フラッシュメモリとDRAMの違いは電源を切って情報が飛ぶか飛ばないかの差

本ページは広告・プロモーションを含みます

みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

今回は、半導体メモリの中でも用途が違うフラッシュメモリとDRAMの違いについて解説していきます。

この記事はもともと書くつもりはなかったんですが、キオクシアとウエスタンデジタルの決算について解説した記事を出して、次はMicron(アメリカの会社です)について書こうとしたときに、DRAMとフラッシュメモリの違いをちゃんと解説してなかったことに気づいたのがきっかけです。

パソコンや半導体に詳しい方であれば、DRAMとフラッシュメモリが違うものであることは知っていて当たり前だと思われるかもしれませんが、日常生活でDRAMやフラッシュメモリの違いなんて気にしないので、そんな方向けに解説しようと思っています。DRAMとフラッシュメモリについて詳しくご存知の方は、読み飛ばしてください。

半導体業界に興味がある方や、転職してみたい方はこちらの記事も読んでみてください。

あわせて読みたい
半導体業界への転職におすすめの転職サイト3選 みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、半導体業界に興味がある方向けに、半導体業界への転職に強い転職サイト3選を紹介します。 ...
目次

半導体メモリ

DRAMとフラッシュメモリは、半導体メモリと呼ばれるものです。半導体メモリとは、半導体で作られた記憶用のデバイスです。半導体メモリとは一口にいっても、いくつか種類があります。厳密に言うと、フラッシュメモリとDRAMの他にSRAMというものがあります。SRAMというのは、現代ではパソコンやスマートフォンのCPUに一体化して付けられているので、自分で買うことはまずありません。

SRAMについては、詳しく解説しませんが、フラッシュメモリ・DRAM・SRAMの3つの中では一番動作が速いです。動作が速い一方、複雑なつくりをしているので容量当たりの値段が高いです。

DRAMとフラッシュメモリを比較すると、DRAMの方が動作が速いですがフラッシュメモリより構造が複雑なので、容量当たりの値段が高いです。フラッシュメモリは、半導体メモリの中では一番構造が単純なので、容量当たりの値段は安いですが、動作がDRAMと比べると遅いです。

動作と値段に関しては、DRAMとフラッシュメモリは一長一短があり、それぞれのメモリが向く用途で使われています。パソコンに詳しい方であれば、パソコンに搭載されているメモリの容量を気にされることがあると思います。一般的に、パソコンのスペック表示で出ている「メモリ」はDRAMの容量のことを言っています。

動作と値段以外で決定的に違うのが、DRAMは電源を切ったら記憶していた情報が消えてしまいますが、フラッシュメモリは電源を切っても記憶していた情報が消えないんです。

電源を切っても情報が飛ばないメモリ

フラッシュメモリの一番の特徴である、電源を切っても情報が飛ばないことについて次に解説していきます。

電源を切っても情報が飛ばないのは、もしかしたら当たり前だと感じるかもしれません。パソコンやスマホを使っているときに、電源が切れたらデータが全部消えてしまうようでは、使い物になりませんよね。今では、フラッシュメモリが普及したおかげで、当たり前のようにスマホレベルでも電源を切っても情報が飛ばないメモリが搭載されるようになりました。しかし、ひと昔前はそうもいかなかったのです。

例えば、フラッシュメモリ以外で電源を切っても情報が飛ばないものを思い浮かべてみてください。

世代によりますが、電源を切っても情報が飛ばないものとしては、こんなものが挙げられます。古いと思われる順に書いています。

  • 磁気テープ(カセットテープ)
  • ビデオテープ
  • フロッピーディスク
  • CD
  • MO
  • DVD
  • Blu-ray
  • ハードディスク

カセットテープやビデオテープを使ったことが無い世代も増えていると思いますが、れっきとした電源を切っても情報が飛ばないれっきとした記憶媒体です。あと、フロッピーディスクもそうです。

MOはマニアックですが(MOについては詳しく解説しませんが、興味があればwikiのページを見てみてください。私も何回か触ったことがあるくらいです。)、CD・DVD・ハードディスク・Blu-rayなんかは使ったことがある方も多いと思います。これらは、電源を切っても記録したデータが飛ばないものたちです。

一部例外はありますが、基本的にこれらの記憶媒体は外付けで使う用途なので、ポケットに入るサイズではありません。(ハードディスクは、もしかしたらポケットに入るサイズのものがあったかもしれません。しかし、フラッシュメモリが普及して今となってはほとんどないはずです。)

フラッシュメモリ以外の半導体メモリは、電源を切ってしまうと記憶していた情報が飛んでしまう(電源がつながっていないと、情報を保持できない仕組みになっているということです)ものが多いですが、フラッシュメモリは半導体メモリでありながら電源を切っても情報を保持できる画期的なメモリだったんです。

