半導体の報道で目にする「〇〇nm世代向けの装置」という表現が気になる~装置を入れるだけでデバイスが作れるなら苦労しない~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体関連の報道で時々目にする「〇〇nm世代向けの装置」という表現が個人的に非常に引っかかるので、引っかかる理由を解説していきます。

記事を書こうと思ったきっかけは、President Onlineのある記事を読んだことです。

https://president.jp/articles/-/77647?page=2

本文中に、「SMICは、28ナノメートルの回路線幅を形成する装置を使って7ナノ製品を製造した。」と書いてあって、表現は間違ってないけれど、読者の誤解を生む可能性があるのではないか?と思ったわけです。その理由を、このあと説明していきます。

目次

〇〇nm世代向けの装置とは?

ロジック半導体のプロセスで、〇〇nmの数字を目にする機会はよくあります。先端品だと、2nmとか3nmとか、ロードマップだと1.4nmとか、とりあえず小さい数字になっていればより先端のプロセスを表します。

〇〇nmプロセスと一言で言っても、半導体デバイスを製造するプロセスは、非常に複雑で多くの工程が含まれます。工程と言っても、あまりイメージがわかないかもしれませんが、洗浄・リソグラフィー・エッチング・成膜・平坦化・熱処理等さまざまな工程が数百から数千工程行われて、半導体デバイスは作られます。

〇〇nm世代向けの装置と一言で言うと、ある世代の半導体デバイスを作るための製造装置全般を指しているんだと思われます。もしかすると、ある世代の工程の中でも特定の工程を指しているのかもしれません。とはいえ、〇〇nm世代向けの装置と言っても、どの工程の装置を指しているのかがはっきりとわからないわけです。

半導体製造装置は各工程ごとに作られる

半導体製造装置の目線から、〇〇nm世代向けの装置を考えてみます。半導体製造装置は、基本的に各工程ごとに専用の装置を使います。

例えば、洗浄であれば洗浄専用ですし、エッチングであればエッチング専用の装置があります。

リソグラフィの工程は特殊で、コーター・デベロッパー・露光機がそれぞれ別になっています。露光機は、半導体デバイス製造の中でも一番重要なので、装置自体も高価です。

各世代で寸法が一番小さい部分を露光して加工するのが難しいので、細い線幅が露光可能な露光機と、高性能なエッチング装置が使われます。(最近のロジック半導体だと、トランジスタにコンタクトを取る配線のピッチが一番狭いんじゃないかと思います。)

逆に言うと、加工する寸法が従来と同等以上の部分は、過去世代で使っていたプロセスや装置を流用することができるわけです。

そして、半導体製造装置は各工程の処理を行うために作られています。ということは、28nm世代を作るために買った装置であっても、より先の世代の加工に使うことは可能なわけです。(もちろん、許容される寸法が同等であればの話ですが。)

EUV露光装置があれば2nmプロセスはできるのか?

逆に、半導体製造装置さえあれば、半導体デバイスができるのか?というと、答えはNoです。

2nmプロセスを作るために必要だということで、EUV露光装置がよく取り上げられています。2nmプロセスで半導体デバイスを作るには、EUV露光装置があれば全て問題は解決するのかというと、そういうわけではありません。

EUV露光装置が使われるのは、全体の工程の中のごく一部です。ごく一部でも、必要とされる寸法が小さい場合EUV露光装置を使わないと作れないわけです。(正確に言うと、ごり押しすればEUVを使わない方法も無くはないかもしれませんが、ここでは詳しく触れません。)

一方で、EUV露光装置を使わない工程は残りのほとんどですが、デバイス製造のためには、各工程(少なくとも加工・露光・洗浄のようなすべての工程に対して)、処理内容(レシピ)を決めなければいけません。

レシピを決めるだけでは不十分ですが、少なくとも数百から数千の工程に対してウエハをどう処理するのかを1つ1つ全て決めなければいけないわけです。(もちろん、過去世代から流用できる部分は流用するんでしょうが、新規開発する工程があれば、その工程は新規で立ち上げないといけません。)

この時、1つ1つの工程に対して最適化を図ることは重要ですが、ウエハは1つの工程が終わったら次の工程の処理が行われるので、前後の工程で矛盾が無いようにしなければいけません。(本当は、前後だけではなく、ずっとあとの工程にも影響が出ないように考えなければいけません。)

つまり、半導体デバイスを作っているメーカーは、各世代のプロセスについて、製造ノウハウとして各工程のレシピを蓄積しています。過去の知見として得られたこのノウハウこそが、デバイスメーカーの宝になります。

