半導体メモリ業界の競争が厳しい理由を解説

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この記事では、半導体メモリ業界の競争が厳しい理由を解説します。

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目次

半導体メモリの特徴

半導体メモリ業界の競争が厳しい理由を考えるうえで、半導体メモリ業界自体の特徴を知っておく必要があります。

半導体メモリ業界の競争を考えるうえで、知っておくべき特徴はこの3つです。

【半導体メモリの特徴】
・先端技術の塊
・開発スピードが速い
・コモディティ化した製品

先端技術の塊

半導体メモリは、大きく分けてDRAMとNANDフラッシュメモリがあります。

2つの違いについては、こちらの記事で解説しています。

DRAMもNANDフラッシュメモリも、半導体メモリで先端技術が詰め込まれています。

DRAMを作っているメーカーは、主にこの3社です。

【世界のDRAMメーカー】
・Samsung
・SK Hynix
・Micron

NANDフラッシュメモリを作っているメーカーは、DRAMを作っているメーカー+2社です。

【世界のNANDフラッシュメモリメーカー】
・Samsung
・SK Hynix
・Micron
・Western Digital
・Kioxia

これらのメーカーが、しのぎを削って技術開発競争をしています。

開発スピードが速い

次に特徴的なのが、半導体メモリは開発スピードが速いことです。

DRAMは最近次世代製品が出る期間が長くなってきていますが、NANDフラッシュメモリは約2年おきに新しい世代の開発が行われています。

最近で言うと、NANDフラッシュメモリは3次元になっていて、積み重ねている層の数で世代を表すことが多いです。

1つ前の世代が176層前後でしたが、最新の世代では230層前後になっています。

これが、1つの世代を表していて、1つ世代が進むまでの期間が約2年となっています。

簡単に言うと、2年おきに新しい製品が世の中に出せるように技術開発を進めていかないと、他社との競争に負けてしまうことになります。

コモディティ化した製品

3つ目に重要なのが、半導体メモリはコモディティ化した製品だということです。

コモディティ化とは、製品やサービスなどの性能や品質に差が無くなり、どのメーカーのものを買っても大差が無い状態になることを言います。

半導体メモリは、技術が無いと作れないので一見するとコモディティ化しなさそうに感じますが、実はコモディティ化している製品なんです。

その理由は、競合メーカーが並んで製品開発をしていて、ユーザーの立場からするとどの会社の製品を使っても問題ないからです。

簡単に言うと、SSDやUSBメモリを買うときに、どのメーカーが作ったものを気にしなくても使えるということです。

要は、Samsung製だろうが、Kioxia製であろうが、SSDやUSBメモリには規格があって、規格に合っていればユーザーはどのメーカーの製品を使っても問題なく使えるようになっているわけです。

コモディティ化しているため、ユーザーの立場からすると、どのメーカーのものを買うかという基準は、容量と値段でほぼ決まります。

技術開発にお金がかかるのに、コモディティ化していて値段が落ちやすいちょっと特殊な製品なんです。

競争を単純化して考える

さて、半導体メモリ業界は、各社が技術開発とシェア争いをしています。

各社の競争を少し単純化して、なぜ競争が厳しいのかを解説していきます。

話を簡単にするために、いくつかの仮定を置きます。半導体メモリの世界の売上高は、年間10兆円としてA・B・C・Dの4社が、それぞれシェアを40%・30%・20%・10%持っているとします。

図にするとこんな形になります。

年間の売上を10兆円としたので、各社の売上はシェアのパーセンテージで割り振ります。

そして、各社の利益率を20%と置きます。

毎年、研究開発にかかる費用は各社1000億円、次の世代を作るための設備投資にシェア10%あたり1000億円かかるとします。(シェア20%なら、設備投資は2000億円になります。)

