みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、ソニーの半導体部門について解説していきます。
ソニーというと、日本の中でも非常に規模の大きな会社で、たくさんの部門を持っています。祖業である、エレクトロニクス部門を中心に、金融事業・ゲーム・音楽など数多くの部門を持っている会社です。
私の専門は半導体なので、ソニーの半導体部門に絞って今回は解説していきます。
ソニーの事業分野
ソニーと一言で言っても、多くの事業分野を持っています。大きく分けると、6つの事業分野に分かれます。
【ソニーの事業分野】
・ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)
・音楽
・映画
・エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)
・イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)
・金融
ぱっと見で何をやっているのかわかりやすいのは、音楽・映画・金融の3分野です。
ゲーム&ネットワークサービスは、プレイステーションを軸としたゲームとゲームに付帯する事業です。
エンタテインメント・テクノロジー&サービスは、テレビ・オーディオ・カメラ・モバイル端末などの、電子デバイスの事業です。電子デバイス関連の事業を、「エンタテイメント」と位置付けているのが、ソニーっぽいですね。
イメージング&センシング・ソリューションは、CMOSイメージセンサを軸した半導体部門です。
この記事ではソニーの半導体部門という意味で、イメージング&センシング・ソリューション部門について見ていきます。
こうやって、ソニーの事業部門を並べて見ると、エレクトロニクスが祖業でありながら、音楽・映画・金融まで手を広げている非常に大きな会社であることがよくわかります。
日本の電機メーカーで音楽関係に手を広げていたのは、大昔の東芝くらいな気がします。(2006年に撤退してしまったので、今ではソニーくらいでしょうか。)
ソニーの中の半導体部門の立ち位置
次に、ソニーの中でも半導体部門の立ち位置を見ていきます。立ち位置といっても、ソニー全体の売上高に占める割合と、利益に占める割合がどの程度なのかを見ていくだけです。
ソニー全体で見ると、2022年度の売上高は11.5兆円、営業利益は1.2兆円なので日本を代表する大企業といえるでしょう。ただ、全体の規模が大きいことと半導体部門の規模がどうかは別の問題です。
そこで、今回は2023/8/9発表の2023年4月から6月の1四半期の売上高と営業利益を、事業部門別にみてみます。
売上高比率はこのとおりです。

グラフで表すと一目でわかるんですが、ソニーは金融・ゲーム・音楽の占める割合が非常に高くなっています。祖業である、エンタテイメント部門は、売上の20%程度しか占めていません。
売上高比率と同時に重要なのが、全体の利益に占める各事業部門の比率です。グラフにするとこのようになりました。

利益の割合を見ると、金融とゲームは売上高比率と同程度ですが、音楽の占める割合が大きくなります。やはり、音楽事業というのは儲かるんでしょうね。利益という観点で見ると、ソニーは金融と音楽の会社だと言っても過言ではないでしょう。2事業だけで利益の約半分を稼ぎ出しています。こういう形の利益構成が、他の電機メーカーと大きく違う点ではないでしょうか。
そして、今回着目するイメージング部門は、ソニー全体の利益のうち、5%程度しか稼いでいないこともわかります。
ソニーは大きい会社だとは思っていましたが、利益という点では半導体事業はあまり貢献していないとも言えます。というか、他の部門がめちゃくちゃ稼いでいると言った方が正しいかもしれません。
売上高と利益のグラフから見てわかるとおり、ソニー全体の中では半導体事業は売上と利益に関しては、それほど大きくない部門なわけです。
ソニーの半導体部門の利益率
ソニー全体について、売上高と利益の観点からみてきました。ここからは、半導体部門であるイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)を見ていきます。
2023年4月から6月のイメージング&センシング・ソリューション部門の売上と利益を見ていきます。
1四半期のデータですが、売上高が2927億円、営業利益が127億円です。単純に営業利益率を考えると、4.3%になりました。製造業としては、まずまずの利益率なのではないでしょうか。
音楽や金融事業と違って、製造業の場合は必ず製造原価が掛かってくるので、原価が無い商売と比べると利益率は下がります。とはいえ、年間の売上高で考えると約1兆円になるような、半導体事業なので1つの単独の会社としても十分成立する規模です。
年間の売上高が1兆円に達するような半導体事業が、全体の中の10%程度の売上になってしまうソニーの規模感には驚きました。多角化経営で、利益率の高い事業をいくつも持っているソニーは恐るべしという感覚です。
ソニーの半導体部門の特徴
ソニーの半導体部門は、CMOSイメージセンサを作っています。
CMOSイメージセンサは簡単に言うと、受光部で光の情報を電気信号に変えて、電気信号をCMOS回路で処理して画像を撮るものです。詳しく知りたい方は、こちらの記事を読んでみてください。(semi-journalさんの記事が、比較的わかりやすかったです。)

