【企業解説】液晶と家電で有名なシャープについて解説~思いのほか財務が大変だ~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、電機メーカーであるシャープについて解説します。

シャープといえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。私は、白物家電と液晶のイメージでした。液晶ディスプレイも広義の半導体に入るので(ディスプレイは詳しくないんですが)、今回取り上げてみます。

液晶に強いイメージを持っていましたが、決算を見ると液晶が逆に足を引っ張っているように見えたのが驚きです。

目次

シャープの沿革

シャープの発祥は、1912年です。

のちにシャープペンシルと呼ばれる、早川式繰出鉛筆を売り出したり、1950年代には国産第一号のテレビを製造したりしています。

その後は、太陽電池や電卓・生活家電を手掛けています。1990年代には、液晶ビューカムを発売したり、その後は液晶テレビを発売したりしています。

一方、近年は業績が悪化し2016年には鴻海からの出資を受けています。

会社の歴史としては、100年を超えています。シャープと言えば、生活家電と液晶の印象がありましたが、ディスプレイ事業は苦戦しているようです。

事業構成

ここでは、2023年3月末時点でのシャープの事業構成を紹介します。

シャープは、大きく分けて5つの事業を持っています。

・スマートライフ
・8Kエコシステム
・ICT
・ディスプレイデバイス
・エレクトロニックデバイス

スマートライフ

スマートライフ事業は、冷蔵庫・エアコン・電子レンジなどの生活家電と太陽電池、蓄電池等の事業を行っています。

生活家電を売っているイメージは読者のみなさんもあると思うので、イメージ通りの事業です。

この事業に、太陽電池と蓄電池が含まれているのが少し不思議な感じがしますが、他に入れ込みようが無かったんでしょうね。

8Kエコシステム

8Kエコシステム事業は、名前からは何をやっているのかわかりにくいですが、テレビ・ブルーレイレコーダー・プリンター・POSシステム等を扱っている事業部です。

BtoB寄りの事業ですが、テレビとブルーレイレコーダーなどが含まれています。

液晶テレビが全盛の時代は、AQUOSなどで名をはせたシャープなので、生活家電の事業からテレビが独立しているのかもしれません。

ICT

ICT事業は、スマホ・パソコン・タブレット等の電子端末を扱っています。

スマホは、AQUOSシリーズを作っています。(私も長年使っていたiPhoneから、ついこの前乗り換えました。使ってみないと良さはわからないですが、バッテリーの持ちが段違いに良いです。)

あとはパソコンです。Dynabook株式会社として、Dynabookを作っています。Dynabookと聞くと、東芝のパソコンのイメージかもしれませんが、東芝はパソコン事業を売却してしまったので、今はシャープの子会社になっています。

ディスプレイデバイス

ディスプレイデバイス事業は、名前の通りでディスプレイ関連の事業を行っています。

シャープでディスプレイと言えば、やはり液晶です。大阪の堺に大規模な工場を持っています。

有機EL(OLED)も作っているようですが、どこまでシェアを持てているのかはわからないですね。

エレクトロニックデバイス

エレクトロニックデバイス事業は、カメラモジュール・CMOSイメージセンサ・半導体レーザー等を作っています。

一番、半導体デバイス寄りです。あんまり、CMOSイメージセンサを作っている印象はなかったんですが、事業として手掛けているようです。

カメラモジュールとか、半導体レーザーは、仮に私たちが使っている製品の中に入っていたとしても、どこのメーカーが作っているかわからないので、使っている印象が無いだけなんでしょう。

財務からシャープを見る

ざっと、シャープの事業構成を見てみました。ここからは、財務の面からシャープを見ていきます。

損益計算書

まずは、損益計算書です。2022/4/1から2023/3/31までの1年間の損益計算書はこのようになっていました。
(データは、シャープ発表の2023年3月期決算短信から引用。図は筆者作成。)

順番が前後しますが、一番目につくのは約2600億円の当期純損失でしょう。営業利益自体も赤字ですが、2023年3月期は特別損失を計上したことが響いています。(堺にあるディスプレイ工場関連です。)

