みなさんこんにちは、このブログを書いている東急三崎口です。
この記事では2024年を振り返り、2025年の展望を考えるということで、年末なので1年の振り返り記事を書きます。
本当は、年末ぎりぎりで書こうと思っていた記事なんですが、予定の都合で今年は年末ぎりぎりに書けそうにないので早めに書くことにしました。
2024年も記事を書きましたが、この記事を除いて公開済みのものだけで115本書いていたようです。(こんなに書いている人も、半導体関連のサイトだとあんまりいないんじゃないかと思います。)
別に本数に意味があるわけでは無いですし、ほとんど読まれない記事も多数ありますが、発信し続けていくという意味では一定の更新頻度は必要だろうと思っているが故の本数です。
115本の中から、記事を10本ピックアップして2024年を振り返っていきます。
上半期
陰謀論本の逆レビュー記事
2024年上半期で最初に目についたのは、陰謀論本の逆レビュー記事です。
Amazonでそれなりに売れているとされている、JASMの工場が建つことで熊本の水が云々という内容の本は、一体どんなことが書かれているのだろうか?と思ったのが記事を書くきっかけでした。
この記事を書いた当時は、著者のFM氏に関して詳しくなかったので、まじめに逆レビュー記事を書いたんですが、今振り返っても本の内容はひどいものですね。
今振り返れば、インターネット上の集合知によって、あまりにも変な内容の部分に関してはエビデンス付きで出版社に質問状でも作れば良かったなぁと思うくらいです。
日本では言論の自由があるので、出版物に対してどのような内容を載せようと検閲されることは無いですし、仮に内容が間違っていたとしても、訂正する義務は著者および出版社にはありません。
ただ、紙および電子書籍として世の中に情報を提供するのであれば、編集者がいて出版社から出す以上、情報の発信者としての責任は(作為的に誤った情報を発信していたとしても法的責任を問えるかは微妙ですが)あるはずです。
というわけで、記事で取り上げた陰謀論本はろくでもない本であることは間違いないですが、次半導体をネタに陰謀論本2が出た時には、どんなことができるだろうか?ということを考えておけば面白いかなぁなんて思ってます。
議論が成り立たないアカウントとのレスバ
2つ目は、議論が成り立たないアカウントとのレスバの記事です。
この発端は、陰謀論本の記事を書いたことだったんですが、信者の人と思しきアカウントとレスバをしてしまったので、仕方がないので内容を記事にしたという話です。
当時は、記事を書いた以上、相手の主張がどれだけ相いれないものでも説明をする必要があると思っていたのでレスバをしてしまったわけですが、無理なものは無理だと理解できたので今となってはいい経験でした。
このレスバのハイライトは、お相手のアカウントの方が私が内容を批判していた陰謀論本を読んでいないのに、執拗に反論を続けられていたことです。
意味が分からない展開なんですが、事実だったので、唖然としたのを覚えています。興味があれば、記事を読んでみて下さい。
ちなみに、お相手のアカウントの方の姿を最近見ないなぁと思っていましたが、どうも凍結されてしまったようです。
凍結されても仕方ないとは思いますし、凍結されるまで続けてしまったということでしょう。
SK Hynixと東芝の決算から減損を読む
3つ目は、SK Hynixおよび東芝の決算からキオクシアの減損について書いた記事です。
今となっては、キオクシアは上場したので株式市場での株価が、市場価格となりますが、非上場の時は公正な価値を客観的な数値として見ることが難しかったので2社がキオクシア株式をどのような形で評価しているのか見てみたくて記事にしました。
もともと、この記事を書かねばと思ったきっかけは、SK Hynixの12月期の決算で、キオクシア株式の評価損益が毎年出ているので、そこをどう考えるか?をちゃんと見ておかないといけないと思ったからです。
結局のところ、IFRS(国際会計基準)における、減損の基準が明確に出されているわけでは無く、減損するかしないかの評価基準である今後の得られるであろうキャッシュフローの計算方法も開示されているわけではないので、難解でしたね。
この記事を書いたことを通して、非上場会社の株式を評価する時に、用いる手法によって評価額は大きく変動することを実感として感じられたのは収穫だったと思います。
180nmモデルプロセス
4本目は、180nmモデルプロセスを断面で一から描いた記事です。
この記事の元ネタは、東洋経済で連載されている情ポヨさんの記事です。180nm世代のモデルプロセスが載っていたので、モデルプロセスに基づいて断面を描いてみようという着想でした。
多分描けるやろうとか、描いたら面白いかなぁという気持ちとは裏腹に、いざ描き始めると非常に大変でした。
