みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、SK Hynixの2024年7-9月期決算について書いていきます。
決算情報はSK HynixのIRサイトに載っています。(英語ですが、面白いので是非読んでみてください。)
https://www.skhynix.com/ir/UI-FR-IR01
SK Hynixの2024年4-6月期の決算は、こちらの記事で解説しています。
売上と利益の推移
早速、売上と利益の推移をみていきます。
全社売上高
SK Hynixの全社売上高を図にすると、このようになります。
四半期売上高で見ると、完全にメモリ不況前を越えています。
メモリ不況の底だった、2023年1-3月期から6四半期連続の売上高増加となっており驚異的です。
もちろん、メモリ不況の時に、本当に底まで落ちているのが原因ではありますが、生成AI向けの需要を全面に取り込んだような形に見えます。
メモリ別売上高
次に、DRAM・NAND別の売上高を図にするとこのようになります。
SK Hynixは、売上高のメモリ別比率がDRAM:NANDで7:3くらいです。
売上高全体に対する寄与度はDRAMの方が大きいです。DRAMの売上高は、順調に伸びています。
少し気になるのが、NANDの売上高が先期比で見ると減少しているように見えることです。
SK Hynixはエンタープライズ向けSSDで強かったので、NANDもデータセンタ向け需要が伸びて売上高が伸びると想定していましたが、NAND全体で見ると下がっているようです。
11月上旬にかけて、メモリメーカー各社が決算発表に入りますが、NAND市況は注視していく必要がありそうです。
利益
最後に、利益を四半期ごとに図にするとこのようになります。
完全にメモリが儲かる時期の利益の出方です。
2023年1-3月期の、粗利でマイナスだったメモリ不況は何だったのかと思わされるような伸び方をしています。
売上高の伸びに伴って、営業利益の右肩上がりです。
2023年7-9月期から、4四半期連続で直線的に営業利益が伸びているのは驚異的です。
メモリメーカーは、メモリ不況から回復後業績が回復傾向にありますが、ここまで直線的に営業利益が伸びているのはSK Hynixだけなのではないかと感じます。
AI需要による、HBMの売り上げ増が寄与していることは間違いないでしょう。
貸借対照表
貸借対照表についても見ていきます。
2024/9/30時点の、貸借対照表はこのようになっています。
業績が回復しているので、順調に純資産が増えています。この時点での自己資本比率は、60.3%でした。
メモリ不況時の赤字で、SK Hynixは自己資本比率が若干落ちていましたが、60%台を回復しました。
メモリメーカーは、好不況の波が激しく、設備投資が先行するので、稼げるときに稼いでおくことの重要性を感じさせられます。
SK Hynixが保有する、キオクシア株式の評価損益は毎年12月期の決算で開示されるので、今期は特に記載されていません。2024年12月期の決算発表を待つことになります。
Hynixの今後の展望
ここでは、決算発表資料で書かれていることで、私が気になることを書いておきます。
・需要を牽引しているのはサーバー向け
・M15Xでの生産開始は2026年の予定
・2024年Q3にHBM3EとHBM3の出荷ビット量は逆転する
・2024年Q4にHBM3Eの12層スタック品を出荷予定
・1cノードの16GBDDR5を8月に開発した
5点が気になったところです。
決算発表資料から拾っていて、文字通りの意味合いなのでそれほど大きな驚きはありません。
DRAMの需要を牽引しているのは、HBM含めたサーバー向けの用途が大きく、モバイルとPCの需要が大きく伸びているわけではないことがわかります。
ちょっと気になるNANDの失速
さて、最後にNANDの売上高が伸びていないことが気になったの、少し書きます。
NANDの出荷ビット量の減少は、2024年は前年比10%中盤と書かれています。なので、今四半期のNANDの売上高は全四半期比で見ると減少しています。
SK Hynixは、Solidigmを持っているので、エンタープライズ向けのSSDで他社よりも稼ぎやすいと想定していたんですが、それでも売上高が減少しています。
他社の業績が出てから比較して見れば良い話ですが、NANDとしては一番高く売れるはずのエンタープライズ向けSSDが強いSK Hynixでさえ、前四半期比で売上高が減少しているということは、NAND市況は今後悪くなる可能性を大いに含んでいるように見えます。
NANDはDRAMと比べてベンダーが多いので、市況が落ち始めると手が付けられなくなりそうな気もします。
NANDの売上高の正確な数字を見ると、約4.9兆ウォンで前期が約5兆ウォンだったので微減といったところです。
ただ、DRAMの伸び方と比べると、横ばいから微減なだけで、市況が微妙に見えます。
個人的には、NAND市況が落ちるのはもう少し待ってほしいところですが、サーバー向け以外のPCやモバイル向けの需要はDRAMでもそれほど回復していないので、需要が落ちると価格が下落するのは避けられない方向性であることは確かです。
まとめ
この記事では、SK Hynixの2024年7-9月期の決算について解説しました。
SK Hynixは、AI向けの需要をDRAMでもNANDでも受けていて、おそらくメモリメーカーの中で一番活況にいると言えるでしょう。
今後もこれがずっと続くかは誰にもわかりませんが、現段階で一番伸びているメモリメーカーであることは間違いないと私は考えています。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメント