キオクシアの2023年1-3月期の決算を解説~チキンレースに耐えきれるのか~

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この記事では、日本の半導体メモリメーカーであるキオクシアの2023年1-3月期の決算について解説します。

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目次

決算概要

さっそく、2023年1-3月期のキオクシアの決算を見ていきます。

会社のホームページはこちらです。

キオクシアは、上場していないので詳しい決算内容は公表されていません。売上高・営業利益・当期純利益は公表されていて、こちらのとおりです。

売上高は2400億円程度ですが、営業利益は1714億円の赤字です。
売上高の7割近くの赤字が出るって、衝撃的な決算ではないでしょうか。

当期純利益は、前の四半期が赤字だったので営業利益より赤字額が減少していますが、それでも1300億円の赤字です。

営業利益と当期純利益が1000億円以上の赤字であることから、厳しい状況であることがわかります。

2022年10-12月期(執筆時点では1つ前の期に当たります)の決算について、こちらの記事で解説しています。

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競合他社も、2023年前半は軒並み赤字となっていて、半導体メモリの市況は非常に厳しいです。

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キオクシアの事業内容

キオクシアは何をやっている会社かというと、半導体メモリを作るメーカーです。

キオクシアはもともと、東芝の半導体メモリ部門でした。

しかし、東芝の不正会計事件と原発部門の巨額赤字問題の関係で半導体メモリ部門を売却しなければならなくなり、海外のファンドに売却されました。

売却後も東芝はキオクシアの株を持っていますが、比率は40%程度で経営に関与することができない状況になっています。

半導体メモリの中でも、NANDフラッシュメモリだけを作っているのがキオクシアの特徴です。

【キオクシアの特徴】
NANDフラッシュメモリ一本足打法

他の半導体メモリメーカーは、NANDフラッシュメモリとDRAMを作っていることが多いです。
しかし、キオクシアはNANDフラッシュメモリしか作っていません。

NANDフラッシュメモリとDRAMの違いについては、こちらの記事で解説しています。

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実は、キオクシアの前身である東芝の半導体部門は2001年までDRAMを作っていました。

しかし、競争が激しく2001年にDRAMから撤退しています。

直近の業績との比較

2023年1-3月期の決算について、直近の業績と比較してみます。

比較しているのは、売上高・営業利益・当期純利益です。

【直近の業績と比較】
・売上高
・営業利益
・当期純利益

売上高

1つ目は、売上高です。直近4四半期の売上高を図に表すとこのようになります。

一直線ではないですが、直線的に売上高が減少しています。

ちょうど1年前と比べると、四半期当たりの売上高が1500億円減少しています。比率で考えると、1年で売上が30%近く減少していることになるので、いかに急激かがわかると思います。

競合他社は、NANDフラッシュメモリ以外にDRAMを作っていることが多いですが、キオクシアはNANDフラッシュメモリしか作っていないので、売上は全てNANDフラッシュメモリ事業のものです。

営業利益・当期純利益

2つ目に営業利益・当期純利益を見ていきます。

直近4四半期の営業利益を比べると、このようになります。

2023_2Qをピークに営業利益・当期純利益が急減しています。

2023年1-3月期(2023_4Q)の営業利益は、1700億円近い赤字となっています。

3か月で1700億円なので、年換算すると6800億円の赤字になります。一時的なものなら耐えられるかもしれませんが、半年~1年この赤字が続くと、かなり経営が厳しくなるでしょう。

営業利益の赤字額の他に特に注目すべきなのが、売上高の減少幅よりも営業利益の減少幅の方が大きいことです。

一般的に、売上が減少するのに伴って利益も減少しますが、売上の減少幅よりも利益の減少幅の方が大きくなっています。

ということは、売上は減っているのに製品を作るための経費が増えていることを意味しています。工場を稼働させるための光熱費が上がっているのかもしれませんが、「売上の減少」と「経費の増加」のダブルパンチ状態です。

会社の財務状況

売上・営業利益・当期純利益についてみたので、貸借対照表を見たくなります。

しかし、キオクシアは上場していないので、貸借対照表や損益計算書を公表していません。

上場している会社は、投資家のために会社の財務状況を公表することが義務です。キオクシアの競合他社の半導体メモリメーカーは、全て上場しているので、会社の財務状況を見ることができます。