これだけに全ての時間を使えれば、1~2日で描ける量ではありましたが、ちゃんと全てのレイヤが矛盾なく重なるように図を描くのが大変でした。
ネットで探しても、こういう記事があまり出てこないのは、描く労力に対するリターンが少ないからだろうと心底感じました。
断面だけしか描いていないので、半導体デバイスをやられている方であれば、わりかし誰でも描けるレベルではありますが、一度ちゃんと描いてネット上に転がしておけば役に立つと思ってくださる方がいらっしゃるかもしれないと思っております。
何か所か、修正すべき点があるのは認識しておりますが、修正の手間があまりにもかかるので、この図面をもとに別の解説用の記事などを描くときに修正します。(イオン注入のイオンの話なので、大きな構造上の問題はありません。デバイス屋さんからすると、大問題かもしれませんが。)
今振り返っても、よく全部描いたな・・・と思います。笑
キオクシア四日市工場を外から見てみる
上半期5本目は、キオクシア四日市工場を外から見てみたルポ記事です。
ルポ記事だったので、記事構成としては非常に簡単でした。行ってみたところを書くだけだからです。
ただ、「行ってみる」の部分が少し大変だったくらいです。
キオクシア四日市工場は、Google Mapで見るだけでも非常に大きいことがわかりますが、現地に行くと大きさがなおよくわかります。
規模が大きいとは言われますが、外周の現地ルポの記事は見たことが無かったので、書いてみたという形です。
現地に行ってみるとよくわかりますが、四日市工場は周囲の土地を買い増したりしない限り、建屋の増設余地はないことがわかります。
機会があったら、北上工場や別の半導体工場にも現地ルポに行ってみたいものです。
下半期
ここからは、2024年下半期です。
The New Era of NANDの意味合い
下半期1本目は、WDのThe New Era of NANDに関する記事です。
正直、この記事はあまり読まれていないんですが、3D NANDの今後の方向性を示唆する非常に重要な考え方だと私は思っています。
従来の、積層数で勝負していた時代から、積層数を上げるだけではビットコストが下がらない世界に突入しつつあることをわかりやすく示してくれていると思います。
今後3~5年でNANDメーカー各社の目指す方向性が変わってくる可能性があるので、その分岐点にある話だと思うと非常に興味深いです。
ピョンテク工場現地ルポ
下半期2本目は、Samsungのピョンテク工場の現地ルポ記事です。
2024年7月に韓国に行ってきたんですが、その時にどうしても韓国の半導体工場を訪れてみたかったんです。そこで、今後も拡張と設備増強が行われると考えられて、ソウルから公共交通機関で日帰りできるピョンテク工場に行ってみましたというのが、この記事を書くことにしたきっかけです。
正直、韓国に行ったのもこの時が初めてで、ハングル文字が全く読めず、たどり着けるのか??と思っていました。
ただ、近づくと半導体工場だというのが、よくわかりました。
記事でも書いていますが、ピョンテク工場はロジック・DRAM・NANDを作っているSamsungの旗艦工場です。現地を訪れると、工場を中心に街が出来上がっていることを感じ取ることができました。
工場から遠くを見ると、建設中の高層マンションがたくさんある風景や、工場の周囲に商業地域が出来上がっている光景は、日本の半導体工場の周辺では見慣れない景色だったので新鮮でしたし、現地を訪れたからこそ感じられた部分だったと思います。
もう半年くらい経っているので、建屋の建設も進んでいて、状況は変わっていそうですが、また機会があればピョンテクを訪れてみたいと思います。次回は、SK Hynixの利川か清洲も見てみたいものです。
OCTRAMに関する記事
下半期3本目は、キオクシアがIEDM 2024で発表したOCTRAMに関する記事です。
IEDM2024で、IGZO使ったトラを使ってDRAM作りましたというのが、キオクシアとNANYAの共同開発として発表された話です。
技術的には、チャネルにIGZOを使えば、リーク電流が減るので、面白いなと思っていました。
思っていた以上に、読んでいただいた記事ではあります。キオクシアの上場後の記者会見で、早坂社長が取り上げていたこともあって、注目されたようです。
まだまだ、製品化までの道のりは遠そうですが、DRAMも3Dに踏み込むとなると、従来よりは参入する余地が広がるでしょうから、今後に期待したい技術の一つではあります。(なんだかんだ、中国の方が早く製品化してしまいそうですが。)
PN接合でエネルギーバンドはどう曲がるのか
下半期4本目は、PN接合でエネルギーバンドはどう曲がるのかの記事です。
PN接合は半導体デバイスを考えるうえで、基本的な構造なのでたくさん記事を書かれている方もいらっしゃる話なので、わざわざ私が書くまでもないかと思っていましたが、思いの外接合部のバンド構造が直線で描かれているものが多いのが気になって書きたくなったのがきっかけです。
