みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では、半導体メモリメーカーであるキオクシアの2024年7-9月期の決算を解説します。
前四半期比で、増収増益となっており、東芝から売却されて以降最高の決算を更新しています。
キオクシアの公式HPにある決算データは下記リンク先から見ることができます。
2024/11/8には、新規上場に向けた有価証券報告書も出ていますが、今回はとりあえず2024年7-9月期の決算にフォーカスして書いていきます。
有価証券報告書についての記事は、別途特集して書きますのでしばらくお待ちくださいませ。
2024年7-9月期の決算内容
2024年7-9月期の決算内容を見ていきます。
売上高
四半期ごとの売上高を図にすると、このようになります。
NANDも、売上高が回復して東芝から売却されてからの最高を更新しました。
四半期で4800億円の売上なので、年換算すると1.7兆円レベルの売上です。
メモリ不況期の売上高の減少が目立ちますが、ロングスパンで見ると市場自体は成長していることが読み取れます。
利益
次に、利益について見ていきます。四半期ごとの営業利益・当期純利益を図にすると、このようになります。
営業利益・当期純利益ともに、売上高の増加に伴って、最高益を更新しました。
四半期で、1000億円の当期純利益なので、年換算すると4000億円ペースです。
メモリ不況期の巨額赤字がどうしても目立ちますが、NANDも好況期は稼げる事業であり、稼げるフェーズにいることがよくわかります。
ただ、恐ろしいのが2024年1-3月期以降の黒字化した時期の黒字額を合計しても、メモリ不況期の赤字を取り戻せていないことです。
実は、2019年4-6月期から2024年7-9月期までの営業利益を合計すると、約100億円のマイナスです。当期純利益に至っては、2658億円のマイナスです。
NANDは、市況の上下があるので、なかなか安定したキャッシュフローを確保するのが難しい業種ですが、キオクシアのここ5年を見ると、ロングスパンで見ても儲かってはいない状況が続いているように見えます。
とはいえ、好況期に稼げるだけ稼いでおくのが半導体メモリ業界の常道なので、久しぶりに訪れたNANDの好況期でどれだけ稼げるかが、今後のキオクシアの財務体質に直結するので、稼げるとき稼いでほしいと思っております。
減価償却費・EBITDA
ここからは、参考程度ですが減価償却費とEBITDAを見ていきます。
四半期ごとの減価償却費を図にすると、このようになります。
直近1年くらいは減価償却費が減少傾向ですが、これはメモリ不況期に設備投資を抑えた結果、減価償却費として計上する費用が減ったからでしょう。
北上工場のK2が竣工したので、ここからまた増えていくのではないかと思われます。
メモリ不況以前は、四半期で1000億円程度の減価償却費を計上していたことを考えると、設備投資を従前の水準に戻すことで減価償却費は増えていくのではないでしょうか。
EBITDAも、四半期ごとに比べるとこのようになります。
キオクシアはEBITDAを業績の一つの指標にしているので、取り上げています。
営業利益に減価償却費を足したものがEBITDAになります。半導体メモリ業界は、設備投資が大きいので減価償却費が大きくなります。
減価償却費を除いた業績を考えるために、EBITDAが使われます。(個人的には、あまり意味があるとは思っていませんが。)
営業利益が増えた結果、EBITDAも過去最高を更新しています。
こうやって、四半期ごとに並べて見ると、メモリ不況期の厳しさがよくわかります。減価償却費を除外しているにもかかわらず、EBITDAがマイナスになるということは、それだけキャッシュアウトが厳しかったことを物語っています。
NANDの好況期が続けば、EBITDAも伸びていくはずです。
上場に向けて
さて、2024/11/8にキオクシアは上場に向けて、有価証券報告書を提出しました。
時価総額や売出株価は決まっていませんが、上場申請を先に行い、あとから売出価格を決める形になるようです。(日本では初めてのようです。)
有価証券報告書は、見る場所が山のようにあるので別途書きます。
直近四半期の業績だけ見ると、メモリ不況からの回復局面なので、業績が急成長しているように見えます。
ロングスパンで業績を見ない人は、あたかも急成長している企業に見えるかもしれません。
この記事を読まれている方は、キオクシアの直近の業績の回復だけを見て、急成長している企業だと思われることは無いと思います。
ただ、上場するということは、市場で不特定多数の投資家から資金を集めることになるので、半導体メモリに詳しくない人からもお金を集めることになります。
そういう意味では、業績が回復しているこの時期に何としても上場しておきたいという意向があるのではないかと感じます。(もちろん、東証プライム市場は赤字上場できないという理由もあるでしょうが。)
上場できるかどうかという意味では、想定時価総額が1兆円になっているようなので、この線を越えられるかどうかがカギになってくるでしょう。
上場ゴールになってほしくは無いですが、上場しないとファンドと東芝が大半の株式を握っている状況が変わらないので、現状を買えるためには上場するしかないのも事実です。
まとめ
この記事では、キオクシアの2024年7-9月期の決算について解説しました。
東芝から売却後の最高益を更新していますし、上場に向けた追い風になる業績であることは間違いありません。
このブログでは、キオクシアに関する報道をまとめている記事があります。随時更新しているので、ブックマークしていただけると嬉しいです。
2024/5時点で、キオクシアについて詳しく書いた本も出しているので、興味がある方は読んでみてください。
過去のキオクシアの四半期業績も記事しています。
半導体メモリメーカーの四半期業績についても、各社記事を書いています。
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このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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