半導体でよく使われるムーアの法則をわかりやすく解説。どういう法則なのか?~初心者向け半導体講座第6回~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体集積回路でよく言われる「ムーアの法則」について簡単かつわかりやすく解説していきます。

ムーアの法則は、一言で言うと「集積回路の複雑さは約2年で2倍のペースで伸びていく」ということです。
これだけ見ると、「そんなことがなぜ法則になるのか?」と感じると思います。

その理由は、ムーアの法則(と後に言われるようになった論文)が発表されたのが1965年であることを踏まえると、いかにすごいことなのかがわかってきます。

目次

ムーアの法則のもともとの論文

現代では、ムーアの法則と言ったときに、集積回路上のトランジスタの数が引き合いに出されることがよくあります。

ですが、ムーアの法則が出された時には、直接的に集積回路上のトランジスタの数について言及していたわけではありません。

そもそも、「ムーアの法則」と言われますが、「ムーア」というのは人の名前です。
発表当時は、フェアチャイルド社という半導体メーカーにいらした、ゴードン・ムーアさんが発表した論文の中に書かれたいた内容が、ムーアの法則と呼ばれています。

ムーアさんは、フェアチャイルド社から独立して今のIntelを創業された方です。

ムーアの法則と呼ばれていることの内容は、論文に書かれていたことを法則と呼んでいます。この論文が書かれたのは、1965年です。そして、論文の中で集積回路の複雑さが2年で2倍になるペースは、「1975年までは少なくとも続くだろう」と書いています。

現代でもムーアの法則が使われることがありますが、もともとは1965年に1975年までは少なくとも続くだろうと書かれているだけなんですよ。(現代に置き換えると、2023年に2033年までは続くだろうと書いているのと一緒です。)

そう考えると、10年先を予測して、予測が当たっていること自体はすごいと思いますが、ムーアさん本人も、数十年続くつもりで書いていないのではないかと、私は原著論文を読んで感じました。原著論文はこちらで読むことができます。

集積度が2年で2倍になることのすごさ

もう一つ取り上げたいのが、「集積回路の複雑さが2年で2倍のペースで伸びる」ことのすごさです。

例えば、2年で2倍になることが1回起こるだけでは、2年経って2倍になったというだけです。しかし、ムーアの法則では2年で2倍になるペースが少なくとも10年続くだろうと書かれいるわけです。

つまり、最初と比較して、2年後は2倍ですが、4年後は2倍の2倍なので一番最初の4倍になります。
6年後は、2倍の2倍の2倍なので、最初の8倍になります。

これを繰り返していくと、10年後には最初の32倍になっているわけです。10年で性能が32倍になるものは、なかなか無いのですごいことではないでしょうか。

(数学な嫌いな方はここは読み飛ばしていただいて構いません)
ムーアの法則をプロットすると、片対数グラフで直線に乗ります。1つのチップ上のトランジスタの数を縦軸に、年を横軸にとると直線に乗るわけです。つまり、時間の経過に対して指数関数的に性能が伸びているということになります。
(ここまで)

ムーアの法則を守ってきたIntel

ムーアの法則は、集積回路の複雑さが2年で2倍のペースで伸びることがあと10年は続くだろうと予測したものでした。

さて、実際に作られた集積回路の1チップ上のトランジスタの数を見てみましょう。

Wikipedia(ムーアの法則)から引用 (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87)

グラフを見ると、縦軸に1チップ当たりのトランジスタの数が、横軸に発売された年がプロットされています。

点を見るとだいたい直線に乗っていることがわかります。縦軸が対数表示になっているので、指数関数的に集積度が上がっていることを意味しています。

ムーアの法則が発表されたのは1965年でした。1975年までは少なくとも続くと言われていた法則が、2020年まで続いているわけです。なので、1970年から比べると、1チップ当たりのトランジスタの数は1000万倍以上になっています。

グラフをよく見ると、2005年くらいから集積度が上がるペースが鈍化していますが、鈍化したとはいえ性能向上を続けています。

ムーアの法則が2000年代まで続いたのは理由があります。このように、チップの集積度が高い半導体を作る会社で、先頭を走っていたのはIntelでした。Intelは、ムーアさんが創業した会社です。

つまり、ムーアの法則を守るようにIntelが研究開発をずっと続けてきたので、ムーアの法則が2000年代に入っても続いているわけです。

あまり実感がわかないと思うので、新幹線のスピードを例に考えてみます。
日本の東海道新幹線は、1964年に開業しました。開業時の最高速度は約200km/hでした。

仮に、東海道新幹線の最高速度が2年で2倍のペースで40年間伸び続けたらどうなるか考えてみます。(1965年から、2005年まで伸び続けたと仮定したらどうなるかという話です。)

2年で2倍を40年続けると最初の100万倍になります。(2n/2の指数計算をすればすぐ出てきます。)
200km/hが100万倍になると、2億km/hとなります。1時間あれば、地球一周は軽くできます。ほとんど瞬間移動しているようなもんですよね。

実際には、新幹線の速度が2年で2倍のペースで伸び続けることはありえないんです。ただ、新幹線の最高速度で例えると、ムーアの法則がいかにすごいことがわかっていただけると思います。

コンピュータの発展はムーアの法則に支えられている

最後に、ムーアの法則が私たちの生活にもたらしてくれている恩恵を考えてみます。

1チップ当たりの集積度が上がるという、ムーアの法則は半導体集積回路の性能を飛躍的に向上させています。半導体集積回路が使われているのは、私たちが普段使っているパソコンやスマホのCPUです。

大昔は、コンピュータと言えば、研究機関の中に大型の(専用の部屋が必要なくらいの大きさです)コンピュータを設置する必要がありました。しかし、半導体集積回路の性能向上によって、個人が家にコンピュータを持つことができるようになりました。(パーソナルコンピュータの略がパソコンですから、もともとコンピュータは”パーソナル”なものではなかったわけです。)

現代では、手のひらに入るサイズのスマートフォンにもCPUが入って、どこでも動画を見たりできるようになっています。現代のスマートフォンの方が、大昔に専用の部屋を作って設置されていたコンピュータより性能が良いです。

私たちが、スマホやパソコンを低価格で使えるようになっているのも、もとをたどるとムーアの法則のおかげです。
ムーアの法則なんて知らなくてもスマホは使えますが、スマホを使えているのもムーアの法則のおかげだと思うと、少しはありがたみを感じませんか。

まとめ

この記事では、半導体集積回路でよく言われる「ムーアの法則」について解説しました。

私たちの生活を便利にしてくれた、パソコンやスマホも、ムーアの法則のおかげだと思っていただけたら嬉しいです。

初心者向け半導体講座の第6回なので、他の回も読んでいただけると嬉しいです。
取り上げてほしい内容がありましたら、コメントをいただければ書きます。

わからない部分や間違い・ご意見等がありましたら、お気軽にコメントくださいませ。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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