みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、半導体ウエハ専業メーカーであるSUMCOについて解説します。
SUMCOという社名なので、海外のメーカーのように思われるかもしれませんが、れっきとした日本のメーカーです。
SUMCOの特徴はこの2つです。
【SUMCOの特徴】
・半導体ウエハの専業メーカー
・製造業としては高い利益率
財務諸表から見るSUMCO
まずは、SUMCOの財務諸表を見ていきます。
このブログの企業解説は財務諸表から入ることが多いですが、これには理由があります。
技術的な優位性を持っているかや具体的にどんなビジネスモデルで稼いでいるのかは、財務諸表を見ただけではわかりません。しかし、利益率がどの程度かと、会社全体で見たときにどの程度資金に余裕があるかは、財務諸表を見ると一発でわかります。
会社の借金が多く借金の返済で手一杯の会社と、自己資金に余裕があり先行投資ができる会社を比べたときに、どちらの方が長期的な目線で投資ができるかを考えると、資金に余裕がある会社の方が長期的な目線で投資ができることは明らかです。
また、会社が持っている自己資金は過去の利益の積み上げでしか増えないので、これまで会社がどのくらい稼いできたかをはっきりと表しています。
この2点から、財務諸表を確認したうえで企業を見るようにしています。
貸借対照表
最初に見るのは貸借対照表です。今回の記事で出しているのは、2022/12/31時点のものです。

図を見て頂いたらわかるとおり、非常に借金が少ないことがわかります。
自己資本比率を計算すると、66.3%でした。半導体ウエハの競合メーカーである、信越化学工業の自己資本比率が85.1%と驚異的に高かったので見劣りしてしまいますが、製造業としては十分な割合だと思います。
借金自体が少なく、流動資産で借金を返そうとすれば返せる状況なので、非常に財務体質は良いといえます。
SUMCOの競合メーカーである信越化学工業については、こちらの記事で解説しているので興味がある方は読んでみてください。

