キオクシアの決算から見える半導体メモリ業界の浮き沈みの激しさ~業績が激しく変動~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、2023年度第三四半期のキオクシアの決算について紹介したあと、キオクシアの数年分の決算を読んで半導体メモリ業界の業績の浮き沈みの激しさについて見ていきます。

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目次

2023年度3月期3Q決算内容

まずは、キオクシアの2023年度3月期第三四半期(以後3Qと書きます)の決算を見ていきます。

キオクシアの決算については、こちらのページで見ることができます。

https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/about/company.html

上場企業ではないので、細かい決算書は掲載されていませんが、一部の数字は公開されています。公開されている、売上高・営業利益・当期純利益について見ていきます。

第三四半期決算の売上高が、2700億円というのは、年間1兆円レベルで売り上げが見込める企業でしょうから、売上高の規模としてはかなり大きい企業といえるのではないでしょうか。ここ数年の変動は、次の章で細かく見ていきます。

とはいえ、ここからが問題です。2700億円売上があるのに営業利益が933億円の赤字なんです。3か月で933億円の赤字が出るというのは、ちょっと想像できないですが、半導体メモリの業界は好調の時と不況の時の差がとても激しいので、3か月で1000億円近い赤字が出ることもありえる業界です。

3か月で1000億円の赤字は、単純計算で年間4000億円近い赤字になることを示しています。年間4000億円の売上があったら、大きい企業だと感じますが年間4000億円の赤字を出すというのも、なかなかできないですよね。小さな会社であれば、とっくに倒産しています。

当期純利益も、営業利益が大幅な赤字なので当然赤字になっています。当期純利益でも846億円の赤字ですから、かなり厳しい状況であることは間違いないんでしょう。

ちなみに、年間4000億円レベルの赤字というと、少し話題になっていた2022年の楽天の決算と同じくらいです。楽天は、2022年の年間の決算で3638億円の赤字を出しています。四半期で見てはいますが、この楽天と同程度の赤字額だと考えると、すさまじい額であることがわかります。

このように、キオクシアの2023年3月期3Qの決算はとても厳しいものになっています。

しかし、ずっと四半期で1000億円近い赤字を出し続けていると、いずれ会社の現金が尽きて倒産していまいます。そこで、過去の業績はどうだったのかについて見ていきます。

ここ数年の業績

キオクシアは、もともと東芝の半導体メモリ事業が東芝メモリとして分社化されたあとに社名が変わってできた会社です。つまり、元をたどれば東芝の半導体メモリ部門だったわけです。過去から業績を遡ろうとすると、東芝の半導体事業の業績をたどることになります。ただ、東芝から東芝メモリが分社化されるときに、複雑なスキームで分社化されていてわかりにくいので、2020年度3月期の決算から見ていきます。

売上高

まず、売上高についてみていきます。各四半期ごとの売上高をグラフにするとこのようになります。

長期的なトレンドを見ると、2020年度1Qからゆるやかに成長して四半期で3500~4000億円程度の売上まで増えています。しかし、2023年度3Qで急激に売上高が落ちていることがわかります。(図中の赤い矢印です)

やはり、ここ3年くらいの決算を振り返っても2023年度3Qの売上高の減少はかなり急だったようです。逆に言うと、前の四半期から1000億円程度売上高が減少していますが、営業赤字が900億円くらいだったことを考えると、売上高が前の四半期とおなじくらいあれば、ギリギリ黒字くらいにはなっていたんだと考えられます。

営業利益

次に、営業利益について見ていきます。各四半期ごとの売上高をグラフにするとこのようになります。

グラフの真ん中あたりにある黒い点線が、営業利益0の線です。黒い点線より上側であれば黒字で下側であれば赤字であることを示しています。赤字になっている期は、赤い丸で囲っているのでわかりやすいと思いますが、直近14四半期のうち6期で赤字なんです。

調子がいいときは、四半期で1000億円利益を出せているときもありますが、赤字になるときは四半期で1000億円近い赤字を出すこともあるような、ある意味ジェットコースターのような業績になっています。半導体メモリ業界は、構造的に業績の浮き沈みが激しいので、私はこのくらいありえるなぁという感覚で見ていますが、業績が安定している業界で仕事をされている方からすると信じられないような変動かもしれません。

