みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、週刊ダイヤモンドの2024/4/15発売号で「半導体160社図鑑」として半導体が特集されていたので、気になるところだけピックアップして紹介します。
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概略
半導体160社図鑑は、個別記事のあとにおすすめの株式銘柄のランキングがいくつかの指標で並べられている構成になっています。
私個人としては、半導体の株式投資でどの銘柄が良いかということに関しては、一切言及していませんし、株価は買い手と売り手の合意した値段になっているだけだと考えているので、個別銘柄でどれが良いかというような話は書きません。
一方で、個別記事の中ではいくつか読みたいものがあったので買いました。
ピックアップ
半導体160社図鑑の中で、個別記事として読みたかったのはキオクシアの話です。
特に新情報が出ていたわけはないですが、ダイヤモンド社がどう書くのかをウォッチする意味で読みました。
他に面白かったのは、NVIDIA vs TSMC vs IntelのBS比較と、AI半導体の記事です。
個人的に、AI半導体という呼び方はあまりしっくりこないんですが、生成AIが半導体市場を牽引しているものあって、AI半導体という呼び方がなされるようになったのではないかと思います。
それぞれ、私の視点を書いていきます。
キオクシアの話
1つ目は、キオクシアを巡る話です。
内容に関しては、雑誌の記事を読んでいただきたいんですが、特段新情報はありませんでした。
強調されていたのは、キオクシアの社長がWDとの統合に意欲を見せている点です。
WDとの統合の話は、2023年に一度破談になりました。ただ、WDはNAND部門を2024年にスピンオフすることが決まっているので、再度統合を検討する場合にはWDからスピンオフされたNAND部門との統合になります。
WDからスピンオフされたNAND部門は、キオクシアと同じくNANDフラッシュメモリ専業メーカーになります。
2社の統合には色々ハードルがあり、紙面上でも指摘されていますが、キオクシアの間接株主でありライバルメーカーであるSK Hynix・早くイグジットしたいベインキャピタル・主導権を握りたいWD・独禁法審査の権限がある中国という三つ巴ならぬ四つ巴の状態です。
どう考えても素直に行かないのは明らかですが、正直なるようにしかならないと私は思っています。
2024年6月に返済期限を迎える融資の借り換えも、大きく影響するように見えます。
借り換えに関しては、なされるとも、なされないとも報道が無いので、様子見の状況です。
5月には2024年3月期の決算発表があるでしょうし、その辺まで待つしかないような気がします。
NVIDIA vs TSMC vs Intel
2つ目は、NVIDIA vs TSMC vs IntelのBS比較の記事です。
経済誌でBS出して3社を比較するのは、あんまり見たことが無かったので新鮮でした。面白かったです。
やはり、BSを見ると会社の稼ぎ方とか考え方がよく見えます。(私もこんな記事書いてみようかなぁと思ったことはあったので、ダイヤモンド社に先を越されてしまいました。残念。)
半導体業界では当たり前の話ですが、ファブレスのNVIDIA、ファウンドリのTSMC、IDMのIntelという括りで分けられます。
当然のことながら、ファブレスのNVIDIAが一番流動資産比率が高く、IDMのIntelが固定資産比率が一番高くなっています。
Intelは、ファウンドリ事業を進めようとしていますが、現時点では巨額の赤字が出ている状況です。
Intelほどの技術力を持った会社であっても、ファウンドリビジネスを始めることのハードルが高いことがうかがい知れる結果だと思います。
逆に言うと、TSMCは技術力はさることながら、ファウンドリをビジネスとして成立させられる力が非常に強いことが言えると思います。
ここで、一部の方は、Intelの代わりにIDM企業としてSamsungを持ち出すとどうなるのか?と思われたかもしれません。
Samsungは、半導体専業では無いのでBSが大きく、比較しにくいです。また、半導体に絞ってもメモリがメインなので、ちょっと毛色が違います。
また、ファブレスのNVIDIA、ファウンドリのTSMC、IDMのIntelを並べて、ファブレスの方が流動資産が多くて、IDMは固定資産がかさむというストーリーが作れなくなります。
Samsungは、めちゃくちゃ借金少ないので(自己資本比率が80%近いです)、この比較には入れなかったのではないかと推察しました。(もし違っていたら教えてください。)
AI半導体?
3つ目は、AI半導体の特集です。
この記事は、面白かったというよりは、AI向けのGPUを礼賛しすぎじゃなかろうか?という私の感想です。
もちろん、生成AI向け半導体としてGPUが高価にもかかわらず非常に売れていて、NVIDIAの一人勝ちの様相を呈しているのは事実ではあります。
ただ、AI向けの半導体が勝ち馬に見えるからといって、AI半導体のご利益にあずかれなかったら負け組という見方は少し違うんじゃないのかと思っているわけです。
というのは、NVIDIAって生成AIにGPUが使われる前からGPUを作っていた会社なわけです。
また、GPUに載っているHBMも、生成AIの需要を見越して開発が進められていたわけではありません。
GPUの性能向上のためにはHBMが必要で、ニッチな用途かもしれないけど、開発しましょうと言う形で当初の研究開発は進んでいたはずです。
しかし、生成AIという広帯域なメモリを必要とするソリューションが出てきたので、GPUが大量に必要になって、現在のAI向け半導体(主にGPU)の活況につながっているわけです。
もともと、GPUやHBMの開発時に、生成AIというソリューションが出てくることは想像していなかったでしょうから、結果的に需要が出てきたから売れているという解釈の方が正しいのではないかと思います。
今GPUがバカ売れしているのは、生成AIでGPUをたまたま必要としているからであるという視点が重要なのではないかと思います。
極端な話、生成AIの処理にGPU以上に効率の良いプロセッサが開発されたら、需要はそっちに流れるでしょうから。
おすすめの株式の部分はよく考えて読みましょう
最後に、おすすめの株式の部分です。
週刊ダイヤモンドは経済誌なので、ここが一番ウリの部分でしょう。
株式投資は自己責任なので、買いたい株があれば買えばいいと思っています。ただ、半導体に詳しくない方が、半導体株をおすすめする雑誌を読んで買う株を決めるのは、全くおすすめしません。
理由は簡単で、自分が株式を買おうとしている会社のビジネスや財務状況を見ずに株式を買うということは、ボラティリティとリスクを見込まずに買っていることになるからです。
適当に一回買ってみるのもいいんですが、株式市場に絶対はありません。
株を買いたい人が多いときは株価は上がりますし、売りたい人が多い時には株価は下がります。
極端な話、翌日の株価がどうなるかを正確にわかっていれば、上がる場合でも下がる場合でも利益を出すことはできます。
確実に上がる銘柄も無いですし、確実に下がる銘柄もありません。
というわけで、こういう半導体銘柄を紹介する記事を読んで、半導体業界の会社に興味を持つことは良いことだと思いますが、良く知らない会社がおすすめの銘柄になっていたので買うということはあまり良い選択では無いと思います。
株式投資は損しようが、大儲けしようが自己責任です。
まとめ
この記事では、「半導体160社図鑑」の中で気になる部分をピックアップしました。
読んでみると面白いので、まだ読まれていない方は是非購入してみてください。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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