NANDフラッシュメモリの特徴

電源を切っても情報を保持できるフラッシュメモリですが、半導体メモリを語る時にはこのようなメモリを「不揮発性メモリ」と言います。不揮発性メモリは、実はフラッシュメモリ以外は少なく(無いわけではありません)実用的に普及しているのはフラッシュメモリくらいでしょう。

フラッシュメモリと一口に言いますが、詳しく分けるとNOR(ノア―と読みます)フラッシュメモリとNAND(ナンドと読みます)フラッシュメモリがあります。通常フラッシュメモリと言うと、NANDフラッシュメモリのことを指します。フラッシュメモリには2種類あって、ふつうはNANDフラッシュメモリを使っていると思ってもらえればOKです。(興味がある方は、NAND型とNOR型の特性の違いを見てみると面白いかもしれません。)

フラッシュメモリの何よりも大きな特徴は、電源を切っても情報を保持できる点です。この特徴があるおかげで、スマホのストレージやパソコンのSSDに使われています。また、最近クラウドの需要が増えているので、大量のデータを保存するデータセンターでもデータを貯めておくために使われています。

電源を切っても情報を保持できる記憶媒体の中で比較すると、小さくて速度が速いことが大きな特徴です。ハードディスクを使っていたころのパソコンの起動を思い出していただくとわかりやすいんですが、昔パソコンは電源をつけてから立ち上がるまでにしばらく待ち時間がありましたよね。(ハードディスク付きのパソコンを使ったことが無い若い人にはごめんなさい。昔のパソコンは立ち上がるまでに数分かかっていたんです。)

しかし、今のパソコンは基本的に電源を付けたら1分かからずに起動するはずです。この違いは、パソコンが起動するときにデータを読みだしていたものが、ハードディスクからSSDに変わったことが理由です。ハードディスクは、データを読み書きするのが遅かったので起動するまでに時間がかかっていましたが、SSDは読み書きが速いのですぐ起動できるわけです。

また、技術の進歩に伴ってフラッシュメモリは容量当たりの値段が劇的に下がっています。例えば、昔のPS2のメモリカードにはフラッシュメモリが使われていたんですが、容量は8MBで数千円しました。(8GBじゃなくて8MBです。) 今では、8GBのフラッシュメモリがコンビニでも1000円しないくらいで買えます。容量が1000倍になっているのに、安く買えるようになっているんです。

もはや、8MBのフラッシュメモリなんて誰も買わないと思いますが、(今となっては8MBでは、スマホで撮った写真数枚で容量が一杯になってしまいます。)当時は8MBでも売れていたんです。

容量が劇的に増えているのに値段が下がっているのは、半導体の技術が進歩したおかげです。

DRAMの特徴

次に、DRAMの特徴について解説します。DRAMは、電源を切ると情報が消えてしまいますが、フラッシュメモリよりも動作が速いことが特徴です。

電源を切ったら情報が消えてしまうんだったら、記憶媒体として使えないじゃないかと思われた方もいらっしゃるかもしれません。実は、DRAMは電源を切った時に情報が消えてもいいところで使われています。

メモリとして使うのに情報が消えてもいいところなんてあるのかと思われるかもしれませんが、電源を切った時に情報が消えてもいい場所があるんです。それは、CPUとフラッシュメモリの間です。

CPUは、パソコンの中で一番動作が速いです。一方、フラッシュメモリは構造的に読みだしたり書き込んだりするのに時間がかかります。(「時間がかかる」というのはCPUの動作速度には追い付けないという意味です。)

そうすると、CPUとフラッシュメモリの間に、CPUから出てくるデータをしばらく置いておくメモリを作れば、読み書きが遅いフラッシュメモリに対してデータを書き込んだり読みだしたりする余裕が出てきます。

CPUとフラッシュメモリの間でデータを一時的に保持しておくために使われているのがDRAMです。

DRAMは、フラッシュメモリよりも動作が速い分容量当たりの値段が高いので、大容量の保存にはフラッシュメモリが使われています。パソコンやCPUのメモリとしてはDRAMが使われています。また、データセンターのサーバーのような高性能コンピュータにDRAMはたくさん使われています。

DRAMメーカー

ここまで、DRAMとフラッシュメモリの特徴をざっくり紹介してきました。実はここからが本題で、DRAMやフラッシュメモリを作っているメーカーは世界にどのくらいあるのかと言う話です。

DRAMを作っているメーカーは世界でほぼ3社です。3社とはこのとおりです。

  • Samsung(韓国)
  • SK Hynix(韓国)
  • Micron(アメリカ)

