半導体工場で使われる危険な薬液やガスを解説~危険な薬品を安全に扱う技術があるから半導体デバイスを作ることができている~

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、半導体工場で使われる危険な薬液やガスを紹介していきます。

記事のコンセプトは、「危険な薬品やガスを使っているから半導体工場は危ない」のではなく「危険な薬品類を安全に扱える技術がある」からこそ私たちが半導体デバイスを使えていることを理解していただくことです。(自分への反省も踏まえて今回の記事を書いています。)

私たちの生活の中で欠かせないスマホやパソコンは、半導体デバイスで作られているようなものなので、危険な薬品を安全に扱う技術が、私たちの生活を支えているわけです。

本編は、3つに分かれています。

・薬液編
・ガス編
・どうやって管理しているのか

目次

薬液編

1つ目に紹介するのが、薬液編です。

半導体デバイス製造には、たくさんの薬液が使われています。一般的には危険な薬品とされるものもたくさん使われているので、なぜ危ないのかを含めて解説します。

フッ酸系

半導体工場で使われる危険な薬品として、筆頭にあげられるのがフッ酸です。フッ酸の正式名称は、フッ化水素酸でフッ化水素を水に溶かしたものです。半導体関連で、フッ化水素酸のことを指す場合、「フッ酸」と呼ばれることが多いです。

フッ酸は、化学式で書くとHFです。フッ酸という名前に「酸」が入っているとおり、酸性の液体です。

しかし、酸性であることよりも、F(フッ素)が入っていることが厄介です。フッ酸の詳しい特性は、wikipediaのページをご覧ください。

人体に触れると、フッ酸に含まれるFが体内のカルシウムと強く結合するため、体内のカルシウムや骨を侵す恐ろしい薬品です。手に着いた直後は特に何も起こりませんが、あとから激痛に襲われると言われています。

普段、フッ酸を使う機会は無いと思いますが、万が一手に触れた場合は、流水で流して必ず病院にいくようにしてください。処置が遅くなると、触れた部分ごと壊死してしまうこともあります。

それだけ危険なフッ酸を使う目的としては、SiO2を溶かすことです。SiO2はシリコンを酸化してできる物資で、様々な薬品に対して高い耐性を持っています。しかし、フッ酸を使うことでSiO2を溶かして除去することができるんです。

フッ酸と一言で言っても、半導体工場で使われるフッ酸には濃度や混合の仕方でいくつか種類があります。

濃フッ酸

フッ酸の中でも特に濃度が濃い物を、濃フッ酸と言います。だいたい、50%程度の水溶液で売られています。

濃フッ酸は、他の場合と比べて非常にフッ酸の濃度が濃いので、SiO2を多量にエッチングする場合くらいにしか使われませ年。

BHF

BHFは、Bufferd HFの略で、フッ酸とフッ化アンモニウム(NH4F)溶液の混合液です。混合比率は、用途によりけりですが、SiO2膜をエッチングするときのエッチングレートを安定化させるために使われることが多いです。

DHF

DHFは、濃度の薄いフッ酸です。DHFが使われる工程は色々ありますが、目的にしているのはシリコン表面に形成される自然酸化膜の除去です。

半導体デバイス製造では、シリコン基板が主に使われます。シリコン基板は、空気中に放置しておくと、空気中の酸素とシリコンが反応し、表面に薄いSiO2膜が形成されます。(表面に形成される薄いSiO2膜を自然酸化膜と言うことが多いです。)

自然酸化膜が形成されていると、シリコン基板に対して金属などを通して電気的なコンタクトを取る時に、障害になります。つまり、シリコン表面を露出させたい場合にDHFを使って自然酸化膜を除去するわけです。

DHFを使うと、シリコンの自然酸化膜の特性をよく見ることができます。空気中に置いておいたシリコンは、水につけると水が表面につくことから、親水性であることがわかります。しかし、表面が親水性だったシリコンをDHFに数十秒つけると、基板表面は水を弾くようになり、撥水性を示します。(実際に実験してみると、本当によくわかります。実験設備のある場所でないとできないですが。)

この理由は、シリコンの表面自体はもともと撥水性です。しかし、空気中の酸素と反応して表面に形成されたSiO2は親水性です。つまり、DHFにつける前のシリコン表面が水になじんだのは、表面に形成された自然酸化膜が親水性だったからなんです。

