キオクシアが借り換えた優先株の条件を見てみよう

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みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、キオクシアが借り換えられた優先株について、内容を紹介します。

前提として、キオクシアの優先株がどのようなものかを知っている方向けに書いているので、ご存じない方はこちらの記事を先に読んでくださると内容がわかりやすいです。

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優先株の利率が爆上げ

2024年7月19日付で、日本政策投資銀行が出資した優先株について、借り換えできたプレスリリースがキオクシアから出ました。

従来の優先株は、甲種優先株式と乙種優先株式があり、年利は約4%でした。(甲種と乙種でちょっとだけ違います。)

甲種が1200億円、乙種が1800億円相当なので、合計3000億円です。

3000億円に対して年利4%だと、年間の利払いが120億円になり、なかなか負担が大きいと従来から感じていました。

しかし、借り換え後の優先株の利払いの条件は、公表されていませんでした。

借り換え後の甲種・乙種の優先株式の利率が書いてあったわけですが、結構上がってたんです。

甲種
・2024年6月16日まで:4.05%
・2024年6月17日~2025年3月31日:8.05%
・2025年4月1日~2026年9月30日:7.05%
・2026年10月1日~2027年3月31日:8.35%
・2027年4月1日以降:9.65%

乙種
・2024年6月16日まで:4.30%
・2024年6月17日~2025年3月31日:8.30%
・2025年4月1日~2026年9月30日:7.30%
・2026年10月1日~2027年3月31日:8.60%
・2027年4月1日以降:9.90%

借り換え前は、甲種・乙種ともに約4%でしたが、借り換え後は時間が経過するにつれて金利が上がるようになっています。

2027年4月1日以降だと、約10%になるようです。

出資法の上限金利は20%なので、法律の上限と比べるとまだまだ上げる余地はありそうですが、それでも年利10%近くなってくると、かなり厳しくなってくるのではないかと思われます。

優先株の元金は3000億円なので、年利10%近いと利払いだけで年間300億円になります。

NAND市況が好況であれば、返せないことは無い額ですが、不況に陥った時に年間100億円単位で利払いが必要になるのは、苦しいところです。

現金で償還する条件はほとんど変更なし

日本政策投資銀行の優先株には、一部ないし全部を現金で償還することを求められる条項がついています。

借り換え後も大枠は変わっておらず、ざっくり書くとこのような内容です。

・2027年12月17日を経過
・ベイン+東芝+HOYAの保有株式が全体の2/3以下になった時
・ベインの保有株が1/3以下になった時
・ベインが取締役を指名できなくなった時
・キオクシアホールディングスがキオクシアの100%株式を保有しなくなった時
・キオクシアホールディングスが東芝の連結子会社になった時

償還を要求できる時限が先延ばしになったくらいで、他の項目は借り換え前と同じです。

一番最後の、「キオクシアホールディングスが東芝の連結子会社になった時」というのは、東芝がメモリ事業を再度買うことになった場合のことを想定しているんだと思われますが、可能性は非常に低いと思われます。

結果的に、借り換えたので償還の期限を先延ばしにして、他の項目は現状維持といった形です。

償還の条件に着目すると、キオクシアがIPOすること自体は特に引っかからないように見えます。

実際のところ、この優先株を償還しないといけなくなるのは、ベインと東芝がEXITして株を手放す時になると思われます。

時限的な制限が先に来るのか、ベインや東芝のEXITのタイミングが先に来るのかわかりませんが、少なくとも上場しておかないと市場で株を売ることはできないのでIPOをできるタイミングでやっておくことは必要になるでしょう。

さっさと返せという意思を感じる

日本政策投資銀行の優先株の条件を見て、明示されていないながら感じるのは、「さっさと返せ」という意思です。

返済を先延ばしにしていると、金利が上がっていく条件になっているので、キャッシュが確保できるのであれば、先に返済した方が支払額は少なくなります。

しかし、キオクシアに優先株の3000億円分を現金で支払う余力は無いでしょうから、金利が上がった条件をのまざるを得なかったというのが実情ではないでしょうか。

日本政策投資銀行から見ると、キオクシアの優先株を保有し続けるメリットが無いですし、5年経って償還できなかったものをずっと同じ金利で貸しておくこともできないでしょうから、早く返してほしいというのが本音だと思います。

新規上場して、市場から資金を調達できれば返済に充てることも可能かもしれませんが、IPO時にどの程度の株価がつくかは市場次第なので、不透明な点が残ります。

おまけ:四日市工場の土地の賃料

最後におまけです。

先日、日経新聞がキオクシアの四日市工場の土地がヒューリックに売却されたことを報じていました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB068YH0W4A200C2000000

公式プレスは出ていませんでしたが、実際にヒューリックに売却されていました。(土地の登記簿を見て確認しました。)

土地を売却したとはいえ、土地には建物が建っているので賃貸契約を結んでいるようです。

敷金・月額賃料が書いてありましたが、それなりの額でしたね。

自社で保有していれば、月額賃料を支払う必要は無かったことを考えると、工場の土地を売却した時期(2024年2月)は、相当資金繰りが厳しかったことがうかがえます。

オーダーだけ書くと、敷金は億単位、月額賃料は数千万円でした。

あれだけ大きい土地だと、それなりの額になるんだと感じましたし、キオクシアの工場が建っている以上、ヒューリックは毎月月額賃料が入り続けることを考えると、ヒューリックにとっては良い商売だったんだなと感じさせられます。

まとめ

この記事では、キオクシアが借り換えた優先株について解説しました。

優先株の金利が従来よりも上がっていて、早く返してほしい日本政策投資銀行の意思が伝わってきたように感じます。

このブログでは、キオクシアに関する報道をまとめている記事があります。随時更新しているので、ブックマークしていただけると嬉しいです。

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