キオクシアの2023年を振り返り2024年の展望を考える

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体メモリメーカーであるキオクシアの2023年をダイジェストで振り返り、2024年に起こりうる出来事から展望を考えていきます。

目次

2023年

WDとの経営統合報道

2023年、キオクシア関連で一番大きい出来事は、Western Digital(WD)との経営統合が破談になったことです。

WDとキオクシアの経営統合に関する報道は、ぽつぽつ出ていました。しかし、2023/10/13の日経新聞の報道で、キオクシアとWDが経営統合の方向性で最終調整していることが出てから、話が進んだように見えました。(日経新聞の報道は下記リンク先から読めます。)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC013W30R00C23A5000000/

しかし、キオクシアに間接出資しているSK Hynixが経営統合を認めず、最終的にはWDが経営統合に関する話し合いを打ち切り、WDのNAND部門をスピンオフすることになりました。

もともと、キオクシアとWDの合併は、2社のNANDフラッシュメモリのシェアを足すと30%近くになるので、中国の独禁法審査が通るかどうかが懸念されていましたが、独禁法審査以前に破談になりました。

さまざま報道がなされていましたが、WDがNAND部門のスピンオフを決めた以上(2024年の下半期の予定です)、しばらくは合併交渉は無いと考えていいでしょう。報道は様々ありましたが、結局はおじゃんになりましたというのが結論です。

WDがNAND部門のスピンオフを決定

次に大きいのは、キオクシアの協業相手であるWDがNAND部門のスピンオフを決定したことです。

キオクシアとWDの協業は、もともと東芝とSanDiskの協業が始まりでした。SanDiskがWDに買収され、東芝からメモリ部門が売却されてキオクシアになり、WDとキオクシアの協業のスキームがしばらく続いていましたが、WDのNAND部門のスピンオフで、キオクシアとWDのNAND部門の協業の形に変わります。

NANDフラッシュメモリ専業で、それほど企業規模が変わらない2社が協業するのは初めての形になります。スピンオフされたWDのNAND部門がどのような経営を行うのかはわかりませんが、NAND一本足になるため、経営の安定感は従来より欠けるのは間違いありません。

赤字続きの1年

キオクシアにとっては、2023年は赤字続きの1年だったといえるでしょう。また、2023年10-12月期の決算は出ていませんが、2023年7-9月期まで4四半期連続で赤字となっており、各四半期で1000億円近い赤字を出しているので2023年度が通期で赤字決算になるのは、ほぼ間違いないでしょう。

半導体メモリメーカー各社が赤字を出す(Samsungのメモリ部門でさえ)ほどの、メモリ不況のためキオクシアが赤字になるのは避けられない状況でした。

不幸中の幸いだったと考えられるのは、2023年はドル円相場が比較的円安で推移していたことです。だいたい、2023年は1ドル130円から150円程度のレンジで円相場が推移

不幸中の幸いだったと考えられるのは、2023年はドル円相場が比較的円安で推移していたことです。だいたい、2023年は1ドル130円から150円程度のレンジで円相場が推移していました。

半導体メモリは海外への出荷が多いため、ドル建てで製品を売って日本円で国内の経費を払うことになります。円相場が円高になると、ドル建ての売上を円換算すると、円安の時よりも円建ての額面が減るので、国内の支払いを行う原資が減ることになります。

為替相場はコントロールできないので結果論ですが、2023年は比較的円安基調に推移したので、円建ての額面が円高時よりも高めに推移したので、まだ良かったんだと思います。メモリ不況が、円高(1ドル100円とか?)の時に起こっていたらと思うと恐ろしく感じます。

大株主の東芝が上場廃止

2023年の出来事を考えるうえで欠かせないのが、キオクシアの大株主である東芝が上場廃止になったことです。

キオクシアの株主構成は複雑なので、ここで細かくは書きませんが東芝はキオクシアの株式の約40%を保有しています。売却時の経緯から、キオクシアの経営には関与していませんが、大株主であることには変わりありません。(キオクシアの株主構成については、こちらの記事で詳しく解説しています。)

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東芝が上場廃止になった理由は、モノ言う株主に振り回されて経営が立ち行かなくなったことです。上場していた株式を、ファンドがTOBする形で買い取って非上場化したわけです。

非上場化した東芝の株式は、書類上ファンド(JIC)が持っています。とはいえ、JICは東芝を非上場化するための資金を、出資の形で多くの会社から集めています。つまり、経営の意思決定は出資した会社の意向が重視されます。

東芝はキオクシアの大株主ですが、東芝自体の意思決定がどうなるのか不透明なのは、キオクシアから見ると不確定要素になるうるでしょう。

2024年

2023年の出来事を振り返ったので、ここからは2024年に想定されることと、期待を込めた未来を予想していきます。

NAND市況の回復に期待

2024年は、メモリ不況は底を打ったので、少しは市況が回復すると考えられます。DRAMはHBM関連で既に、各社業績が回復傾向ですが、NANDだけを見るとまだ市況が回復したとは言いがたい状況です。

Trendforceの予測から考えると、半導体メモリはメーカーが減産を続けているので、在庫が減少し価格が上昇に転じていると言われています。このまま、実需が伴った形で価格が上昇し供給が増加すれば、メモリ市況は回復に向かうでしょう。

2023年でメモリ市況は底を打ったので、ある程度時間はかかってもいいので、NAND市況が回復してくれるとキオクシアの業績も好転するはずです。

WDのNAND部門がスピンオフ

2024年の下半期に、WDがNAND部門をスピンオフすることは既に発表されています。

WDのNAND部門だけと協業する形になると、NANDのシェア全体を考えたときに、このような疑問が出てくると私は考えています。

・NAND専業で前工程を協業している2社がほとんど同じシェアなのに、2つの会社として存在する意味はあるのか?

