みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、半導体業界では半導体ウエハを作っている会社として知られている信越化学工業について解説していきます。
半導体業界では、半導体ウエハを作っているイメージが強い信越化学工業ですが、半導体ウエハ一本足ではなく他にも収益力の高い事業を持っている高収益な会社です。
信越化学工業の強みはこの3つです。
【信越化学工業の強み】
・驚異的な財務体質:製造業で自己資本比率80%超え
・高い利益率:営業利益率20%超え
・材料に特化してシェア1位を取っている
財務諸表を読むと、高い収益力と盤石な財務体質が見えてきます。それぞれについて、解説していきます。
財務諸表から財務体質の良さと高い収益力が見える
まずは、信越化学工業の財務諸表を見ていきます。
貸借対照表
2023年3月31日時点の貸借対照表を見ると、このようになっています。

驚異的な財務状況です。まずは、製造業にもかかわらず流動資産が非常に多いことです。
製造業は、製品を製造するための工場などの設備投資が大きいので、固定資産が大きくなりがちです。
しかし、信越化学工業の場合は、固定資産を大きく上回る流動資産を保有しています。
また、純資産の比率が驚異的です。自己資本比率を計算すると、85.1%でした。自己資本比率はかなり高いといえます。グラフにするとはっきりわかりますが、もはや借金をする必要がないくらい手元資金があることがわかります。
貸借対照表を細かく見ると、負債合計が7000億円程度なのに対して現預金が1.4兆円あるので、返そうと思えばいつでも借金を全額返済できるような財務体質です。実質無借金経営のような状況なんでしょうね。
貸借対照表を見るとわかりますが、信越化学工業は過去の利益剰余金をプールしていて、自社の資金を非常に持っている会社だということがいえます。
損益計算書
次に、損益計算書を見てきます。2022年4月1日から2023年3月31日までの年間の損益計算書です。

年間の売上高は、2.8兆円です。規模の大きい大企業であることがわかります。
売上総利益は、1.2兆円であり売上高比率でいうと、43.2%であることから製造業にしては利益率が高いことがよくわかります。
売上総利益から販管費を引いた営業利益は約1兆円です。売上高営業利益率で見ると、35.5%であり非常に収益力が高い会社であることがわかります。
借金が非常に少ない財務体質を持っていて、収益力が高いことを考えると、信越化学工業はお金持ちで儲けられる会社であることがよくわかります。
信越化学工業の事業分野
財務体質を見たので、次は信越化学工業の事業分野を解説していきます。
半導体業界の人から見ると、信越化学工業は半導体向けのウエハの会社というイメージがありますが、4つの事業分野を持っています。
【信越化学工業の事業分野】
・生活環境、基板材料
・電子材料
・機能材料
・加工、商事、技術サービス
生活環境・基板材料
生活環境・基板材料分野は、塩化ビニルや苛性ソーダの製造が主な事業です。
塩化ビニルと言われてもあまりピンとこないかもしれませんが、排水管に使われている灰色の材料が塩化ビニルです。
塩化ビニルは汎用製品なので、大量生産して安く供給できることが重要視されます。
信越化学工業は、アメリカにシンテックという子会社を持っており、世界の塩ビ生産のシェアNo1となっています。
このように、半導体ウエハ以外でも世界シェアNo1の事業を持っているのが、信越化学工業の強みです。
電子材料
電子材料分野は、半導体ウエハの製造が主力事業です。半導体業界の方はご存知だと思いますが、信越化学工業は半導体向けウエハの製造で世界シェア1位となっています。
また、半導体ウエハに限らず、半導体に関する材料も扱っています。例えば、半導体製造向けのレジストや、半導体向け封止材、希土類磁石なども扱っています。
電子材料分野の特徴は、半導体製造にかかわる材料分野を抑えているところです。
機能材料
機能材料分野は、シリコーン樹脂の製造が主力事業です。
シリコーン樹脂は、半導体向けのシリコンとは違います。ベースに使われているのはシリコンですが、シリコンを樹脂に使うことで他の樹脂とは違う性質を持たせています。
シリコーン樹脂は様々な用途がありますが、例えばお風呂場のシール材などに使われています。
機能材料分野は、シリコーン樹脂を中心とした樹脂材料を使った製品が特徴的です。
加工・商事・技術サービス
加工・商事・技術サービス分野は、ここまで紹介した3つの事業分野に入らない部分が、含まれています。
例えば、半導体デバイスを作るときに使われるFOUPなんかを手掛けています。FOUPは、半導体工場でウエハを入れておくために使う箱みたいなものです。
また、これだけ大きな会社でグローバル展開もしているので、輸出や輸入に関する仕事も多くあると考えられます。
塩化ビニル・半導体材料・シリコーン樹脂の3枚看板
半導体業界の人からすると、信越化学工業は半導体ウエハの会社のイメージが強いと思います。
ただ、信越化学工業全体では、3つの事業が看板です。
・塩化ビニル
・シリコンウエハ製造
・シリコーン樹脂
シリコンウエハの製造だけでも、世界シェア1位を取っており非常に強いですが、他の事業でも世界シェア1位を取っており、事業の柱が複数あるのが特徴的です。
信越化学工業という名前だけ見ると化学製品のメーカーのように感じてしまいがちですが、材料に特化して世界シェア1位を取っている会社です。
一般的な化学メーカーのように、エチレンプラントからスタートして石油製品を作っていくような会社ではないです。
材料に特化した1位を取る戦略
信越化学工業の財務と、事業内容について見てきました。
財務内容と事業内容を見てはっきりとわかるのがこの2つです。
・財務体質が強いうえに稼ぐ力を持っている
・自社が強い分野で圧倒的なシェアを取る
財務体質は非常によく、製造業としては驚異的な自己資本比率85.1%を達成しています。
言い換えると、ほとんど借金が無いので本業が好調であれば、利益を出し続けていくことができる構造を持っているということです。
また、信越化学工業の主力事業は、半導体ウエハにしても塩化ビニルにしても、世界シェアNo1を取っていることが特徴的です。自社が強い分野に徹底的に投資して、圧倒的なシェアを取ることを目指していることがよくわかります。
自社の強みである材料分野からはブレずに、強い分野に集中投資して勝てる事業にしていくというのは、信越化学工業の強いといえるでしょう。
半導体業界に興味がある方へ
ここまで、信越化学工業について解説してきました。半導体ウエハだけの会社ではないことは、よくおわかりいただけたかと思います。
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【半導体業界に転職したい人向けにおすすめの転職サイト3選】
・doda
・Kaguya
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転職サイトに登録することでどんな求人があるのか見ることができるようになるので、興味がある方は是非登録してみてくだださい。
まとめ
この記事では、半導体ウエハの製造で知られる信越化学工業について解説しました。
信越化学工業の強みはこの3つです。
【信越化学工業の強み】
・驚異的な財務体質:製造業で自己資本比率80%超え
・高い利益率:営業利益率20%超え
・材料に特化してシェア1位を取っている
財務体質が良く稼ぐ力を持っている、非常に強い会社です。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。



この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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