みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、Western Digitalの2024年1-3月期の決算について解説します。
売上と利益の推移
売上高と利益について見ていきます。
売上高
Western Digitalの直近の四半期ごとの売上高を図にすると、このようになります。
Werstern Digitalは、NANDフラッシュメモリとHDDを手掛けているので、半導体メモリ専業メーカーと比べると、売上高の変動の仕方が緩やかに見えます。
売上高を見る限り、2023年4-6月期を底として、回復基調にあることがわかります。
NANDとHDD別の売上高も開示しているので、それぞれの売上を図にするとこのようになります。
HDD・NANDともに、回復基調にはあります。
回復基調にはあるものの、NANDの売上高自体はそれほど先期と変わっていません。
利益
次に、NAND・HDD別の粗利を見てみます。
粗利で見ると、NANDの浮き沈みの激しさとHDDの安定感が対照的です。
HDDは、多少粗利の上下はありますが、ある程度安定して利益を出せていることがわかります。もちろん、HDD単体では粗利の段階で赤字になっていません。
一方、NANDは上下の幅が非常に大きいです。儲かるときは儲かりますが、赤字になる時はとことん赤字になっています。
特に2023年が厳しく、粗利の時点で4四半期中3四半期がマイナスとなっています。
NANDの売上高は、先期と比べてそれほど伸びていなかったにもかかわらず、粗利が上昇しているのは単価が上がったからだと考えられます。
NANDフラッシュメモリの市況が回復しているため、販売単価が上がり、粗利を押し上げたと言えます。
Western Digital全体の利益を見ると、このようになっています。
全社で見た四半期利益は2022年7-9月期以来、黒字に転換しました。
NAND部門の粗利が、メモリ不況から回復しつつあることが要因です。2022年後半から2023年は厳しい状況が続いていましたが、やっと市況の回復の恩恵を受けられる形になりました。
貸借対照表から財務を見る
さて、2024/3/31時点の貸借対照表を図にすると、このようになっています。
自己資本比率を計算すると、約46%となっていました。
負債は比較的多いですが、固定負債の方が多いので返済自体は先延ばしにできている形になっています。
NANDは回復傾向に見える
Western Digitalの決算を見ると、NAND・HDDともに業績は回復傾向に見えます。
HDDは、売上高の回復に連動した形になっていて、NANDは売上高がそれほど伸びていませんが粗利は回復しています。
NANDの場合、販売数量×平均単価で売上が決まるので、平均単価が上がっている証拠でしょう。
単価が上がれば、同じ販売数量でも利幅が増えるので、市況回復で価格が上昇傾向にあることを示していると考えられます。
メモリメーカーからしても、平均単価が上昇することで利益を確保できるようになるので、メモリの売り手からすると状況は良い方向に向かっているといえます。
メモリの買い手から見ると、平均単価が上がるということは、同じスペックかつ同じ容量の製品を買うにしても、渋滞よりも高い値段を出さないと買えなくなります。
消費者としての目線で見ると、NAND部門の粗利がこれだけ上昇しているということは、SSDの値段が上がりつつあることを意味しています。
NANDフラッシュメモリは、なかなか価格が安定しない代物なので、「メモリやSSDは安いうちに買え」です。
大容量だったりハイスペック品を買うときは、特に買うタイミングによる価格差が効くと思います。
ちょっと細かい話
Western Digitalの決算の損益・財務状況・今後の見通しは解説しました。
ここからは、ちょっと込み入った話になります。興味が無い方は読み飛ばしてください。
Western Digitalは、HDD部門とNAND部門を2024年の下半期に分離することを既に発表しています。
形としては、現在のWestern Digitalの会社はHDD部門だけの会社となり、NAND部門はスピンオフする形式を取ります。
NAND部門は、NANDフラッシュメモリ単独の会社となり、公開会社として独立します。
Western Digitalは規模が大きい会社なので、NAND部門をスピンオフする形になると、会社の持っている資産などを分配する形になります。
企業の分割に関する領域は専門ではないですが、何らかの形で必ず資産の配分が生じます。
また、NAND部門がスピンオフされたあとのことを考えると、粗利の比率から考えて2024年1-3月期程度の業績でないと、NAND部門単体で黒字化することは難しいことがわかります。
従来は、浮き沈み激しいNAND部門と、比較的安定しているHDD部門を合わせた形で経営できていましたが、NAND部門が独立するとNAND一本足になります。
NAND一本足の経営を行っている会社としては、Western Digitalと協業しているキオクシアがありますが、NAND一本足だと市況の好不況の影響をダイレクトに受けます。
また、Western Digitalとキオクシア以外のNANDメーカーはDRAMを手掛けていますが、NAND一本足だとDRAMと比較して市場のプレイヤーが多い分競争が激しいので、価格は落ちがちです。
NANDも、好況期には莫大な利益を得られる商売ではありますが、Western DigitalからスピンオフされるNAND部門がスピンオフ直後にメモリ不況に見舞われると厳しいものがあります。
こればかりは、タイミング次第ではありますが、NAND一本足の経営は不況期をいかにして乗り切るかがカギになるでしょう。
まとめ
この記事では、Western Digitalの2024年1-3月期の決算について解説しました。
NAND市況も回復しつつあることがうかがえる決算となっていました。
NAND部門がスピンオフされる日程はまだ公表されていませんが、2024年下半期なので半年後くらいにはスピンオフが行われているかもしれないですね。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
単価上昇してよ売り上げが微増と言うことは、販売物量は下がっているんでしょうか?
物量チックな指標は公表されているのでしょうか?
とく めい様
コメントありがとうございます。東急三崎口です。
WDの物量と価格に関しては、決算発表資料のp5に書いてあります。(記事でちゃんと引用してなかったですね、すみません。)
物量に関して決算資料から引用すると、
「Bit shipments:decreased 15% QoQ」
と書かれています。要は、前四半期比で物量自体は15%下がっているということです。
今期の決算資料のリンク先を貼っておくので、興味があれば読んでみて下さい。
https://investor.wdc.com/static-files/fc6a44ee-b510-4cf3-84a6-0b0ba60babb9
今後ともよろしくお願いいたします。