こういうわけで、シリコンは空気中に置いておくと表面が自然酸化膜に覆われてしまうので、自然酸化膜を取りたい時に主にDHFが使われます。

フッ硝酸

フッ酸系の薬品で最後に紹介するのは、フッ硝酸です。フッ硝酸は、フッ酸と硝酸を混ぜた薬液です。

フッ酸だけでも十分危ないんですが、硝酸も混ぜています。フッ硝酸を使うときは、シリコン自体をエッチングしたいときです。シリコンは、フッ酸や硝酸単体には溶けません。しかし、フッ酸と硝酸を混ぜてやることで、硝酸がシリコンを酸化してSiO2を形成し、硝酸が作ったSiO2をフッ酸がエッチングすることで、シリコンを溶かすことができます。

登場する機会は他の薬品と比べて少ないですが、どうしてもシリコンをエッチングしないといけない場合に使われます。

硫酸

硫酸は、聞いたことがある方も多いかもしれません。硫酸は大きく分けて、濃硫酸と希硫酸に分かれます。

濃硫酸は、文字通り濃度の高い硫酸のことで、脱水作用が強いです。硫酸は揮発しないので、衣服に着くとずっと残りつづけてそのうち穴があきます。脱水作用に関しては、Youtubeに砂糖に濃硫酸を掛けたらどうなるかという実験動画がありました。

最終的に、砂糖からは煙が出て真っ黒になってしまいます。砂糖は、有機化合物ですが濃硫酸の脱水作用で、H2Oが抜かれてしまい、結果的に炭素(C)だけが残っています。砂糖が最終的に黒くなってしまったのは、炭素(C)の色になってしまったからです。

濃硫酸を薄めると希硫酸になります。濃硫酸を薄める時に、濃硫酸に水を入れるのと、水に濃硫酸を入れるのとでは、どちらが正しいのかは高校化学の教科書に書いてあったような気がします。水に濃硫酸をゆっくり入れないといけないです。

濃硫酸と水が混ざる時に、溶解熱が発生します。大量に濃硫酸があるところに、少量の水を入れると溶解熱で水が突沸して、周りの硫酸もとろも飛び散ります。(やってしまうと事故なので、絶対にやらないでくださいね。)

この時代なので、実際に濃硫酸に水を入れてみた実験動画が上がっています。

最終的に動画の中では、濃硫酸の中にお湯を入れて、硫酸が飛び散ることを確認しています。ちゃんと防護できていない状態で、飛び散った硫酸がかかると危険なので、大学等で実験を行う時には、気を付けないといけません。うっかりミスで、簡単に事故は起こってしまいます。

濃硫酸であっても、希硫酸であっても、手についてしまったときは、大量の水で洗い流すのが鉄則です。硫酸は水に溶けると時に溶解熱を発しますが、大量の水で洗い流した場合硫酸が溶ける熱よりも、流水が運んでくれる熱の方が多いので、とにかく大量の水で流した方が良いと言われています。(私自身、硫酸が手についたことはないんですが、実験施設であれば硫酸等の薬品を扱う場所の近くに、大量の水が流せる緊急シャワーが設置されているので、急いで使うしかないですね。)

過酸化水素水

過酸化水素水は、H2O2と書かれます。普通の水分子(H2O)より、酸素(O)が1つ多いです。

普通の水と比べて、Oが1つ多い構造を持っていることから、酸化力を持っています。半導体デバイス製造では、過酸化水素水を単体で使うことはあまりありませんが、他の薬品と混ぜて使われることが多いです。

あとから解説しますが、硫酸と混ぜて硫酸過水として使ったり、アンモニアと混ぜてアンモニア過水として使われます。薬品に酸化力が必要な工程で使われます。

硫酸過水

硫酸過水というのは、独特の名前かもしれません。名前の通り、濃硫酸と過酸化水素水を混ぜた溶液です。

一般的には、ピラニア溶液と言われることが多いかもしれません。ピラニア溶液の混合比率は色々ありますが、濃硫酸が多めの比率になっていて、濃硫酸に過酸化水素水を加えて作られます。

濃硫酸に過酸化水素水を加えて作られるので、濃硫酸への溶解熱に加えて、濃硫酸と過酸化水素水が反応するときの反応熱も出るので、薬液自体が非常に熱くなります。(ビーカーで作ると、火傷するんじゃないかと思うくらい熱くなります。)

