キオクシアとウエスタンデジタルが合併したらフラッシュメモリ業界はどうなるのか

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みなさんこんにちは。このブログを書いている東急三崎口です。

この記事では、フラッシュメモリメーカーであるキオクシアとウエスタンデジタルが合併したら、業界がどうなるのかについて解説していきます。

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経歴:学生の頃から半導体の研究を始め、半導体メーカーで約3年勤務。ロジック半導体・メモリ半導体が専門
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普段知らず知らずのうちに使っているフラッシュメモリですが、作れるメーカーは世界でほぼ5社しかありません。

【世界のフラッシュメモリメーカー】
・Samsung
・SK Hynix
・Micron
・Western Digital(ウエスタンデジタル)
・Kioxia(キオクシア)

5社しかないフラッシュメモリメーカーのうち、2社が合併するかもしれないというニュースが出ていました。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230123-2572613/

合併するかもしれないという2社が、今回取り上げる「キオクシア」と「ウエスタンデジタル」です。この2社についてご存じない方も多いと思うので、会社についてさらっと紹介したあと、合併したらどうなるかについて解説していきます。

(2023/6/2追記)
2023/6/2にキオクシアとウエスタンデジタルが、経営統合を視野に詰めの交渉に入ったとの報道がありました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a5e18b5aa8a63f4be829d4d91162bdafb0b69ad0

(2023/5/16追記)
2023/5/15に、キオクシアとウエスタンデジタルが合併協議を加速させている報道がありました。キオクシアが合併すべき会社について、こちらの記事で解説しています。

(2023/2/15追記) 2023年度第三四半期のキオクシアの決算が出たのでこちらの記事で解説しています。四半期で1000億円近い赤字になっていて、半導体メモリ業界は不況期に入ったようです。

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結論から言うと、2社が合併することは日本にとってはデメリットが大きいと私は考えています。

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目次

キオクシアとウエスタンデジタル

キオクシアとウエスタンデジタルについて、ご存じない方のためにそれぞれの会社について少し紹介します。

キオクシア

キオクシアは、もともと東芝の半導体メモリ部門でした。実は、フラッシュメモリは1980年代に東芝の技術者が発明したメモリで、フラッシュメモリを世の中に生み出した会社の今の姿です。主な製品は、フラッシュメモリです。

東芝が原発事業で巨額の赤字になり債務超過になったため、資金を調達するために東芝から外資に売られた半導体部門が現在では社名が変わってキオクシアとなっています。

社名は、東芝→東芝メモリ→キオクシアという変遷をたどっています。

もともと東芝の半導体部門だったため、会社も工場も日本国内にあり、日本の中の半導体メーカー売上高ランキングでは1位にいる企業です。

キオクシアの会社自体については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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ウエスタンデジタル

ウエスタンデジタルは、アメリカの会社で主な製品はハードディスクとフラッシュメモリです。1970年に創業された会社で、当初は半導体のチップを作っていました。当時は電卓用のチップを作っていたようです。

しかし、時代の流れによってハードディスク事業を行うようになり、現在でもハードディスクの大手メーカーです。

2015年に、フラッシュメモリ製造メーカーだったサンディスクを買収し、フラッシュメモリの製造も行うようになりました。

もともと、サンディスクが当時の東芝とフラッシュメモリを共同で製造していたので、サンディスクを買収したウエスタンデジタルが、フラッシュメモリの製造メーカーになったというわけです。

フラッシュメモリのシェア

冒頭で、フラッシュメモリのメーカーは世界で5社しかないと紹介しました。

5社のシェアを表すとこのようになります。(2022年10-12月期のデータ)

合併が報道されているキオクシアとウエスタンデジタルは、グラフの中でそれぞれオレンジ色と黄色をしています。

キオクシアのシェアが19.1%、ウエスタンデジタルのシェアが16.1%程度となっています。

この2社が合併して、シェアが単純に2社の合算になったとすると、フラッシュメモリ業界のシェアはこのように変わります。

キオクシアとウエスタンデジタルのシェアを単純に足すと、従来シェア1位だったSamsungを抜いて、フラッシュメモリ業界のシェア1位に躍り出ます。

キオクシアとウエスタンデジタルが合併すると、Samsungに匹敵するシェアを持つ

この2社が合併したときの最大のメリットは、フラッシュメモリのシェアが首位クラスに増えることです。

競合他社を含めてフラッシュメモリ業界がどうなるかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

競合他社とキオクシア・ウエスタンデジタルの違い

フラッシュメモリを製造できるメーカーとしては、ライバルメーカーを含めて5社あります。競合他社と、キオクシア・ウエスタンデジタルの大きな違いが一つあります。

競合他社は「フラッシュメモリ」と「DRAM」を作れるが、キオクシア・ウエスタンデジタルは「フラッシュメモリ」しか作っていないことです。

フラッシュメモリの他に、DRAMが出てきました。DRAMは、フラッシュメモリと同じ半導体メモリの一種です。

簡単に言うと、DRAMは電源を切るとデータが消えてしまいますが、フラッシュメモリよりもスピードが速いです。
フラッシュメモリとDRAMの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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DRAMを作っているメーカーは、世界でほぼ3社しかありません。

