米中SSD対決の記事から読み取れるYMTCとWDの違い

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、米中SSD対決から読み取れるYMTCとWDの考え方の違いと題して、コンシューマー向けSSDでYMTCとWDの考え方の違いを、私の立場から考えてみたいと思っています。

この記事の着想は、Xで流れてきた「米中SSDの耐久対決、3カ月書き続けてついに決着。勝ったのは……」という記事です。

元記事は、PC Watchさんの2本立ての記事です。

安い中国製SSDってどう?米大手とガチンコ対決!
米中SSDの耐久対決、3カ月書き続けてついに決着。勝ったのは……

目次

元記事のコンセプト

まずは、元記事を書いてくださったPC Watchの編集部の方と、著者の平澤 寿康さんに感謝申し上げます。

なかなか、アイデアはあってもSSDの寿命を自分で調べてみようとはならないものですから、ありがたい限りです。

元記事のコンセプトとしては、「SSDが安くなったからアメリカ製(WD)と中国製(YMTC)の耐久性の差を見てみよう」ということのようです。

信頼性の結果だけ見ると、WDの勝ちとのことです。SSDの信頼性の観点から、現時点でWDが勝つことは想定通りの結果なので、少し違った目線で結果を見てみようと考えています。

NANDチップの仕様比較

SSDの中には、コントローラーとDRAMとNANDフラッシュのチップが入っていることが多いです。今回の比較で使われたSSDでは、WD製のものはDRAMキャッシュあり、YMTC製はDRAMキャッシュ無しのものでした。

それぞれの細かいスペックは、元記事を読んでください。

WD製のSSDに入っているNANDチップは、112層のBiCS5か162層のBiCS6だと考えられています。

一方、YMTC製のSSDに入っているNANDチップは、232層の製品だと考えられています。

WDは、NANDフラッシュのチップをキオクシアと協業して作っています。たしか、BiCS5はCNA構造でBiCS6はCUA構造だったはずです。どちらにしても、セルアレイと制御回路のCMOSを同じウエハに作りこんでいる製品です。

WD/キオクシアの最新世代であるBiCS8はCBA構造を取っていて、セルアレイと制御回路のCMOSが別々の基板に作られています。今回の比較に使われたSSDは、前の世代の構造を取っているということです。

YMTCのチップは、232層でXtackingを使っていると考えられます。YMTCはXtackingと呼んでいますが、セルアレイと制御回路のCMOSを別々のウエハに作って、貼り合わせる形で作られています。WD/キオクシアで言う、CBA構造を取っています。

NANDのチップだけ見ると、WDとYMTCで使われている世代が違うのは見て取れますが、実際にSSDとして使う時には、使われているチップの世代はあまり気にしないでしょう。(余程の人でない限り。)どちらかと言うと、SSD全体での書き込みおよび読み込みスピードの方が、はるかに重要です。

信頼性ではWDの勝利だが。。。

SSDでは、総書き込み容量の保証としてTBW(Total Bytes Written)が使われるようです。

WD製は600TBW、YMTC製は1800TBWの保証となっていたようです。

これだけ見ると、見かけの書き込み容量の保証値は、YMTCの方が大きいです。製品の実際の実力がどこにあるかは置いておいて、どこで保証する線を引くかというのは、メーカーの思想(と過去の経験)によるところが大きいでしょう。

要は、実力値と不良が出るラインに対して、どれだけマージンを持って保証のラインを引くかというのは、メーカーのチップの歩留まりや、過去の不良品の発生率で決まるんでしょう。

信頼性評価の内容は、10GiBのデータを書き込んでは消去することを延々に続けるという、実使用とはかけ離れた条件で行われています。(一般人が、このデータ量を書きこむことは、自分でデータサーバーを持っている人でなければ多分無いはず。)

とはいえ、信頼性を早く評価するには手っ取り早い方法で、面白いと思いました。24時間で100TB以上書き込みされているようで、SSDから見ると超ハードな使われ方に感じます。(データセンターとかだと、こういう使われ方もあるんだろうか?)

