みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、ハーバード大がSamsungを特許侵害で提訴したという日経新聞の記事から、訴訟の元になった特許を探ってみます。
特許検索は専門では無いので、粗があると思いますがこっそり教えてくださるとうれしいです。
怪しそうな2本の特許
この記事を書こうと思ったきっかけの、日経新聞の記事はこちらです。
米ハーバード大、韓国サムスンを特許侵害で提訴
日本経済新聞(会員限定記事) 2024/8/7配信
記事を読んでも、ハーバード大がSamsungを特許侵害で提訴したくらいの内容しかわかりません。
侵害したと考えられる特許を探してみようと思って、いくつかのキーワードで調べてみると、怪しそうなものが2件見つかりました。
(リンク先はGoogle Patentで、特許の内容が見れます。)
・SELF-ALIGNED BARRER LAYERS FOR INTERCONNECTS
・COBALT NITRIDE LAYERS FOR COPPER INTERCONNECTS AND METHODS FOR FORMING THEM
私も全部読んだわけではありませんが、興味がある方は読んでみてください。
Cu配線の拡散防止層に関する特許のようです。
アプローチ方法
記事を読んだうえで、検索するうえで使えそうなキーワードは3つくらいでした。
・ハーバード大の特許
・著者がロイ・ゴードン教授
・コバルトやタングステンを含む薄膜に関する内容
どうも、教授の方を調べてみると、化学系の大学教授の方のようで、当初は半導体デバイスでSamsungが使うような技術の特許を持っているんだろうか?と思いながら調査を始めました。
調査では特許の有効期間を考慮して、2000年以降のものに絞っています。
ALDやCVD系の特許のようだ
Google Patentで調べて見ると、どうもALDやCVDに使うような有機金属化合物の合成方法などの特許が出てきました。
この筋なら、化学系でも特許として持っている可能性があるなと思っていましたが、さきほどの3つの条件で出てくる特許が13件ありました。
13件くらいなら、一通り目を通せばいいだろうと思って見つけたのが先ほど紹介した2つの特許です。
簡単にまとめてしまうと、半導体デバイスに使われるCu配線のバリアメタルに関する特許です。
Cuは、SiO2等の絶縁膜に直接つけてしまうと、絶縁膜中をCuが拡散してしまうので、Cuの絶縁膜中への拡散防止のために何らかのバリアメタルをつけてやる必要があります。
特許の中心的な部分は、バリアメタルを成膜するための前駆体となる有機金属化合物の構造式や生成方法になっています。
ただ、実施例のような形で、Cu配線の図が出てきていました。おそらく、特許侵害として提訴しているのは、Cu配線への使い方が特許で既に押さえられていたからではないかと考えられます。
かつ、特許を「侵害」していると主張するためには、何らかの形で侵害していることを証明しないといけません。
この点から考えるに、Samsungのデバイスの断面構造に、特許で主張している膜構造が残っていたのが原因だと推定されます。
Samsungが特許に抵触していたら考えられること
ハーバード大が提訴したのは、アメリカのテキサス州です。
ただ、今回取り上げた2件の特許は国際出願されているので、アメリカだけの問題にはとどまらない可能性があります。
特許侵害がどのような形で判断されるのかは司法の場の判断次第ですが、仮にSamsungが本当に特許侵害をしていたとなると、特許の使用料を払う形にするか、特許を回避した形でデバイスのプロセスを変えるかしないといけません。
特許の係争相手が企業であれば、クロスライセンスを結んだり、使用料を払う形で和解する可能性は高いですが、大学相手なのでお金で解決するしかないんでしょうね。
Samsungの特許侵害を申し立てて、侵害した特許を使用している製品の出荷が停止されても、ハーバード大には一円も入りませんから。
大学が持つ特許の意味合い
最後に、大学が保有している特許の意味合いについて考えてみます。
企業は、自社の技術や製品の優位性を保つために戦略的に特許を出願しています。
一方、大学は主体的に製品を製造することは無いので、一企業に特許を独占されないようにするか、特許使用料を受け取ることで研究費をまかなうか2通りしか使い道が無いように見えます。
保有している特許をもとに、外部の企業と協業することもありえますが、結果的に大学が使用料をもらう形になるでしょう。
大学が特許を保有することの価値を考えると、実際上は特許使用料でお金を稼ぐのが一番有効な使い方になるんだと考えられます。
そう考えたときに、Samsungがハーバード大の特許を侵害していた時に、どの程度の使用料を取れるかが注目ポイントになると思われます。(Samsung相手に裁判しても、日本円で1000万円くらいだと裁判の割に合わないでしょうね。)
まとめ
この記事では、ハーバード大がSamsungを特許侵害で提訴したことについて、元ネタの特許を調査した結果について書きました。
意外と、それっぽいものを見つけることはできましたが、あくまでも1つの可能性でしかないことだけご留意いただけると幸いです。
特許調査は専門では無いので、認識が誤っている点がありましたら教えていただけると幸いです。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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