2000年には日本にDRAMメーカーは4社もあった~生き残った会社は無い現実~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

今回は、かつて日本にDRAMメーカーが4社あった頃の話について書いていきます。日本で最後のDRAMメーカーであったエルピーダメモリが倒産して11年なので、DRAMメーカーが日本で4社もあったのは、20年近く前の話になります。

この記事を書いている日が、2023/2/27なんですが、エルピーダが倒産したのが2012/2/27でちょうど11年経ったのをネットニュースを見て思い出しこんな記事を書こうと思った次第です。

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目次

2000年当時のDRAM世界シェア

エルピーダメモリが倒産してからちょうど11年ということで、記事を書こうと思いついたのはいいものの、エルピーダのことだけを書くよりはかつて日本にも複数社DRAMメーカーがあった時代から時間の流れを振り返った方がわかりやすいと思いました。そこで、日本に複数社DRAMメーカーがあった、2000年くらいから話を始めます。

2000年より前の時代のことを振り返ると、1980~1990年代前半は日本の半導体は世界でもトップシェアを持っていました。NECが世界の半導体売上高ランキングで1位だった時もあります。(出典はこちらです。)世界の半導体メーカーの中で一番ですから、相当強かったことがわかります。(今となっては考えられませんが。。。)

そこから、シェアを落としてきたのが2000年前後です。

今回2000年のDRAMのシェアについて見てみます。

DRAMについてあまりご存じない方は、こちらの記事で解説しています。

かなり古い記事ですが、ネット上に2000年のDRAMのシェアが残っていました。(出典はこちらです。)

当時のシェアを上から8社並べると、このようになります。

  1. Samsung (韓国) 22.9%
  2. Micron (アメリカ) 20.4%
  3. Hynix (韓国) 18.9%
  4. Infineon (ドイツ) 9.4%
  5. NEC (日本) 6.4%
  6. 東芝 (日本) 6.3%
  7. 日立 (日本) 3.7%
  8. 三菱電機 (日本) 2.7%

1~3位は、現在もDRAMを作っている会社です。逆に言うと、4位以下の会社は全て倒産or吸収orDRAMから撤退しています。

20年近く経って振り返っていますが、20年経って4位以下のメーカーは倒産or吸収orDRAMから撤退すると当時予想できた人はいないかもしれません。

2000年のシェアランキングで4位以下だった会社が、どのような道を歩んだかをそれぞれ見ていきます。

現存する3社以外はどうなったか

Samsung・Micron・Hynix以外の会社の行く末としては、3つのグループに分かれます。

  • Infineon
  • 東芝
  • NEC・日立・三菱電機

1つずつ見ていきます。予想されている方もいらっしゃるかもしれませんが、NEC・日立・三菱電機のDRAM部門の歩みが一番複雑です。

Infenion

最初に紹介するのが、Infineonです。あまり聞きなじみが無い方もいらっしゃるかもしれせん。Infineonという会社は、もともとドイツの電機メーカーであるシーメンスという会社から、半導体部門が独立して1999年にできた会社です。

Infineon自体は今でも残っており、車載向け半導体や、パワー半導体を作っています。パワー半導体のシェアは、世界でトップだと言われています。(2023年現在)

それでは、Infineonが持っていたDRAM部門はどうなってしまったのかと言うと、最終的に倒産しました。2006年に、Infineonの半導体メモリ部門が、キマンダという会社に分離されました。しかし、2009年にキマンダは倒産してしまいます。

当時は、DRAMの値段が暴落していてどのメーカーも厳しい状況でしたが、エルピーダメモリが2012年に倒産するよりも一足先にキマンダは倒産しています。

キマンダが倒産した結果、ヨーロッパのDRAMメーカーは無くなってしまいました。日本のDRAMメーカーも2012年に無くなってしまいましたが、ヨーロッパは一足早かったわけです。

東芝

次に紹介するのが、東芝です。東芝は、今でこそロジック半導体やメモリを作っていませんが、NANDフラッシュメモリを作っているキオクシアはもともと東芝の半導体部門でした。

東芝は、DRAM部門の市況が悪化していることを受けて、2001年に汎用DRAM部門から撤退し製造装置などをMicronに売却しています。(当時のプレスリリースはこちらです。20年経っても残っていました。。。)