結果的に、YMTCのSSDは1550~1600TBの書き込みの時点で異常が発生したようで、保証値として出している1800TBWには及ばなかったようです。とはいえ、1000TBをSSDに書き込むことは、一般用途では基本的に無いでしょうから、十分といえば十分な性能に見えます。

一方、WDのSSDは保証値である600TBWの書き込みでは異常は発生せず、1550TB書き込み時点でSSDの健康状態が「注意」となり結局6000TBまで実験を続けても、書き込みにエラーは発生しなかったようです。

6000TBまで評価を続けられた筆者は、本当にすごいと思います。結果的にWDのSSDは、保証値の10倍まで書き込めるという結論のようです。

2社の結果を比較すると、WDの方が信頼性は高いと結論付けるのは正しい見方でしょう。ただ、一般向けに売られているSSDで今回のような過酷な使用条件になることはまず無いので、YMTCの232層のSSDでも使用には十分耐えうるだろうというのが私の見方です。

コンシューマー向けSSDで重視されるポイント

SSDの使われ方として、データセンターなど頻繁にデータの読み書きが行われる用途で使われる場合と、コンシューマー向けのようにそれほど高い頻度で読み書きはしないがデータの保存に使われる場合と、大きく分けて2つあります。

データセンターのように24時間365日データにアクセスがあり、かつ大容量の通信が必要となる用途であればSSDの信頼性は高いものが求められます。(自分がクラウド保存したデータが、いつの間にか消えていたというのはユーザーからすれば、クラウドサービス自体へのクレームに直結します。)

一方、個人がデータのストレージに使う場合は、データセンター向けのような高頻度かつ大容量のアクセスは基本的にありません。車載向け等であれば、信頼性が必要とされる場合もあるでしょうが、PCやスマホ向けであれば、壊れたら交換すればいいので、それほど高い信頼性は必要とされないはずです。(もちろん、すぐ壊れるようではだめですが。)

そうすると、一般消費者がSSDを選ぶときに着目するポイントは、2つになります。

・容量当たりの単価
・読み書き速度

SSDはストレージ用途として使われるので、容量当たりの単価が安いことが求められます。あとは、読み書き速度がそれなりに速いものを選ぶことになるでしょう。

SSDが容量当たりの単価と読み書き速度で選ばれる根本的な理由は、外部との通信規格が統一されているので、余程相性が悪い機器でなければ、どのメーカーの製品も使うことができることです。言ってしまえば、汎用製品なんですよね。

汎用製品になると、一定以上の性能を出せることが前提ですが、性能に各社で差がなければ最終的には価格競争に収束していきます。だからこそ、需要が急減するとNANDの価格が下がるわけです。

と言う意味では、YMTCは一般的な使用くらいの強度では、信頼性に問題が無いレベルのSSDを作ってきているというのが、元記事から読み取れるメッセージだと私は考えています。

また、NANDの価格が足元では上昇に転じつつあるようなので、大容量のSSDを買いたい方は、早めに買った方がいいかもしれません。半年後には、同じ容量の製品を買おうとしても、お値段が上がっている可能性は十分にあります。

個人的にはKioxia VS WDのSSD対決が見てみたい

さて、最後にSSD対決で私が見てみたいものを書いてこの記事を締めます。

WD VS YMTCのSSDの対決も面白かったんですが、YMTC製のSSDにはDRAMキャッシュがついていないので、少し不利なのかもしれないと思うところがありました。また、使っているNANDチップの性能と世代もおそらく違います。

そこで、WD製のSSDとキオクシア製のSSDでどちらもDRAMキャッシュありの製品を比較したら、面白いのではないかと思いました。2社は、使っているNANDのチップは協業しているので、同じものなはずです。(世代がずれていたら、ちょっと話は変わってきますが。)

同じNANDチップを使ったうえで、コントローラーの設計、DRAMの使い方、NANDチップの実装の方法が異なるSSDを比較することができます。つまり、WDとキオクシアのSSDを比較すると、NANDチップからSSDとして付加価値を付けるのは、どちらのメーカーの方が上手いのか?ということが、はっきりとわかるわけです。

コントローラーの設計などを含めて、どちらの会社の方が上手くSSDを作っているのかが見られるのではないかと思っています。

まとめ

この記事では、米中SSD対決から読み取れるYMTCとWDの考え方の違いと題して、コンシューマー向けSSDでYMTCとWDの考え方の違いを、私の立場から考えてみました。

信頼性の面から見ると、WDが勝ったもののYMTCも一般的な用途では十分使用に耐えうる製品を作っていることが、よくわかる結果でした。

YMTCが今後どんな方法でNANDフラッシュの技術開発を進めていくのかわかりませんが、一般向け製品については十分技術的にキャッチアップしているのではないかと感じました。データセンターのような、過酷な用途だと信頼性には課題があるのかもしれませんが、技術が追いつくのは時間の問題ではないかと、私は考えています。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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