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キオクシアに929億円の助成金が下りるらしい~助成金の申請資格を見たらとんだ茶番劇か?~

みなさんこんにちは。東急三崎口です。今回は、半導体関連の記事です。半導体関連の記事として、前回は半導体をまじめに専攻したいと思ったらどんな進路があるのかについて解説しました。今回は、キオクシアに929億円の助成金が下りることになった件について解説していきます。929億円の助成金が下りたことを報道している記事はたくさんありますが、助成金の申請資格まで踏み込んで議論している記事は見当たりませんでした。多分、半導体を専門にしていた人でないと助成金の申請資格を読んでも何を意味しているのか理解できないからだと思います。そこで、元半導体エンジニアの視点から今回の助成金について解説します。

キオクシアってそもそも何をやっている会社なの?

今日(2022/7/26)のニュースで、キオクシアに929億円の助成金が下りることが報道されていました。ソースはYahooニュースだとこちらです。キオクシアについてご存じない方も多いかと思います。キオクシアの正式名称はキオクシア株式会社で、アルファベットだとKIOXIAと書きます。何をやっている会社なのかというと、フラッシュメモリやSSDを作っている会社です。フラッシュメモリは、使ったことのある方が多いとおもいますが、USBに差して使う記憶装置です。SSDは、Solid State Driveの略で、ハードディスクの代わりにパソコンに使われることが多い記憶素子です。ハードディスクより価格は高いんですが、読み書きするスピードが速いので、データセンターのサーバーなんかに使われています。また、スマホの中にある記憶素子はほとんどフラッシュメモリが使われています。スマホの記憶素子が何から作られているかなんて、普段意識しないでしょうが 知らず知らずのうちに私たちの生活に必要不可欠なものになっています。「キオクシア」という名前に聞き覚えがないかもしれませんが、もともとは東芝の半導体部門でした。東芝の不正会計問題等が出てきたときに、売らざるを得なくなってフラッシュメモリ製造部門が分社化されて売却された会社です。東芝から売却されたので、社名を変更して今に至っています。社名がキオクシアに変更されたのが、2019/10/1なので名前が変わってから3年弱しかたっていないので聞いたことがない方も多いかもしれません。

助成金の枠組み

今回キオクシアへの助成金は国が直接出すのではなく、NEDO(正式名称は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)という国立研究開発法人です。この法人は、経済産業省が所管していて大学等の研究機関への補助金なども出しているところです。研究開発に対して補助金を出すのがNEDOの本来的な役割で、従来は製品の生産へ助成金を出すことはできませんでした。しかし、法改正が行われNEDOが一定の条件を満たしてNEDOに承認されれば製品の製造についても助成金が出せるようになったようです。(法律の専門家ではないので、法律の詳細はわかりません。)今回話題になった助成金の枠組みとしては、NEDOが設定した申請資格に基づいて希望する会社がNEDOに申請を出し、申請が認められれば助成金が出るという形になっています。つまり、会社側がいくら申請を出したかったとしても、申請資格に当てはまらければ助成金をもらう申請すらできないわけです。

申請対象の計画が狙いうちを示唆してる

というわけで、申請の対象となるのは半導体の中でもロジック半導体(LSIなどのことをまとめてロジック半導体といいます。)とメモリ半導体(フラッシュメモリ等の記憶素子のことを言っています。)の2つです。一応、申請資格が書いてあるNEDOのリンクを張っておきますが、これを読んで何を意味しているのか分かる方は少ないと思います。それぞれについて、申請資格がどうなっているかと事実上応募できる会社が限定されていることを解説します。

ロジック半導体

まず、ロジック半導体について解説します。主な条件として「メタルピッチが100nm以下のものの生産施設と整備及び生産」とあります。そもそも、メタルピッチってなんだよ?って話ですよね。ざっくりとしたイメージとしては、こんな感じです。

半導体の中に張られた金属配線は、絶縁膜と金属配線が交互に並んでいます。絶縁膜と金属配線の幅を足したものが、メタルピッチに当たります。つまり、メタルピッチが100nm以下ということは50nmの絶縁膜と50nmの金属配線を交互に並べるということになります。仮にメタルピッチが100nmだったとすると、1mmの幅の中に10000本金属配線を並べるくらいのスケールです。ちょっと、想像できないですよね。でも、実際に使われているような配線のピッチです。実は、メタルピッチ100nm以下の製造の下に追加で2つの条件が書かれています。