表にまとめるとこうなります。

この仮定のもとに、3年間の各社の状況を見てみます。

1年目

1年目は、各社フラットなスタートとします。

向こう1年間に必要な研究開発費と設備投資費を足して、年間の利益から引くとこうなります。

A・B・C社は利益-費用がプラスになっていますが、D社はプラスマイナス0です。

この利益-費用の額が、1年経って各社の手元に残ったお金です。

2年目

2年目を考えてみましょう。

2年目は、1年経って各社の手元に残ったお金をスタートラインにします。

2年目の研究開発費と設備投資費が1年目と同じだとすると、このようになります。

A・B・C社は、着々とお金が増えていますが、D社だけ全然増えません。

3年目

3年目も、同じことを考えてみます。

そうすると、結果はこのようになります。

結局、シェア1位のA社とシェア4位のD社の間には9000億円も差がついてしまいました。

シェア3位のC社は利益が増えていますが、シェア4位のD社は3年経っても利益が出ていません。

なぜこんなことになるのか、不思議ではないでしょうか。

シェアが小さいと圧倒的に不利

単純化した場合で、半導体メモリ業界の競争の厳しさを考えてみました。

端的に言うと、半導体メモリのように研究開発と設備投資が多額な場合、シェアが大きい方が有利で、シェアが一番小さい会社が圧倒的に不利な戦いになります。

各社が並行して開発を進めているので、半導体メモリ業界の競争に生き残っていくためには研究開発費を出して、新しい世代の製品を作っていくしかありません。

しかし、半導体メモリの研究開発にはエンジニアの人件費・装置を購入する費用・研究開発品を作る費用など多くのお金がかかります。

また、新しく開発した製品を実際に量産して売るためには、新しい製品向けに製造装置を買ったり、下手すると工場を新しく建てたりする設備投資が必要になります。

ここで紹介した、研究開発費と設備投資費は新しい製品を作る前に必要になる先行投資です。

つまり、半導体メモリ業界の競争を勝ち抜いていくためには、莫大な先行投資を行って、新しい製品の利益から先行投資分を回収しないといけない構造になっています。

シェアが小さいと、設備投資費は比較的小さくなりますが、研究開発費はそれなりにかかるので、1つの製品あたりから回収しないといけない額が大きくなります。

そうすると、シェアが小さい=研究開発費・設備投資費が回収しにくいということになります。

シェアが小さいとその分得られる利益も小さくなり、先行投資を回収するので精一杯になってしまいます。先行投資を回収するので精一杯になると、次の世代の先行投資をする余力が他の会社と比べて小さくなって、結果的に開発のために割ける金額が小さくなって、さらにシェアを下げてしまうという悪循環に陥るリスクが非常に高いです。

現状のメモリのシェアを考える

半導体メモリ業界の競争では、シェアが非常に大きいことがおわかりいただけたと思います。

そこで、現状の半導体メモリのシェアをDRAMとNANDフラッシュメモリの両方についてみていきます。

DRAM

まず、DRAMのシェアを見てみます。

2022年7-9月期のデータです。

大きなシェアを持っているのが、Samsung・SK Hynix・Micronの3社です。

DRAM業界は過去には他にもメーカーがありましたが、寡占化が進んで今のシェアに落ち着いています。

Samsungのシェアが一番大きいですが、残りのシェアをSK HynixとMicronで分け合っている形になっています。

SK HynixとMicronのシェア差は小さいので、シェアによる大きな利益の差はつきにくい構造をしています。

NANDフラッシュメモリ

NANDフラッシュメモリのシェアを見てみます。

2022年10-12月期のシェアを図にすると、このようになります。

大手メーカー5社が、シェア争いをしていることがおわかりいただけると思います。

先ほどのDRAMと比べると、作っているメーカーの数が増えたので各社で少しずつシェアを分け合っています。

シェア最大のSamusngとシェア最小のMicronでは、3倍近く差があります。

NANDフラッシュメモリ業界は、DRAMと比べてメーカーの淘汰が進んでいないので、参入している会社が多く競争が激しいです。

シェア1位はSamusngで1強の状態ですが、2位~4位のメーカーはシェアが似たり寄ったりで3社並んでいます。

5位で一番シェアが小さいのがMicronなので、NANDフラッシュメモリ単体で見るとMicronが一番厳しい戦いを強いられているわけです。

ただ、MicronはDRAMも作っており、DRAMの売上の方がNANDフラッシュより多いです。Micronは会社全体で見ると、NANDフラッシュメモリ単体での見え方よりは、余力があるかもしれません。

競争に負けた会社の行く末

半導体メモリ業界は、競争が激しいと書きましたが、実際に競争に負けるとどうなるのでしょうか。

過去、DRAMメーカーはもう1社ありました。日本のエルピーダメモリという会社です。

詳しいことはこちらの記事で解説していますが、結果的に倒産してMicronに合併されました。

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過去の歴史から見ると、半導体メモリ業界の競争から脱落した会社が出てくると、同業他社に吸収・合併されて吸収した会社のシェアが上がることを繰り返しているように見えます。

競争に負けたメーカーを吸収合併が進んで寡占になっているDRAMと比べて、NANDフラッシュメモリはまだ競争による淘汰が進んでいないです。

今後も競争は続いていくわけですが、長期スパンで見ると競争から脱落したメーカーが、同業他社の合併されることが容易に想像できます。Samsungは、DRAM・NANDフラッシュの両方でトップシェアを持っているので安泰ですが、Samsung以外の会社で開発競争に負けたり、資金が不足したりすると、合併の可能性は大いになります。

まとめ

この記事では、半導体メモリ業界の競争が厳しい理由について解説しました。

ポイントをまとめます。

【半導体メモリの特徴】
・先端技術の塊
・開発スピードが速い
・コモディティ化した製品

【世界のDRAMメーカー】
・Samsung
・SK Hynix
・Micron

【世界のNANDフラッシュメモリメーカー】
・Samsung
・SK Hynix
・Micron
・Western Digital
・Kioxia

【競争を単純化して考える】
・シェアが大きいと有利で一番シェアが小さい会社が圧倒的に不利

半導体メモリ業界の競争は依然として厳しいですが、各社の踏ん張りどころです。

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この記事はここまでです。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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