そして、その3社がキオクシア・ウエスタンデジタルの競合メーカーとして挙げた、Samsung・SK Hynix・Micronなんです。

DRAMのシェアはこのようになっています。

DRAMはほぼ3社しか製造していないので、寡占市場で大きな値崩れが起こりにくいです。

大手で3社があって、価格競争が起こりにくいことは、日本のビールメーカーをイメージしていただければわかりやすいと思います。

大手4社のキリン・アサヒ・サントリー・サッポロでかなりのシェアが占められているので、ビールの価格競争は起こりにくいのと一緒です。

寡占市場であるということは、価格が下がりにくいので製造メーカーは利益を得やすくなります。

DRAMを作って利益を上げやすい競合メーカーとフラッシュメモリの製造で競争をしないといけないのが、キオクシアとウエスタンデジタルなんです。

まとめると、キオクシアとウエスタンデジタルは、競合のフラッシュメモリメーカーよりも不利な条件で戦いを挑んでいるわけです。

合併したらどうなるか

では、キオクシアとウエスタンデジタルが合併したら何が起こるのでしょうか。報道では、「現在協議中の条件では、ウエスタンデジタルはフラッシュメモリー事業をスピンオフしてキオクシアと合併させ、米国で上場企業を誕生させる方針。」とありました。(引用元の記事)

要は、ウエスタンデジタルのフラッシュメモリ事業とキオクシアを合併させて、新しい会社としてアメリカで上場する予定だということです。

キオクシアとウエスタンデジタルのフラッシュメモリ部門が合併しても、DRAMを作る技術を持っていないので、合併してできた新会社とSamsung・SK Hynix・Micronの4社の中で、新会社だけがDRAMを作れない構造は変わりません。

今までキオクシアとウエスタンデジタルが販売していた顧客を統合できるのと、単純にシェアが上がることはメリットとしてあるかもしれません。キオクシアとウエスタンデジタルが合併すれば、現在フラッシュメモリのシェアが世界1位のSamsungと同等レベルのシェアになります。

とはいえ、2社が合併することで劇的なメリットが生まれるかと言われると、それほど大きな効果は無いと考えられます。

日本にメリットはあるのか

キオクシアとウエスタンデジタルが合併することで、日本にとってメリットがあるのかを考えてみます。

キオクシアは、もともと東芝の半導体メモリ部門だったこともあって、本社や工場が日本国内にあります。日本の会社が日本で半導体を製造するという点では、良い条件がそろっています。

キオクシアがウエスタンデジタルと合併したとすると、アメリカで上場する予定ということですから、もともとアメリカの会社であるウエスタンデジタルが主導権を握ることになると考えられます。

そうすると、形としては日本に工場が残ったとしても、日本でフラッシュメモリを製造する会社が無くなってしまうことになります。

製造拠点が日本にあれば問題ないと思われる方も多いかもしれませんが、日本で働く人はいたとしても、会社が生み出した利益はアメリカに持っていかれてしまいます。

そうすると、日本側から見たメリットは薄いです。キオクシアとウエスタンデジタルが合併して、アメリカで新会社が上場することになると、キオクシアがウエスタンデジタルに吸収されたような形になります。

キオクシアの経営陣からしても、ウエスタンデジタルと合併するとなると、経営権はアメリカ側にもっていかれますし、合併による相乗効果は少しあったとしても、独立した経営はできなくなります。

そう考えると、キオクシアの経営陣側にもウエスタンデジタルと合併するメリットは薄いように思えます。

それでは、なぜキオクシアとウエスタンデジタルの合併交渉のニュースが出るのかを考えてみます。その理由は、おそらくキオクシア側の資金がかなり厳しい状態にあるのだと考えられます。

キオクシア側にメリットが薄い合併を検討せざるを得ない状況に追い込まれている可能性はあります。

フラッシュメモリに限らず、半導体メーカーは製造するための先行投資が巨額で、巨額な先行投資を続けられえないと競争に残っていけない過酷な業界です。とすると、キオクシアが巨額な投資を続けられなくなっている可能性は十分にあります。

キオクシアは未上場企業なので、決算書類を見ることはできませんが、良好な経営状況であるならば、新規上場(IPO)をすることも選択肢に入ってくるはずです。上場がいまだに行われていないことを考えると、あまり状況は良くないと言えるでしょう。

キオクシアのIPO目論見書を読んで、財務状況をこちらの記事で詳しく解説しています。

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ウエスタンデジタル以外と合併するとしたらどこがいいのか

キオクシアがウエスタンデジタルと、合併せざるを得ない状況にあるのだとしたら、どの会社と合併することが一番メリットが大きいのか考えてみます。

結論を言うと、Micronと合併するのが一番メリットが大きい合併になると考えています。その理由は、Micronは日本にDRAMの工場を持っているので、Micronとキオクシアが合併すれば(合併というより、吸収かもしれませんが)日本国内でDRAMとフラッシュメモリを製造する拠点が維持できるからです。

仮に、Samsungとキオクシアが合併した場合、世界のフラッシュメモリを1社で製造することになり、独占禁止の観点から許可されない可能性が高いです。1社で世界の半分のシェアを持つことになれば、価格競争がかなり起こりにくい製品になってしまいます。

残る選択肢としては、SK Hynixが挙げられますが、SK Hynixとキオクシアが合併した場合でも、Micronと合併した場合とあまり状況は変わらないかもしれません。SK Hynixは、日本国内に製造拠点は無いので、シナジー効果はMicronより薄いと考えられます。

というわけで、ウエスタンデジタルとの合併よりもMicronとの合併(吸収?)の方がまだメリットがあるのではないかと、私は考えています。

ウエスタンデジタル以外とキオクシアが合併する展望について、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

今回の記事では、キオクシアとウエスタンデジタルが合併したらフラッシュメモリ業界はどうなるのかについて解説しました。

2社の合併はキオクシア側のメリットが薄く、合併した新企業ができたとしても、フラッシュメモリ業界での構造は変わらないというのが結論です。

おわりに

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。記事の中でよくわからない点がありましたら、コメント欄かお問いあわせフォームからご連絡いただければお返事できるようにいたします。

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