みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、キオクシアがIPO時に行った記者会見の内容について書いていきます。
日経さんから記事が出てたんですが、本当にたくさん情報があるのに、あんまり書かれていなくて不完全燃焼だったので自分で書いてみましたという記事です。
記者会見のノーカット版の動画は、日テレNEWSさんが上げてくださっています。
記者会見の流れ
記者会見の流れは、キオクシアのプレゼンテーション→質疑応答となっています。
記者会見ということもあり、想定問答集が手元にあるようで、それほど新規性のある内容はありませんでしたが、着目すべき部分をピックアップしてみていきます。
プレゼンの概要
NAND専業メーカーとして、NAND市場で注力する点は3つあり
・スマホ
・PC
・データセンタ
です。
2022年から2023年のメモリ不況の原因は、各社の過剰投資による供給過剰が招いたと解釈されているようです。
BiCS8から導入したCBA技術も推していました。
SCMの開発にも注力することは、プレゼンの段階から言及されていました。具体的には、MRAMとOCTRAMが出ていました。
かつ、WDとの協業による生産量のスケールメリットも強調されてましたね。
プレゼンの内容は、動画を2倍速で観て頂ければ15分くらいで聴けます。目新しい内容は特にありませんした。
SCMの開発について言及されていたのは想定外でしたが、まあそんなもんです。
質疑応答
さて、問題は質疑です。記者会見の映像を見るに、想定問答集が手元にあるようなので、新情報はありませんでした。
ただ、気になった部分をピックアップしています。株価の話・ラピダスとの連携・HBM絡みは面白味がないので、スキップします。
協業
質問:SK Hynixが株主だが、協業の方向性はどうなるのか?
回答としては、SK Hynixは直接の株主ではないので、お答えする立場にないという形でした。
ある意味、記者会見の場で答えられる内容としてはこういう形になるだろうなと思いますが、SK Hynixは2028年まで15%以上の株式を保有できないので、直近で何かがあることは無さそうだなという感覚になりました。
ただ、直接保有ではない形とはいえ、ベインキャピタルを通じての間接的な関与はありえる話なので、キオクシアが主体的にSK Hynixと協業する形が無いとするならば、他社との連携を行う際に一定の関与があると考えるのが自然な形だと感じます。
WDとのパートナーシップ(JV)の形も、続いていくだろうという話でした。ここは、変わらないというか、変えられないというのが実際のところでしょう。
上場の意義
質問:上場してもベインや東芝が大株主として残って、経営の体制が変わらないのであれば、上場した意義は?
資金調達と、上場による知名度の向上で優秀な人材を確保しやすくなるという形の答えでした。
当たり障りない回答ですね。結果的に、ベインも東芝も大株主として残っている状況は変わらないので、これまでの状況が続くのは既定路線でしょう。
もちろん、上場する以上少数株主への配慮も必要になるのは間違いありません。
合従連衡はあるのか
質問:昨年もWDとの合併の話もあったが、今後生き残っていくことを考えて他社との合併含めた話はあるのか?
WDとの合併についての話(2023年によく出てました)は、キオクシアやWDから正式に発表した話ではないので、この場での回答は差し控えるとの回答でした。
この質疑を聞いて、2023年10月前後に出ていた日経スクープの記事を思い出しました。
米WD、キオクシアとの統合交渉打ち切り 条件整わず
日本経済新聞 (有料会員限定記事) 2023/10/26配信
あの頃、統合の話がいっぱい出てたなぁなんて記憶がありますが、もう1年経ってるんでね。
一方で、現状合併等の話が進んでいるかということについては「全くないです」と言い切っているのは印象的でした。
穿った見方をすると、2023年のWDとの合併話は回答を差し控える(全否定はしない)けど、現状の合併話はIPO直後だしできるわけないから全否定するということなのかな?と私は感じました。
IPOした直後に、他社と合併するなんて、許されないと思うので、仮に何らかの話があったとしても、現状合併の話は全くありませんと言わざるを得ないとは思いますが。
財務状況
質問:現状財務状況は負債に寄った構成になっていて、レバレッジがかかっているが、今後どうやってデレバレッジしていくのか?また、財務の指標として今後目標にしていく数値はあるのか?
デットが多い状況であるのは現実。ただ、LBOで作られたものなので、事業の中で作られた負債ではない。
基本的な考え方は、営業キャッシュフローから設備投資を行って、獲得したキャッシュフローの中から借金を返していく形になる。
目標にする指標は、Net Debt/EBITDAであり、1倍程度まで改善していきたい(期限は定めていない)と考えているとのことでした。
財務制限条項の中でも、Debt/EBITDAは入っているので、1倍まで行ければ万々歳ですが、2を切るところまでは持っていかないとなかなか厳しそうなのは、有価証券報告書を読んだ時点で感じていたので、納得の感覚です。
個人的には、記者会見の中でDebt/EBITDAの指標や具体的な数値目標が出てきていると思わなかったので、意外でした。(記者会見で触れられてても、記事に書かれないのね・・・と思いました。Debt/EBITDAの数値を見てピンとくる人は、ほとんどいないでしょうから仕方ないですかね。)
NAND以外のビジネス
質問:プレゼン中でNAND以外のビジネスの話があったが、詳しく教えてほしい。
将来何を作るかは非常に重要であり、研究開発への投資もきっちり行っていく必要がある。そのうえで、お客様からNANDとDRAMの間のメモリがあいているので、このあたりで使えるメモリが無いかという話はある。そのあたりに、MRAMやOCTRAMが使えれば、NANDでもDRAMでもないメモリに使える可能性はあると考えている。
この質疑を聞いて、私自身勘違いしてたなぁと思ったのは、OCTRAMってSCM向けだったんだ・・・ということです。
個人的には、SCMのマーケットって無いだろうと思っていますが、どういうことなんでしょうね。真意を測りかねています。
お客さんの要望があるってのは良いことなんでしょうけど、需要があるならなぜoptaneは消えていったのか?という点には疑問が残り続けます。
OCTRAMは、技術的には非常に面白いと思っているので、今後どうなっていくのかウォッチしていきたいなと思いました。
株主還元への考え方
質問:今期から配当を出すのか。また配当性向等が決まっていれば教えてほしい。
財務体質の強化と開発への投資を優先したいので、今のところ配当は考えていないとの回答でした。
当然といえば当然の話で、巨額の研究開発費および設備投資が必要なメモリメーカーが、株主への配当を増やすのは、あまり筋ではなくて、設備投資を通して稼げるキャッシュフローを増やしていき、企業価値の向上に努めていくのが一番の株主還元ではないかと思いました。
質疑で面白かったのは、この章で取り上げた以上の内容です。
HBMとAIに無理矢理絡めた質問とか、トランプ大統領になったら影響が云々みたいな質問もありましたが、質疑は1人1つまでとされているので、もっと他に聞くことないのか?と思ってしまうところはありました。
かつ、現時点におけるキオクシアの担当記者の方がだいたいわかったので(記事中には質問された記者の方の社名と名前は載せてませんが動画には入っています。)、署名記事なんかは今後ウォッチしていきたいと思いました。
まとめ
この記事では、キオクシアがIPO時に行った記者会見の内容について簡単に書きました。
記者会見の内容として記事になっている部分以外にも、面白い部分はあったのではないかと思います。
記者会見を全部見る人の方が少数派だと思いますが、記事の中に書いていない部分にこそ、面白いネタが隠れているように個人的には感じました。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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