みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、2023年10-12月期(Micronだけ1か月ずれてますが)の半導体メーカーの決算を比較していきます。
今回、業績を比較するのはこの5社です。
・Samsung
・SK Hynix
・Micron
・Western Digital(WD)
・キオクシア
半導体メモリメーカーは主要な会社は5社しかないんですが、各社が決算発表で公表しているデータがまちまちで、単純な比較が難しいです。
例えば、半導体メモリでシェアトップのSamsungは、DRAMとNANDフラッシュメモリを作っていますが、自社の決算発表では、DRAMとNANDフラッシュに分けたそれぞれの売上は公表していません。
他社は、売上高だけでもDRAMとNANDフラッシュに分けてデータを公表していたりするんですが、トップシェアのSamsungが公表してくれないので、なかなか比較が難しいところです。
そこで、今回は単純に各社のメモリの売上高を比較することにしました。DRAMとNANDフラッシュメモリを合わせた、半導体メモリの売上高であれば、各社同じものさしで比べることができます。
WDだけ、HDDとNANDフラッシュを作っているので、WDに関してはNANDフラッシュだけの売上としています。キオクシアは、NANDフラッシュしか作っていないので、全社の売上をNANDフラッシュメモリとしてカウントしています。
SK HynixとMicronは、DRAMとNANDフラッシュを作っているので、2つを合わせたものを半導体メモリの売上としています。
Samsungに関しては、メモリ部門だけの売上をカウントしています。(メモリ以外を含めると、規模が大きすぎてフラットな比較にならないからです。)
そして、各社グローバルな会社ですが決算は現地通貨基準で出されています。Samsung・SK Hynixは韓国ウォン、WD・Micronは米ドル、キオクシアは日本円です。
通貨を統一せずに比較しても意味がないですが、通貨を統一しようとすると、為替の影響を反映した形になります。ここでは、世界の基軸通貨である米ドルに換算して売上高を比較しました。
売上高比較
ここから、5社の2023年10-12月期(Micronのみ決算期がずれている関係で、2023年9-11月期のデータです。以後、Micronの売上は2023年9-11月期のものです。)の売上高を比較してみます。
四半期売上高を、各社図にするとこのようになりました。
ちなみに、為替相場はおおよそのトレンドをみたかったので、1ウォン=0.0007ドル、1円=0.0066ドルを使いました。
全体を見ると、DRAMとNANDフラッシュメモリの両方を作っている、Samsung・SK Hynix・Micronの売上の大きさがよくわかります。Samsungに関しては、四半期で110億ドルの売上ですから、円換算すると1兆円近くになります。
この3社を除くとNANDフラッシュメモリしか作っていないWDとキオクシアが、Micronから大きく離れて2社並んでいるような形です。
こう並べてみると、メモリに関してはDRAMとNANDフラッシュの両方を作っている3社が売上では抜きんでています。かつ、シェア的にSamsung>SK Hynix>Micronという順番も固定化しています。
最近、SK HynixがHBMでSamsungやMicronに対してリードしているようですが、メモリ全体の売上という意味では、まだSamsungがトップであることは間違いありません。(将来どうかは、わかりませんが。)
また、キオクシアとWDは前工程で協業して、共同で投資した設備で製造したウエハを折半しているのがよくわかる図になっています。
参考のために、キオクシアとWDの売上を足したものを図に示しています。単純に2社の売上高を足すと、Micronより少し少ないくらいの売上になります。
キオクシアとWDは、NANDフラッシュメモリだけを作っているので、共同投資を行うことで生産規模を増やすことが可能になり、1社ずつ単独で製造するのと比べて価格面での競争力を持っていることがうかがえます。
2023年10-12月期の売上高の比較はこんな形になります。各社の決算については、個別の記事で解説しています。
各社の2023年10-12月期決算の注目ポイントだけ紹介します。
Samsung
・メモリを含めた半導体部門では赤字が続くものの、業績の回復傾向は明らか
・SK Hynixに売上高を抜かれることは無く、メモリ市場での王者の立ち位置を維持
SK Hynix
・DRAM市況の回復で業績はV字回復し、四半期決算での営業利益は黒字化
・生成AIへの投資によるHBM需要の恩恵を受けてDRAMは黒字化
Micron
・DRAMの市況回復は鮮明
・四半期決算で、粗利はプラス転換したため、業績回復の兆しあり
WD
・全社利益は赤字が続くも、NAND部門の粗利はプラス転換
・NAND部門のスピンオフ後の動向に注視が必要
キオクシア
・業績の回復は見られるも、赤字から脱却ならず。DRAMと比べてNAND市況の回復は軟調。
・EBITDAはプラス転換したものの、キャッシュ確保が課題。
2024年1-3月期の展望
さて、2023年10-12月期の各社の業績ハイライトを紹介しました。
全体を通して感じたのは、メモリ不況は2023年中に底を打って回復に転じたということです。(各社の決算を見ると、2023年1-3月期が底だったように見えます。)
半導体メモリの中でも、DRAMに関してはAIへの投資が牽引するGPUに乗る、ハイエンドなDRAMやHBMが好況なため、各社売上増となっていました。
一方、NANDフラッシュメモリは、市況回復は見えていますが、DRAMと比べるとまだメモリ不況前までは、市況が戻っていないです。
DRAMとNANDの違いという考え方もできますが、個人的にはDRAMがAIへの投資を受けて、段違いに伸びているんだと考えています。
2024年1-3月期は、Trendfroceの予測などによると、DRAMもNANDも価格は上昇傾向にはあるようなので、市況回復は続くと見ています。
一方で、メモリ市況は世界経済の影響をダイレクトに受けるので、景気が減速すると業績が悪くなりがちです。日米ともに、株価は上昇傾向にありますが、今後注視していく必要があるのではないかと考えています。
まとめ
この記事では、2023年10-12月期(Micronだけ1か月ずれてますが)の半導体メーカーの決算を比較しました。
新しい試みではありましたが、メモリメーカーの売上高を米ドル基準で比較してみるだけで、色々見えてくるものはあると思います。
記事の内容に明らかな間違いや、誤植、誤解を招く表現等がありましたら、コメントかお問い合わせフォームでご連絡いただけるとありがたいです。(基本的に、頂いたコメント等には全てお返事しております。)
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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