その2つの条件とは、「ゲート絶縁膜に比誘電率が7を超える材料を用いて生産すること」と「申請する事業者がFinFETを生産する技術水準を有すること」です。半導体に詳しい人でなければ何を言っているかわからないはずです。1つ目の、「ゲート絶縁膜に比誘電率が7を超える材料を用いて生産すること」というのは半導体屋さんがいうHigh-k絶縁膜というものです。High-k絶縁膜について詳しいことは書きませんが、絶縁膜にロジック半導体でもともと使われていたSiO2(二酸化ケイ素)よりも誘電率が高いものを使うことを指します。2つ目の「申請する事業者がFinFETを生産する技術水準を有すること」はかなり申請できる会社を限定する記述になっています。ここでは、FinFETがキーポイントになっていてこれを作れる会社はロジック半導体メーカーでは日本には無いはずです。とすると、必然的に海外の会社が日本に工場を建てるくらいしか方法が無いわけです。

メモリ半導体

次にメモリ半導体です。メモリ半導体では、2つの申請資格がありフラッシュメモリに関すると思われるのは「メモリセルの積層数が160以上のものの生産施設の整備および生産」があります。フラッシュメモリは、高層ビルのように高くメモリセルを積み上げていく技術開発が行われていて、その積層数が160以上のものの生産が申請資格になっています。実は、フラッシュメモリを作っているメーカーは大きいシェアを持っている会社が世界で5つあります。シェアの順に並べるとこのとおりです。

  • サムスン電子(韓国)
  • キオクシア(日本)
  • SKハイニックス(韓国)
  • ウエスタンデジタル(アメリカ)
  • マイクロン(アメリカ)
  • Intel(アメリカ)

このうち、Intelのフラッシュメモリ部門はSKハイニックスに売却される予定なので、実質的に5社ということになります。つまり、日本でフラッシュメモリを対象に助成金を出すとすればキオクシアが入ってくることは明らかです。サムスン電子とSKハイニックスは韓国の会社ですし、わざわざ人件費の高い日本に工場を作るメリットはありません。また、ウエスタンデジタルはキオクシアと連合を組んでおり設備投資を協力して行っています。このようにフラッシュメモリ製造メーカーの状況を考えると、キオクシアに助成金が下りるのは必然かもしれません。(他に申請できる会社が日本にないわけですからね。)

そもそも助成金を出す目的は?

ここで、考えたいのがそもそも助成金を出す目的です。申請資格のところに、ロジック半導体とメモリ半導体ともに「10年以上継続生産すること」と「需給がひっ迫した場合に増産に関する取り組みを行うこと等が求められます」とあります。要は、「助成金を出すから日本国内で継続的に生産してくれ」ということと「今後半導体が不足した場合政府が要請したら増産しろよ」という2つのメッセージが感じられます。もし、助成金を出すことでこの2つの要請が本当に実現できるのであれば税金を投入してでも助成金を出す価値があるかもしれません。

税金を1000億円投入して国民にメリットはあるの?

助成金の原資は税金なわけですから、助成金を出すことによって税金の負担者である国民にメリットが無い場合、本来あってはならないお金の使いかたです。おそらく政府は、昨年から起こっている半導体不足が生じたときに要請をすれば増産してくれる会社を作りたかったんでしょう。しかし、私は政府の想定は絵に描いた餅だと思っています。というのは、世界でこれだけ半導体不足と言われていて各社が増産する体制を整えていますが、それでも半導体不足は解消する気配はありません。これは、半導体産業は増産を決定してから実際に相当量の増産ができるまでに非常に長い時間がかかる産業だからです。工場を新規に建てる場合は、数年スパンで時間がかかります。また、半導体産業は高価な装置(数億円することはざら)を工場に並べてラインを作ることで、製品を作ることになります。そうすると、製造のために使う装置が高額なのでいかに装置の稼働率を上げるか?ということが利益に直結してきます。つまり、ふつうの半導体工場は24時間稼働しているんです。ちょっと考えてみてほしいんですが、すでに24時間で操業している工場に対して「増産しろ」と言っても、すでに時間は限界まで使っているので時間を伸ばす以外の方法でしか増産できないわけです。8時間操業の工場で増産しようとしたら、操業時間を伸ばすことができるかもしれませんが、半導体工場ではそれは不可能です。増産する方法として、時間を伸ばせないなら、製造する設備を増やしたり、新しく工場を建てたりすることが考えられますが、装置の納期も1週間でどうこうなるわけではありませんし、工場を建てる場合は年単位の時間がかかります。というわけで、助成金をもらっていようともらっていまいと半導体工場である限り劇的な増産は困難です。このことを考えると、増産要求をしても要求にあうほどの増産は期待できず、助成金の目的としてはかけた金額に対して得られるメリットが小さいので、割には合わないと思います。

まとめ

今回は、キオクシアに929億円の助成金が下りることになった件について解説しました。長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございます。記事の中でよくわからない点や、内容についてご指摘がありましたら、コメント欄かお問いあわせからご連絡いただければお返事できるようにいたします。それでは、今回はここまでです。次回の記事でお会いしましょう。

半導体

Posted by tokyu351