みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、Trendforceが発表した2024年1QのNANDフラッシュメモリのシェアについて書きます。
WDシェア5位の衝撃
この記事ではTrendforceの2024年1QのNANDフラッシュメモリのシェアを元にしています。元記事は下記リンク先から読めます。
https://www.trendforce.com/presscenter/news/20240529-12153.html
直近のNANDフラッシュメモリメーカーの四半期ごとのシェアを図にすると、このようになります。
シェアを細かく見ると、上位からSamsung・SK Group・キオクシア・Micron・Western Digital(以下WD)となっています。
Samsungが1社で30%以上のシェアを取っているのは大きく変わりません。また、SK Hynixも元IntelのSolodigmを買収してからは、20%前後のシェアを取っています。
それ以外の3社は、キオクシアとWDとMicronがシェア争いをしている状態です。
1年前くらいまでは、キオクシア、WD、Micronが定番の順番だったんですが、ここ半年くらい状況が変わりつつあります。
(2Q23から3Q23で、キオクシアのシェア低下が大きく見えますがこれはTrendforceがキオクシアの売上の集計方法を変えたことが理由です。詳しくはこちらの記事で解説しています。)
2024年1Qは、僅差ながら3社がほとんど横並びのシェアとなりました。
・3位 キオクシア:12.4%
・4位 Micron:11.7%
・5位 WD:11.6%
1%以内に3社がひしめく、激戦となっています。個人的に衝撃的だったのが、WDがシェア5位に落ちたことです。
MicronはNANDフラッシュメモリに関しては後発なので、キオクシアとWDより少し低いシェアが定位置でした。しかし、今回WDがMicronに抜かれて5位になりました。
シェアの差は僅差ですが、Micronに抜かれたというのは印象的です。
各社売上は回復傾向
各社のドルベースでの売上もTrendforceは公表しています。シェアと同様に図にするとこのようになります。
メモリ不況から好況期に転じたので、各社売上高自体は増加傾向にあります。
3Q23から、各社売上が増えていますが、Samsungの伸びは驚異的です。NAND全体の売上が伸びている状況で、シェアがほとんど変わっていないので、NANDの市場の売上高の増加と同様の伸び方をしていることがわかります。SK HynixもSamsungと同じです。
残り3社は様相が違います。Micronは、4Q23から1Q24にかけて伸びていますが、少し上位2社より遅れています。
キオクシアは、3Q23から売上は回復していますが、伸びが他社と比べると鈍いのがうかがえます。
WDに関しては、4Q23から1Q24にかけてほとんど売上が伸びていません。
Trendforceの出している売上高は、ドルベースなので一応為替の影響も見てみます。
為替相場も一応確認
Trendforceが計算に用いている、平均為替レートを日本円と韓国ウォンでそれぞれ示すとこのようになります。
日本円は、1Q23と1Q24を比べると、円安傾向にあります。130円台前半だった円相場が、150円近くまで円安が進んでいます。円安になるとドル建てで売った場合の円の建値は増えますが、円建てで出た売上をドル換算する時には不利になります。
韓国ウォンは、1ドル1300ウォン程度でそれほど大きな変化はありません。1ドル=1300ウォン±10%以内には収まっているように見えます。
ドルベースの売上比較を考えるうえで為替変動を見ると、日本円は1年で15円程度円安にシフトしているので、1年前と比べると若干ドル建ての売上高は減少しているといえるでしょう。韓国ウォンは、為替変動の影響は小さいと考えられます。
マーケットシェアを1年前と比べる
さて、NANDフラッシュメモリ上位5社のマーケットシェアを円グラフで1年前と比較してみます。
2024年1Qのシェアを図にすると、このようになります。
Samsungが35%近いシェアを持っていて、SK Groupが20%程度です。その他3社が約10%ずつシェアを持っている形となっています。
2023年1Qのシェアを図にすると、このようになります。
Samsungが30%以上のシェアを持っていることは変わりませんが、2位以下のシェアが2024年1Qと少し違います。
この時のシェア2位はキオクシアでした。3位がSK Groupで僅差4位がWDで、5位がMicronでした。
1年前と比較すると、相対的にキオクシアとWDがシェアを落として、落ちたシェアの分をSK GroupとMicronが分け合った形に見えます。
キオクシア+WDのシェア低下が止まらない
NANDフラッシュメモリメーカー5社と言っても、キオクシアとWDは、チップ製造で協業しています。
この2社は、チップ製造の設備投資を共同で行っています。詳しくはこちらの記事で解説しています。
簡易的に2社のシェアを足すと、どのように見えるのかを図にしてみます。
シェアについては、キオクシア+WDが1Q23をピークに右肩下がりしているように見えます。
3Q23までは、2社合計のシェアはSamsungと同等以上を持っていましたが、直近半年の落ち方が急です。先ほど見たように、直近半年の日本円の為替変動はそれほど大きくないので、為替の影響で売上が下がって見えているわけではありません。
Samsungと比肩していたシェアが、1Q24ではSK Groupに近づいています。1Q23には20%近い差があったのを考えると、短期間にシェアが落ちすぎているのではないかと感じました。
売上高も同様に図にすると、このようになります。
ドルベースではありますが、この図は比較的わかりやすいです。
簡単な言い方をすると、SamsungとSK GroupはNAND全体の売上高の上昇と同じ売上の伸び方をしていますが、キオクシア+WDは、売上は伸びていますが他社と比べて伸びが鈍いということです。
1Q24の売上高を見ても、キオクシア+WD以外は3Q22の売上高と同等か上回るまで回復していますが、キオクシア+WDはまだ3Q22のレベルまで売上が回復していません。
NAND市況の回復に伴って売価が上がり全社売上は増えていますが、伸び率は会社によって少しずつ違います。
もしかしたら、2Q24にはSK Groupがキオクシア+WDの売上高を上回るかもしれません。
まとめ
この記事では、Trendforceが発表した2024年1QのNANDフラッシュメモリのシェアについて書きました。
NAND市況の回復に伴って、各社売上は増えていますが、会社ごとにトレンドが少しずつ違います。
記事の中でわからないところや、誤っている点がありましたらコメントかお問い合わせフォームから連絡いただけると助かります。(過去にも、読者の方からの指摘を頂いて内容を修正したことがあります。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
いつも良質な記事をありがとうございます。
昨年は各社が減産していたことを考慮すると、キオクシア+WDの減産はシェア減少と必ずしも関係ないことになりますでしょうか?
3月ごろに減産解除との記事を目にしましたので、業績が2Q以降に好調になることを祈るばかりです…
カズヤ様
コメントありがとうございます。東急三崎口です。
メモリ不況時には各社が減産していたので、キオクシア/WDが減産していたからシェアが低下したわけでは無いと思います。
3月の減産解除の影響は、2Q以降に出てくると思われます。
全体の市況が回復している中、キオクシア/WDのシェアが低下しているので、
2Qは売上高自体は増えると思いますがシェア的にどうかは少し気がかりです。
今後ともよろしくお願いいたします。