みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事は、長期連載の第3回として、Siの結合と孤立原子のエネルギーについて書いていきます。
本連載で扱っているのは、S.M.Sze著の半導体デバイス第2版の日本語訳verです。興味のある方は、下記リンク先から見てみてください。
前回の記事である、第2回はこちらです。

この記事のポイント
この記事で扱っているページおよび章は、下記のとおりです。
本記事で扱う内容と原著のぺージ
【内容】
・Siの結合
・孤立電子のエネルギー
【ページ】
・p25-28
原子の結合やエネルギーバンドを扱うので、理工系の大学生レベルの基礎知識が必要になってきます。
できるだけ、基礎知識が無くても読めるように情報を追加して書いていますが、原著が前提にしている背景知識は理工系の大学生レベルなのでご了承ください。
【ポイント】
・Siの結合手は4本
・原子は集まるとエネルギーバンドを作る
Siの結合
半導体デバイスには材料として、Siがよく使われます。
まずは、Siの結合について考えていきます。
化学結合を考えるときに、基礎になるのは周期表です。ここで、もう一度周期表を見てみましょう。

Siは14族にいます。14族は、一般的に結合手が4本だと言われています。
結合手が4本というのは、イメージ的にはSi原子同士が別のSi原子と4本ずつ結合を持っている形になります。
文字で書いても、イメージが難しいので図にするとこのようになります。青い球がSi原子で、黒い線が結合手だと思ってください。

この図の中だと、中心にあるSi原子だけ4つの結合手があるように見えますが、端にあるSi原子も別のSi原子とちゃんと4つの結合手を持っています。1つのSi原子に着目すると、このように見えますというだけです。
なぜこのようになるのか?ということは、厳密には電子軌道論を考えなければなりません。
ただ、Siの結晶構造を考えるうえでは、Siはダイヤモンド構造を取っており、4つの結合手を別のSi原子に対して持っていると考えれば問題ありません。
ここで、「~と考えれば問題ありません」と書いているのは、誤魔化しているのではなく、なぜなのか?を考えると、非常に長くなるので、この記事では書いていないだけです。(ちゃんと書くとかなり長くなるので、別の記事にしようと思っています。)
とにかく、Siの結合を考えたときのポイントは、Siには結合手が4本あり、それぞれの結合手は別のSi原子と全てつながっていることです。
孤立原子のエネルギー
Szeの原著では、Siの結合を説明したあとに、いきなり孤立原子のエネルギーが出てきます。(p26)
「孤立原子のエネルギーは、ボーアモデルを用いてこのように与えられる」と書かれていますが、唐突すぎますよね。笑
これは、本当に唐突で、次に出てくるエネルギーバンドの説明をするために、どうしても出さないといけなかったからだろうと推察します。
半導体を専攻するような学生さんは、Szeの教科書を読む前の段階で、量子力学等を勉強していると思うのでサッと読めると思うんですが、量子力学になじみがないと「?」しか浮かばないと思います。
この内容についてまじめに勉強したい方は、EMANの物理学の原子の構造のページを読んでみてください。
https://eman-physics.net/quantum/atom.html
このページも比較的わかりやすく書いてあるんですが、それでも量子力学(or微分方程式)をやっていないと、おそらく何が書いてあるかわからないと思います。
原著では、孤立原子のエネルギー準位を持ち出して何を説明しているのかというと、孤立原子のエネルギー準位は単独だけど、多くの原子が結合すると周期構造ができて、エネルギー準位じゃなくて、「エネルギーバンド」ができますよということが書かれています。
孤立原子のエネルギーに関しては、おそらくここしか出てきませんが、「エネルギーバンド」に関しては長い長いお付き合いになるので、まずは言葉だけ覚えておいた方が良いです。
孤立原子のエネルギーは、Siの結合と合わせて、電子軌道論と量子力学を使ってどうなるのかを別稿で書くので、この記事では簡単に書くのにとどめておきます。
ここで一番大事なのは、孤立原子のエネルギーについて深堀りすることではなく、「エネルギーバンド」という言葉を覚えておくことです。
原著だと、孤立電子のエネルギーを運動量で表して云々ということも書かれているんですが、電子のエネルギーに関しては次回に回します。
まとめ
この記事では、S.M.Szeを読み解く連載の第3回としてSiの結合と孤立原子のエネルギーについて書きました。
この連載では、S.M.Szeの内容について取り上げているので、わからない点や聞いてみたいことがあればQ&Aとして取り上げていきたいと思っています。コメント欄か、下記のお問い合わせフォームからご連絡いただければ、お返事いたします。
Q&Aは、本当に簡単なことでも構いません。例えば、
・半導体デバイスに、Siが使われている理由はなぜですか?
・3つ以上元素を組み合わせて化合物半導体をわざわざ作る理由は何?
など、内容は問いません。
ご意見・コメント等もお待ちしております。
前回の記事である、第2回はこちらです。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。





この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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