みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、半導体について学びたい方向けに、半導体を勉強するために向いている本を紹介します。
あくまでも半導体や半導体デバイスについて学びたい方向けなので、株式投資向けの紹介では無い点をご了承ください。
半導体について書かれた入門書の数々
半導体について書かれた入門書を書店で眺めると、10冊以上の本が並んでいます。Amazonで購入しようとすると、もっと数は増えるでしょう。
昨今、半導体に注目が集まっていますが、入門書として様々な本があるのは知っていました。ただ、入門書であるが故に、読者の方が本のレベルを知るのは困難です。
そこで、入門書をざっと眺めたうえで、書かれているレベルを比較してみようと思ったわけです。
結論から言うと、半導体デバイスについて書かれている本であれば、どの本を選んでもそんなに外れは無いです。
入門書の簡単な紹介
書店で半導体の入門書を見て見ると、ざっとこれだけ並んでいました。
今と未来がわかる半導体
よくわかる最新半導体の基本と仕組み
よくわかる最新半導体プロセスの基本と仕組み
よくわかる最新半導体製造装置の基本と仕組み
半導体が一番わかる
はかる×わかる半導体入門編
半導体工場のすべて
パワー半導体超入門
半導体業界の製造工程とビジネスがこれ一冊でわかる教科書
半導体のことが一冊でまるごとわかる
たくさんありますね。1冊ずつ簡単に紹介します。
今と未来がわかる半導体
今と未来がわかる半導体は、2024年出版の比較的新しい本です。著者は、半導体業界ドットコムのページを運営されているずーぼさんです。
広く浅く、半導体について解説されていて、入門書といった感じです。特にこだわりが無い方は、この本を買っておけば入門書としては十分だと思います。
よくわかる最新半導体の基本と仕組み
図解入門よくわかる最新半導体の基本と仕組み[第3版]は、2021年に出版された本で西久保靖彦さんが著者となっています。
秀和システムが出している、図解入門よくわかる〇〇シリーズの中の1冊です。
図解入門シリーズで、半導体プロセスや半導体製造装置などの本も出ているの、このシリーズ本で半導体について学びたい方にはおすすめです。
よくわかる最新半導体プロセスの基本と仕組み
図解入門 よくわかる半導体プロセスの基本と仕組み[第4版]は、2020年出版の本で佐藤淳一さんが著者です。
よくわかる〇〇シリーズの半導体プロセス編となっています。半導体プロセスにフォーカスしているので、プロセスを学びたい方にはおすすめです。デバイスを学びたい方は、別の本の方がいいと思います。
よくわかる最新半導体製造装置の基本と仕組み
図解入門よくわかる最新半導体製造装置の基本と仕組み[第3版]は、2019年出版の本で先ほど紹介した本の著者である佐藤淳一さんが書かれています。
よくわかる〇〇シリーズで、半導体製造装置にフォーカスしています。
半導体製造装置にフォーカスしているので、少なくとも半導体プロセスかデバイスについて別の本である程度知識が無いと読みにくいと感じました。〇〇シリーズなので、他の本を読んだあとに製造装置を学ぶ方にはおすすめです。
半導体が一番わかる
半導体が一番わかるは、2014年出版の本で内富直隆さんが書かれています。
特徴は、見開きでそれぞれの内容がまとめられている点です。内容が悪いわけでは無いんですが、10年前に出版されているので、最新情報の部分に関しては他の本の方がおすすめです。
10年前と言うと、2024年とは半導体業界の様相も違ったことを考えると、こだわりが無ければ新しい本を買った方が情報は新しいものが得られます。
はかる×わかる半導体入門編
はかる×わかる半導体 入門編 改訂版は、2020年出版の本で日経BPから出ています。
入門編と書かれていますが、半導体の入門書と言うよりは測定や信頼性評価についての入門書と言った方が正しいと思います。
測定や信頼性評価について学びたい方には、非常におすすめです。(この辺は、入門書が比較的少ないので。)
ゼロから半導体を学ぼうという方には、あまりおすすめはしません。(多分、途中から読めなくなると思います。)
半導体工場のすべて
半導体工場のすべては、2012年出版の本で菊地正典さんが著者です。
タイトル通り、半導体工場にフォーカスされた本なので、ゼロから学ぶ初学者には難しい部分が多いと思います。
内容自体は非常に良く書かれていて、半導体工場について学びたい方にはおすすめです。
パワー半導体超入門
60分でわかる! パワー半導体 超入門は、2024年出版の本で著者は半導体業界ドットコムとなっていますが、ずーぼさんが書かれています。
パワー半導体にフォーカスしているので、パワーについて学びたい方にはおすすめです。
完全に余談ですが、「60分でわかる」とタイトルに書いてありますが、私は60分では読めませんでした・・・
半導体のことが一冊でまるごとわかる
「半導体」のことが一冊でまるごとわかるは、2021年出版の本で井上伸雄さんと蔵本貴文さんの共著となっています。
少し回路寄りの内容な気はしましたが、半導体についての入門書となっています。
半導体業界の製造工程とビジネスがこれ一冊でわかる教科書
図解即戦力 半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書は、2022年出版の本でエレクトロニクス市場研究会によって書かれています。
タイトルの通り、業界のビジネスにフォーカスしているので、業界動向とか今後のトレンドについて書かれています。
半導体自体を勉強するには不向きです。業界トレンドを見るためであれば、良く書かれている本です。
印象としては、コンサル会社が半導体業界について詳しく書いた本といった感覚です。
どの本を選んでもそれほどハズレは無い
ここまで、半導体の入門書として書店で売られていた10冊を紹介しました。
基本的に、半導体を学びたい方向けの入門書として書かれている本であれば、どれを選んでもそれほど問題はありません。
言い換えると、半導体は入門書と専門書のレベルが違い過ぎるので、入門書はめちゃくちゃ難しいことは書いて無いです。かつ、数式も少ない場合が多いです。
著者の専門分野や、本で売り出したい部分によって、それぞれの本で色合いは少しずつ変わってきますが、どれを選んでも外れは無いです。
一つだけ注意しないといけないのは、半導体(特にデバイスの基本的な動作原理)を学びたいと思った時に、業界動向や半導体工場について書かれた本を買ってしまうと、買ったのに思っていた内容が書かれていないことなるということです。
この点だけ注意すれば、半導体の入門書は好き好きで買えばいいんじゃないかと感じます。
専門書は数ページ読み進めると内容が理解できなくなることがよくありますが、入門書はそれほど難しい本はありませんでした。
入門書を読んだあとどうすればいいのか
さて、ここからは入門書を買って読んでみたけど、そのあとどうすればいいのか?という話です。
実は、本屋の半導体工学の棚を見ながら、入門書は多いけれど、専門書との差の大きさを感じたわけです。
入門書を数冊読んだとしても、専門書の内容と差がありすぎて、いきなり専門書を読むのは結構難しいです。(正直入門書を何冊か読んだだけでは、背景知識の差がありすぎて専門書は読めないです。)
ではどうすればいいのかと考えた時に、入門書の次に読むべき本は「半導体デバイス」だという結論に至りました。
半導体デバイス: 基礎理論とプロセス技術(第2版)は2004年出版ですが、半導体デバイスを学ぶ上ではバイブルだとされている本です。英語版では第4版まで出ていますが、日本語訳されているのが2版なので、まずは2版の日本語版を読むのが無難です。
この本は厚いので、全部一度に読もうとすると大変ですが、一度全部読んでしまうと専門書を読む基礎知識は手に入ります。
これを読めば専門書が読めるようになるわけでは無いですが、最低限の基礎知識を身につけることができます。
半導体デバイスを一通り読んだら、あとは自分が必要な専門書を読んでいけば良いと思います。
ここから先は、分野によって本が分かれてくるので、自分にとって必要な分野で何を読むか決めればいいです。
分野といっても、結構色々あります。
半導体デバイス
半導体製造プロセス
半導体製造装置
半導体材料
回路設計
パッケージング
実装
不良解析
(有機半導体?)
等々
例えば、半導体デバイスで考えてみます。
S.N.Szeの半導体デバイスの次に読むものを考えて見ると、この2つがあります。
タウアニンは1冊、半導体デバイスの基礎は上中下の3冊組となっています。
アンダーソンの半導体デバイスの基礎は、「基礎」と書いてありますが入門書として読むのはきつすぎるのでご注意下さい。
専門書になると値段が上がりますが、こんなもんです。
物性物理についてもっと知識が必要な場合は、キッテルをちゃんと読む方向もあります。
量子力学をまじめに勉強しないといけない場合は、この辺を読むのも視野に入ってくるかもしれないですね。
方向性として、こんな本ありますよという紹介も兼ねているので色々並べましたが、ここまで必要な方はそれほどいらっしゃらないのではないかと思っています。
この辺までくると、本を読んで勉強するというよりは、情報を取る場所が論文や特許になってくるはずです。
半導体デバイスを例にしましたが、各分野で専門書があって、専門書の先は論文や特許で情報を取るようになる形は変わらないと思います。一つの例としてみて頂けたら幸いです。
おまけで、仕事でやってる人しか買わないであろう趣味本を紹介します。
大型書店だと売っている、産業タイムズ社が出している半導体工場ハンドブックです。毎年出されていて、1万円超えますけど、買う人は買うんじゃないでしょうか。
ULSIプロセス技術は、大学などの研究者が共著で出されいてる分厚い本です。定価で買うと76000円くらいします。
個人で買う方は少ないと思います。私は学生時代に大学の図書館に置いてあったので、必要なところだけ読みました。本当に必要な方は、近くの大学の図書館に蔵書があるか確認したうえで、必要な部分を(合法な範囲で)コピーすれば良いと思います。
半導体を学ぶのに飛び道具は無い
ここまで、半導体を学ぶ方向性と、おすすめの本を紹介しました。
はんどうたいは、入門書と専門書の差が大きいので、ちゃんと勉強しようとすると大変だと思われた方もいらっしゃると思います。
まじめな話、半導体デバイスを理解しようとすると、それなりの数学、電磁気学、量子力学をやらないといけない部分が多いです。(理解していなくても、会社の中の仕事としては出来てしまう面はありますが。)
そうであるが故に、ある程度理工系の知識や素養が無いと難しいです。高校から数学はほとんど触っていない方が、理解しようとすると、相当ハードルが高いことは事実です。
半導体を学ぶうえでは、先端まで一気に理解できる飛び道具は無くて、一つ一つのことを積み上げていかないといけないので、足が長い話になります。
まじめに勉強しようとすると、こんな方法がありますよという提案ですので、興味がある方は本を買って勉強してみてください。
まとめ
この記事では、半導体について学びたい方向けに、半導体を勉強するために向いている本を紹介しました。
初学者向けの本から、専門書・趣味本まで広く紹介しました。興味があれば、読んでみてください。
ちなみに、私も2024/5/15に新しく本を出しました。キオクシアについて書いたものですので、興味がある方は読んでみて下さい。(多分、既刊の出版物の中では一番詳しく書いていると思います。)
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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