損益計算書
次に、損益計算書についてみていきます。今回の記事では、2022/1/1~2022/12/31の1年間の損益計算書を見ていきます。

年間で4000億円程度売上があり、規模が大きい大企業であることがわかります。
売上総利益率は32.5%となっており、だいたい粗利が3割程度となっています。
信越化学工業の時もそうでしたが、販管費率が非常に低いのが特徴的です。(信越化学工業は7.7%でした。)
この理由としては、半導体ウエハメーカーなのでBtoBのビジネスをしていることが挙げられます。
BtoCのビジネスをしていると、どうしても顧客に製品を知ってもらうための広告費を投入しなければなりません。しかし、BtoBのビジネスだと、企業相手の取引なので広告宣伝費を削減できることが表れています。
(SUMCOがTV CMを打っているのは、大学生の就活前~就活の時期が多いです。おそらく、大学生の親御さんへの知名度UPが狙いでしょう。)
昔の話ですが、私自身就職活動をしたときにSUMCOの面接を受けたことがあります。(一次面接でばっちり落とされましたが。。。)その時に、面接会場にいらした人事担当の方が、「勤務地が地方なのと一般顧客への知名度が低いから、親御さんに反対されて内定を出しても辞退されることがあるんだよね」とおっしゃっていたのが印象的でした。
財務諸表やビジネスに関わらず、知名度が低いが故に内定辞退されることがあるんだなぁとつくづく感じた記憶があります。(大学生にもなって、親に反対されて内定辞退するのもどうなんだよって話もあると思いますがね。)
SUMCOの事業分野
SUMCOの事業分野は、半導体シリコンウエハのみです。
これは、ライバル企業である信越化学工業とは大きく違う特徴です。
半導体シリコンウエハと一言で言っても、色々な種類があるので(ウエハの大きさは表面処理の方法など、細かいことを言うと様々な種類があります。)
細かい製品に興味がある方は、SUMCOの製品紹介ページを見てみてください。シリコンウエハと言っても、色々種類があることに驚かされます。
半導体シリコンウエハは、基本的に半導体デバイスメーカーに対して売ることになります。
そうすると、業績は半導体デバイスメーカーの調子、つまり半導体業界の好調不況に左右されやすくなります。また、工場が日本にあるので、海外通貨と日本円の為替レートにも影響を受けます。(半導体デバイスメーカーは日本国内よりも海外の方が多いです。)
SUMCOは半導体シリコンウエハ専業メーカーなので、ウエハの製造自体に強みはありますが、半導体業界の浮き沈みに大きく影響を受けるのは間違いないでしょう。
沿革は少し複雑
今では、SUMCOという社名になっていますが、SUMCOの沿革は少し複雑です。
設立は、1937年の大阪特殊製鉄所だとされています。そこから紆余曲折があり、最終的には住友系のシリコンウエハ製造事業と三菱系のシリコンウエハ製造事業が統合して、2002年に三菱住友シリコン株式会社となります。
そこから、2005年に社名にSUMCOに変更して現在に至っています。
SUMCOという社名に変わってから約20年経つので、SUMCOの名前も認知されていると思いますが、単独での経営を続けている信越化学工業と比べると、SUMCOは寄り合い所帯で出発した形になります。
沿革を詳しく知りたい方は、SUMCOの公式ページを読んでみてください。
製造拠点
SUMCOは半導体シリコンウエハの専業メーカーですが、製造拠点が地方にあります。
本社は東京にありますが、九州の佐賀・長崎、山形の米沢、北海道の千歳、秋田に散らばっています。
SUMCOにかかわらず、製造業の工場は広大な土地を必要とするので、地方にあることがほとんどです。
私は九州の出身なので、特に抵抗はありませんが、関西や関東出身の学生さんから見ると、勤務地は地方都市になってしまうような印象を受けるかもしれないですね。ただ、地方都市だったとしても車を持っていれば、住んでしまえばそんなに変わらないような気はしますが。(個人的な印象ですが。)
半導体ウエハ専業メーカーの強み
SUMCOは、半導体シリコンウエハ専業メーカーですが、専業メーカーの強みとしては、自社の資源を全て半導体ウエハに集中できることです。
半導体産業自体、今後も成長していくと考えられるので半導体シリコンウエハの需要は長期的に考えると増え続けると考えられています。
半導体シリコンメーカーは、安易に生産を増やして価格が下がるのを嫌います。(シリコンウエハ専業メーカーの場合、ウエハの価格が下がることは、自社の利益が減ることに直結します。)ただ、長期的には需要が増加していると考えらえるので、設備投資のタイミングの見極めが重要になります。
半導体ウエハ専業メーカーなので、他部門の影響などを受けずに自社の設備投資を判断できるのは他社にない強みです。
一方、半導体シリコンウエハ専業メーカーなので、半導体業界の浮き沈みの影響を受けやすいのは弱みでしょう。
今後の成長性
SUMCOの今後の成長性に関して考えます。
SUMCOに関わらず、半導体産業は今後も成長していくことは確実なので、長期的にはシリコンウエハの需要は増えていきます。
半導体シリコンウエハを製造している会社はそれほど多くないので、半導体産業の成長がそのままSUMCOの成長につながると考えています。成長性としては十分あるといえます。
SUMCOは、信越化学工業についで半導体シリコンウエハの世界シェア2位なので、競争力も十分あるといえます。
半導体産業の成長性と、現状のシェアによる競争力を考えると、今後も成長が期待できる会社でしょう。
半導体業界に興味がある方向け
ここまで、半導体シリコンウエハ専業メーカーのSUMCOについて解説してきました。半導体シリコンウエハ専業メーカーですが、成長が見込めることはおわかりいただけたと思います。
半導体業界に興味がある方や、半導体業界に転職したいと思っている方向けに、おすすめの転職サイトを3つ紹介します。
【半導体業界に転職したい人向けにおすすめの転職サイト3選】
・doda
・Kaguya
・アカリク
doda
dodaはパーソルキャリア株式会社が運営している転職サイトです。
私自身もdodaを利用したことがあります。
もともと、紹介される求人の数が多いですが、メーカーの研究開発職の求人も非常に多いです。半導体業界も多数の求人があり、自分の希望する条件に合うものを探すことができます。
登録は無料でできるので、半導体業界の転職に興味がある方は登録してみてください。
Kaguya
Kaguyaは技術系エンジニア転職支援実績No.1の「メイテックネクスト社」が運営している転職サイトです。
メーカーのエンジニアに特化した転職サイトです。半導体業界にも多数の求人があり、自分の希望する条件に合うものを探すことができます。
登録は無料でできるので、半導体業界の転職に興味がある方は登録してみてください。
アカリク
アカリクは株式会社アカリクが運営している転職サイトです。
修士や博士などの大学院を卒業した方の転職に特化したサイトです。メーカーの研究開発職をされている方は、大学院卒の方が多いので、大学院卒の方に特におすすめです。
登録は無料でできるので、転職に興味がある方は登録してみてください。
半導体業界は稼げている会社であれば給与面も高めですし、今後の成長も見込めます。
転職サイトに登録することでどんな求人があるのか見ることができるようになるので、興味がある方は是非登録してみてくだださい。
まとめ
この記事では、半導体シリコンウエハ専業メーカーであるSUMCOについて解説しました。
私たちが何気なく使っているスマートフォンやPCのシリコン基板も、SUMCOや信越化学工業が作っていると考えると、少し身近に感じることができるのではないでしょうか。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。



この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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