営業利益率を計算すると、黒字で調子がいいときは20~30%くらいになりますが、赤字になるとトコトン赤字になるような形になっています。どう頑張っても、業績が安定しているとは言えないです。

当期純利益

最後に、当期純利益について見ていきます。各四半期ごとの売上高をグラフにするとこのようになります。

当期純利益は営業利益よりは浮き沈みの差が縮まりましたが、それでも営業利益に連動した形で乱高下しています。当期純利益の観点から見ても、2023年2Qから3Qの落ち幅が非常に大きいことがわかります。

このグラフを見て、キオクシアはここ数年の利益は結局プラスなのかマイナスなのかと思われた方は鋭いです。2020年度1Qから2023年度3Qの当期純利益を合算すると672億円のマイナスとなりました。つまり、稼げるときはそれなりに稼げますが、赤字になった時の赤字額が大きいので、赤字になった分を埋め切れていないということです。(2023年度3Qの業績が100~200億円くらいの赤字で済めば、当期純利益のトータルはプラスマイナス0くらいに落ち着いていました)

業績の浮き沈みが激しい

ここまで、キオクシアのここ数年の売上高・営業利益・当期純利益の推移を見てきました。みて頂ければわかる通り、業績の浮き沈みが激しいことがわかります。

特に、2023年度2Qから3Qの売上の減少はかなり激しく、売上高の減少に連動して営業利益と当期純利益も赤字に転落しています。キオクシアは上場企業ではないので、貸借対照表が開示されておらず手元の現金がどの程度あるのかわかりませんが、3か月で1000億円赤字が出るということは、資金繰りに余裕があるようには思えません。(年間4000億円ペースの赤字ということは、それだけ激しく会社から現金が出て行っていることを示しているからです。)

直近の黒字だった期の当期純利益を合わせても2000億円に届かない程度なので、2023年度3Qのような業績が続くと経営としてはかなり苦しくなってくるのではないかと個人的には感じています。

日本では一番だが競合他社は強い

ここまでキオクシアの業績と、業績の浮き沈みの激しさについて見てきました。日本の中では、キオクシアは半導体デバイスメーカーとして最上位レベルの売上を誇っているので、国内ではトップクラスのメーカーです。

しかし、キオクシアとウエスタンデジタルが合併したらフラッシュメモリ業界はどうなるのかという記事で過去に紹介しましたが、半導体メモリ業界はキオクシア以外にも競合他社があり、全て日本以外のメーカーです。

競合他社はこの3社が挙げられます。

  • Samsung(韓国)
  • SK Hynix(韓国)
  • Micron(アメリカ)

どの会社も、その国における半導体メーカーとしてトップクラスの力を持っています。競合他社との技術や製品にも細かい違いはありますが、(書き始めると長くなるので、今後別の記事で解説します。) 強敵であることは間違いありません。

競合3社と、キオクシアと連合を組んでいるウエスタンデジタルの決算を読みましたが、どの会社も直近の決算では売上が下がって苦戦しているようです。半導体メモリ業界全体で売上高が下がって、不況期に入っていることがうかがえます。苦境の時にいかに踏ん張れるかが生き残りの鍵になりますが、競合他社も強いのでかなり厳しい戦いになることは容易に想像できます。キオクシアが外資に買収されることになれば、国内メーカーで半導体メモリを作れる会社が無くなってしまうので、日本の半導体戦略から見ても避けたいところでしょう。

この苦境を何とか乗り切って、次に来るであろう好況期まで持ちこたえてほしいと思います。

キオクシアの競合他社の2023年度3Qの決算についても、こちらの記事で解説しているので興味がある方は読んでみてください。

まとめ

今回の記事では、日本の半導体メモリメーカーであるキオクシアの決算から見える半導体メモリ業界の浮き沈みの激しさについて解説しました。2023年度3Qの売上高が急激に減少し、売上高の減少に伴って営業利益・当期純利益ともに大幅な赤字になっているというのが結論です。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。

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