硫酸過水は、濃硫酸と過酸化水素水を混ぜて作られるので、非常に強い酸化力を持っています。酸化力が強いので、有機系の汚れをほぼ完全に取ることができます。

半導体デバイス製造では、レジストと呼ばれる有機化合物で作られた膜を使うことが多いですが、レジストが付いたシリコン基板を硫酸過水の中に入れてしばらく置いておくと、レジストが跡形も無くなってしまいます。そのくらい、酸化力が強い溶液なわけです。

強い酸化力を持っているので、有機系の液体を入れてしまうと爆発的に反応が進んで危険なので、間違っても有機系の溶液を混ぜないようにしましょう。(これも実際にやったことはないですが、有機廃液を間違えて入れてしまうと急激に反応が進んで、溶液が飛び散ってしまうようです。)

あとは、過酸化水素水を使っている関係で、溶液から酸素が出てくるので、爆発等にも気を付ける必要があります。

塩酸

塩酸は、塩化水素(HCl)を水に溶かした溶液です。硫酸と違って、塩化水素自体は気体なのでずっと放置していると、揮発していきます。

塩酸という名前がついている通り、強い酸です。半導体デバイス製造で、塩酸が単体で使われることは少なく、SC2と呼ばれる洗浄工程で使われます。SC1・SC2に関しては、Semi-journalさんの記事でわかりやすく解説されていたので、詳しい内容はこちらの記事を読んでみてください。

Semiジャーナル
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アンモニア水

アンモニア水は、アンモニア(NH3)を水に溶かした溶液です。アルカリ性の溶液で、弱アルカリとして扱われることが多いです。

半導体デバイス製造に関しては、先ほど紹介したSC1洗浄の工程で、過酸化水素水と混ぜて使われます。SC1工程以外で、ピンポイントでアンモニア水を使う工程はあまりないのではないかと思います。(ガスとしてもアンモニアは成膜工程で使われますが、アンモニア水という溶液の形で使われることは少ないんじゃないかと。)

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超純水

薬液編の最後は、超純水です。超純水は、普段私たちが使っている水の純度を極限まで高めたものです。

水の純度に関して、普段意識することはないと思います。ですが、半導体デバイス製造に使う水は、水の中に溶け込んでいる不純物を極限まで取り除く必要があります。

薬局などで売られている蒸留水なども、水の純度を高めた純水の一種です。しかし、半導体向けの水はさらに純度を高めて超純水と呼ばれるレベルまで純度を高めています。純水を必要とする産業は多いですが、その中でも半導体産業は一番水の純度の要求が高いです。

超純水の厳密な定義は実はないんですが、半導体製造だと水の抵抗率が18.24MΩ・cm(メガオームセンチメートルと読みます)に限りなく近いものを使っています。たとえ話だと、東京ドームの中に角砂糖1個分しか不純物が含まれていないくらいに、水の純度を高めていると言われることがよくあります。

半導体工場では、超純水を自前のプラントで作っているわけですが、詳しく知りたい方は、オルガノのページがわかりやすかったので、読んでみてください。(オルガノさんは、超純水を作るための日本のプラントメーカーです。)

https://www.organo.co.jp/purewater/

ガス編

ここまで、半導体工場で使われる危険な薬液編を解説しました。ここからは、半導体工場で使われる危険なガスについて解説していきます。薬液編だけでもかなりたくさんの薬液を使っていることはおわかりいただけたと思いますが、ガスも色々使っています。

半導体工場で使われる危険なガスは、成膜系とエッチング系に大きく分かれます。

成膜系

まずは、危険なガスとして成膜系で使われるものを解説します。半導体デバイスを作るために、シリコンウエハの上に膜を付けていく必要があるんですが、膜の原料としてたくさんのガスが使われます。

アンモニア

アンモニアは、アンモニア水のところで1度出てきました。化学式はNH3で表されます。色々な用途で使われるんですが、代表的な使われ方を紹介すると、SiN(シリコンナイトライド/窒化シリコン)を成膜するときに使われます。

SiNは、シリコンの窒化膜として半導体デバイスではよく使われています。SiNは、ドライエッチング等を行うときにSiO2とのエッチングレートに差をつけることができます。

シラン

シランは、SiH4で表されるシリコンの化合物です。メタン(CH4)のCがSiに変わっています。

シランは、空気中の酸素によって酸化されてH2OとSiO2に分解され、濃度が高いと自然発火します。つまり、めちゃくちゃ危ないガスです。基本的に工場の中で漏れたらNGなガスですが、よく使われています。

