みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、大手メディアに載る半導体の記事が今後どうなっていくんだろうか?ということについて書いていきます。
結論だけ先に書きますが、結局のところ「著者による」としか言えない状況が今後も続くと考えています。
書かれるテーマ
半導体関連の記事で書かれるテーマとして、最近多いものはJASM(TSMC熊本工場)、Rapidus、Intel、NVIDIA等が多いように感じます。
技術系の記事もありますが、記事にする以上ある程度読者に読まれないといけないので、読者が関心のあるテーマを選ぶことになりがちです。
それ自体は特に問題では無いんですが、「これは本当なの?」と思うような内容が書いてあることもあります。
半導体関連の記事で、本当なのかな?と思うような内容が大手メディアに載る背景を書き手とメディア側のそれぞれから考えていきます。
書き手の立場から考える
まずは、書き手の立場から考えてみます。
原稿料はそれほど高くない
第一に、半導体関連の記事を書くときの原稿料はそれほど高くないのが背景にあると考えられます。
例えば、取材・出張・執筆込みで1本100万円の原稿料がもらえたとしたら、深く取材したり、現地へ出張したり、執筆にも時間を取って書くことができるでしょう。
しかし、実際には1本100万円の原稿料が出る可能性は低いです。相場によりけりといったところでしょうが、1本100万円で月1本連載であれば、年間1200万円になります。
メディアの収入源は、広告収入・有料読者からの購読料が中心です。
書き手と、記事の内容によりけりですが、1本10-20万程度がいいところではないでしょうか。
書けるネタは限られている
次に、半導体ライターだとしても、自分が詳しい専門分野以外のネタを書くのは難しいことです。
半導体と一言で言っても、範囲は非常に広いので、全てを理解している人はほとんどいないでしょう。(0とは言いませんが、ほぼすべてを理解している人であれば、おそらくライターにはなっていないのではないかと思われます。)
例えば、半導体製造装置や加工プロセスに強い人であれば、製造装置についてや、プロセスについては詳しく書けるかもしれませんが、他の分野はどうしても弱くなります。
私自身自戒を込めて書いていますが、自分が書ける範囲は意外と狭いことを感じています。
つまり、記事を書いている著者の強い分野から外れると、読者から見て「?」が浮かぶ記事は生まれうるということを言いたいわけです。
広告収入で専業ライターになるのは困難
3つ目は、広告収入で専業ライターになるのは困難ですという話です。
例えば、大手メディアからの原稿料に頼らずに、自分で専業ライターとして書いて収入が得られれば、質の高い記事を書けるのではないか?という考えが浮かぶかもしれません。
しかし、半導体自体をテーマにした記事のPV数は、なかなか上がらないのが現実です。
多くの記事が出ているEE Timesでも、月間169万PV程度です。日経でも、前媒体を合算して月間2億PVだそうです。
だいたい、Google広告による広告収入は、PV数×0.2-0.3円程度です。
PV数が上がると、企業からの純広告が増えるのでもっと収益化しやすくなりますが、広告収入で生活できるレベルの収入のサイトを個人で運営していくのはかなり難しいです。
そうすると、結果的に大手メディアへの記事の寄稿という形になります。
メディアの立場から考える
今度は、記事を掲載するメディアの立場から考えてみます。
そもそも外部に委託している理由
大手メディアが記事を外部の専門家に委託している理由は、はっきりしていて、自社の記者で書けない内容を書いてもらうためです。
自社の記者が書ける内容であれば、自社の記者に書いてもらって掲載した方が良くて、わざわざ外部の専門家に書いてもらうということは、自社の記者で書けないような内容を書いてもらわないと意味がないわけです。
この構造を考えると、外部の専門家に書いてもらった記事を、掲載するメディアが編集できるのか?という話になります。
編集できるレベルなら自分で書ける
実際のところ、外部の専門家が書いた記事に対して、編集できるレベルの知識を持った人がいるのであれば、その人が記事を書けばいいわけです。
もちろん、読者に対してわかりやすい表現を選んだり、表現の修正などはあると思いますが、ストーリーの根本を買えるような編集は困難でしょう。
そうすると、掲載される内容は書き手の記事に大きく依存することになります。
結局のところ、外部の専門家がどの程度調査していて、書いている内容が事実に即していて、妥当な話であるのか?という点は、書き手の質で決まると言えます。
ある程度読まれないと意味がない