CMOSイメージセンサは、素子を小さくすることができるので、画像の解像度を上げやすいので、現在カメラの撮像素子に多く使われています。スマホのカメラはだいたいCMOSイメージセンサが使われていますし、一眼レフのようなちゃんとしたカメラの撮像素子にも使われています。
ソニーの半導体部門も、かつてはロジック半導体を作っていました。(PS2の中に入っているロジック半導体は、ソニーと東芝が製造していたそうです。)
しかし、先端ロジック半導体の製造から撤退して、現在ではCMOSイメージセンサが主力製品となっています。
CMOSイメージセンサの市場を見ると、2022年のデータではソニーが1位で42%のシェアを持っています。2位がSamsungで19%のシェアを持っています。(ソースはEE Timesの記事です。)
ロジック半導体やメモリ半導体と比べて、イメージセンサに関してはソニーが非常に高いシェアを持っていることがわかります。また、Samsungよりも高いシェアを持っていることからも、シェア的に有利な立ち位置にいます。半導体デバイスを作っている日本の会社の中では、一番有利な立ち位置にいるのではないかと思います。
CMOSイメージセンサの市場で高いシェアを持っているため、ソニーの半導体部門は今でも生き残っているとも言えます。競合他社(特にSamsung)の追い上げを受けて、シェアが低下してしまうと、他社との価格競争に巻き込まれることになるので、利益率が下がってしまうリスクがあります。
現時点では、それほどシェアの低下は見えないですが、今後イメージセンサの低価格化が進んだ時に、どういう戦略で戦っていくのかによって、イメージセンサ部門の将来性は決まってくると思います。
半導体部門の拠点
ソニーの半導体部門ですが、ソニー本体で行っているわけではなく、いくつかの子会社で行っています。
ソニーグループが100%出資している、ソニーセミコンダクタソリューションズという子会社で研究開発を行っています。そして、ソニーセミコンダクタソリューションズが100%出資するソニーセミコンダクタマニュファクチャリングが実際の製造を行っているようです。
ソニーの半導体部門は九州に工場が多いのが有名です。
九州にある拠点を図にすると、このようになります。

九州だけで5拠点を構えていて、九州を中心に製造拠点を置いていることがよくわかります。
熊本拠点に隣接してJASMの工場も置かれる予定になっています。
ソニーの半導体部門は、九州以外にも拠点があります。

厚木拠点は、ソニーセミコンダクタソリューションズの拠点となっていて、研究開発を行っています。
九州に集中して拠点があるのに、山形と白石蔵王にも拠点があるのは不思議に思われるかもしれません。たしか、山形拠点は鶴岡市にあり、もともとはNECの鶴岡工場として建てられた拠点でしたが、NECがロジック半導体部門をルネサスに売却することになり、ルネサスの山形工場となりましたが、ルネサスが合理化で工場を閉鎖することになり、ソニーが買い取った形になっています。
白石蔵王拠点は、ソニーグループ内の半導体製造拠点をイメージセンサ部門が買い取って、現在に至るようです。
東浦拠点は、JDIの建屋および付帯設備を取得予定のようで、2024年4月に引き渡しが予定されています。
拠点を見ても、九州を中心として拠点を広げており、他の半導体工場が売却された場合は、買い取るような形で工場を広げているような戦略になっています。
今後の展望
最後に、ソニーの半導体部門の今後の展望を考えていきます。
他の製品も作ってはいますが、基本的にはCMOSイメージセンサが主力製品です。CMOSイメージセンサ市場は、今後も伸びていくことが期待できます。
カメラや、スマホのカメラは需要が伸び続けています。スマホのカメラなんかは、昔は1つしかついていませんでしたが、最近では3眼のカメラが当たり前になっています。これだけで、スマホの出荷台数が変わらなくても、イメージセンサの数は3倍になっています。
スマホで写真を撮ることが当たり前になっていることを考えると、スマホのカメラの高画質化を求める需要はある程度まで伸びていくことは間違いないでしょう。今の時代、手軽に写真を撮るために、わざわざデジカメを買う人はほとんどいないでしょうし。
また、産業用のイメージセンサの需要も伸びていくと考えられます。例えば、自動運転のためには、自動車の周囲の状況をセンシングするためのイメージセンサが大量に必要とされます。自動運転に限らず、工場の製造ラインの自動化という点で、画像認識の技術は今後も必要とされていくでしょう。
イメージセンサ自体の市場は広がり続けると考えられますが、ソニーが抱えるリスクとしては、イメージセンサの低価格化の波が広がることです。きれいな写真を撮ることには、高画質なハイエンド仕様のイメージセンサが求められます。こういう、ハイエンド市場にはソニー強いです。
一方、産業用のイメージセンサのような、必要な情報が取得できればいいような用途に関しては、必ずしも高画質なイメージセンサが必要とされるとは限りません。どちらかというと、必要なデータが取得できて安い物が求められます。
現状では、ソニーのイメージセンサのシェアが高く、競合他社との価格競争になっていないので、それほど問題ではないでしょう。ただ、競合他社の技術が追いついてきて、安くイメージセンサを作れるようになったときに、どの市場を取りにいくのかが、ソニーの選択になるでしょうし、価格競争をすることになると利益率は落ちるでしょうから、どの分野を取りにいくのかを明確化する必要があるのではないかと思います。
半導体業界に興味がある方向け
ここまで、ソニーの半導体部門ついて解説してきました。CMOSイメージセンサで世界トップシェアを持っている会社ですが、今後も成長が見込めることはおわかりいただけたと思います。
半導体業界に興味がある方や、半導体業界に転職したいと思っている方向けに、おすすめの転職サイトを3つ紹介します。
【半導体業界に転職したい人向けにおすすめの転職サイト3選】
・doda
・Kaguya
・アカリク
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dodaはパーソルキャリア株式会社が運営している転職サイトです。
私自身もdodaを利用したことがあります。
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半導体業界は稼げている会社であれば給与面も高めですし、今後の成長も見込めます。
転職サイトに登録することでどんな求人があるのか見ることができるようになるので、興味がある方は是非登録してみてくだださい。
まとめ
この記事では、ソニーの半導体部門について解説しました。
私たちが何気なく使っているスマホのカメラは、ほとんどCMOSイメージセンサが使われているので、身近な存在に思っていただけたら嬉しいです。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。



この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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