シリコン系の膜を付ける時の、原料として供給されることが多く、危険性は高いですがかなり重要なガスです。

過去には、大阪大学でシランガスの逆流事故で学生さんが亡くなる事故が起こっています。(詳しく知りたい方は、こちらのリンク先で事件の概要が見られます。)大学の小規模施設であっても爆発事故が起こるくらいに、危険なガスであることは間違いないです。

ジクロロシラン

ジクロロシランは、シランの水素原子(H)を2つ塩素原子(Cl)に入れ替えたものです。化学式では、H2SiCl2と書きます。略称でDCSと呼ばれることも多いです。

半導体製造では、ジクロロシランとアンモニアを同時に流してSiN膜を形成するのに使われることが多いです。

毒性が高いので、こちらも取り扱いには注意が必要なガスの一つです。

ボラン・ジボラン

ボランは、化学式でBH3と書かれます。ボラン単体だと不安定なので、二量体を形成してB2H6のジボランの状態になることもあります。

ボラン・ジボランは、半導体デバイスを作るときに付ける膜の中にB(ボロン/ホウ素)を入れるために使われます。

例えば、BをドープしたSiO2膜や、BをドープしたSi層を作る時に使われます。

ジボランは、空気中で自然発火するので、扱いには最新の注意が必要です。(半導体デバイス製造に使われるガスで、自然発火するやつ多すぎですよね。)

ホスフィン

ホスフィンは、化学式でPH3と表されるガスです。ボラン・ジボランと反対で、膜中にリン(P)を入れたい時に使われます。

ホスフィンも、自然発火するガスです。その中でも、非常に毒性が高く毒物指定されているガスです。(劇物と毒物では、毒物の方が人体に対する危険性が高いです。)

非常に危ないガスではありますが、半導体工場ではよく使われています。

アルシン

アルシンは、化学式がAsH3で表されるガスです。

ヒ素(As)を含むので、毒性が高いことはなんとなく想像はつきますが、先ほど紹介したホスフィンよりも毒性が高いと言われています。また、アルシンの特徴は曝露した場合の症状が、数時間から数日たってから現れる可能性があることです。

曝露した瞬間は気づかなくても、あとから症状が出てくる質の悪いガスです。用途しては、GaAsなどのAsを使う化合物半導体の材料や、イオン注入でAsを使いたい場合の原料ガスとして使われることが多いです。

エッチング系

エッチング系のガスは、種類は色々ありますが代表的なものを紹介します。

四フッ化炭素(CF4)

四フッ化炭素は、化学式でCF4と表されるドライエッチングでよく使われるガスです。

メタン(CH4)のHをFに置き換えたものです。半導体だと、ドライエッチングのために使われるガスで、加工する槽の中にガスを流して電力を投入してプラズマ化することで、エッチングしたい対象物をエッチングしています。

直接吸引するのは良くないですが、今までのガスと比べて反応性は低いです。私が学生の頃でも、ドライエッチング装置で使っていたようなガスです。プラズマ化した時に、紫色の発光が見られるのが特徴です。

六フッ化硫黄(SF6)

六フッ化硫黄は、化学式でSF6と表されるガスです。

こちらも、半導体のドライエッチングでよく使われます。硫黄(S)にFが6つついた形をしていて、化学的性質は安定しています。

シラン・ジボラン等のガスに比べて安定しています。ドライエッチング装置で使われることがほとんどなので、装置の中の加工槽に導入されて、プラズマを立てて使うことがほとんどです。

フッ素(F2)

フッ素は、化学式でF2と表されるガスです。

成膜プロセスやエッチングプロセスを行う装置内のクリーニングに使われます。(読者の方に教えていただきました。ありがとうございます。)

非常に反応しやすく、ほとんどの元素と反応する恐ろしいガスです。猛毒として知られているので、なかなかお目にかかる機会はありません。wikipediaの解説に、「常温常圧では淡黄褐色で特有の臭い」と書いてありました。

フッ素ガスの臭いを命がけでかぎ取った人がいるのかなぁなんて思ってしまいましたが、どうやって確認したんでしょうかね?先人が確認してくれているからこそ、私たちはフッ素の臭いがどんなものなのか知ることができています。

三フッ化塩素(ClF3)

三フッ化塩素は、化学式でClF3と表されるガスです。(こちらも読者の方に教えていただきました。ありがとうございます。)

SiO2のエッチングや、チャンバークリーニング用途に使われるようです。塩素とフッ素の化合物なので、特性を知らなくても危険そうな雰囲気はしますが、やはり危険なガスです。