韓国メーカーが2社、アメリカのメーカーが1社です。パソコンやスマホにはDRAMが必ず入っていますが、ほぼ100%この3社のうちのどこかが作ったものです。もともと、他の会社もあったんですが、DRAMの価格が暴落したときに耐え切れず倒産して、競合他社に吸収されることを繰り返してこの3社に落ち着きました。

ちなみに、この3社になる前には4社目として日本にエルピーダメモリというDRAMメーカーがありました。エルピーダメモリは資金繰りがつかなくなって、2012年に破綻しました。破綻したあとMicronがエルピーダメモリを吸収して、今の3社体制に至っています。倒産した日本のエルピーダメモリを吸収した経緯から、Micronは日本の東広島にDRAMの工場を持っています。かつてのエルピーダメモリの工場が東広島にあったからです。

主なメーカーが3社しかないので、DRAMは寡占市場だと言われていました。寡占市場では、一般的に競合が減るので価格競争が起きにくくなります。しかし、2022年後半からDRAMの値段が下がりつつあるようで、今までとは違った市場環境になっているようです。

フラッシュメモリメーカー

DRAMの次は、フラッシュメモリについて見ていきます。世界でフラッシュメモリを製造しているのは、ほぼこの5社です。5社とはこのとおりです。

  • Samsung(韓国) DRAMも作っている
  • SK Hynix(韓国) DRAMも作っている
  • Micron(アメリカ) DRAMも作っている
  • Western Degital(アメリカ)
  • キオクシア(日本)

先ほど紹介した、DRAMメーカーの3社+Western Degital+キオクシアの5社です。

フラッシュメモリメーカーは5社ありますが、3社と2社で様相が違います。DRAMとフラッシュメモリを作っているSamsung・SK Hynix・Micronとフラッシュメモリしか作っていないWestern Degital・キオクシアに分かれるわけです。

しかも、フラッシュメモリしか作っていないWestern Degitalとキオクシアは、協業してフラッシュメモリを作っているので、実質的にはSamsung vs SK Hynix vs Micron vs Western Degital&キオクシアという構図になります。ちょっと複雑ですよね。

NANDフラッシュメモリ自体は、キオクシアの前身である東芝の半導体部門の技術者が発明したものです。特許も認められていて、東芝から生まれた半導体メモリと言っても過言ではありません。その後、市場の拡大を目指して東芝からSamsungにフラッシュメモリの技術供与がなされた歴史的経緯があります。

今となっては、フラッシュメモリのシェア1位はSamsungになっているので、結果論ですが東芝は敵に塩を送って負けた形になっています。

SSDの中身はフラッシュメモリ

フラッシュメモリに関しては、世界で5社しか作っていないと書きました。厳密に言うと、紹介した5社以外にも中国のYMTCというメーカーも作ってはいるんですが、シェアが小さいのであえて触れていません。

フラッシュメモリは、SSDやスマホのストレージに使われていると書きました。ここで、お気づきの方がいらしたらすごいですが、Amazonや家電量販店でSSDを買おうとした時には、ここで紹介した5社以外からSSDが売られていることが多いです。例えば、Buffuloやシリコンパワーといったメーカー製のSSDが出てきます。(SanDiskのものはWestern Degitalのフラッシュメモリを積んでいます。)

世界でフラッシュメモリを作っているメーカーは5社しかないのに、SSDのメーカーが他にあるのはなぜなのでしょうか。その理由は簡単で、SSD用のフラッシュメモリを5社のどこかから買っているからです。

SSDは、フラッシュメモリだけでは作ることができず、外部との情報のやりとりをする「コントローラー」とメモリの役割をする「DRAM」とデータを記憶のための「フラッシュメモリ」から作られています。

極論を言うと、コントローラーとDRAMとフラッシュメモリを外部から買ってきて組み立てることでSSDを作ることができるわけです。もちろん、コントローラーでうまく制御できるようにシステムを構築する必要はありますが。

というわけで、SSDは色々なメーカーから売られていますが、データを記憶するフラッシュメモリの出どころをたどっていくと、必ず紹介した5社のどこかにたどりつきます。

まとめ

今回の記事では、半導体メモリの中でも用途が違うフラッシュメモリとDRAMの違いについて解説しました。ざっくりした説明でしたが、DRAMはパソコンのスペックでメモリと書かれているもので、電源を切ってしまうと情報が飛んでしまうメモリで、フラッシュメモリは電源を切っても情報を保持できるメモリであるというのが結論です。

細かいことを説明すると長くなってしまうので、今回はここまでとします。フラッシュメモリやDRAMの動作原理を記事にしてほしい方がいらしたら、コメントを頂ければ書くようにします。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。

半導体業界に興味がある方や転職してみたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

あわせて読みたい
半導体業界への転職におすすめの転職サイト3選 みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。 この記事では、半導体業界に興味がある方向けに、半導体業界への転職に強い転職サイト3選を紹介します。 ...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次