ガウスの法則から考えると、一般的な空乏層近似でのPN接合のバンド構造は二次曲線になりますよという話です。
記事を出す前は、それほど読まれないだろうと思って書いた面もあったんですが、想定より読まれる記事になりました。
意外と、半導体デバイスの基本構造でもちゃんと説明しようとすると難しいというのが、記事を書いての実感です。
PN接合を書いたので、次はMOS構造かトランジスタを書かないといけないかなぁと思いつつ、筆が進んでいないですが、気が向いたら2025年に書けたらいいなと思っています。
キオクシアの有価証券報告書
下半期の5本目は、キオクシアの有価証券報告書についての記事です。
キオクシアが新規上場するのに合わせて、有価証券報告書が出たので中身を読み解いてみようという記事です。
前からキオクシアの財務については書いていたこともあって、GoogleのDiscoverに載ったおかげでたくさんの方に読んでいただいた記事となりました。
2020年にIPOしようとした時のIPO目論見書も読んでいましたので、そこも含めてどうなんだろうか?という面をそれなりに書いています。
なかなか、非上場企業についてフォーカスして書かれた記事は少ないので、誰かの役に立っていれば幸いだなと思います。
表面をさらっと書いたような記事はたくさん出ていましたが、財務にフォーカスした記事は少なかった印象です。
キオクシアに関しては、上場して四半期ごとに適時開示がなされるようになるので、今後も継続して記事を書いていきたいと思っています。
2025年
2025年、今の時点で見えていることとしては、1月末~2月上旬にかけて、メモリメーカーの2024年10-12月期の決算が出てきます。
DRAMメーカーは、まだ好調が続きそうですが、NANDに限って見るとちょっと需給が緩んでいるような印象も見えるので、減収減益になるメーカーが出てくるかもしれません。
あとは、WDのNAND部門のスピンオフがいつになるのか?が注目です。2024年に行われるはずだったんですが、伸びて2025年にずれこんでしまいました。
大きく見ると、生成向けのGPU需要が2024年の勢いを維持するのかどうかも、半導体メモリメーカーの業績には大きく影響してくると思われます。
ロジック側に目を移すと、ラピダスの工場の稼働が始まる予定です。量産品を作るのはまだ先の話ですが、装置立ち上げから工場稼働までは急ピッチで進められるでしょうから、順調に進んでいくのかどうかは見どころです。
パワー半導体に関しては、東芝・ロームの協業がどう進むのか?というところと、世界市場でのシェア獲得に向けて日本メーカーの再編があるのかどうかが注目です。
2024年末の時点で見えていることは少ないですが、半導体業界を取り巻く状況は日々変わっていくので、日々変わりゆく状況を追い続けていく形になると思います。
サイト運営
最後に、サイト運営に関して少しだけ。
2024年は幸いなことに、年間通して月間1万PVを切ることなく推移できました。読んでくださっている読者の皆様のおかげです。
一方で、なかなか記事を増やしても月間3万とか5万PVにはなかなか届かないのも見えてきています。
今のところ、サイト運営を大きく変えようと思っているわけでは無いですが、新しい切り口の記事を書いたり、雑記のジャンルで新しい記事を少し書いていこうと思っています。
このサイトの設立時からの流れからして、もともと半導体について書こうとは思っていなかったんですが、結果的に半導体のサイトになっているところがあります。
半導体の専門記事を中心に据えていきますが、新しい試みも加えていきたいと思っております。
読者の皆様、2025年もよろしくお願いいたします。
まとめ
この記事では、年末なので2024年の振り返りを書きました。
今後も更新を続けていきますので、2025年もよろしくお願いいたします。それでは、皆様よいお年を。次回更新は年明けです。
このブログでは、半導体に関する記事を他にも書いています。半導体メモリ業界が中心ですが、興味がある記事があれば読んでみてください。
この記事はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
こうしたMediaでの「書き手」にとってありがちなバトルなど本当にお疲れ様です。
正に意味のない議論は時間の無駄ですね。。。
今年も記事、楽しみにしております。よろしくお願い致します。
通りすがり様
コメントありがとうございます。東急三崎口です。
記事読んでくださって、ありがとうございます。
なかなか議論の通じない人もいるもんだと実感として感じられたのは、一つの収穫だったと思うようにしています。
記事は継続して書いていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
東急三崎口