空気中では、加水分解してHF(フッ化水素)と塩素含有化合物になるようです。自然発火しないにしても、分解してHFが生じるのは非常に恐ろしいですね。HFは手に付着しただけでも危ないのに、吸入してしまったら大変なことになるはずです。

三フッ化窒素(NF3)

三フッ化窒素は、化学式でNF3と表されるガスです。(こちらも読者の方に教えていただきました。ありがとうございます。)

CVD装置のチャンバークリーニングに使用されているそうです。半導体プロセスに着目して、デバイスを作るときに使われるガスのことばかり考えていましたが、実はクリーニングに使われるガスの方が危ないかもしれないな、と感じるようになりました。

半導体デバイスを作るときに使われるガスは、シリコン・SiO2・SiNなどをエッチングできればいいわけですが、チャンバークリーニング用のガスは、副生成物や堆積物などを除去できないといけないので、より強力なものが使われているのかもしれません。

三フッ化窒素は、単体での毒性は低いそうですが、支燃性があるのが危ないポイントです。助燃性(支燃性)は、空気中の酸素のように物質の燃焼を助ける性質のことです。つまり、他の物質の酸化を助ける働きがあるということです。火気厳禁なのは、間違いないでしょう。(他のガスは、火を近づける前に、空気中で自然発火するものもあるので、まだましかもしれません。)

どうやって管理しているのか

ここまでは、半導体工場で使われる危険な薬液やガスについて解説しました。

半導体デバイスを作るうえでは、使うことが避けては通れないものがほとんどですが、人体に直接触れると危険なものばかりです。ここからは、危険な薬品やガスをどうやって管理しているのかについて解説します。

基本的に人の手に触れない装置構成

半導体工場で危険な薬品やガスを使うのは、基本的に半導体製造装置の中です。危険な薬品やガスは、通常の状態では人の手に触れないように装置が構成されています。

ガスや薬品の供給ラインもありますが、漏れることが無いように厳重にシールされていますし、余程悪意のあることをしなければ、人がいるエリアには漏れないようになっています。

漏水・漏液は一大事

基本的に、人のいるエリアには漏れないように、装置や配管は設計されていますが、100%漏れることが無いとは言い切れません。

半導体工場の中で液体が漏れているのを発見したとしたら、その時はフッ酸の可能性を前提に考えなければいけません。冷却水等もたくさん使われているので、水が漏れただけであれば話は早いんですが、漏液を見つけた時点でフッ酸の可能性を考えないといけないので、漏水が起こると一大事です。

ガス漏れは常時センシングされている

薬液が漏れていることは、ある程度目で見て確認することができますが、ガスが漏れているかどうかは、目には見えないことが多いです。

ガス漏れが仮に発生していたとしても、人の目では気づくことができないので、常時ガス検知器が作動しています。ガス検知器が発報した場合、そのエリアから直ちに退出しなけばいけません。もちろん、ガス検知器も万能ではないので誤報の場合もありますが、実際にガスが漏れていた場合は、結構大事です。

ガス漏れは人間の目に見えないので、漏れているガスとガス漏れ箇所を特定して漏れを止めなければいけません。

このように、半導体工場は危険な薬液やガスを使っている分、漏液やガス漏れに関してはかなり厳重にモニタされています。

危険な薬品を安全に扱う技術があって半導体デバイスが作られている

半導体工場では、危険な薬液やガスを使ってデバイスを製造しています。危険な薬液やガスを使っているのは事実ですが、危険なものを使っているからこそ、漏れないように装置や配管設計がなされていますし、漏れていないかのセンシングは厳重に行われています。

つまり、当たり前のように半導体デバイスを使っている私たちの生活は、危険な薬品やガスを安全に扱う技術があってこそ、成り立っていると言っても過言ではありません。

薬品やガスを扱うことが危ないと感じる方は多いとおもいますが、人体に直接触れないような仕組みが作られていて、そのうえで半導体デバイスを作る環境があることを理解していただけると嬉しいです。

普段使っているスマートフォンやパソコンは、半導体工場の安全管理の技術が根幹にあると考えると、少しは親近感を持つことができるのではないでしょうか。

まとめ

この記事では、半導体工場で使われている危険な薬品やガスについて解説しました。

実際に直接触れたりすると危険なものばかりですが、危険な薬品やガスを安全に扱う技術があってこそ、工場でモノが作れているわけです。

このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。

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この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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