みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、Western Digitalの2024年10-12月期の決算について解説します。
売上
全体
Western DIgitalの全体の売上高について見ていきます。
全社の売上高は回復傾向にあり、6四半期連続の増収となっています。
WDは、NANDのメモリ不況からの回復と、HDDの需要回復が効いていて全体としては回復が続いているように見えます。
NAND・HDD別
NAND・HDD別の売上高を四半期ごとに図にすると、このようになります。
HDDの売上高の回復が顕著で、2021年10-12月期を越えています。
一方、NANDは売上高の回復という意味合いでは、完全に止まりました。前四半期(2024年7-9月期)と比較すると、微減にとどまっています。
2023年1-3月期を底に、売上高は緩やかに回復傾向が続いていましたが、今期で伸びは止まりました。
WDのNAND部門は、メモリ不況前の売上まで回復しきらずに、天井が来ているように見えます。
粗利
NAND・HDD別に粗利を四半期ごとに図にするとこのようになります。
ある程度の期間を並べて見ると、HDDは需要の上下はあるものの、ある程度安定して稼げていることがわかります。
NANDに関しては、メモリ不況の波をもろに食らった推移になっています。
少し驚いたのは、NANDの売上高は微減にとどまっているにもかかわらず、粗利が急減していることです。
おそらく、NANDの売価が落ちているんでしょうね。(WDの公表でも、全四半期比10%程度の下落と書いてありました。)
NANDとしては、メモリ不況前の水準まで戻る前に価格が下落に転じるのは、痛いでしょうね。
HDDは稼げていますが、将来的にNAND部門はスピンオフされるので、HDD部門が稼いでくれていることの恩恵を受けることができなくなります。
利益
WDの当期純利益を四半期ごとに図にすると、このようになります。
HDDとNAND事業なので、他のメモリメーカーと細かい部分は少し変わっていますが、全体としてはメモリ不況後回復傾向が続いているように見えます。
ただ、NAND部門がスピンオフされることを考えると、WDの現時点での全社利益はそれほど大きな意味を持たないように思えます。(稼げているに越したことはないわけですが。)
おそらく、事業構成を考えるに、HDD部門は市況の波を受けながらもある程度安定して稼ぐことができるビジネスでしょう。
一方、NAND部門は波が激しく、トコトン赤字になる時期があるビジネスです。
粗利が減少傾向に転じたNAND部門が、HDD部門からスピンオフされたあとに、単独で利益を出していけるのかどうかは、今後の懸念点ではあります。
貸借対照表から財務を見る
さて、最後は財務を見ます。2024/12/27時点の貸借対照表を図にすると、このようになります。
自己資本比率は48%程度でした。SamsungやMicronには及びませんが、資産に比して莫大な負債を抱えているBSには見えません。
この資産が、スピンオフされるときにどのように分割されるのかは、よくわからないですが一定の方法で分割されるんでしょう。
コベナンツ
直近の四半期では黒字が続いているので、あまり問題になっていませんが、コベナンツについて載せておきます。
WDの決算発表の資料から引用しています。
Credit Agreement Defined Leverage Ratio(赤線で囲っている部分です)の数字が決められているわけです。
調整後EBITDAに対する、負債の比率を表しています。黒字が出ている時は、それほど大きな問題にはなりませんが、メモリ不況期はすごい数字になっていました。
図中のQ2F24(2023年10-12月期)は、11.3になっていました。
スピンオフされようと、資産と負債を両方とも引き継ぐはずなので、NAND部門がどの程度の負債を持つことになるのかも注目です。
スピンオフ
NAND部門のスピンオフに関しては、触れられてはいましたが、具体的にいつどうやるかは明言されていないようです。
NAND部門だけ見ても、キオクシアと協業しているそれなりの規模の会社なので、時間がかかっているのでしょう。
とはいえ、スピンオフすることを公表してから1年近く経っているので、発表した時の予定より遅れていることは間違いなさそうです。
NAND部門は、SanDiskの形に戻るようなので、WDがSanDiskを買収したあと、結局SanDiskをスピンオフする形で、表向きは昔に戻るような見え方です。
まとめ
この記事では、Western Digitalの2024年10-12月期の決算について解説しました。
全社売上高と利益は伸びていますが、NANDの粗利が減少傾向にあるのが気がかりです。
他社の決算でも、NANDは回復期が終わりまた不況期が来てもおかしくないようなトレンドも見えています。
今後どうなっていくのかは読めませんが、少なくとも今後もメモリ不況からの回復がずっと続くことはなさそうです。
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このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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