シリコンは時代遅れ!?いえ、シリコンは永遠ですが次世代半導体材料の候補を紹介

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体デバイス製造に広く使われているのはシリコンですが、シリコンに代わりうる材料として研究開発が進められている材料について簡単に紹介します。

目次

はじめに

そもそも、この記事を書こうと思ったきっかけは、ある方のYoutubeでTSMCが熊本に工場を建てていることを引き合いに出して、「シリコンは時代遅れ」で台湾は日本にゴミを押し付けたというような動画が出ていたことです。

その方いはく、次の世代はカーボン系の半導体だとおっしゃっていました。カーボン系の材料の研究が行われていることは事実なので完全に嘘ではないんですが、そこがまた誤解を招く表現です。

シリコンは時代遅れという主張をするのであれば、まずは手元のスマホ・タブレット・PCなどにどんな半導体が使われているのかを考えてみるべきです。

現代の電子機器は、基本的にシリコンをベースにした半導体デバイスが山のように使われています。iPhoneやiPadを使われている方であれば、TSMCで作られたチップや、キオクシアで作られたNANDフラッシュメモリが入っている可能性が高いです。

Apple製品に限らず、基本的にモバイルデバイスやPCには、シリコンをベースに作られた半導体デバイスが現代でも使われています。

半導体デバイスの進歩によって、私たちの便利な生活は支えられているわけです。シリコンを使っていますが、技術が古いわけでは無く、先端デバイスの研究開発は年々難易度を増しています。(ロジック半導体だけではなく、メモリもそうです。)

私たちの生活を支えている半導体デバイスのベースであるシリコンやシリコンをベースとした技術に対して、「シリコンは時代遅れ」と煽るのは、そもそも誤解に基づいていますし、研究開発をしているエンジニアに対して敬意が無い表現だと私は感じました。

この記事を読んでくださっている方は、半導体に詳しい方が多いと思うで、「シリコンが時代遅れではない」ことはご存じの方が多いと思います。とはいえ、半導体に詳しくない方もたくさんいらっしゃると思うで、そういう方に向けて「シリコンは時代遅れではない」ことをお伝えするのがこの記事の目的です。

シリコンが時代遅れではないことが伝われば、それだけで十分なんですが、シリコンに代わる材料として研究が行われている材料は色々あるので、代表的なものを紹介していきます。

用途として、ロジックやメモリ向けとパワー半導体向けは大きく違うので、2つに分けて解説します。

ロジック・メモリ向け

ロジック・メモリ向けと大きくくくりました。おおざっぱなくくりですが、電圧が比較的小さく、高速動作が求められるようなトランジスタ向けに研究されている材料です。

このようなトランジスタ向けの新材料を見る時のキーワードは、「移動度」です。

移動度について考え始めると非常に難しいので、簡単に考えます。移動度というのは、材料によってほぼ決まっているので、材料を変えることで上げることができます。

広く使われているシリコンよりも、高い移動度の材料を使いましょうという発想です。

Ge系

一番有力だと思われるのが、Ge(ゲルマニウム)を使った材料です。Ge単体でも良いですし、Siと混ぜてSiGeとか、Snと混ぜてGeSnとか、Si・Ge・Snを混ぜてSiGeSnなんてやつもあったりします。(SiSnは無くはないですが、格子定数差が大きいのであんまり見ないです。)

Geの特徴は、Siより電子・正孔の移動度が高いことです。Siの移動度(室温)は、電子が1350cm2/VS・正孔が480cm2/Vsと言われています。(キッテル上巻 第8版 日本語訳 p221の表3から引用)

同じ表の中で、Geの移動度は電子が3600cm2/Vs・正孔が1800cm2/Vsとなっています。

ここで重要なのが、GeはSiと比べて電子も正孔も移動度が高いことです。

あとから出てきますが、電子の移動度が非常に高い材料はあるんですが、正孔の移動度が高い材料は少ないです。

Geの課題としては、Siより高価であることと製造プロセス中の扱いが難しいことがあります。(この辺は、細かく書くと記事1本分くらいあるので、この記事ではこの程度にしています。)

とはいえ、Geは40nm世代くらいのトランジスタにSiGeの形で入っています。(一応)
全く使われていない材料というわけではありません。ただ、純粋なGeをチャネル材料した量産品は無いんじゃないかと思います。(もし量産品で出ていたら教えて下さい。)

