みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、2026年の大阪大学の入試問題の中で、ホール効果が扱われていたので簡単に書いていきます。
ホール効果については、昔々にこんな記事を書いているので興味がある方は読んでみてください。

問題自体は、下記リンク先にあります。(大問2の電磁気学の領域で、ホール効果が扱われていました。)
https://nyushi.sankei.com/nyushi/honshi/exam/26/ha1-41e.pdf
2025年は、さまざまな観点で半導体が話題に上がることが多かったように思います。
高校生の物理の範囲でも、電磁気学が扱われていて、電磁気学の一部分として半導体が扱われています。
高校物理の範囲で扱われる半導体としての特性はホール効果測定くらいなので、半導体を中心に問題を作るのは難しいと言えば難しいです。
解答速報が出るような大学で、1校くらい扱われないかなぁ?と思っていましたが、大阪大学が扱っていたので取り上げようと思った次第です。
解答速報が出ているところの物理の問題は全部見ましたが、大阪大学以外は半導体を前面に出した問題は出題されていなかったように思います。
問題の構成
一応入試問題にも著作権があるので、ダイレクトに図面と問題は載せませんが、ホール効果測定を問う基本的な問題となっています。
駿台と河合塾の分析では、標準~やや易くらいの難易度と評価されていました。
おそらく、受験する立場から考えると、ホール効果測定の問題で間違えると合格できないような気がします。
最初に、ホール効果についての問題があり、半導体の移動度を無理やり(高校物理の範囲内で)出させて、最後に地磁気をテーマにした応用問題が来るような流れです。
ホール効果測定の基本的な問題
基本的にホール効果測定は、高校物理の範囲だと、電流が流れている方向に電場の力を受けて動いている荷電粒子に垂直に磁場が印可されることでローレンツ力を受けた粒子が、電流の方向の磁場と垂直な方向にちょっとだけ動くような形で表現されます。
電流と垂直な方向に生じる、微小な電圧の極性と大きさを測ってやると半導体材料のキャリアの種類とキャリア密度がわかりますよという、問題を解くだけでいえば「簡単」な内容でした。
正直、ホール効果測定を高校物理の範囲内で学習して、原理的には理解したとしても「で、これ何に使うの?ローレンツ力が使える事例の一つに過ぎないじゃん。」と思うでしょう。
私自身も、高校生の頃はそう思っていました。研究室に入ってから、何百回とホール効果測定をする羽目になることも知らずに・・・
ホール効果測定の真の意味合いは、物性値が未知の半導体材料に対して、キャリアの極性とキャリア密度(そして、ホールバーを作製していれば抵抗率も)が測定できて、キャリア密度と抵抗率から移動度が出せることにあります。
移動度は材料で決まる値ですし、不純物濃度によっても変わりますが、マテリアルの基礎物性としては非常に重要です。
かつ、電場と磁場の相互作用として、ローレンツ力さえわかっていれば扱えるので、高校物理の範囲に入っているのでしょう。測定自体はシビアな場合もありますが、原理的には簡単です。
原理が簡単でありながら、非常に重要かつ有用な測定なので高校生でも扱われているんだと信じています。(これは半分願望かな?)