日本の会社として、キオクシアが存在することには、私自身は意味があると思っています。しかし、シェア全体を見たときに、競合他社との競争に勝ち残っていこうとすると、2社が経営統合を含めた形で競争力を増す方向を考えるのが望ましいのではないかと思います。

スピンオフが完了するまでは、経営統合云々の話は無いでしょうが、スピンオフ後に似たような話が再燃する可能性はあるのではないかと考えています。

メガバンクからの借金の借り換え

2024年にキオクシアが直面する現実的な話として、メガバンクから借りた借金をどうするかという問題があります。

IPO目論見書に書かれてるんですが、東芝からの売却に関連して借りたお金の返済が2024/6/17が満期になっています。執筆日(2023/12/26)から、約半年後です。実際のところいくら返済しないといけないのかは、公表されていないので中の人と銀行しかわかりません。

とはいえ、現金で全額返済を迫られると、キオクシアが資金的に厳しいのは間違いないでしょう。最終的に、借金をどう扱うのかは銀行の判断次第ですが、返せないとわかっている相手に返済を迫るのは、会社を潰しにかかっているのと同じなので、おそらくやらないのではないかと思います。(逆に銀行にはしごを外されたら、かなり厳しい状況になります。)

現実的な解は、現在の借金を借り換える形で、返済期限を延ばすことになるでしょう。銀行が借り換え(再度の融資)を認めるかどうかを含めて、キオクシアが2024年で一番乗り越えないといけないのは、メガバンクからの借金の借り換えでしょう。ここを乗り切れないと崖っぷちですし、乗り切れればNAND市況回復を待つことができるようになります。

ドル円相場

メガバンクからの借金の借り換えと同時に、先が読めないのが円相場です。2023年末だと1ドル140円程度の円相場になっていますが、2023/11くらいから150円近くをさまよっていた円相場が、10円程度円高に振れています。

140円程度のドル円相場であればいいんですが、円相場は動くものですし、1ドル130円から120円程度まで円高に振れると、キオクシアは現状の為替相場で得られる円建ての売上が10%近く吹っ飛ぶことになります。

逆に言うと、NAND市況が回復傾向になりドルベースの売上が10%増えても、為替が10%円高に振れるだけで円建ての売上はキャンセルされてしまうことになります。

極端な円高に振れると、輸出が主力の会社は一般的に打撃を受けます。キオクシアの場合、円建てで借金をしているので円相場によって借金が増えることはありませんが、円建ての売上が減少するので、痛手であることは間違いありません。

過去に、DRAMメーカーだったエルピーダが倒産した時は、1ドル80円近くだったのを考えると、極端な円高は半導体メモリメーカーの売上の観点からすると厳しいのは間違いなさそうです。(エルピーダが倒産したのは、円高だけが原因ではありませんが。)

株主の描く出口戦略

最後に、2024年にキオクシアに期待したいのは、大株主であるベインキャピタル・東芝・間接出資しているSK Hynixが何とか出口戦略を描いてほしいということです。

2023年は、メモリ不況でNANDの市況も悪化して、決算としても厳しい状況が続いていました。メモリ不況の底は打ったので、時間はかかったとしても今後業績は好転していくことが予測できます。

株主構成を変えずに、外部からの資本注入が無い状況では、既存株主が損をしない出口戦略は再度IPOしかないのではないかと思います。メモリ市況は底を打ったということは、今後市況が好転するとともに、メモリの宿命ですが好況の先にいつかまたメモリ不況がやってくるでしょう。

現状維持を続けて、次にやってくるメモリ不況まで株主構成と資本状況が変わっていなければ、次の不況を乗り切るのは今回よりも厳しい状況に置かれる可能性は高いです。

そうならないためにも、何とか次に市況が好転したタイミングで、キオクシアの株式に対する出口戦略を描いて、キオクシアが自律的な経営ができるような状況になってほしいと期待しています。

まとめ

この記事では、半導体メモリメーカーであるキオクシアの2023年をダイジェストで振り返り、2024年に起こりうる出来事から展望を考えました。

厳しい状況はまだ続きますけど、メモリ不況の底は打ったので、今後時間をかけても市況が回復していくのを待つしかないところにいると思います。

先端ロジック半導体の研究開発を見ても、一度研究開発や生産への投資ができなくなると、二度とキャッチアップできないのが半導体産業なので、キオクシアにはなんとか踏みとどまってほしいという願いは持っています。

記事の中でわからないところや、誤っている点がありましたらコメントかお問い合わせフォームから連絡いただけると助かります。(過去にも、読者の方からの指摘を頂いて内容を修正したことがあります。)

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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