化合物半導体系

次は、化合物半導体系です。化合物半導体は、GaAs(ガリウムヒ素)やInAs(インジウムヒ素)のような、化合物の形で半導体としての性質を表す物質のことを言います。

化合物なので、元素の組み合わせによって多種多様な種類があります。(要は、元素同士の組み合わせで半導体としての性質を示すものであれば、化合物半導体と呼ばれるわけです。)

さて、化合物半導体の中でも代表的なGaAsとInAsの移動度を見てみます。(この値もキッテル上巻 第8版 日本語訳のp221から引用しています。)

GaAs 電子:8000cm2/Vs、正孔:300cm2/Vs
InAs  電子:30000cm2/Vs、正孔:450cm2/Vs

Siの移動度と比較するとわかりやすいんですが、化合物半導体は電子の移動度は非常に高いですが、正孔の移動度が大したことない場合が多いです。

ここで重要なのが、化合物半導体は電子の移動度向上には非常に有効だということです。(InAsは電子に限ればSiの10倍以上の移動度を持っています。)

ただ、のちほど少し触れますがロジック半導体では、CMOSと呼ばれる回路が使われていて、電子移動度も正孔移動度も重要です。(電子だけ移動度が高ければいいというわけではありません。)

化合物半導体が、ロジック半導体に使われていない理由としては、材料自体が高価であることもありますが、電子と正孔の移動度が不釣り合いであることもあります。

電子の移動度が必要なNMOSに化合物半導体を、正孔の移動度が必要なPMOSにGeを使って、あとからNMOSとPMOSをくっつけるような研究もありますが、量産デバイスに応用するのはまだまだ先になりそうだと私は考えています。

ちょっと古いデータですが、産総研の研究結果も出ているので、興味がある方は読んでみてください。

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140609_2/pr20140609_2.html

C系

最後が、C(カーボン)系の新材料です。Cはちょっと特殊な材料なので、C系と一言で言ってもいくつか候補があります。

グラフェン

1つ目はグラフェンです。グラフェンは、あまりなじみが無い物質かもしれません。

グラファイト(黒鉛)にセロハンテープを貼ってはがすと、グラファイトの表面1層が剥離できて、このグラファイト表面1層のことをグラフェンと呼んでいます。(Wikiの解説はこちらです。)

グラフェンの特徴は、驚異的な移動度です。室温で100000cm2/Vsだと言われています。(移動度のデータはこちらの論文から引用しました。)

一方で、グラフェンは原子1層からなる物質であることや、発見されてからの歴史が浅いこともあって、わからないことも多いです。二次元的に炭素が分布しているので、他の材料と違って特殊です。

また、未来の半導体チャネル材料としての研究は進められていますが、グラフェンの弱点としてバンドギャップがそもそも存在しないことが挙げられます。

半導体として使われる材料は、必ずバンドギャップというものが存在しています。(特に、パワー半導体向けの材料では重視されています。)しかし、グラフェンだけの状態ではバンドギャップが存在しないので、半導体として使うことは困難です。

グラフェンにバンドギャップを作るための試みとして、グラフェンを2層重ねる方法やナノリボンを形成する方法などが研究されていますが、研究段階の話なので工場で量産するような段階には至っていないのが現状です。

もちろん、未来の半導体チャネル材料の候補ではありますが、まだまだ研究段階といえるでしょう。

カーボンナノチューブ(CNT)

2つ目はカーボンナノチューブ(CNT)です。CNTもグラフェン並みに特殊な材料です。

Cの同素体として知られています。(Cの同素体は、CNTの他にグラファイト・カーボンナノチューブ・フラーレンなどがあります。)

構造は、グラフェンを丸めて筒状にした形です。(Wikiの解説はこちらです。)

CNTの特徴は、グラフェンと同様に移動度が高いことです。例えば、直径1.5nmのCNTは室温での電子移動度が36000cm2/Vs出ると言われています。(CNTの電子移動度は、こちらの論文から引用しました。)