問題の中で気になったところ
さて、問題の中で気になったところがいくつかあったので、並べてみます。
問1
Siにドーパントを入れたらn型かp型かという、非常に簡単な問題なんですが、Alをドーパントとして入れると書いてあります。
高校物理の範囲だと、Alがドーパントで入ればp型だと答えるべきなんでしょう。(Alの対になっている不純物がPですし・・・)
ただ、SiウエハのドーパントでAlを入れたものを見たことがなく、何かしらの理由があってAlはp型ドーパントとしては普通は使われないのだろうと思っていました。
Bの方がAlより固溶限が高く、アクセプタ準位も浅いからだと思いますが、別の理由があったら識者の方はこっそり教えてくださるとうれしいです。
問3
問題としては普通なんですが、ホール効果測定をやっていた感覚から、出題者に聞いてみたいなと思ったことが一つだけあります。
これは、完全に難癖レベルです。問題文に「電流を流して十分に時間が経ったところ」とありますが、「十分な時間」ってどの程度のオーダーを想定してますかね?という話です。
というのは、ホール効果測定でホール電圧が生じるときには、電場と磁場の相互作用でローレンツ力を受けた荷電粒子の移動によって引き起こされた電圧が測定可能な状態にあるわけです。
この、電場と磁場の相互作用と、荷電粒子の移動を含めて、どのくらいの時間軸なんだろうか?という話になります。
昔々、実験していた時には1秒あれば十分にホール電圧は生じていました。ミリ秒単位で時定数を測定したことは無いですが、一瞬で電場と磁場の相互作用の結果が出るんだなぁと思った記憶があります。
問4
キャリア密度nを、他の物理量で求める問題です。これは、知っていれば書けるものでもあります。
この問題の正答率を劇的に落とそうとすると、物理量でnを表させたあと、仮定の物理量を提示してnの単位を指定して求めさせることが考えられます。
電流・磁場・長さの単位変換をうまくやってやらないと、オーダーが劇的にずれるので(単位変換で間違えると、平気で6桁ずれます)、電磁気で使う単位の意味合い知ってるよね?という意味合いで出しても面白いかもしれません。
問6-9
問6から問9は、移動度を無理やり出している形です。
外部からの電圧印可により、半導体中に一定の電場が形成されるものの、キャリアは一定の速度で移動する形に落ち着くことを示しています。
問題の形で出すのは難しいでしょうけど、前半でキャリア密度を出して、後半でキャリア密度・抵抗率・電気素量(q)があれば、移動度を出せますよという流れです。
ホール効果測定で、本当に測定しないといけないような物性が未知の材料の場合、キャリア密度と抵抗率を出して移動度を求めるので、自然といえば自然です。
問10-11
問10と11は、ホール素子で地磁気測定してみたよという話です。
個人的には、大阪で地磁気測定したら、図に出ているようなホール電圧が本当に出るんか?というのは疑問ですが、面白い応用問題だとは感じました。
やっぱり、実験データかそれに類するものを題材にして物理モデルから解析するというのは、高校物理で扱う機会は少ないです。
かつ、大阪大学がこんな問題を出題したということは、実験そのもの(もしくはそれに類する実験)を実際にやっていたことがある人が出題してるんでしょうね。
初見だとなんだこりゃ?と思うでしょうが(私自身も高校生の頃見たら、なんだこれ?と思ったでしょうし)、理工系で研究が中心の大学であれば自然に見えるはずです。
理工系で研究成果を出していかないといけないような大学では、
仮説の発想→実験→結果の分析→モデル化→仮説→・・・
というサイクルを、遅かれ早かれ回さないといけなくなります。
大学の入試問題は、高校の学習指導要領を逸脱しない範囲内で出題しないといけないので、出題者にはめられた枷は非常に大きいです。
それだけ制限が大きい入試問題で、わざわざ実験した結果を云々という問題を出すわけですから、こういう内容が嫌いなら理工系には入ってこない方がいいよという、出題者からのメッセージのようにも思えてしまいます。(多分そうだと思うんですけどね。)
高校生は実感がないので難しかったかもしれない
ホール効果測定に関する問題の部分だけ抜粋してみてみましたが、高校生からすると問題を解くことはできるでしょうが、出題背景を理解するのは少し難しかったのではないかと思いました。
キャリア密度と抵抗率から移動度が出てくることは、知識として知っていても、「なんでやるの?」という部分についての解が出てこないと思います。
シリコンの物性に関しては、過去に先人が調べ上げ尽くしていて、文献に山ほどデータがある状況です。
ですが、それは先人たちが基礎的な物性をはじめとして、物性を調べつくしてくださったからこそ、調べればデータが出てくる状態になっているわけです。
シリコンの物性調査では、ホール効果測定も行われているはずです。不純物濃度と移動度の関係性なんて、ホール効果測定で得られた結果の賜物でしょう。
そういった結果の上に、現在の半導体材料・デバイスが作られていることを考えると、ホール効果測定は現代の便利な時代を形作っている基礎の基礎とも言えなくはないかもしれません。
こんなことを高校生が感じ取るのは無理だと思いますが、「問題は基礎的で簡単じゃん」で終わるのではなく、深く見ていくとその先にはものすごい広い世界が広がっていることに気付ける一つの扉になっていればいいなと思います。
まとめ
この記事では、2026年の大阪大学の入試問題の中で、ホール効果が扱われていたので書きました。
所詮入試問題ですが、ホール効果測定自体の原理から、移動度を求めて、ホール素子で地磁気測定までもっていくあたり、面白かったのではないでしょうか。
半導体が取り上げられている時代なので、少し気になったので書いてみました。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。




この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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