大手メディアに掲載する以上、ある程度の数の読者に読まれないと記事としての意味がない点もあります。
メディアの立ち位置上、読まれてなんぼの世界です。どれだけ綿密に取材を行って書いた記事でも、内容がマニアック過ぎて誰にも読まれない内容を載せるのは困難です。
例えば、経済誌に3D NANDで使われているドライエッチング装置の詳しい構造を記事にして載せたとしても、読んでくれる読者は限られるでしょう。
詳しい内容を書くのであれば、本に書けよという話になりますし、ある程度読者が関心を持っているであろうテーマを選んで書かざるを得ないのが実際のところでしょう。
実際このブログでも、技術にフォーカスして書いた記事はあまり読まれないことが多いです。
インターネット上の評価
私自身がwebでサイトを持っているので、インターネット上の評価の観点から考えてみます。
権威性の意味合いとは
大手メディアに掲載する記事である以上、内容についてある程度のお墨付きがあると読者が判断するのは自然なことです。
かつ、大手メディアに掲載された記事はGoogle検索でも割と上位表示されます。
Googleは、各検索ワードでwebページをどんな順番で表示するかを決めています。
Googleから上位表示する条件として評価する要素は4つあると言われています。
・E(Expertise):専門性
・E(Experience):経験
・A(Authoritativeness):権威性
・T(Trustworthiness):信頼性
よくEEATと略されます。これらが高いと、上位表示されて、多くの人が見る記事になります。
ただ、web上には無数の記事が存在します。全てのページの内容を、Googleが判断することはできないので、ドメインによる評価が行われていると言われています。
例えばの話ですが、私のブログは「trs-ch.blog」というドメインです。プレジデントオンラインのドメインは、「president.jp」です。
仮に、同じ内容が書かれていて、掲載されているドメインだけが違うとしたら、どちらのページが上位表示されるかというと、「president.jp」に載せた記事の方が絶対に上位表示されます。
大手メディアは、ドメインの力が強いので(法人でメディア運営しているので当たり前の話です)、かなり上位表示されやすいです。
これは、Googleから大手メディアのドメインに対して信頼がおかれていることの裏返しでもあるわけです。
一方で、大手メディアに載る記事は、上位表示されやすいことを考えると、掲載するメディア側が記事の内容をチェックしたうえで載せるという前提があります。
ただ、半導体の記事に関しては先ほど述べたように、外部の専門家が書いた記事に対して、専門家に準ずる知識をもって編集するのが困難であることを考えると、本当に権威性と信頼性が保たれているのだろうか?と感じます。
結果的に、記事の著者と内容を見たうえで、読者が判断するしかないという結論に至るわけです。
半導体についての記事は増えるだろう
半導体に関しては、NVIDIA・TSMCなどが特集される機会が前と比べて増えるようになりました。
読者の関心も10年前と比べれば高まっているでしょうから、今後も半導体に関する記事は増えていくと考えられます。
記事は増えていくと考えられますが、内容として本当に正しいのか?は別問題です。
特に、日本が出している補助金に関しては、JASMやRapidusについて批判的に書かれていることの方が多いです。
補助金の原資は税金なので、使途について議論はあってしかるべきだと思います。その反面、税金が原資である以上、叩いた方がPV数が伸びるという面もあります。
(基本的に、PV数は何かを叩く場合や、記事自体が叩かれるような時に伸びます。)
本来は、税金を原資にして進むプロジェクトをどう進めれば成功するのか?を考えた方が建設的な内容になりますが、なかなかそうはならないのが実情でしょう。
今後も増えていくであろう、半導体に関する記事は、読者が内容と著者を見たうえで、信じていいかどうかを判断していく必要が今以上に求められるでしょう。
読者が「本当なの?」と思うような内容の記事を読まないようになれば、PV数は自然に減っていくでしょうが、半導体に詳しい人の絶対数は少ないので、実現するのは難しそうに感じます。
まとめ
この記事では、大手メディアに載る半導体の記事が今後どうなっていくんだろうか?ということについて書きました。
今後も様々な記事がでることが予測されるので、読者の見る目が重要になってくると思います。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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