また、CNTは1次元構造(線のように扱えるという意味です)を取っているので、ナノワイヤとして使うことができます。

一方で、CNTの構造上、外乱の影響を受けやすい(体積に対して表面積が非常に広いので、空気中の酸素などの影響を受けやすいということ)です。

また、一般的なトランジスタのような反転層形成によるチャネル移動度変調は使えないので、トランジスタとして使うには特殊な方法が必要です。

CNTも、研究段階なので、実用化という面ではかなり先になると私は考えています。(実用化が先になるという表現は、研究に意味が無いというわけではなく、時間はかかるかもしれないけど、使える可能性のある材料だという意味です。)

ダイヤモンド

3つ目は、ダイヤモンドです。ダイヤモンドは、半導体なのか?と思われるかもしれませんが、バンドギャップを持っており、物性をコントロールできれば、半導体として使うことができます。

意外かもしれませんが、C系の材料の中では一番実用化に近いところにあるのがダイヤモンドです。

ダイヤモンドの特徴は、広いバンドギャップと高い熱伝導率です。パワーデバイス向けにも研究されていますが、究極の半導体としてロジック用途にも展開できないわけではありません。

移動度は、電子が2200cm2/Vsで正孔が1600cm2/Vsだそうです。(ダイヤモンドの移動度は、こちらの論文から引用しました。)

移動度の値に関しては、グラフェンやCNTほど高くはありません。しかし、電子と正孔ともにそれなりに値をもっており、Siより高いのが魅力です。

また、ダイヤモンド特有の強みは、熱伝導率が高いことです。ダイヤモンドは、Cが共有結合した構造を取っており、他の物質と比べて熱伝導率が高くなっています。(Siの10倍以上あります。)

ロジック半導体では、集積度が上がるにつれて、消費電力が増加することで、発生した熱をどう逃がすのか?というのが問題になります。チップ内に発生した熱は、Si等を介して外部へ放出する必要があります。

Siより10倍以上高い熱伝導率は、チップから熱を逃がすという観点では非常に魅力的です。(熱伝導率も物質によって決まっています。)

一方で、ダイヤモンドにも課題はあります。1つ目は、N型の低抵抗層を作るのが困難なことです。2つ目は、高品質な結晶を作る方法が確立していないことです。

ダイヤモンドでMOSFET動作を確認する試みは行われています。パワー半導体向けですが、産総研の研究結果も出ているので興味がある方は見てみてください。

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160822/pr20160822.html

CMOS動作にはNMOSとPMOSが必要

ロジック・メモリ向けの最後として、CMOS動作にはNMOSもPMOSも必要であることの意味合いを書いておきます。

ここまで、新材料として考えられる候補を個別に見てきました。新材料の候補は色々ありますが、ロジック回路で使われているCMOS動作のためには、1つの材料(基板)を使うことを前提にすると、電子移動度も正孔移動度もそれなりの値がないと実現することは難しくなります。

半導体製造プロセスは、1つの基板(ウエハがよく使われます)上に、NMOSとPMOSを隣接した形で高密度に形成する必要があります。そうすると、基板に使う材料として電子移動度と正孔移動度の両方をそれなりに持つ材料が理想的です。

そういう意味では、純粋なGeやGe系の材料を使うのが一番現実的な方向性です。

研究段階では、別々のウエハ上に作った素子を1枚の基板上に集積してCMOS動作が可能なことを確認している例もあります。研究としては、非常に意味があることだと思います。

一方で、実デバイスの量産を考えた場合には、NMOSとPMOSを別々のウエハに作って、あとから隣接した場所に置いてCMOSを形成するのは現実的ではありません。数も密度もすさまじいので、実現するのはかなり厳しいです。

化合物半導体やグラフェン・CNTは、移動度(特に電子)は高くできるメリットを持っていますが、集積回路を実際に作るといううえでは、難しさをはらんでいます。(材料としての物性は良いものがあるんですけどね。)

今後のCMOSの性能向上で、材料の物性として律速するパラメータは、正孔移動度になると考えられます。Siをベースに考える場合、正孔移動度は電子移動度の1/3程度なのが理由です。

1つの考え方としては、チャネル材料としてNMOSにはSiを使い、PMOSにはGeを使うような方法が考えられます。理由はGeの正孔移動度が高いからです。

実際のデバイスを作るうえでは、PMOSのチャネル材料にGeを入れるだけでも、相当大変でしょうが近々のCMOSの技術の中で取り入れられる可能性はあると、私は考えています。

