SBIと合弁会社を作ると言われているPSMCについて解説

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、SBIグループと半導体製造の合弁会社を作ると報道されているPSMCについて解説します。
(実は、このブログで初めてリクエストを頂いて書いた記事です。)

目次

会社をざっくり解説

PSMCは、日本の方にはあまりなじみがない会社かもしれません。もともと、台湾のファウンドリーで1994年に設立された、比較的新しい会社です。

半導体のファウンドリーと言えばTSMCが有名ですが、TSMCではなくPSMCです。漢字だと、力晶半導体と書かれていることもあります。

ロジック半導体については、22~28nmより前の世代の製造ができることが持ち味です。

ファウンドリだとTSMCが先端半導体の製造を担っています。TSMCほど先端のプロセスを作ることはできませんが、それでも22nm程度(ぎりぎりプレーナー型のCMOSだと記憶しています)までの世代を作ることができます。

損益については、財務分析の部分で詳しく解説しますが、先端ロジック半導体の開発からは撤退しているので、利益としては安定しているように見えます。

財務の分析

今回、PSMCについて初めて取り上げるので簡単に財務分析をしておきます。損益計算書と貸借対照表をそれぞれ見ていきます。2023年分の監査済の書類がまだ出ていなかったので、少し古いですが2022年12月末日付の書類をベースに書いています。

損益計算書

まずは、2022年の損益計算書を見てみます。(図は公表データから抜粋して筆者作成)

公表データから、必要な部分を抜粋していますが、レガシー半導体のファウンドリというだけあって、利益は安定していそうです。

数字のデータは、台湾ドルベースで書かれています。2024/2/23時点での為替レートだと、1台湾ドル=4.7~4.8円くらいの相場でした。

先端ロジック半導体の研究開発からは撤退していますが、その分莫大な設備投資や研究開発費の負担を行わなくていいので、レガシー半導体を手頃な値段で作るビジネススタイルになっているのでしょう。

個人的には、粗利率が45%を超えているのは、レガシー半導体を作っているとはいえすごいなと感じました。

貸借対照表

次に、貸借対照表を見ていきます。2022/12/31時点でのデータです。図は、公表データから筆者が作成しています。

PSMCの貸借対照表は初めて観ましたが、比較的借金が少ないように見えます。

自己資本比率は、54.9%となっていました。先端開発への投資をしていない分、借金が少ないんだと思われます。堅実な経営なんだなという印象です。

SBIとの合弁会社にフォーカス

今回PSMCを取り上げることにしたきっかけの1つは、SBIグループとPSMCが合弁で日本に新工場を建てる報道がなされたことです。

JETROとSBIホールディングスの報道のリンク先をそれぞれ貼っておきます。

JETRO:https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/11/843b3d9d48573bee.html

SBIホールディングス:https://www.sbigroup.co.jp/news/2023/1031_14177.html

スキームとしては、PSMCとSBIホールディングスが合弁会社としてJSMCを設立し、日本政府から補助金を受給できることを条件に宮城県に工場を建設するというものです。

PSMCが台湾のファウンドリーなのに対して、SBIホールディングスは金融会社なので半導体を扱っていたことはありません。

工場が建設された場合は、28nm、40nm、55nmの半導体について月産4万枚程度の生産を目指すとのことです。(SBIホールディングスの公表資料より。)

ロジック半導体のプロセスノードとしては、レガシーと言われる世代に当たります。

概要としてはこんな感じなんですが、立地・想定される製品・新規に工場を建てるメリットはあるのかの3点を考えていきます。

立地

工場建設予定地の大まかな場所はこのようになっています。

宮城県の工業団地の一角に作られるようですが、工業団地をアップにするとこのようになっていました。

工業団地なので、様々な会社がありますが、トヨタ自動車東日本の工場が目立ちます。

この辺のどこかに、PSMCとSBIの合弁会社であるJSMCの工場が作られるんでしょう。

近く(といってもそれなりに離れてはいますが)には、ラピスセミコンダクターの宮城工場や東京エレクトロン宮城の工場もあります。

想定される製品

JSMCで製造される製品に関しては、SBIの公開情報でも明記されているとおり、車載半導体がターゲットになると考えられます。28nm、40nm、55nmの工場を新規で建てるということは、それ相応の需要があると推定しているんでしょう。

ただ、気になるのはレガシー世代の半導体を作る工場が増えている点です。

TSMCは熊本に建設しているJASMで製造するプロセスノードに40nmを追加しましたし、28nmプロセスであってもFinFETに入る前のギリギリの世代なので、生産できる会社って他にもあるんですよね。

例えば、台湾のファウンドリーであるUMCなんかも作れますし。(ちなみに、UMCは元富士通の三重工場を買収していて、日本国内に拠点を持っています。)

新規に工場を建てるメリットはあるのか

最後に、JSMCが新規に工場を建てるメリットがあるのかどうかを、私見ですが考えていきます。

プロセスノードの面から見ると、PSMCと合弁で工場を建てる限り22~28nmノードより微細なFinFETを製造する可能性は無くなります。また、JSMCの工場が建ったとしても、TSMCの熊本工場の40nmプロセスの方が稼働が早い可能性も十分あります。

自動車の自動運転化やEV化に伴って、どの程度車載半導体の使用量が増加するのかは、正確に推定することはできませんが、今より需要が増えるのはおそらく正しいと思われます。

一方で、自動車向けの車載半導体の需要が増えたとしても、供給量が需要を上回る勢いで増えると需給がバランスしなくなります。

半導体で需要と供給がバランスしなくなって、供給過多になると価格が暴落するのは、半導体メモリの市況をみて頂ければ明らかです。(ロジック半導体は、メモリのように汎用品ではないですが、それでも買い手がいなければ作ることができません。)

JSMCが新規で工場を建てるにあたって一番のリスクだと感じるのは、工場が建つ数年先にレガシー半導体の供給能力が過多にならないかという1点でしょう。(ほぼ確定した需要が存在するのであれば、話は別なんでしょうが。)

このリスクを考えた時に、車載半導体の需要が伸び続けるという見方であれば、工場を建てた方がプラスでしょうし、需要が伸びないと判断するのであれば、建てない方が良いんだと思います。

工場を建てる大前提として、経産省からの補助金が出るかどうかがあるので、需要予測含めて経産省が判断する可能性はあります。

まとめ

この記事では、PSMCについて解説しました。

今まで、あまりファウンドリーに関しては解説していませんでしたが、ロジック半導体のファウンドリーはメモリと違って利益を堅く出せるビジネスであることを強く感じました。(お客さんがいればという大前提はありますが。)

記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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