各工程の製造レシピが無いと、半導体デバイス製造を行うのは困難です。また、半導体製造装置を工場に並べるだけでは半導体デバイスを作ることができないのは、製造レシピの蓄積(ノウハウ)が無いことに尽きます。

少し脱線しますが、日本で2nmプロセスを実現しようとしているラピダスは、過去の世代の経験が無い中、IBMの力を借りてはいますが、新規立ち上げを目指すという、「とんでもなく難しいこと」をやろうとしているわけです。

読者の誤解を招きかねない部分

最終的に、「SMICは、28ナノメートルの回路線幅を形成する装置を使って7ナノ製品を製造した。」という表現のどこが、誤解を招きかねないか書きます。

ポイントは2つあります。

28ナノメートルの回路線幅を形成する装置
7ナノ製品を製造した

1つ目は、「28ナノメートルの回路線幅を形成する装置」が何を意味するのか?ということです。

解釈は2通りあって、「28nm世代で使われる装置を使った」という解釈と、文字通り「28nmの線幅を作れる装置を使った」という解釈です。

前者の解釈であれば、当たり前といえば当たり前です。28nm世代はプレーナー型の最後くらいの世代なので、7nmプロセスでも使われているのは使われているでしょう。後者の解釈だと、金属配線の幅が28nmだとするとかなり細い配線に当たるので、当たり前だといえば当たり前です。

つまり、「28ナノメートルの回路線幅を形成する装置」という表現が、具体的に何を指しているのかよくわからないのが、誤解を招きかねないと感じた理由です。捉え方によっては、28nm世代の技術からいきなり7nm世代の技術にジャンプアップしたかのような印象を与えてしまう可能性もあります。

2つ目は、7ナノ製品って不思議な書き方だなぁという点です。

これは、大した話ではないんですが、7ナノ製品って表現はあんまり見ない気がします。「7nmプロセス」・「7nmプロセスで作られた製品」・「7nm世代」・「7nm品」といった書き方の方が自然です。

別に書き方が決まっているわけではないので良いんですけど、日本語だとあまり見ない表記だったので、少し違和感を持ちましたというわけです。

まとめ

この記事では、半導体関連の報道で時々目にする「〇〇nm世代向けの装置」という表現が個人的に非常に引っかかるので、引っかかる理由を解説しました。

うまく伝わっていないかもしれませんが、よくわからなかったらコメント等で教えてください。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (4件)

  • はじめまして、いつも楽しく拝読させていただいています。

    7ナノ世代の製品でも製造過程において、28ナノ世代の装置が使われるという認識であっていますか?

    • 久志本様
      コメントありがとうございます。東急三崎口です。
      この記事が、引用元の記事の表現が読者に誤解を招くのではないか?という考えのもとで書いたものなので、ご質問の件に対して明確な解を提示していない形になっていて申し訳ないです。
      「SMICが7nm品を製造した」というのは事実だと思います。他にも複数報道が出ているからです。
      一方で、7nm世代の製造に28nm世代の装置が使われたというのは、微妙な表現だと個人的には考えています。
      その理由は、7nm世代と言っても、ウエハ製造のプロセスで過去世代(28nmとか)から流用した工程があれば、その工程は過去世代の装置で対応可能です。
      しかし、7nm世代のキープロセスを、28nm世代の装置を使って処理したのかどうかは、正直わからないです。
      SMICがEUV露光装置を入れられない以上、露光機はArF液浸を使っていると思います。
      露光機がArF液浸を使っていることを以って、「28nm世代の装置を使って7nm世代の製品を作った」と言っても嘘ではないです。
      とはいえ、7nm世代だとFinFETなのでFinの加工とか、トランジスタに電極を取る配線の引出部などの寸法が28nmより小さくなるはずなので、
      28nm世代の装置をそのまま使って7nm世代の製品を作ったと書くのは、拡大解釈しすぎだと思っています。
      (SMICの製造プロセスや装置構成を知っていれば断言できるんですが、その部分は詳しく知らないのでお答えできないです。)
      判然としない回答で申し訳ないですが、答えになっているでしょうか。
      もし、意図を誤解していたら、指摘いただけると幸いです。
      今後ともよろしくお願いいたします。

      • 返信ありがとうございます。
        「この記事が、引用元の記事の表現が読者に誤解を招くのではないか?という考えのもと」の一言で理解できました!

        記事が読者に対して間違ったミスリードをするかもしれないということを言いたかったのですね。

        • コメントありがとうございます。東急三崎口です。
          おっしゃる通りです。
          半導体に詳しい人ならともかく、あまり知らない人に対してはミスリードなのではないか?と感じたのがきっかけです。
          今後ともよろしくお願いいたします。

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