置の管理とメンテナンス

半導体製造装置をそろえるだけでも大変なんですが、まだまだ先があります。

装置は工場に入れただけでは動きません。装置を立ち上げるためのエンジニアも必要ですし、立ち上げたあともメンテナンスが必要です。一般的に、半導体工場は24時間連続で動いています。半導体製造装置の値段が高いので、装置を動かす人件費を考えても24時間稼働させておかないと元が取れないからです。

24時間動かしていたとしても、時々メンテナンスする必要はありますし、エラーが起きたら対応しないといけません。
装置を導入しただけではだめで、メンテナンスも必要になるわけです。

研究・開発・量産のためのエンジニア

最後に、一番重要なのが、研究・開発・量産を行うための、半導体専門のエンジニアがたくさん必要なことです。

半導体デバイスを量産するためには、回路設計・素子設計・プロセス立ち上げ・量産に渡って、半導体の専門家が課題を解決しながら量産までもっていく必要があります。

工場を建てて、半導体製造装置を導入するところまでは、お金があれば何とかたどり着けますが、専門のノウハウを持ったエンジニアは一朝一夕には育ちません。

そして、ロジック半導体の先端品であれば、携わるエンジニアはそれなりの報酬をもとめるでしょうから、エンジニアにお金が払えないと開発を続けていけないわけです。

世の中の流れ

半導体デバイスを実際に作るのが非常に難しいことは、ここまでの内容でおわかりいただけたと思います。

実際、ロジック半導体の最先端の開発を行っている会社は、世界で3社程度です。

しかし、私たちの生活には半導体デバイスはたくさん使われています。(スマホがその象徴です。)

極端なことを言うと、iPhoneを作っているApple社は、iPhone自体を売っていますが、中身の半導体デバイスを自前で作っているわけではありません。

なぜこんなことができるのかというと、半導体デバイスを作るのが非常に難しいので、分業が進んでいるからです。分業した場合としない場合は、一般的にこのように呼ばれます。

・回路設計とデバイス製造を分業(ファブレス・ファウンドリ)
・回路設計からデバイス製造まで自社で一貫して行う(IDM)

回路設計とデバイス製造を分業(ファブレス・ファウンドリ)

分業した場合から解説します。回路設計とデバイス製造を分業した場合、回路設計だけを行う会社をファブレスと言い、デバイス製造のみを行う会社をファウンドリと呼びます。

ファブレス(回路設計だけを行う)
ファウンドリ(デバイス製造だけを行う)

ファブレスの会社は、自社の製品に必要なチップの回路設計だけを行います。例えば、Apple社はファブレスの典型例です。
ファブレスの語源は、工場(ファブ)を持たない(レス)という意味でファブレスです。

一方、ファウンドリはデバイス製造だけを行います。回路設計は、ファブレスの会社が行って、ファブレスの会社が作った回路を実際の半導体デバイスとして作りこむ部分だけを担います。ファウンドリの代表として、TSMCがあります。

世界的には、ファブレスとファウンドリで分業して半導体デバイスを作っている場合が増えています。
例えば、CPUメーカーのAMDはCPUをAMDの自社ブランドで売っていますが、チップの製造自体はTSMCに委託しています。AMDがファブレスで、TSMCがファウンドリになるわけです。

回路設計からデバイス製造を一貫して行う(IDM)

ファブレス・ファウンドリとは対照的に、回路設計からデバイス製造を自社で一貫して行うのを、IDM(日本語だと垂直統合と言われる場合もあります)と言います。

もともとは、半導体デバイスを作っているメーカーはIDMが多かったです。しかし半導体デバイスを作るための、設備投資や研究開発費用の負担が大きくなったので、ロジック半導体ではIDMの割合は減りました。

IDMの会社が多いのは、半導体メモリ業界です。半導体メモリ自体、ロジック半導体と比べて汎用品が多いのはありますが、基本的に回路設計からデバイス製造までを一貫して行っている会社がほとんどです。

