みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事は、今後長期連載をやろうと思っているネタの第0回として、半導体デバイスの本を読もうとするとなぜ難しいのかについて書いていきます。
長期連載のテーマ
冒頭から長期連載のテーマを明示します。
この連載で取り上げようと思っているのは、S.M.Sze氏が著者の半導体デバイス(原題:Semicondoctor Device)の第2版の日本語訳verです。
半導体デバイスを学ぶうえでは、誰しも一度は読むであろう本です。
本を読んで理解できれば話は早いんですが、なかなか簡単ではないのが実際のところです。
なぜ取り上げようと思ったのか
そもそも、S.M.Sze氏著の半導体デバイスを取り上げようと思ったのには、いくつか理由があります。
私自身、半導体デバイスに関しては少し勉強したことはあります。少し勉強したことがある故に、半導体デバイスの日本語訳は、読んでいて当たり前だと思っている節がありました。
私が半導体デバイスを初めて読んだのは、大学4年生の頃でした。良いか悪いかわかりませんが、理工系の大学に進んだのもあって、高校では数学や物理を履修したうえで、大学では電磁気学・量子力学・半導体物理をそれなりに学んだうえで、半導体デバイスを読んだわけです。
それでも、半導体デバイスを初見で読んだときには、内容をぱっと理解することができず、かなり苦労した記憶があります。
やはり、ある程度の数学・高校物理・電磁気学・量子力学を知らないと、内容をすらすら読んでいくことは難しいです。
今でも、全ての内容を完全に理解できているわけではありませんが、ある程度読んだので初見の時よりは理解は深まっています。
半導体デバイスを読むうえでの背景知識や、理解しなくてもあまり困らない部分なども、ある程度わかっています。
本の内容を最初から全て理解しようとすると、ほぼ確実に挫折すると思うので、読むのを挫折する人を1人でも減らせたらいいなと思っています。
加えて、昨今半導体に対する関心が高まっている中で、初学者向けの本は出ています。
例えば、この辺の本があります。
初学者向けの本はたくさん出ていますが、デバイスの原理に踏み込んだ本はあまり出ていないように私は感じています。
初学者向けの本から、デバイス物理を学ぶときによく読まれるのは、S.M.Sze氏著の半導体デバイスの日本語訳版ですが、あまりにも内容の差がありすぎると思うわけです。
デバイス物理について詳しく扱った本や、インターネット上の情報が少ない理由は明らかで、初学者向けの内容と比べて読者が減るにもかかわらず、書くハードルが上がるからです。
そこで、インターネット上の情報として、S.M.Sze氏著の半導体デバイスについて書く記事があってもいいのではないか?と思ったわけです。
半導体の初学者のハードルが少しでも下がればいい
実際に、連載を思いついたので半導体デバイス第2版の日本語訳版を買ってみましたが、初学者が読み解くのは難しいだろうなぁと思ってしまいました。
読者が多いとは到底思いませんが、初学者で半導体デバイスを初めて読む方が、内容を理解するまでのハードルが少しだけでも下がればいいなと思っています。
あまり読まれなくてもネット上に日本語で情報があることが価値
半導体デバイスの日本語訳版があるのであれば、わざわざ記事を書く必要があるのか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
指摘はその通りなんですが、半導体デバイスの本自体がかなり昔に書かれているという背景はあります。
英語版だと3版、4版が出ていることは認識していますが、英語版で半導体デバイスを読める方は、専門書も読めるレベルの方でしょうから、今回の連載の想定読者からは外れています。
2版の日本語版の発行日は、2004年3月30日となっていました。2版が書かれた自体は、もう20年前です。
20年前のロジック半導体の最先端プロセスは、90nmプロセスくらいです。
90nmプロセスといえば、プレステ2に入ったCellエンジンに載っていたくらいの時間軸です。
もちろん、この時代にはHigh-k Metal Gateもなければ、FinFETもなく、GAA FETもありませんし、NANDも2Dでしたし、DRAMも日本メーカーがあった時代です。
何が言いたいのかというと、現代の半導体プロセスが前提にしていることと、本に書かれている内容が前提にしていることが少し変わってきているということです。
そんな中、ある程度現代の半導体プロセスに寄り添いながら、日本語版で出ている本を読みやすくできればいいなと思っているところです。
母国語である程度先端の技術まで学ぶことができるのは、先人たちの積み上げのおかげでもあるわけですが、半導体デバイスの3版や4版が日本語訳される雰囲気は感じないので、少しだけでも差を埋められたらいいなぁと思っています。
かつ、日本語でインターネット上にある程度の情報があれば、日本人で半導体を学びたい人が少しでも学ぶハードルが下がり、半導体を学びたいと思ってくれる人が少しでも増えれば、書くことに対して価値があるのではないかと考えています。
今後の予定
記事としては、半導体デバイスの日本語版をテーマに連載していく予定です。
どのくらいの頻度で更新できるかはわかりませんが、最初のページから取り上げていくつもりです。
1本書くだけでもそれなりに大変だと思うので、気長に待って下されば幸いです。
まとめ
この記事では、半導体デバイスの本を読もうとするとなぜ難しいのかについて書きました。
半導体デバイスの動作原理について学ぼうとすると、高校生で扱うレベルの数学物理・電磁気学・量子力学を知らないと、背景知識が足りなくて困ることが多いです。
その辺の背景を含めて、初めて学ぶときには理解できなくてもいい部分も含めて、書いていけたらいいなと思っていあます。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。





この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
山形大学 廣瀬先生の「半導体教科書プロジェクト」がオススメです。
https://fhirose.yz.yamagata-u.ac.jp/text.html
通り様
コメントありがとうございます。東急三崎口です。
こんなwebページがあったんですね。存じ上げませんでした。
方向性が似ていて、勉強になる部分も多いと感じましたので、参照させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
東急三崎口