みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、Micronの2024年3月-5月期の決算について解説します。このブログおなじみの、メモリメーカー決算解説のMicron編です。
決算内容
2024年3月-5月期のMicronの決算は、公式IRサイトに載っています。全部英語ですが、興味がある方は是非原本を読んでみてください。色々なことが書いてあります。
売上高と粗利の推移
今期を含めた、売上高と粗利の推移を図にするとこのようになりました。
売上高・粗利ともに、先期比増収となっています。
2022年前半から始まったメモリ不況は、2022年12月-2023年2月期を底として、現在は回復期に入ったといえます。
メモリ不況期前レベルの売上高まで回復していて、順調に市況が回復していることがわかります。
メモリ別売上高
Micronは、メモリ別売上高も公表しています。DRAMとNANDフラッシュメモリ別の売上高を図にすると、このようになりました。
だいたい、DRAMとNANDの売上高比は7:3となっています。(DRAMとNAND以外に、NORフラッシュ等も作っていますが、売上高比率では1%程度です。売上高の99%近くはDRAMとNANDで構成されています。)
今期は、DRAM・NANDともに、売上が先期より増えていて、半導体メモリ全体の市況が延びていることがわかります。
DRAMとNANDを比較すると、メモリ不況から先に脱出したのはDRAMでしたが、時間差でNANDも順調に回復しているといえます。
メモリ別に売上高の推移を見ると、売上高はどちらも回復してはいますが、メモリ不況前の水準までは戻っていないことがわかります。
利益の推移
続いて、利益についてみていきます。粗利・営業利益・当期純利益を図にすると、このようになりました。
今期は、四半期の当期純利益が約10億ドルとなっています。半導体メモリメーカーは、市況の上下の影響を受けやすいですが、稼げるときは稼げることをよく示しています。
四半期利益で10億ドルは、日本円換算(1ドル=160円で換算)だと1600億円になります。日本円換算して考えても、Micronが非常に規模の大きい会社であることがわかると思います。
不況期から回復中と言っても、当期純利益はメモリ不況前の水準まで回復していないので、半導体メモリの好況期がいかに稼げるのかがよくわかります。
貸借対照表
決算の最後に、貸借対照表を見てみます。
2024/5/30時点のMicronの貸借対照表を図にすると、このようになりました。
図からわかるとおり、比較的負債が少なめです。Micronは、メモリメーカーの中でも負債が少ない方です。
自己資本比率を計算すると、66.7%でした。先期が66.8%だったので、ほとんど変わっていません。
Micronの展望
今期のMicronの決算と決算発表関連資料から気になったところと、今後のトレンドについて考えていきます。
生成AI向け需要で飛躍
HBM
決算発表資料で一番紙面を割いて説明されていたのが、生成AI向けのHBMです。
生成AI向けのデータセンタへの投資で使われるGPU向けのHBMは、2024年分は売り切れで2025年も注文が埋まりつつあると書かれています。
HBMの開発競争は、3社しか参入していないDRAMマーケットの中でも熾烈です。
MicronはHBM3Eで、他社と比べて30%消費電力が低いことがウリのようです。HBMは、DRAMダイを積層しているので、従来のDRAMと比較してチップが高密度に集積されています。
チップの密度が上がると、放熱性能を確保するのが大変なので、他社と比べて消費電力が30%低いのは非常に魅力的なんだと思われます。
また、Micronは2025年までにHBMの市場シェアをHBM以外のDRAMレベルまで上げることをターゲットにしています。
現状では、HBMのシェアはSK Hynixが高いと言われていますが、HBM全体のマーケット拡大に合わせて自社のシェアを上げていく考えのようです。
DRAM
HBM以外のDRAMについても、データセンタ・Windows10のPC置き換え・AI搭載スマホなどによる需要が伸びると予測しています。
データセンタ・PC・スマホは、どれもDRAMやNANDが必要とされる機器なので、堅調に需要が伸びれば半導体メモリ市場が好況期を迎えるのはそれほどおかしくないと私は考えています。
HBMの需要は、生成AI向けに使われるGPUの特需に牽引されている部分が非常に大きいですが、モバイル機器やデータセンタの需要は従来からのDRAMの需要なので、ここが復活すると非常に大きいと思います。
個人的には、AI搭載のスマホがどれだけ普及するのかについて、懐疑的な考えを持っているところはありますが、それでもAI搭載のスマホも出てくるでしょうし、出てくれば必ず高性能なDRAMが必要とされると思います。
DRAMの技術開発については、EUVを適用した1γ品のパイロット生産中だと書かれていました。2025年中に生産を開始する目標のようです。
NAND
NANDに関しては、データセンタ向けSSDの需要が大きいようです。
Micronは232層の3D NANDフラッシュメモリの開発を発表しており(2023/8)、232層を適用したSSDを推しているようです。
3D NANDは、各社積層数競争になっていて、MicronとSK Hynixが積層数競争の先頭争いをしているので、今後もしばらくは積層数競争が続いていくのでしょう。
NANDもDRAMも好況期に入った
2022年から突入したメモリ不況で、DRAM・NANDともに売上が激減して大手メモリメーカー全社が赤字に転落したほどでした。
そこから、メモリ不況から先に回復したのは生成AI需要に牽引されたDRAMでした。
DRAMは、生成AI向けのHBMで需要が先に回復した一方、NANDはDRAMと比べて市況回復が遅れていました。
しかし、Micronの今期の決算発表から、DRAMだけではなくNANDもはっきりと回復が見えました。
DRAMもNANDも、需要が伸びて品薄な時ほど価格が高く、需要が減って在庫があふれている時は価格が下がります。
メモリ市況が回復して需要が伸びるフェーズでは、品薄なうえに値段が高いという、消費者から見ると苦しい状況になります。
半導体メモリは、生産のリードタイムが長く、増産を掛けてもすぐに供給量が増えるわけではないので、品薄で値段が上がって手が届きにくくなる時期がしばらく続くと考えられます。
消費者からするとメモリが買いにくくなりますが、メモリメーカーからすると稼ぎ時と言えます。
しばらくは、DRAMもNANDも価格が下がらない可能性があるので、メモリを買うなら早いうちがおすすめです。
Micronは、DRAMとNANDの両方を作っているので、生成AI特需の恩恵を受けていますし、しばらくの間は好況期が続くのではないかと私は考えています。
まとめ
この記事では、Micronの2024年3月-5月期の業績について解説しました。
DRAM・NANDは、好況期に入りメモリメーカーの稼ぎ時に入ったと言えます。今後どこまで伸びるのかが楽しみです。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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