みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、Western Digitalの2023年7-9月期の決算について解説します。
HDD部門とNANDフラッシュ部門の分離
2023年7-9月期の決算を見ていく前に、Western DigitalはHDD部門とNANDフラッシュ部門を分離することを発表しました。Western DigitalのIRサイトに詳しい内容が載っています。
具体的には、HDD事業を現在のWestern Digitalに、NANDフラッシュメモリ部門を新会社(名称未定)に分離してスピンオフする予定みたいです。スピンオフの事例というと、国内だとコシダカがカーブスをスピンオフしたものくらいしか思い浮かびません。
とりあえずは、2024年の上半期下半期まで(2023/10/31修正:2Hの訳を間違えて上半期にしていました。正確には下半期です。)にスピンオフを行う予定のようなので、HDD事業とNANDフラッシュ事業はこのままいけば分離されることになるでしょう。もともと、Western DigitalはHDDの会社でNANDフラッシュを手掛けていたSanDiskを買収した経緯を考えると、時間が経過して元に戻ったともいえるでしょう。
NANDフラッシュ部門がスピンオフされたとしても、スピンオフされた会社がキオクシアと協業していることは変わりないので、JVを介した協業の枠組みは続きそうです。
売上と利益の推移
NANDフラッシュ部門のスピンオフの話は置いておいて、2023年7-9月期の決算を見ていきます。
売上高
まず売上高の推移を見てみます。
2023年7-9月期は、先期と比べて売上高は微増といったところです。次に、HDD部門とNANDフラッシュ部門のそれぞれの売上高を見てきます。
HDD部門の売上高は下降傾向が続いています。一方、NANDフラッシュメモリの売上高は、2023年1-3月期を底にして上昇に転じています。
粗利・当期純利益
次に、粗利・当期純利益を見ていきます。
HDD部門は、売上高が減少しているものの、粗利はプラスの状態が続いています。一方、NANDフラッシュメモリ部門は、2023年1-3月期から粗利がマイナスの状態になっていて、3四半期連続で粗利の時点で赤字になっています。最悪期よりは、NANDフラッシュメモリ部門の売上は回復していますが、まだ粗利で赤字なので厳しい状況は変わっていません。
当期純利益を見て見ると、このようになっています。
2023年4-6月期を底にして、若干回復傾向が見えます。とはいえ、1四半期で6億ドル程度の赤字なのでもう少しNANDフラッシュメモリの市況が回復しないと、純利益で黒字になる線は遠いようです。4四半期連続で赤字ですから、厳しい状況は続いています。
貸借対照表から財務を見る
2023年7-9月期の、貸借対照表を見てみます。
先期からそれほど大きく変わっていません。自己資本比率は、45.8%程度でした。
Western Digitalの今後の展望
HDD部門とNANDフラッシュ部門を分離する方向性なので、今後の展望としては赤字が続いているNANDフラッシュメモリ部門は、市況の回復を期待していくしかないのではないかと思います。
HDD部門に関しては、売上高の減少トレンドは続いているものの、事業としては黒字なのでどういう成長戦略を描くかがキーになるでしょう。HDD部門から見れば、NANDフラッシュメモリ部門の赤字に足を引っ張られていた形だったので、単独の決算になれば好転するのは間違いないと思います。
一方、NANDフラッシュメモリ部門はフラッシュメモリ市場の市況低迷時に稼いでくれていたHDD部門が無くなるので、いかにフラッシュメモリ事業単体として稼げるか、そして不況期に耐えられる財務体質を作っていくのかが、今後のキーになるでしょう。
NANDフラッシュメモリ事業は、スピンオフされるとはいえキオクシアとの協業は続いていくでしょうから、いかに利益を上げられる構造を作れるかが今後の会社の重点になると思われます。
まとめ
この記事では、Western Digitalの2023年7-9月期の決算を解説しました。
スピンオフの話が急だったので、悩みながら書いていますが、NANDフラッシュメモリ事業単体でいかに利益を確保していけるのかが、スピンオフ後の会社の重要な課題になると考えられます。
記事の中でわからないところや、誤っている点がありましたらコメントかお問い合わせフォームから連絡いただけると助かります。(過去にも、読者の方からの指摘を頂いて内容を修正したことがあります。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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