売上高は、2.5兆円近くあり上場している大手電機メーカーという印象です。しかし、売上原価が2.2兆円かかっており、売上総利益(粗利)が13%しかありません。

粗利が3300億円しか無いのに、販管費で3500億円かかっているので、営業利益は200億円の赤字となっています。

そして、堺のディスプレイ工場に関する減損損失を特別損失として計上した結果、当期純利益は約2600億円の赤字となっています。

減損に関する特別損失は今期だけだとしても、そもそも営業利益が赤字なので経営的には苦しんでいる印象を受けます。

トータルで見ると、販管費はそう簡単に減らせないので、黒字転換するためには売上を増やすか原価を下げるかの2択しかなさそうです。

シャープは全社としては、営業赤字になっていますが、部門別に見ると少し印象が変わってきます。

部門別の売上と利益

先ほど見たのは、シャープ全社の損益計算書です。5つある部門別に売上を見ると、このようになっていました。

売上高として一番大きいのは、ディスプレイデバイスです。ディスプレイデバイス次には、8Kエコシステムが来ます。やはり、液晶のイメージがあるシャープなので、液晶や液晶関連技術のテレビなどが強いのでしょう。

売上高は図のとおりなんですが、部門別利益を見ると驚きます。部門別の利益を図にすると、このようになります。

一番売上高が高い、ディスプレイデバイス部門が一番赤字が大きいんです。ICTも、スマホ・パソコン・タブレットの売上が減速して赤字になっているんでしょうが、一番売上が大きい部門が一番赤字を出しているのが衝撃でした。

シャープのディスプレイ工場といえば堺工場が有名ですが、相当巨額の投資が行われたはずなので、操業のための固定費や設備投資の減価償却などが重くなっているのでしょう。

貸借対照表

シャープに関しては、ディスプレイ事業が一番売上が大きくて、一番赤字も大きいのが驚きでしたが、貸借対照表を見ると衝撃でした。

2023/3/31時点の貸借対照表を図にするとこのようになります。
(データは2023年3月期の決算短信から引用。図は筆者作成。)

見たときの一番のインパクトは、純資産の少なさです。自己資本比率を計算すると12.5%でした。

普段、散々キオクシアの自己資本比率は低いという書き方をしていますが、上場している製造業の会社でこれほど自己資本比率が低いBSの会社を見たのは初めてでした。(探せば他にもあると思いますが。)

規模が小さい会社であればわからなくもないですが、売上高が2.5兆円あるのにこれだけ自己資本比率が低いのは、明らかに経営がうまくできていないことを示しています。(過去の判断も含めて)

手元現金は2600億円程度あるようなので資金ショートになる可能性は低いですが、今後も経営を続けていくうえで、これだけ積みあがった借金をどうやって返していくかが大きな課題であることは間違いありません。

固定負債の内訳を見ると、長期借入金が5400億円程度あるので、年間500億円ずつ返しても11年かかります。

いかに借金を減らしながら、利益を出していけるのかがシャープの命運を分けると感じました。

今後の方向性

ここまで、シャープの財務を見てきました。

全体を通して見ると、抜きんでて強い製品が見当たらないのが印象です。生活家電は、それなりに利益を出しているようですが、シャープにしか作れない家電は無いでしょう。

ディスプレイはOLEDに関してはLGが強いですし(液晶はコモディティ化していて、値段では勝負できないです)、テレビも競合他社が多いです。

ICTに関しても、スマホはAppleやSamsungが競合メーカーになりますし、パソコンはLenovoやDELLが競合になります。

コモディティ化した製品を手掛けているので他社との差別化が難しく、シャープにしかできないことってあるのか?という印象を受けました。

ディスプレイがシャープの柱なんでしょうが、液晶はコモディティ化していますし、OLEDはLGが強いです。

生活家電やテレビはそれなりに売れているんでしょうが、国内市場のパイは確実に縮小傾向に向かいます。かつ、ディスプレイに関して技術力で他社にリードできているものがないとすると、今後の成長性はどこにあるんだろうかと思ってしまいました。(ここが「強い」という部分があれば、コメント等で教えていただけるとありがいたです。)

国内市場のパイが本格的に縮小する前に、次世代向けの事業を立ち上げないと、今後経営はさらに難しくなっていることが想像できます。加えて、相当額の借金があるので、借金をどう返していくかも課題になります。

今後明るい展望になるストーリーを考えても、上手く描けなかったというのが正直なところです。

まとめ

この記事では、電機メーカーであるシャープについて解説しました。

売上・利益の観点からは、一番売上が大きいのに一番赤字を出しているのがディスプレイ事業というのが驚きでした。また、貸借対照表の観点からは、自己資本比率が10%程度であることに衝撃を受けました。

私自身、シャープと言えば液晶と生活家電のイメージがありましたが、液晶をはじめとしたディスプレイが一番足を引っ張っていたのが、イメージと一番違ったところです。

記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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