理由としては、半導体メモリは1チップあたりの単価がロジック半導体と比べて安いので、チップを大量に生産しないといけない性質があります。

ロジック半導体の分野では、TSMCがファウンドリで、Intel・SamsungはIDMです。(IntelもSamsungもファウンドリ事業を始めてはいますが、規模としてはTSMCが圧倒的に大きいです。)

デバイス製造はノウハウの塊

ファブレス・ファウンドリとIDMの2つの形態があることを説明しました。

どちらの形態であっても、半導体デバイスを作るのはノウハウの塊です。

回路設計にもノウハウがありますし、プロセスを立ち上げるには装置の特性を考えたり、要求されている特性を満たすためにはどのようなプロセスを使うべきかを考えて立ち上げなければいけません。

この辺のノウハウは、資料として残っていたとしても、実際の感覚はやってみないとわからないわけです。
そして、結果的に半導体エンジニアとして長年仕事をしている人の中に、ノウハウとして残っていることがほとんどです。

先端開発を行うので毎度新しい課題にぶつかることはありますが、過去の経験が生きてくることもありますし、過去に課題をどう解決したのかを知っている人が経験的に課題を解決できることもあります。

巨額の設備投資ができてエンジニアをたくさん雇える会社しか作れない

ここまでの内容をまとめると、半導体デバイスを実際に作るのが難しい理由は2つあります。

・装置を含めた設備投資が巨額になる
・半導体デバイスを作るために必要なノウハウを持ったエンジニアをたくさん雇う必要がある

1つ目の、巨額の設備投資に関しては、お金が確保できれば何とかすることができます。

一方、2つ目のノウハウを持ったエンジニアを雇うためには、長年半導体デバイスに携わっているエンジニアを確保しないといけないので簡単ではありません。

そして、先端開発ができるエンジニアは貴重なので、それなりの給料を払わないと確保が難しいです。(日本がどうかはわかりませんが、海外なら間違いないです。)

そうすると、設備投資に耐えられる資金力を持っていて、かつエンジニアをたくさん雇い続けられる会社でないと、半導体デバイスを開発して作ることはできないわけです。

だからこそ、半導体デバイスを作っている業界では、競争に勝てなかった会社が脱落していき、次第に作れる会社自体が減っていったというのが現実です。

ラピダスはどこへ行くのか?

最後に、半導体デバイスを作るのが難しいことを解説したうえで、ラピダスがどこへ行こうとしているのかについて、考えます。

半導体デバイスを作ることの難しさとして挙げた、設備投資に耐えうる資金力に関しては補助金を投入すれば解決できるかもしれません。

しかし、経験やノウハウのある半導体エンジニアを集めるところは、非常に難しいのではないかと感じています。40nmプロセス程度であれば話は別ですが、ラピダスが量産を目指す2nmプロセスは世界中で開発しているのが、TSMC・Samsung・Intelの3社しかない状況です。

2nmプロセスの先端開発ができる腕を持った半導体エンジニアは、どうしても日本国内で働きたいと思う人でなければ、他社に行くのが賢明な判断です。この環境を考えると、エンジニアをどう集めるのか?が一番の課題であり、一番困難な課題であると私は考えています。

まとめ

この記事では、半導体デバイスを作るのが難しい理由について解説しました。

ラピダスについての報道を読んでも、意外と半導体デバイスを作るのが「なぜ難しいのか?」についてちゃんと書かれたものは少ないように思います。

わからない部分や間違い・ご意見等がありましたら、お気軽にコメントくださいませ。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

あわせて読みたい
半導体業界への転職におすすめの転職サイト3選 みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、半導体業界に興味がある方や半導体業界への転職を考えている方向けに、半導体業界への転職...
あわせて読みたい
2000年には日本にDRAMメーカーは4社もあった~生き残った会社は無い現実~ みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 今回は、かつて日本にDRAMメーカーが4社あった頃の話について書いていきます。日本で最後のDRAMメーカー...
あわせて読みたい
キオクシアの2023年4-6月期の決算を解説~厳しい状況はまだ続く~ みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、日本の半導体メモリメーカーであるキオクシアの2023年4-6月期の決算について解説します。 ...

この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次