しかし、キオクシアは上場していないので会社の詳しい状況を公表しなくていいわけです。

キオクシアの財務状況について知ることができるのは、2020年のデータが最後です。

2020年に一度新規上場しようとして中止になったことがあり、その時の書類は見ることができます。

この時の書類をIPO目論見書と言います。キオクシアのIPO目論見書についてはこちらの記事で解説しています。

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IPO目論見書には、2020年3月31日時点での貸借対照表があります。

中身を見ると、総資産が2.7兆円程度に対して、負債が2兆円くらいあります。

2020年3月31日時点の話なので、3年近く前のデータです。しかし、ここ3年のキオクシアの営業利益を足してもマイナスなので、劇的に負債が減っている可能性は低いと考えられます。

競合他社も軒並み赤字

キオクシアの2023年1-3月期の決算について見てきました。

営業利益が1713億円の赤字になっており、売上の減少がダイレクトに効いています。

キオクシアだけが厳しいわけではありませsん。2022年後半から、半導体メモリの市況が急激に悪化しています。

半導体メモリを作っているメーカーは、キオクシアを含めて5社あります。

【半導体メモリメーカー】
・Samsung(韓国)
・SK Hynix(韓国)
・Micron(アメリカ)
・Western Digital(アメリカ)
・キオクシア(日本)

このうち、Western DigitalとキオクシアはNANDフラッシュメモリを協力して生産しているので、5社ありますが、実質4グループに分かれます。

Samsung・SK Hynix・Micronは、半導体メモリのNANDフラッシュメモリとDRAMの両方を作っています。

実は、2023年1-3月期(Micronだけ1か月ずれています)の決算は、半導体メモリメーカーは全社赤字です。
(Samsungは大きな会社なので会社全体では黒字ですが、DS部門と呼ばれる半導体事業は十数年ぶりに赤字になりました。)

キオクシアの3か月で1700億円の赤字も大きいですが、Samsung・SK Hynix・Micronはキオクシア以上の赤字を出しています。

半導体メモリ業界では、需要が急減することで製品の価格が暴落することがよくあります。

シリコンサイクルとも呼ばれているサイクルなんですが、2022年後半から2023年前半は需要が減少し価格が落ちる時期に当たります。

半導体メモリメーカー全体が、NANDフラッシュメモリやDRAMの需要減少と価格下落に苦しんでいる状況です。

今後の展望

最後に、キオクシアの今後の展望について予測していきます。

キオクシアは、半導体メモリの市況が悪化した状態が今後も続くと、会社としてかなり厳しい状況になると考えられます。

理由としては、半導体メモリメーカー5社の中で一番資金力が弱いからです。

半導体メモリメーカーは、需要と価格が急落する時期は巨額の赤字を出しますが、逆にメモリが売れている時には巨額の利益を手にすることができます。

つまり、需要の上下が激しいので、稼げる時に稼いで需要が落ちた時に、稼いだ時の蓄えで耐えることが求められます。

キオクシア以外の4社は、会社の財務状況も公表されていて、2023年1-3月期は赤字を出していますが、すぐに経営が苦しくなるリスクは低いです。(簡単に言うと、キオクシアと比較して借金が相対的に少ないからです。)

一方、キオクシアは2020年時点のIPO目論見書を見ても、総資産2.7兆円に対して負債が2兆円ある状況です。

そこから、3年間の営業利益は合計するとマイナスになるくらいなので、会社の財務状況が良くなっている可能性はほぼ無いでしょう。そうすると、苦しい時期を耐えるための「蓄え」が他社と比べて相対的に少なくなります。

資金がショートしなければ会社は倒産しないので、資金を融通してくれるところがあれば存続することはできると思いますが、やはり競合他社と比較すると厳しい条件で戦っていることには間違いないでしょう。

まとめ

この記事では、2023年1-3月期のキオクシアの決算について解説しました。

ポイントはこちらです。

営業利益:1714億円の赤字

【キオクシアの特徴】
NANDフラッシュメモリ一本足打法

競合他社と比べると資金力が一番弱く、今後も厳しい戦いが予測される

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