以上が、ロジック・メモリ向けの新材料についてです。二次元材料も含めると、他にもいくつかあると思いますが、ここではこのくらいの紹介にします。

長くなりましたが、次はパワー半導体向けの新材料の話になります。

パワー向け

パワー半導体向けの新材料としては、SiC・GaN・Ga2O3・ダイヤモンドなどがあります。

SiCとGaNに関しては既に、実用化されているデバイスもあるので新材料と呼ぶのが適切かという話はありますが、Siからの代替材料という意味では新材料になるのでここの枠に含めています。

SiC

パワーデバイス向けの新材料として一番目に挙げられるのはSiCです。

SiCは、SiとCを組み合わせた化合物半導体です。SiCが持つ特徴は、他の化合物半導体と違って、熱酸化することで絶縁膜であるSiO2を形成できる点です。これは、Si以外の他の半導体材料には無い特徴です。

パワーデバイスの用途を考える場合、電子と正孔の移動度・バンドギャップ・絶縁破壊電界に着目されることが多いです。

絶縁破壊電界は、材料がどの程度の電界強度まで絶縁を保っていられるかを示す指標です。絶縁破壊強度が高いと、材料の厚みが同じであれば、高い電圧まで耐えることができます。

パワーデバイスは、ロジックやメモリ向けの用途と違って、高電圧が掛かる用途に使われます。デバイスに高い電圧が掛かった時に、オフ状態を維持していく必要があります。

SiCの移動度・バンドギャップ・絶縁破壊強度はこのような値だと言われています。(こちらのHPからデータを引用しました。4H-SiCのデータとなっています。)

電子移動度:900cm2/Vs
正孔移動度:100cm2/Vs
バンドギャップ:3.26eV
絶縁破壊強度:3MV/cm

Siと比べて、移動度は電子・正孔ともに落ちますが、バンドギャップが3倍近くあり、絶縁破壊強度は10倍です。

SiCは、パワーデバイス向けに量産が行わており、東海道新幹線のN700Sなどの主変換装置などに使われています。

課題もありますが、Siに代わる材料としてSiCは今後も中心的な立ち位置にいるでしょう。

GaN

SiCの次に新材料として考えられているのがGaNです。

GaNは、GaとNを組み合わせた化合物半導体です。

GaNの物性は、このようになっています。(こちらのHPからデータを引用しました。)

電子移動度:1250cm2/Vs
正孔移動度:200cm2/Vs
バンドギャップ:3.5eV
絶縁破壊強度:3MV/cm

電子移動度はSiCより高いです。バンドギャップと絶縁破壊強度は、SiCとほとんど変わらない値になっています。

GaNは、SiCと違って熱酸化してもSiO2を作ることはできません。

GaNもパワーデバイスの材料だと考えられていますが、SiCの方が一歩先を行っている状況です。

発光ダイオード(LED)向けに、GaNが使われていますが、発光デバイス向けとパワーデバイス向けでは少し用途が異なります。

Ga2O3

3つ目は、Ga2O3です。日本語で言うと、酸化ガリウムです。

Ga2O3は、SiCやGaNの次の材料として研究開発が続けられています。

Ga2O3は、GaとOの化合物半導体で、いくつか種類があります。GaとOの結びつき方によって、α・β・γ・δ・εの5つの種類が知られています。(ちょっと細かい話ですが、Ga2O3の研究開発ではどの型を使っているかによってフォーカスしている部分が異なります。)

5つの種類のうち、β-Ga2O3の物性はこのようになっています。(物性はこちらの論文から引用しています。)

電子移動度:300cm2/Vs
バンドギャップ:4.8-4.9eV
絶縁破壊強度:8MV/cm

移動度は落ちますが、バンドギャップがSiCやGaNよりも広く、絶縁破壊電界もSiCやGaNの3倍近い値があります。

バンドギャップの広さと、絶縁破壊電界が高いことがGa2O3の強みです。加えて、SiCやGaNには無い強みをGa2O3は持っています。

Ga2O3の強みは、溶かして結晶成長することが可能なことです。Siは、温度を上げることで溶かして単結晶を作ることができます。(Geも同じです) 一方、SiCやGaNは温度をあげても溶けることは無く分解してしまいます。