あえてここで、東芝は「汎用DRAM部門」を売却したと書きました。正確なことを言うと、汎用ではないDRAMはまだ撤退していないことを示しています。汎用ではないDRAMと言われて、何を言っているのかパッとわかる方は相当半導体に詳しい方だと思います。特殊なチップには「汎用ではないDRAM」が積まれていることがあるんですが、ほとんどのDRAM事業からは2001年時点で撤退したと考えて頂いて問題ないです。(汎用ではないDRAMについて説明しようとすると大変なので、今回は記事に書きませんがそのうち書いてみたいと思います。)

今となっては、東芝はパワー半導体くらいしか作っていませんが、当時は「ロジック半導体」「DRAM」「フラッシュメモリ」を作っているメーカーだったんです。今でいうと、これら3つを全て作っているメーカーはSamsungくらいなので半導体に関しては、かなり手広くやっていたことになります。

本論からはずれますが、東芝は先端ロジック半導体の開発から2011年に撤退しているので(出典はこちら)、DRAM・先端ロジック半導体から順々に撤退して、最後に残っていたのがフラッシュメモリだった形になります。最後に残っていたフラッシュメモリ部門も、不正会計事件の影響で分社化して最終的にキオクシアとして独立してしまいました。

NEC・日立・三菱電機

最後に紹介するのが、NEC・日立・三菱電機の3社です。記事の最初でエルピーダメモリのことを言っておきながら、ここまで出てきませんでしたが、これら3社が最終的にいきついたのがエルピーダメモリです。

日本の電機メーカーのDRAM部門が本体から切り離され始めたのが、2000年前後なんです。

それまではNECと日立は、それぞれDRAM部門を持っていました。NECは世界の半導体売上高ランキングでトップに立ったことがあるような会社なので、昔は半導体の売上高は非常に高かったわけです。

しかし、韓国勢の台頭もありDRAMの収益性が悪化してきます。DRAMをはじめとした半導体部門が大幅な赤字を出すと、会社全体で見た赤字額にダイレクトに効いてくるので、半導体部門を本体から分離しようとするわけです。大きな電機メーカーの連結決算を見たときに、他の部門が黒字でも半導体部門が巨額の赤字を出すと、会社全体が赤字になってしまうので、致し方ない判断でしょう。

そして、NECと日立のDRAM部門がそれぞれの本体から切り離されたうえで、合併して作られた会社が、NEC日立メモリです。(1999年12月設立) 20年前の話ですけど、NEC日立メモリという名前の付け方が、何とも日本的な発想だと感じてしまいます。

例えばの話ですが、日本の自動車メーカーが合併したとして、スズキとホンダが合併して、ホンダスズキという社名にしているのと同じことです。自動車メーカーがこんなことをしたら滑稽に見えるのに、半導体業界だと本当にあった話なんですよね。

とはいえ、NEC日立メモリは2000年にエルピーダメモリと名前を変えています。その後、2003年に三菱電機のDRAM部門がエルピーダメモリに吸収され、結局東芝以外の日本のDRAMメーカー3社は、エルピーダメモリに集結しました。

東芝以外の日本の3社が1社に統合した、いわゆる日の丸半導体のDRAMだったわけですが、最終的にエルピーダメモリは2012年に倒産します。エルピーダが倒産した理由に関しては、wikipedia当時の社長のインタビュー記事湯之上さんの記事など様々な方が書かれています。

エルピーダが倒産した当時内部にいたわけではないので、実際のところ何が起こっていたのかはわかりません。しかし、事実としてエルピーダメモリの倒産時の負債額は4480億円で当時としては製造業で負債額が最大の倒産だったようです。(2023年現在では、自動車部品メーカーのマレリが1兆円の負債で倒産して最高額を更新しているようです。)

もし自分が社員の立場だったとすると、倒産の前兆を察知することはできないですし、突然会社が倒産したという印象を受けるでしょう。負債総額4000億円超えなことを見ても、大企業でも倒産することはありえるんだということを、はっきりと感じさせられる出来事です。

現在の3社体制に移行

エルピーダメモリが倒産したことで、起こったことが2つあります。

1つ目は、DRAMを作るメーカーが韓国メーカーとアメリカメーカーだけになってしまったことです。エルピーダメモリが日本のメーカーとして最後まで残っていましたが、エルピーダの倒産で世界でDRAMを作る会社が2か国しかないことになりました。