Ga2O3は溶かして固めることで、単結晶を作ることができるので、理論的には大面積の基板を安価に作ることができると考えられています。

一方、課題もあります。Ga2O3は、n型を作ることはできますが、p型領域を作る方法が確立していないことです。高品質な結晶を形成する方法と、p型領域を作る方法を確立できるかどうかが、Ga2O3が次世代パワー半導体向け材料として普及するかどうかのカギを握っているでしょう。

日本でGa2O3の研究開発している代表的な会社が2つあります。

1つ目は、α-Ga2O3をベースに研究開発を行っているFLOSFIAです。京大発ベンチャーで2011年に設立されました。
(公式サイトは下記リンク先から見ることができます。)

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2つ目は、β-Ga2O3をベースに研究開発を行っているノベルクリスタルテクノロジーです。2015年に設立された、タムラ製作所からカーブアウトされたベンチャーです。
(会社の公式サイトは下記リンク先です。)

株式会社ノベルクリスタルテクノロ...

どちらの会社も、日本のベンチャー企業でGa2O3の研究開発を行っています。今後、Ga2O3が普及すれば成長性が見込める会社です。

ダイヤモンド

最後の取り上げるのは、ダイヤモンド半導体です。

ロジック・メモリ向けの部分で取り上げましたが、ダイヤモンドは物性としては最強の半導体です。

バンドギャップが広く、熱伝導率が高いのがウリです。

ダイヤモンドは、高品質な結晶を形成するのが難しいですが、結晶成長の方法が確立できれば、パワー半導体向けの材料になりうるのではないかと考えられます。

シリコンの強さ

ここまで、Siに代わりうる新材料について紹介してきました。

最後に、半導体材料で広く使われているSiの強みを紹介します。

Siが半導体の基板材料として広く使われている理由は、「高品質な結晶」が「比較的安く手に入り」、「物性が調べつくされている」からです。

半導体デバイスに使うためには、第一に高品質な単結晶を作る必要があります。高品質というのは、結晶中の不純物が少なく、欠陥が少ないことを意味しています。

一度溶かして固めることができる材料であれば、ノウハウは必要ですがある程度高品質な結晶を作る方法論は存在します。Si・Geなどが溶かして固めることで単結晶を作ることができる材料です。

一方、新材料は溶かして固めることができないものが多いので、高品質な結晶を作ること自体が難しいです。(例えば、SiCやGaNがそうです。)

2つ目に、比較的安く手に入ることも、量産するうえでは非常に重要な要素です。高品質な結晶を作ることができたとしても、基板の価格が高価であれば、実用上使うことができません。(デバイスを作れたとしても、ペイしなかったら商売になりません。)

Siは、高品質な結晶が比較的安価に流通しているので、現時点での半導体の基板材料としては最も適しています。

3つ目は、物性が調べつくされていることも、デバイスを作るうえではメリットです。Siの物性は50年以上前から、研究が行われています。

かなり広いことが既に調査されているので、Siについてだいたいのことは調べればわかります。(もちろん、わからないこともまだまだありますが)

最近出てきた新しい材料や、マイナーな材料の場合、材料物性を調べようとしても過去に調査している資料が無ければ、データを調べることができません。

このような理由から、Siは半導体材料として未だに強いですし、時代遅れになっているわけではありません。今後も、Siは半導体材料の主役で居続けるでしょう。

まとめ

この記事では、Siに代わりうる材料として研究開発が進められている材料について簡単に紹介しました。

新材料は色々研究開発が行われていますが、Siに代わる材料には課題があり、高品質なものを安く手に入れられるのは現時点ではSiだけであることはおわかりいただけたのではないかと思います。

記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

参考文献

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140609_2/pr20140609_2.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%B3

https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/82/12/82_1012/_pdf

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsssj/28/1/28_1_40/_pdf#:~:text=%E4%BE%8B%20%E3%81%88%E3%81%B0%EF%BC%8C%E7%9B%B4%E5%BE%84%201.5%20nm,%E6%AF%94%E3%81%B9%E3%81%A6%E9%9D%9E%E5%B8%B8%E3%81%AB%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%84%E3%80%82

https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/67/2/67_2_128/_pdf

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160822/pr20160822.html

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