半導体だと企業の淘汰が進んでいるのであまり驚きではありませんが、自動車や自動車部品を作るメーカーが世界で2国の会社だけになってしまったと考えると、驚きではないでしょうか。

2つ目は、DRAM業界は3社体制になり、完全な寡占市場に移行したということです。完全な寡占市場と言っているのは、DRAM市場には事実上3社しか会社が無いわけで、その中で競争はありますが、3社のうちのどこかが倒産する可能性は非常に低いです。(3社ともそれなりのシェアを持っているからではありますが。) 

もし3社のうちシェアの一番低い1社が倒産したとすると、残りは2社となります。市場で2社しか企業が無いということは、1社のシェアが過半数を超えると独占企業に近づきます。そして、消費者は2社のうちどちらかから買うしかないので、必然的に価格は上昇していきます。

そうすると、3社から1社淘汰されて2社体制になる可能性は非常に低くなるので、寡占市場として安定する方向に動きます。(とはいえ、2022年後半からDRAM市場は寡占市場にもかかわらず市況が悪化しているようです。)

時の流れは巻き戻すことができないので、DRAMメーカーはおそらく3社体制が続くことでしょう。寡占市場になると、価格は下がりにくくなるので消費者からするとメリットは少ないですが、半導体業界は新規参入の障壁が高いので競合メーカーは簡単には出てこれないので仕方ないことです。

歴史は繰り返すのか

2000年に4社あった日本のDRAMメーカーが、1社は撤退、残り3社が合併して最終的には倒産するという、日本からすると悲しい出来事の多かったDRAM業界について見てきました。

DRAM業界のここ20年の歴史を振り返って、個人的に恐ろしいと感じたことがあります。DRAM業界の再編は、DRAM価格の下落が原因となっています。冒頭で記事を紹介しましたが、半導体メモリにはDRAMともう1つ、フラッシュメモリがあります。

フラッシュメモリを作っているメーカーは5社あり、DRAMメーカー3社+ウエスタンデジタル+キオクシアです。このうち、キオクシアは日本の会社です。

フラッシュメモリ業界では、ウエスタンデジタルとキオクシアが製造で協力しているので実質4社体制ですが、4社であるということは、まだ会社が淘汰される可能性が残っています。Samsungは、DRAMでもフラッシュメモリでもトップシェアであり、淘汰される可能性は低いことを考えると、淘汰される可能性があるとすれば残りの4社のどこかということになります。

4社について見てみると、Micronとウエスタンデジタルはアメリカの会社であり、アメリカは安全保障上の理由で半導体の生産を確保する姿勢を見せているので、やすやすと淘汰されることはないでしょう。Micronとウエスタンデジタルの経営が危なくなったとしても、安全保障上の理由を考えれば救済される可能性が高いです。

そうすると、残るはSK Hynixとキオクシアの2社です。今後DRAMやフラッシュメモリの価格が暴落した時に淘汰される可能性があるとすれば、SK Hynixとキオクシアのどちらかでしょう。

韓国としては、半導体に関してはSamsungという巨人がいますし、SamsungはSK Hynixの完全な上位互換なのでSK Hynixを積極的に守る理由がありません。また、日本のキオクシアはフラッシュメモリしか作っていないことが気がかりです。フラッシュメモリだけの価格が暴落した時には、一番影響を受けるのがキオクシアでしょう。

アメリカは、半導体の安全保障上の重要性を理解していますが、日本は過去にDRAMメーカーのエルピーダメモリを倒産させている先例を見ると、半導体が自国で生産できることの重要性を理解していないでしょうし、キオクシアが経営危機に陥っても公費を投入して救済する可能性は低いと考えられます。

というわけで、半導体メモリの価格が暴落した時に業界再編が起こったとすると、淘汰される可能性が高いのはSK Hynixとキオクシアの2社だということがわかります。

まとめ

今回の記事では、かつて日本にDRAMメーカーが4社あった頃の話について書きました。時の流れは巻き戻すことはできませんが、2000年当時4位以下のシェアだったメーカーは今では残っていません。

また、エルピーダメモリ倒産の歴史から見て半導体メモリの暴落がきっかけで業界再編が起こった時には、SK Hynixとキオクシアが淘汰される可能性が高いと考えられます。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。Twitterもやっているので、面白かったらフォローお願いします。

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